2018年9月26日水曜日

ビューティフル・マインド


☆☆☆     ロン・ハワード    2002年

私はあまり好みではなかったが、いろいろ他のひとの
感想を見るとこのイビツさを歓迎しているひとも多い
ようだ。変人の天才数学者が奇行を重ねながらも研究
に打ち込み、やがて周りの支えもあって歴史に残るよ
うな発見を成し遂げる、というようなハートフルな話
を想像していると、それは見事に裏切られる。思うよ
うに研究成果を出せない主人公は、やがて精神に変調
を来たしていくのだが、歯車は徐々に狂いだしていっ
たのではなく、そもそもの始めから狂っていたのだと
いう話になってきて、私はおいおいちょっと待てよ、
と思ってしまった。映画が公開された当時には、 この
"ナッシュ均衡"を見出した主人公のモデルの数学者は
まだ存命だったというからなかなかすごい。こんな描
かれ方をしてどう思っただろうか。せめて死んでから
にしてくれ、と私なら思うだろう。

しかしこれがアカデミー作品賞・監督賞か…。

                                           9.6(木) BSプレミアム


2018年9月20日木曜日

【LIVE!】 ハンバート ハンバート


FOLK IS MY LIFE 2018


                           9.8(土) 日比谷野外音楽堂


デビュー20周年を記念するツアー。
ツアー続行中なのもあるのだが、探してもセッ
トリストが出て来ないのでどっちみち載せられ
ない。
たしかに家族連れも多く、のんびりビール飲ん
でるカップルなんかが多数を占める客席で、誰
もせっせとセットリストをメモしたりしないの
かもしれない。それはそれで健全だとも思う。

弾き語りとトークで前半が終わり、キーボード
とヴァイオリンがセットされたので、そうか、
サポートメンバー入れてやるんだな、と思った
らそれらの楽器もすべて佐藤良成が演奏するの
だった。足でバスドラを刻み、ヴァイオリンを
弾きながら歌っていて、その器用さには感心す
る。客として来ていた又吉がステージに上げら
れて、ヴァイオリンに合わせてアルプス一万尺
をやっていた。

曲よし、トークよし、夏の終わりの野音もよし
で、言うことなし。


2018年9月11日火曜日

恋のエチュード


☆☆☆★★  フランソワ・トリュフォー  1971年

二人のイギリス人の姉妹に恋をするジャン・ピ
エール=レオー。優美な鷹のようなレオーが良
いですね。ナレーションが多用され、どんどん
物語が進んでいく。素っ気ないほどに…。

この邦題を付けたのも山田宏一だろう。
原題の"Les Deux Anglaises et le Continent"
はどういう意味か分からないが、英題が"Two
English Girls"だから、そのぐらいの意味なの
だろう。味も素っ気もない原題に比べれば、
「恋のエチュード」の甘やかさ、軽やかさが
際立つというものだ。

                              8.24(金) シネマヴェーラ


2018年9月4日火曜日

読書⑤


『モロッコ流謫』
四方田犬彦 著   ちくま文庫

次に海外に行くならモロッコに行きたいと
ぼんやり思っており、そういうときの常と
して、まず旅行記から入る。
ただ、読んでみると本書は旅行記というよ
りは、モロッコのタンジェに居を構える作
家で音楽家でもあったポール・ボウルズと
の邂逅、そしてその評論に多くの紙数を費
やしている。わたしは映画化された『シェ
ルタリング・スカイ』すらまだ観ていない
のでまったく不案内なのだが、あいかわら
ず(といっていいのか)四方田センセイの
評論は「そそる」巧さがあるので、思わず
アマゾンで高額な本をクリックしてしまい
そうになる。

かつてフランス領だっただけあって、他に
出てくる作家はジュネ、カミュなど。ジュ
ネの墓を訪ねる文章もなかなか興味深い。
そして短いながらも、平岡千之という、外
交官をしていた三島由紀夫の弟との話もな
にか印象に残る。








『オンブレ』
エルモア・レナード 著  村上春樹 訳

なんだか最近偶然ながらよく西部劇を観てい
るのだが、知らずに春樹の新しい訳書を読ん
だらこれまた完全な西部小説だった。

"オンブレ"とはスペイン語で「男」の意との
こと。ラッセルという、物語の肝となる登場
人物のあだ名である。荒野の非情さを知り尽
くした若者である彼は、どんな苦境に陥ろう
とも、どんな足手まといを抱え込むことにな
ろうとも、ただただ自分の中の掟に従って行
動する。無駄口をたたかず、無駄な動きをし
ない。なるべく多くの人間が生き延びるため
最善を尽くす。いわゆる「クールでタフな」
人物なのである。