2018年12月30日日曜日

【LIVE!】 サニーデイ・サービス


 サニーデイ・サービスの世界 追加公演 "1994"


今年の5月に亡くなってしまったドラムの丸山
さんを追悼する側面の濃いライブであった。

まったく飾り気のないステージに、曽我部恵一
(Vo/Gt)と田中貴(Ba)のふたりだけ。ほん
とに最初から最後までふたりだけで、ほとんど
MCもなく3時間、推定35曲(!!)を丁寧に、慈
しみながら演奏してみせた。ギターとベースだ
けでリズムを合わせるのは難しいと思うが、ふ
たりとも常に頭の中で鳴っている丸山さんのド
ラムに合わせているようで、しかもかなり精度
の高い演奏だったのにはしみじみと感動してし
まった。

ベストアクトは「ふたつのハート」。この曲好
きなんで、やってくれて嬉しかった。

                     12.28(金) 渋谷CLUB QUATTRO


2018年12月29日土曜日

読書⑧


『ソラリス』
スタニスワフ・レム 著 沼野充義 訳 ハヤカワ文庫

モロッコまでの長いフライトで何を読もうかとウキ
ウキ考えて、『ソラリス』を選んだ。余談だが往路
は偏西風の向かい風だったせいなのか、トランジッ
トのアブダビまでが12時間、アブダビからは11時間
かかって、ようやくカサブランカに到着。わたしは
機内で映画を観ないので、その時点で『ソラリス』
は読み終わっていた。

巨大な"海"に覆われた惑星ソラリスのステーション
に主人公がたどり着く。が、ステーションは静まり
かえっており、誰が迎えに出て来るでもない。
あとあと分かってくるのは、みなソラリスの"海"が
現出させる幻に精神を蝕まれ、ある者は自室に引き
こもり、ある者は精神に変調をきたしているのだ。
いったいソラリスの"海"とはどの様な存在なのか…。

奇妙なラブロマンスでもあるこのSF小説は、たしか
に間に長々と続くソラリスに関する学術的な論争の
歴史など、退屈と言われても仕方ない部分を含みな
がらも、そりゃあ人を惹きつけてやまないだろうな
という魅力にも満ちている。言ってしまえば「ハリ
ー」の造型が成功しているのがこの小説の勝因であ
る。









『小津ごのみ』
中野翠 著  ちくま文庫

小津映画に出て来る障子紙、襖やカーテンの柄、湯
呑みや花瓶などの小物から小津の"このみ"を読み取
り、小津安二郎ほど画面を自分好みの物で埋め尽く
した映画作家もいないということを証明している。

最近小津映画を何本か続けて観たので記憶も新しく、
これまであまり注目されてこなかったであろう観点
からの小津映画論としておもしろく読んだ。



カリートの道


☆☆☆★  ブライアン・デ・パルマ 1994年

デ・パルマの美学というのがなんとなく身に
染みてきた4作目。あくまで私が観た4作目で
あって、制作順ではない。

アル・パチーノを主演に迎え、闇社会から足
を洗う決意をしたマフィアが、本人の意思と
は逆に、色々な不運も手伝って結局はまた終
わりなき暴力の連鎖の中に引きずり込まれて
いくという話。でも、初っ端からチンピラを
皆殺しにしちゃって、あれで司法の手が伸び
て来ないのが不思議なんだが。

秀作『アンタッチャブル』からは6年、この
フィルムの次に手掛けるのは『ミッション・
インポッシブル』となる。ハッとさせられる
カットもあるにはあるが、全体的にテンポが
よくないように感じる。
ラストも、うーん。アイツいつになったら出
て来るんだろう、ずいぶん遅いなーと思って
たら…。普通もうちょっと早く落とし前付け
に来るだろうよ。

ショーン・ペン名前あったけど、全然出て来
ないなー、と思ったら! あの映画史に残り
そうな珍妙な髪型はいったいどうして生み出
されたのか…。

                             12.19(水) BSプレミアム


2018年12月26日水曜日

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン


☆☆☆★★★  スティーヴン・スピルバーグ 2003年

天才詐欺師・レオ様とそれを追う堅物のFBI
捜査官トム・ハンクスの、追う者と追われる
者の間にいつしか生じた不思議な友情の物語。
どうしたってルパンと銭形警部を思い起こさ
せる。るぱーーーーん。

「どうせ面白いんだろ?」と思いながら観始
めて、オープニングのアニメーションの洒脱
さにいきなり「参りました」という感じ。
すっかり観念して、あとは2時間25分、スピ
ルバーグにおまかせ、である。

