2018年6月29日金曜日

二十四時間の情事


☆☆☆    アラン・レネ    1959年

邦題よりも"HIROSHIMA, MON AMOUR"といったほ
うが有名か。
ヒロシマに仕事に来た女優(エマニュエル・リヴァ)
と、フランス語に堪能なビジネスマン(岡田英次)と
の一夜のアバンチュールという内容ながら、難解なモ
ノローグが延々と続き、消化不良のまま終わる感じで
ある。


                                           6.11(月) BSプレミアム


2018年6月24日日曜日

エル・トポ


☆☆☆   アレハンドロ・ホドロフスキー  1969年

異色の西部劇かー。まあね…。
「エル・トポ」は主人公のガンマンの名前であり、
「もぐら」の意とのこと。前半はたしかに西部劇の
形式を借りて好き勝手なことをやっていた。伝説の
ガンマンを訪ねてひとりづつ倒していくのだが、真
面目なのかふざけているのかよく分からない。そう
いうのは後進たちに多大な影響を与えていそうだ。

後半はもう形式も何もかなぐり捨てて、やはり好き
勝手なことをやっていた。印象をまとめるとそうい
うことになる。
120分ちょいにしては体感的に長かった。160分ぐ
らいあった感じがする。

                                                  6.4(月) 早稲田松竹


2018年6月19日火曜日

読書③「三つの短い話」

村上春樹 著   文學界7月号

突然発表された3つの短篇。
「石のまくらに」は今までにない趣向で、短歌を詠む
女のひとが登場し、詠まれた短歌も作中に出て来る。
これがなかなかおもしろい短歌で、これらを春樹がひ
ねっている様を想像するだけで微笑ましい。まあしか
し似たような作品が今後書かれることはなかろうから、
新機軸というよりは、突然変異のようなものだろう。

一方で「クリーム」と「チャーリー・パーカー・プレ
イズ・ボサノヴァ」はそれに比べると今までの感じの
延長というか、短篇集でいえば『東京奇譚集』あたり
に近いテイストか。

2018年6月17日日曜日

ホーリー・マウンテン


☆☆★★★  アレハンドロ・ホドロフスキー  1973年

せっかく特集上映してるから、毒喰らわば皿までということ
で、ホドロフスキー2本おかわり。いやー、さすがにクラクラ
した。

『エル・トポ』がニューヨークのアンダーグラウンドな界隈
で圧倒的な評価を得たされた次の作品ということで、まあ張
り切ってたんだろうね。イメージの奔流である。濁流、と言
い換えてもいいが。熱量はすさまじいものがある。タブーな
んて俺にはないもんね、という「いきり」が露悪的といえな
くもないが、まあそのへんは浅田彰がウンベルト・エーコと
かを援用してうまく解説してくれそうな感じである。感想と
して丸投げすぎるか…。

「風船にくくり付けて何かを空に飛ばす」という描写が、こ
れまで観た3作に必ず出て来る。何かあるのかね。あと火で
燃やすことで何かを浄化する、というモチーフ。

そして、ついに伝説の映画『エル・トポ』……。

                                                       6.4(月) 早稲田松竹


2018年6月14日木曜日

エンドレス・ポエトリー


☆☆☆★★  アレハンドロ・ホドロフスキー   2017年

前作のエンディングから出発したフィルムでは、そこで中心に
据えられていた父親との葛藤は脇においやられ、今作において
若きホドロフスキー青年は"詩"に夢中なのであった。そう、あ
の言葉の詩である。繰り返し問いかけられるのは、詩はいかに
して可能か、というようなわりと形而上学的な命題であり、そ
れだけ聞くとゴダールやヴィスコンティのよう。けれど夢と現
実のあわいのような物語を通すと、それでも俺は詩が好きなん
だ! 詩は不滅だ! という詩人でもあるホドロフスキーの叫び
にもしっかりと聞こえるのである。
前作よりも観やすく、時間の経つのも早かった。この爺さん、
まだ進化しているのか…。

