2018年12月30日日曜日

【LIVE!】 サニーデイ・サービス


 サニーデイ・サービスの世界 追加公演 "1994"


今年の5月に亡くなってしまったドラムの丸山
さんを追悼する側面の濃いライブであった。

まったく飾り気のないステージに、曽我部恵一
(Vo/Gt)と田中貴(Ba)のふたりだけ。ほん
とに最初から最後までふたりだけで、ほとんど
MCもなく3時間、推定35曲(!!)を丁寧に、慈
しみながら演奏してみせた。ギターとベースだ
けでリズムを合わせるのは難しいと思うが、ふ
たりとも常に頭の中で鳴っている丸山さんのド
ラムに合わせているようで、しかもかなり精度
の高い演奏だったのにはしみじみと感動してし
まった。

ベストアクトは「ふたつのハート」。この曲好
きなんで、やってくれて嬉しかった。

                     12.28(金) 渋谷CLUB QUATTRO


2018年12月29日土曜日

読書⑧


『ソラリス』
スタニスワフ・レム 著 沼野充義 訳 ハヤカワ文庫

モロッコまでの長いフライトで何を読もうかとウキ
ウキ考えて、『ソラリス』を選んだ。余談だが往路
は偏西風の向かい風だったせいなのか、トランジッ
トのアブダビまでが12時間、アブダビからは11時間
かかって、ようやくカサブランカに到着。わたしは
機内で映画を観ないので、その時点で『ソラリス』
は読み終わっていた。

巨大な"海"に覆われた惑星ソラリスのステーション
に主人公がたどり着く。が、ステーションは静まり
かえっており、誰が迎えに出て来るでもない。
あとあと分かってくるのは、みなソラリスの"海"が
現出させる幻に精神を蝕まれ、ある者は自室に引き
こもり、ある者は精神に変調をきたしているのだ。
いったいソラリスの"海"とはどの様な存在なのか…。

奇妙なラブロマンスでもあるこのSF小説は、たしか
に間に長々と続くソラリスに関する学術的な論争の
歴史など、退屈と言われても仕方ない部分を含みな
がらも、そりゃあ人を惹きつけてやまないだろうな
という魅力にも満ちている。言ってしまえば「ハリ
ー」の造型が成功しているのがこの小説の勝因であ
る。









『小津ごのみ』
中野翠 著  ちくま文庫

小津映画に出て来る障子紙、襖やカーテンの柄、湯
呑みや花瓶などの小物から小津の"このみ"を読み取
り、小津安二郎ほど画面を自分好みの物で埋め尽く
した映画作家もいないということを証明している。

最近小津映画を何本か続けて観たので記憶も新しく、
これまであまり注目されてこなかったであろう観点
からの小津映画論としておもしろく読んだ。



カリートの道


☆☆☆★  ブライアン・デ・パルマ 1994年

デ・パルマの美学というのがなんとなく身に
染みてきた4作目。あくまで私が観た4作目で
あって、制作順ではない。

アル・パチーノを主演に迎え、闇社会から足
を洗う決意をしたマフィアが、本人の意思と
は逆に、色々な不運も手伝って結局はまた終
わりなき暴力の連鎖の中に引きずり込まれて
いくという話。でも、初っ端からチンピラを
皆殺しにしちゃって、あれで司法の手が伸び
て来ないのが不思議なんだが。

秀作『アンタッチャブル』からは6年、この
フィルムの次に手掛けるのは『ミッション・
インポッシブル』となる。ハッとさせられる
カットもあるにはあるが、全体的にテンポが
よくないように感じる。
ラストも、うーん。アイツいつになったら出
て来るんだろう、ずいぶん遅いなーと思って
たら…。普通もうちょっと早く落とし前付け
に来るだろうよ。

ショーン・ペン名前あったけど、全然出て来
ないなー、と思ったら! あの映画史に残り
そうな珍妙な髪型はいったいどうして生み出
されたのか…。

                             12.19(水) BSプレミアム


2018年12月26日水曜日

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン


☆☆☆★★★  スティーヴン・スピルバーグ 2003年

天才詐欺師・レオ様とそれを追う堅物のFBI
捜査官トム・ハンクスの、追う者と追われる
者の間にいつしか生じた不思議な友情の物語。
どうしたってルパンと銭形警部を思い起こさ
せる。るぱーーーーん。