ハイライトはやはりマイアミ空港からの脱出
劇ということになるか。目立つことによって
目立たなくする、禅の公案のようであるが、
美女を侍らせて堂々と空港を闊歩するレオ様
は痛快である。

                                     12.16(日) BSプレミアム


2018年12月25日火曜日

レオン


☆☆☆★★★  リュック・ベッソン  1995年

ちょっと甘いかな。映画も甘ければ採点も甘い、
と言われそうだが、その甘さもひっくるめて、
実に愛すべき映画だと思う。
ジャン・レノとナタリー・ポートマンのファッ
ション、唐突にやってくる圧倒的な暴力、孤独
な者どうしの心のふれあい…。ここには非凡な
もの、凡庸なもの、奇をてらったもの、素直な
もの、荒唐無稽なものが、いかにもさりげなく、
しかしわざとらしく雑多に混在しているように
思う。

しかしジャン・レノを殺しの腕は第一級だが字
も読めない心根の優しい殺し屋にキャスティン
グしたひとのキャスティングの腕こそ、まさに
第一級である。あ、でも『サブウェイ』のジャ
ン・レノも狂っててよかったから、アテ書きな
のかな。そしてナタリー・ポートマンのあの目
つき。にらまれたら二晩うなされたっておかし
くない。

                                      12.11(火) BSプレミアム


2018年12月21日金曜日

souvenir the movie ~Mariya Takeuchi Theater Live~


☆☆☆★     2018年

職場の先輩がふたりも「観たほうがいいよ」と
言ってきたので、さいわい上映期間も延長され
たことだし、観て来た。2800円は決して安く
ないが、確かに観る価値はある。

竹内まりやの2000年、2010年、2014年のライ
ブ映像を取り交ぜて、間にインタビューが挟ま
る。ライブは2000年のものがほとんどを占めて
いる。ドラムはまだ青山純。サンソンの追悼特
集で山下達郎は、青山純のドラムの何が素晴ら
しいって「重い」ことが素晴らしいと語ってい
た。たしかに2010年以降の小笠原拓海と比べる
と、キックやタムのズンという響きが格段に重
いのが分かる。

そして、こう言っては失礼にあたるかもしれな
いが、2000年の竹内まりやは若い! 「カムフ
ラージュ」の妖しい色気にも悶絶させられたが、
やはり結局は「プラスティック・ラヴ」~「駅」
の流れにとどめをさす。圧巻の演奏と歌唱。参
りました。

                                        12.10(月) 渋谷TOEI


2018年12月16日日曜日

ボヘミアン・ラプソディ


☆☆☆★    ブライアン・シンガー  2018年

2か月ぐらい前に劇場で予告篇を見た時は、はーまた
ありきたりな伝記映画がひとつ増えるのか、ぐらいに
しか思わなかった。
観終わっても、その印象はたいして変わらず。まあ、
ありきたりな伝記映画と言えなくもない。しかしそれ
を補って余りある館内に響くフレディの圧倒的な歌声、
その壮絶な人生、さらに追い打ちをかけるブライアン・
メイの限りない優しさ…。わたくしもご多分にもれず、
最後は目から正体不明の水が垂れてきてしまいました。

                                       12.9(日) TOHOシネマズ新宿


2018年12月13日木曜日

カサブランカ


☆☆☆★★  マイケル・カーティス  1942年

モロッコに行くにあたり、それこそ10年以上
ぶりに再見した。
当時、大学生のわたしにはこの表立たないダ
ンディズムは理解できなかったのか、ぜんぜ
んおもしろくなかった記憶しかないのだが、
今観ると意外におもしろい。
ボガートはちょっとウジウジしている時間が
長いので損をしている気もする。ピアニスト
のサムとイングリッド・バーグマンの会話が
泣かせる。
モロッコらしい、狭い道の両側に店が建ち並
んだ中をひとが行き交う風景は、申し訳程度
2シーンぐらいしか出て来ない。モロッコ人
にいたってはひとりたりとも出て来ないとは
四方田センセの指摘である。まあ結局これは
徹頭徹尾ハリウッド映画なのだ。

                             11.18(日) BSプレミアム


2018年12月11日火曜日

読書⑦


『女の一生』
モーパッサン 著  永田千奈 訳  光文社古典新訳文庫

ジャンヌが修道院(神学校?)を卒業して家に帰る場面
から始まる、ジャンヌの一代記である。

なかなか波乱に満ちた人生であり、かつまた非常に感情
の起伏の激しい女性である。ジャンヌの心情の変化が細
かく語られるのだが、どうも首を傾げざるを得ないよう
な描写もあり、ついて行きかねた部分も多かった。