若きホドロフスキーを翻弄するステラという怪物みたいな女が
出て来るのだが、なんといつもオペラ調でセリフを歌いあげる
母親役のパメラ・フローレスの一人二役だったとのちに知り、
驚愕。画像の赤毛がステラ。

                                                         6.2(土) 早稲田松竹


2018年6月10日日曜日

リアリティのダンス


☆☆☆★   アレハンドロ・ホドロフスキー  2014年

ホドロフスキー初体験!
『エル・トポ』はじめとにかく「カルト映画の祖」と聞いて
いるので、もっととっつきにくいものを想像していた。しか
し昼寝もばっちりだったせいか、2本立てで一睡もせず(珍
しいことです)。 すぐ服脱いですっぽんぽんになるので、
その度にビックリして眠くなる暇がないということかもしれ
ないが。

ホドロフスキー自身が案内役を務め、自伝的なストーリーを
進行させていく。強圧的な父親との葛藤という大きな主題が
あり、そのまわりに色々へんてこりんなモノ・ヒトがわんさ
か登場する。思ったより観やすいのだけど、音楽がけっこう
主張してきて、ちょっとうるさいというか過剰だと思った。

しかし初めて知ったが、ホドロフスキーの同族経営はすごい。
主役に自分の息子のブロンティス、クリストバルという息子
も奇妙な行者の役で出演し、音楽は息子のアダンが担当。
そして衣装・美術は妻のパスカル・モンタンドン=ホドロフ
スキーとのこと。この脈々とした血の濃い感じも、ちょっと
ガルシア=マルケスみたいである。

                                                        6.2(土) 早稲田松竹


2018年6月6日水曜日

ファントム・スレッド


☆☆☆★★  ポール・トーマス・アンダーソン  2018年

ダニエル・デイ=ルイスの引退作ということで話題だが、
やはり映っているだけで絵になる俳優である。演技まで
した日にゃあもう、その存在感が映画全体を覆いつくし
ているといっていいだろう。
しかもファッション・デザイナーの話である。細心の注
意が払われたであろう衣装には一分の隙もなく、常に
(毒きのこで弱ったとき以外)完璧なたたずまい。

今回も音楽担当はジョニー・グリーンウッド。
私はこのひとの劇伴がほんとに良いのか、よくわからな
いのだけれど…。でもPTAがこんなに重用するんだから
良いんだろう、うん、まあ、格調高いしな…という感じ。

                                             5.27(日) 新宿武蔵野館


2018年6月4日月曜日

読書②


まだ②だなんて、ひどいな。
買った本ばかりが堆く積まれていく…。


『映画を撮りながら考えたこと』
是枝裕和 著   ミシマ社

半分ぐらいの所で止まっていたのが、めでたい受賞の
ニュースを見て、おお、そうであったそうであったと
また読み始め、今度は読了。

初期のテレビドキュメンタリーから、この時点での最
新作『海よりもまだ深く』まで、1作づつ制作の経緯
や過程、思いをつづった、率直なエッセイになってい
る。これだけ作家性を出しても観客が動員できて、な
おかつ映画祭で話題にもなるひとの存在はやはり貴重
というべきだろう。作品は好きなのもそうでないのも
あるが。個人的には一番好きかもしれない「ゴーイン
グ・マイ・ホーム」は本人も納得のいく出来だったら
しく、よかった。視聴率は、まあ…。派手さはこれっ
ぽっちもないドラマだったからね。

しかし生き方全般が、やはり園子温とは全然違って、
まともである。当たり前か。









『ウィステリアと3人の女たち』
川上未映子 著   新潮社

久しぶりの小説で、自然と手がのびたのはまたしても川上
未映子。うーん。無意識にひいきしている。美人だからか。
でも良い短篇集だった。

表題作も妄想世界の広がり方が未映子さんらしくて良いが、
「彼女と彼女の記憶について」「シャンデリア」のほうが
気に入った。会話よりも地の文で勝負するようになってき
ているのは、村上春樹と同じ道筋をたどっている気がする。
心なしか、文章も似てきているような…。