若き日の大江健三郎がモーパッサンを熱心に読んでいた
という記述から、ふと本棚に眠っていた本書に手が伸び
たわけである…。










『モロッコの恐竜』
  ある青年海外協力隊員が夢を掘りあてるまで

石垣忍 著   築地書館

モロッコに行くにあたり、読んでみた。
80年代はじめに、青年海外協力隊としてモロッコに赴任し、
フィールドワークと博物館の展示づくりに奮闘した3年間の
記録である。ほんとうに「苦闘」の連続の中、にも関わらず
日々、なぜ自分はここに来たのが、ここで何ができるのか、
青年海外協力隊という仕組みが本当に途上国のためになるの
か、いつも思索を深めていて、しかも思索の跡がとても明晰
なのである。そしてなんだか楽しそうなのである。まあ人柄
なのだろう。文章もうまい。とてもおもしろかった。






2018年12月8日土曜日

2018年12月7日金曜日

Morocco ①


 モロッコに行って来ました。


      【Marrakech】







      【Tanger】










2018年12月6日木曜日

Ryuichi Sakamoto : CODA


☆☆☆  スティーヴン・ノムラ・シブル  2017年

病気を経て、『レヴェナント』『母と暮せば』の
劇伴をやり遂げ、『out of noise』以来8年ぶりの
アルバム『async』を完成させるまでの坂本龍一
のドキュメンタリー。

まあそれ以上でも以下でもないというか、いい音
を採取できた時の教授の、少年のような笑顔は印
象的だが、目新しいのはそれぐらいか。NHKのド
キュメンタリーで見たような場面ばかりだった。

                                              11.13(火) Eテレ


2018年12月2日日曜日

東京暮色


☆☆☆★    小津安二郎    1957年

デジタル修復版で鑑賞。
主演は笠智衆、原節子、有馬稲子。

話はとことん暗い。こんなに救いのない小津映画と
いうのは記憶に無いので、たぶんいちばん暗いのだ
ろう。山田五十鈴が雀荘のオーナーの奥さんで出て
来るのだが、こんな大物出て来てただの雀荘の奥さ
んなわけない、と思ってたら案の定、ものすごく重
要な役であった。

                                         11.5(月) BSプレミアム


2018年11月23日金曜日

ハナレイ・ベイ


☆☆☆★★    松永大司    2018年

これはなかなか良い。
もう遠い昔に読んだきりなので、映画化にあたって
どこをどう膨らませたのか分からないのだが、それ
がけっこううまくいっているように推察される。

吉田羊はさすがに巧い。サーファーだった息子をサ
メに殺された偏屈なおばさんという役どころで、サ
バサバしてるけど無駄に明るくなく、色んな感情を
ひとまず胸に納めて、毎年ハナレイに通い、1週間
浜辺で本を読んでいるというその複雑な葛藤が、見
えるか見えないかという絶妙な線で演技していた。

去年ハワイに行ったときにカウアイ島もぜひ行きた
かったのだが、いろいろあって断念したのだった。
残念である。リトライしたいものだ。

                                       11.3(土) 新宿ピカデリー


2018年11月21日水曜日

ここは退屈迎えに来て


☆☆☆★    廣木隆一   2018年

椎名くんというなんか不思議な吸引力があったらし
い奴をめぐるクラスメイトたちの地方都市での学校
生活と、その後散り散りになった彼らの話。なんだ
か桐島が普通に出て来る『桐島、部活やめるってよ』
みたいな感じもする。
私は廣木監督の移動ショットが好きで、特に何が起
こるわけでもないシーンでこそ、その真価が発揮さ
れると思っている。この映画は特に何が起こるわけ
でもないので、結構うってつけなのである。

橋本愛は可もなく不可もなく、という感じ。
片山友希というコが出て来て、本筋とはほとんど何
の関係もないのだが、よりによってマキタスポーツ
と援交というか、清い交際(?)をしている。能年
ちゃんみたいで可愛い。

                                       10.28(日) 新宿バルト9


2018年11月18日日曜日

暗殺のオペラ


☆☆☆★★   ベルナルド・ベルトルッチ  1979年

確固たる美意識に裏付けられた美しさを放ち続けるフィ
ルム、という印象。どの瞬間を切り取っても、一枚の絵
として成立するよう設計されたショットの積み重ねであ
る。そもそも映画とは活動写真、つまり「写真が動く」
ものであるというその原点を思い出す。
また思わせぶりな移動ショットがたまらない。黒沢清っ
ぽい。あまり黒沢の口からベルトルッチの名を聞いた覚
えはないが、影響を受けているんだろうか。フェリーニ
といいヴィスコンティといい、イタリア映画は肌に合わ
んと常々公言してきたが、ベルトルッチは好きな作品が
多い。

北イタリアのタラという小さな町に、父の謎の死の真相
を探るため、主人公が降りたつ。父は「リゴレット」が
上演されている劇場で何者かに銃殺されたのであった。
原作はボルヘスの短篇らしい。

字幕:山田宏一
と出たのだけど、あの山田宏一? イタリア語もできる
のだろうか。それとも別人なのか。

                                              10.29(月) 早稲田松竹


2018年11月14日水曜日

早春


☆☆☆★  イエジー・スコリモフスキ  1970年

同じ「早春」でも、こちらはポーランドの監督
スコリモフスキのデビュー作『早春』。季節と
しての早春は映画の内容とマッチしていないの
で(映画の季節はどう見ても早春というよりは
「冬」である)、まあ「青春の初め」ぐらいの
感じで付けた邦題だろうか。
原題の"DEEP END" は行き止まり、の意。たし
かに「行き止まり」よりは良いかな。

未熟な男の子が年上のイケナイおねえさんに恋
をしてさんざん振り回された挙句に、はずみで
殺してしまうという、けっこう救いようのない
話である。
デビュー作らしくやり場のないエネルギーの横
溢が感じられる若々しいフィルムで、特に自転
車での疾走のシーンは瑞々しくて高揚させられ
るものがある。

                                  10.29(月) 早稲田松竹




2018年11月10日土曜日

孤狼の血


☆☆☆★     白石和彌     2018年

『娼年』との2本立て。
観始めてからようやく「松坂桃李の特集だったのか!」
と気付く。今年やたらと評判の良かったこちらでも主
演を張ってたとは。知りませんでした。

映画に呉という土地が出て来るとつい菅原文太の顔が
浮かんでしまい、「こんな(=てめえ)」「チンコロ
(=密告)」といった広島弁を聴くと胸がときめきで
キュンキュンする、そんな人間たちのために、そんな
人間たちが作った映画であろう。ストップモーション
と事務的なテロップと無感情なナレーションによる事
件の処理などを見るかぎり、もう『仁義なき戦い』へ
のオマージュどころではなく、続編を作ったるわぐら
いの勢いである。

まあおもしろかったのだが、それにしては私の採点は
厳しすぎるだろうか。しかし、ここまで『仁義なき戦
い』の褌を借りて相撲を取っている以上、それはヤク
ザ映画としては最初から下駄をはいているのであって、
評価はより厳しくなるのは当然だと思う。役所広司の
めちゃくちゃな刑事の演技といい、生真面目な松坂桃
李がだんだんとその"流儀"に染められて、遂にはそれ
を継承するに至る流れなど、すばらしかったシーンは
たくさんあるのだが、いま一歩、突き抜けなかった印
象。しかし最後の墓のシーンの阿部純子は全部アフレ
コだよね? なぜなんだろう。

                                             10.26(金) キネカ大森


2018年11月8日木曜日

娼年


☆☆☆★     三浦大輔     2018年

観ながら思うのは、こんな大変な映画どうして
撮ろうと思うのかねー、ということ。舞台化の
方が先だったが、まあこんな調子の舞台なのだ
としたら、そちらも生身の肉体を使った作品化
に伴う困難に対してどれぐらいちゃんと評価さ
れたのだろうか。話の筋は簡単で、「女なんて
退屈さ」とうそぶいていた主人公が「置屋の女
将」みたいな女に見出されて娼夫となり、めき
めき伸びる素質でもって、ずっとセックスばか
りしているのである。

松坂桃李はこの主演をよく引き受けた。たいし
て好きな役者でもないが、好印象。こういう映
画に出る役者は制作側からもきっと重宝がられ
ることだろう。なかなかいいお尻だし。

冨手麻妙って女優なんか見たことあるなー、と
思ったら『アンチポルノ』の女のひとか。あれ
も酔っ払って観てしまった映画のひとつ。

                                   10.26(金) キネカ大森


2018年11月4日日曜日

早春


☆☆☆★★     小津安二郎    1956年

デジタル修復版で鑑賞。
主演は池部良と淡島千景。池部良は何があっても
涼しげな顔でカッコいい。
通勤電車で北鎌倉から乗る仲良しグループという
のが出て来て、よく麻雀を打ったりみんなでご飯
を食べたり、休日にピクニックに行ったりしてい
る。今では考えられませんな…。
そのグループに岸恵子がいて、ちょっと色っぽい
のでグループの風紀を乱しているのである。
「金魚」と綽名されているが、その理由が「目が
大きくて、ズベ公だから、煮ても焼いても食えな
い」からだと説明される。ひどいよね。

今回の初耳学は、浦辺粂子が言うセリフ。

 「女は三界に家無し」って言うだろ

当たり前のように言うのだが、初耳だった。意味
を調べてみると、死語になるのもうなづける感じ
であった。

                                        10.22(月) BSプレミアム


2018年10月31日水曜日

お茶漬の味


☆☆☆★★    小津安二郎    1952年

デジタル修復版で鑑賞。
主演は佐分利信と木暮実千代。
笠智衆はめずらしくパチンコ屋の親父を演じている。
陽気に軍歌を歌うのもめずらしい。

往々にして時間が経つと題名と内容がこんがらがって、
誰が出てるどんな映画だったかが分からなくなる小津
映画なのだが、今作は覚えやすい。ラスト近くに、長
年連れ添った夫婦を「お茶漬」に例える場面がある。
こんなに題名と内容が一致する小津映画は初めてだ。

それにしても唐突に和解しすぎだよね…。

                                        10.16(火) BSプレミアム


2018年10月28日日曜日

【LIVE!】 Cornelius


 Mellow Waves Tour 2018

 1. いつか / どこか
 2. Point Of View Point
 3. Audio Architecture
 4. Helix / Spiral
 5. Drop
 6. Another View Point
 7. The Spell of a Vanishing Loveliness
 8. Mellow Yellow Feel
 9. Sonorama 1
10. 未来の人へ
11. Count Five or Six
12. I Hate Hate
13. Surfing on Mellow Wave pt 2
14. 夢の中で
15. Beep It
16. Fit Song
17. Gum
18. Star Fruits Surf Rider
19. あなたがいるなら

<Encore>
 1. BREEZIN'
 2. Chapter 8~Seashore And Horizon~
 3. E

                10.8(月) 東京国際フォーラム ホールA

当日までチケットをよく見てなかったので、まさか
国際フォーラムのホールA(キャパ5000席!)だと
は思ってなかった。埋まった客席を見渡して、「こ
んなに観に来るひとがいるんだ…」と思ったという
のが正直なところ。

CDを完全再現は出来ないだろうから、若干音数の少
ない「ほぼCD」の演奏を淡々とするのかな、という
思惑は外れることになる。同期音源もけっこう使っ
ていただろうが、音数が少ないとは全然感じなかっ
た。音質はもちろん隅々まで神経が行き届いていて
最高。そして音と同期したアートな映像、照明で視
覚的にも楽しい。まあ要するに、意外にパフォーマ
ティブでおもしろいライブだったのである。また行
きたい。

ベストアクトは「Fit Song」。
ほとんどの曲で言えることだが、あらきゆうこのド
ラムはほとんど曲芸…。

2018年10月24日水曜日

麥秋


☆☆☆★    小津安二郎    1951年

10年以上ぶりに再見。ほとんど何も覚えていな
かったので、新しく観たのと同じである。
BSで放送された「デジタル修復版」で鑑賞。映
像・音声ともにノイズが取り除かれて、観やす
く聞き取りやすい。まだ聞き取れないセリフは
あるが、すばらしいことだ。

『晩春』(1949年)では笠智衆は原節子の父親
役だったが、今作では父親は菅井一郎で、笠は
兄の役。枯れてない笠智衆はちょっと恐い。

毎度、小津映画では、耳慣れない常套句が楽しみ
のひとつだが、この映画でもあった。
高堂国典が言う、

 嫁にゆこじゃなし婿取ろじゃなし、
 鯛の浜焼き食おじゃなし

もうまったく意味不明である。たぶん単なる言
葉遊びで、あまり意味は無いと思われる。

                                     10.7(日) BSプレミアム


2018年10月21日日曜日

犬ヶ島


☆☆☆★★★   ウェス・アンダーソン   2018年

近未来の日本を舞台にストップモーション・アニメで描か
れた、少年と犬たちの絆の物語。……と書くと全然おもし
ろそうじゃないが、これは言語をめぐる極めて精緻な仕掛
けに満ちたエクリチュールでもあるのである。
すいません、エクリチュールって言いたかっただけでした。

基本的に登場人物は日本語でしゃべる。かなり聞きづらい
のだが。一方、犬たちの声は英訳されている、と最初に断
わりが出る。よってわたしたちは犬のセリフは字幕で、人
間のセリフは日本語で聞き取ることができるが、劇中の人
間と犬はほとんど言語によるコミュニケーションはできな
いという、変わった状況なのである。美術の仕事も素晴ら
しく、背景や小道具にも注意を向けたいものが山ほどある。
処理する情報は膨大でついて行けてないことしばしだが、
これがなかなか快感であった。

動作音(Foley)がとても小気味いい。足音の一つひとつ、
衣擦れの一つひとつに付けていくことを考えると気が遠く
なるが、キレのいいFoleyがテンポ良く見せることに貢献
している。優秀。

                                                     10.6(土) 早稲田松竹


2018年10月18日木曜日

希望のかなた


☆☆☆★   アキ・カウリスマキ   2017年

主人公がシリアからヘルシンキにたどり着く場面
から始まる。そしてまず最初に、難民申請をしに
警察署にいく。何日も待たされた挙句、申請は認
められず、シリア国境に送還されることになった
主人公は、施設から脱走してヘルシンキをさまよ
うこととなる。

日本語の歌が唄われたり、儲からないレストラン
を寿司レストランに全面改修して失敗する場面が
あるなど、日本に言及があるのが変な感じ。おま
けに主人公のシリア人俳優はどことなく山田孝之
に似ている。

                                            10.6(土) 早稲田松竹


2018年10月16日火曜日

MEG ザ・モンスター


☆☆☆★    ジョン・タートルトーブ    2018年

深海に棲む太古のサメ、"メガロドン"との闘い。
体長25mといってるから、相当デカいね。

実に王道という言葉がふさわしい作りで…まあ要
するに「JAWS」と筋はほとんど一緒だが、いろ
いろ工夫は凝らしてあり、楽しく観られる。海洋
研究所にいつも小さい女の子がうろうろしてる、
というのも工夫のひとつ。

個人的には初めてのIMAX鑑賞。料金は高いが、
音はほんとにクリアで迫力があって素晴らしい。
3Dメガネを掛けての鑑賞は、やはり1時間半を
過ぎたあたりからじわじわと疲れが出て来た。
2本立ては無理だな。

画像はヒロインのリー・ビンビン。美しい。

                           10.5(金) T・ジョイPRINCE品川


2018年10月14日日曜日

菊とギロチン


☆☆☆★     瀬々敬久    2018年

明治から昭和初期にかけて、20以上の団体があった
という女相撲。そして大正末期の社会主義運動。平等
な社会の実現のために革命の必要を訴えるアナキスト
集団"ギロチン社"の若者たちと、全国を巡業する女相
撲の力士たちが不思議な交流をもつという話で、上映
時間189分の大作である。

力作なのは間違いないのだが、女相撲と社会主義運動
という二大要素が違和感なく混じり合っていたかとい
うと疑問だ。たまたま関心があって調べたふたつを無
理やり一緒にした感が拭えなかった。

主役こそ東出くんだが、女相撲の力士たちなどはあま
り有名な役者も使わず(使えず?)、演出で乗り切っ
た。渋川清彦の座長役がハマっていて最高。

                                               10.5(金) キネカ大森


2018年10月11日木曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


  20th Anniversary
  ALL TIME BEST ワンマンツアー ~KYO-MEI祭り~


ツアーは始まったばかり。
セットリストは遠慮しとこう。

…と言いつつ書いてしまうのだが、ついに、やっと、
「カオスダイバー」をやったのである。この曲はシ
ングルでありながら、私がバックホーンと出会って
ライブに足繁く通い始めた2008年頃からこれまで、
ついぞ一度も演奏されることがなかった曲なのであ
る。良い曲なのになー、と思い続けて10年。
イントロのギターが高らかに鳴らされた時はさすが
にこの10年のことを思って感慨があったが、1曲目
だったので山田の声がまだ本調子の15%ぐらいで、
全く出ていなかった。

山田だけでなくこの日はわたしも喉風邪を引いてお
り、自分の喉と山田の喉が気がかりで、あまり没頭
することができなかった。無念。

ベストアクトは「風船」。
ちなみに岡峰は新宿LOFTで働いてたんだってね。

                                         10.1(月) 新宿LOFT


2018年10月9日火曜日

台風騒動記


☆☆☆★★    山本薩夫    1956年

大型台風に襲われた町で、復興予算を勝ち取って
癒着のある業者に請け負わせたい町長と、この機
に町の覇権を一気に狙いたい議員たちとの、被災
者そっちのけの醜すぎる争いを皮肉を山盛りにし
たコメディタッチで描く。

佐田啓二と菅原謙二が、この争いに巻き込まれる
若者を演じて、もちろん最後には町議会の目論見
は打ち砕かれる。しかし『世界』を読んでるとい
うだけで警察に目を付けられるのはたまったもん
じゃないですね。

最初にわざわざ
「この物語は すべて 事実では ありません」
という断わりがデカデカと出るのだが、案の定、
ほとんどモデルが特定できるぐらい事実に基づ
いているらしい。なかなかおもしろい。

                                   9.30(日) BSプレミアム


2018年10月7日日曜日

お日柄もよく ご愁傷さま


☆☆☆★     和泉聖治    1996年

仲人を務める結婚式と父親の葬式がいっぺんに来て
しまった一家のどたばたを描くコメディ。とはいっ
ても結婚式はすぐに終わるので、結局は『お葬式』
のような感じになるのだが、あちらが山崎努と宮本
信子ならば、こちらは橋爪功と吉行和子。なかなか
いい。

しかしやはりこの年代の邦画は映像が暗いし、画面
がざらついてて発色も悪い。どうも好きになれない。

                                           9.29(土) BSプレミアム


2018年10月4日木曜日

バルタザールどこへ行く


☆☆☆    ロベール・ブレッソン   1964年

「バルタザール」はロバに付けられた名前。
ロバのバルタザールと少女マリーの物語である。
マリーはのちに『中国女』でゴダールのミューズ
のひとりとなるアンヌ・ヴィアゼムスキー。

ブログを探しても記事が無いのだが、観るのは
2回目だ。明らかに見覚えがあるし、ここ3年ぐ
らいのうちに確実に観たのだが、いつ観たのか
が分からない。たぶん観たのに記事にするのを
忘れてしまったのだろう。もったいないことで
ある。

そして2回目なのに、注意深く観ても話の筋がよ
く分からない。どうも難解である。というか話が
ぶつ切り…? 不良のジェラールの言動が特に意
味不明なことが多く、そのせいでマリーの行動も、
どういうことなのかと首を傾げる。

                                        9.27(木) BSプレミアム


2018年10月1日月曜日

読書⑥


『浮世の画家』
カズオ・イシグロ 著  飛田茂雄 訳  ハヤカワepi文庫

この陰鬱な小説における、淡々とした筆致でもって、
少しづつ少しづつ物語と、その中核にある「記憶」を
浮かび上がらせていく手法は、まさしくカズオ・イシ
グロの真骨頂ともいうべきものだろう。やはり他では
得難いものだと思うし、いまは久しぶりにおもしろい
小説を読んだという満足感に浸されている。

画家の父親が、その名も「紀子」という娘の縁談につ
いてあれこれ気を揉むという物語の骨格は、どう見て
も小津映画からのいただきである。その枠組みに、戦
時下で芸術家が体制に対してとった態度という問題を
重ね合わせることで、完全に自分のものにしている。
主人公はしばしば自らの画業と、それに対する世評、
そして自分が育ててきた後進たちについて、「誇り」
と「満足」を口にする。あまりに頻繁に口にされるそ
れらを冷酷に打ち砕くかのような小説の構成に、イシ
グロの信念を見たような気がした。

だいぶ原文よりも日本人が読む用に踏み込んで訳した
という訳文も良かった。文章が良くなければこの小説
は台無しだ。









『江藤淳と大江健三郎』
小谷野敦 著   ちくま文庫

もうおもしろくてしょうがなくて、けっこう短期間で
読んでしまったのだが、ふと我に返ると、こういう本
をおもしろいということ自体が特権的なふるまいなの
ではないだろうかなどと思ってしまう。
江藤淳と大江健三郎のダブル伝記だ。実に細かく事実
関係、書いた文章、対談や座談会はもちろんのこと、
家系や逸話や噂話のたぐいまで検証し、網羅して、有
意味なものを残し、たまに小谷野敦の短い感想が入る。
それがひたすら続くだけなのだが、ついつい時を忘れ
て読み耽ってしまった。といってもわたしは江藤淳の
ことはほとんど何も知らないので、大江さんのパート
がおもしろかった。大江さんのユーモア感覚がよく表
れている文章を優先的に載せているのが良い。

『キルプの軍団』が傑作というのは同意する。『M/T
と森のフシギの物語』と一緒に入門編としてぴったり
だとかねてから思っていた。




2018年9月26日水曜日

ビューティフル・マインド


☆☆☆     ロン・ハワード    2002年

私はあまり好みではなかったが、いろいろ他のひとの
感想を見るとこのイビツさを歓迎しているひとも多い
ようだ。変人の天才数学者が奇行を重ねながらも研究
に打ち込み、やがて周りの支えもあって歴史に残るよ
うな発見を成し遂げる、というようなハートフルな話
を想像していると、それは見事に裏切られる。思うよ
うに研究成果を出せない主人公は、やがて精神に変調
を来たしていくのだが、歯車は徐々に狂いだしていっ
たのではなく、そもそもの始めから狂っていたのだと
いう話になってきて、私はおいおいちょっと待てよ、
と思ってしまった。映画が公開された当時には、 この
"ナッシュ均衡"を見出した主人公のモデルの数学者は
まだ存命だったというからなかなかすごい。こんな描
かれ方をしてどう思っただろうか。せめて死んでから
にしてくれ、と私なら思うだろう。

しかしこれがアカデミー作品賞・監督賞か…。

                                           9.6(木) BSプレミアム


2018年9月20日木曜日

【LIVE!】 ハンバート ハンバート


FOLK IS MY LIFE 2018


                           9.8(土) 日比谷野外音楽堂


デビュー20周年を記念するツアー。
ツアー続行中なのもあるのだが、探してもセッ
トリストが出て来ないのでどっちみち載せられ
ない。
たしかに家族連れも多く、のんびりビール飲ん
でるカップルなんかが多数を占める客席で、誰
もせっせとセットリストをメモしたりしないの
かもしれない。それはそれで健全だとも思う。

弾き語りとトークで前半が終わり、キーボード
とヴァイオリンがセットされたので、そうか、
サポートメンバー入れてやるんだな、と思った
らそれらの楽器もすべて佐藤良成が演奏するの
だった。足でバスドラを刻み、ヴァイオリンを
弾きながら歌っていて、その器用さには感心す
る。客として来ていた又吉がステージに上げら
れて、ヴァイオリンに合わせてアルプス一万尺
をやっていた。

曲よし、トークよし、夏の終わりの野音もよし
で、言うことなし。


2018年9月11日火曜日

恋のエチュード


☆☆☆★★  フランソワ・トリュフォー  1971年

二人のイギリス人の姉妹に恋をするジャン・ピ
エール=レオー。優美な鷹のようなレオーが良
いですね。ナレーションが多用され、どんどん
物語が進んでいく。素っ気ないほどに…。

この邦題を付けたのも山田宏一だろう。
原題の"Les Deux Anglaises et le Continent"
はどういう意味か分からないが、英題が"Two
English Girls"だから、そのぐらいの意味なの
だろう。味も素っ気もない原題に比べれば、
「恋のエチュード」の甘やかさ、軽やかさが
際立つというものだ。

                              8.24(金) シネマヴェーラ


2018年9月4日火曜日

読書⑤


『モロッコ流謫』
四方田犬彦 著   ちくま文庫

次に海外に行くならモロッコに行きたいと
ぼんやり思っており、そういうときの常と
して、まず旅行記から入る。
ただ、読んでみると本書は旅行記というよ
りは、モロッコのタンジェに居を構える作
家で音楽家でもあったポール・ボウルズと
の邂逅、そしてその評論に多くの紙数を費
やしている。わたしは映画化された『シェ
ルタリング・スカイ』すらまだ観ていない
のでまったく不案内なのだが、あいかわら
ず(といっていいのか)四方田センセイの
評論は「そそる」巧さがあるので、思わず
アマゾンで高額な本をクリックしてしまい
そうになる。

かつてフランス領だっただけあって、他に
出てくる作家はジュネ、カミュなど。ジュ
ネの墓を訪ねる文章もなかなか興味深い。
そして短いながらも、平岡千之という、外
交官をしていた三島由紀夫の弟との話もな
にか印象に残る。








『オンブレ』
エルモア・レナード 著  村上春樹 訳

なんだか最近偶然ながらよく西部劇を観てい
るのだが、知らずに春樹の新しい訳書を読ん
だらこれまた完全な西部小説だった。

"オンブレ"とはスペイン語で「男」の意との
こと。ラッセルという、物語の肝となる登場
人物のあだ名である。荒野の非情さを知り尽
くした若者である彼は、どんな苦境に陥ろう
とも、どんな足手まといを抱え込むことにな
ろうとも、ただただ自分の中の掟に従って行
動する。無駄口をたたかず、無駄な動きをし
ない。なるべく多くの人間が生き延びるため
最善を尽くす。いわゆる「クールでタフな」
人物なのである。