「どうせ面白いんだろ?」と思いながら観始
めて、オープニングのアニメーションの洒脱
さにいきなり「参りました」という感じ。
すっかり観念して、あとは2時間25分、スピ
ルバーグにおまかせ、である。

ハイライトはやはりマイアミ空港からの脱出
劇ということになるか。目立つことによって
目立たなくする、禅の公案のようであるが、
美女を侍らせて堂々と空港を闊歩するレオ様
は痛快である。

                                     12.16(日) BSプレミアム


2018年12月25日火曜日

レオン


☆☆☆★★★  リュック・ベッソン  1995年

ちょっと甘いかな。映画も甘ければ採点も甘い、
と言われそうだが、その甘さもひっくるめて、
実に愛すべき映画だと思う。
ジャン・レノとナタリー・ポートマンのファッ
ション、唐突にやってくる圧倒的な暴力、孤独
な者どうしの心のふれあい…。ここには非凡な
もの、凡庸なもの、奇をてらったもの、素直な
もの、荒唐無稽なものが、いかにもさりげなく、
しかしわざとらしく雑多に混在しているように
思う。

しかしジャン・レノを殺しの腕は第一級だが字
も読めない心根の優しい殺し屋にキャスティン
グしたひとのキャスティングの腕こそ、まさに
第一級である。あ、でも『サブウェイ』のジャ
ン・レノも狂っててよかったから、アテ書きな
のかな。そしてナタリー・ポートマンのあの目
つき。にらまれたら二晩うなされたっておかし
くない。

                                      12.11(火) BSプレミアム


2018年12月21日金曜日

souvenir the movie ~Mariya Takeuchi Theater Live~


☆☆☆★     2018年

職場の先輩がふたりも「観たほうがいいよ」と
言ってきたので、さいわい上映期間も延長され
たことだし、観て来た。2800円は決して安く
ないが、確かに観る価値はある。

竹内まりやの2000年、2010年、2014年のライ
ブ映像を取り交ぜて、間にインタビューが挟ま
る。ライブは2000年のものがほとんどを占めて
いる。ドラムはまだ青山純。サンソンの追悼特
集で山下達郎は、青山純のドラムの何が素晴ら
しいって「重い」ことが素晴らしいと語ってい
た。たしかに2010年以降の小笠原拓海と比べる
と、キックやタムのズンという響きが格段に重
いのが分かる。

そして、こう言っては失礼にあたるかもしれな
いが、2000年の竹内まりやは若い! 「カムフ
ラージュ」の妖しい色気にも悶絶させられたが、
やはり結局は「プラスティック・ラヴ」~「駅」
の流れにとどめをさす。圧巻の演奏と歌唱。参
りました。

                                        12.10(月) 渋谷TOEI


2018年12月16日日曜日

ボヘミアン・ラプソディ


☆☆☆★    ブライアン・シンガー  2018年

2か月ぐらい前に劇場で予告篇を見た時は、はーまた
ありきたりな伝記映画がひとつ増えるのか、ぐらいに
しか思わなかった。
観終わっても、その印象はたいして変わらず。まあ、
ありきたりな伝記映画と言えなくもない。しかしそれ
を補って余りある館内に響くフレディの圧倒的な歌声、
その壮絶な人生、さらに追い打ちをかけるブライアン・
メイの限りない優しさ…。わたくしもご多分にもれず、
最後は目から正体不明の水が垂れてきてしまいました。

                                       12.9(日) TOHOシネマズ新宿


2018年12月13日木曜日

カサブランカ


☆☆☆★★  マイケル・カーティス  1942年

モロッコに行くにあたり、それこそ10年以上
ぶりに再見した。
当時、大学生のわたしにはこの表立たないダ
ンディズムは理解できなかったのか、ぜんぜ
んおもしろくなかった記憶しかないのだが、
今観ると意外におもしろい。
ボガートはちょっとウジウジしている時間が
長いので損をしている気もする。ピアニスト
のサムとイングリッド・バーグマンの会話が
泣かせる。
モロッコらしい、狭い道の両側に店が建ち並
んだ中をひとが行き交う風景は、申し訳程度
2シーンぐらいしか出て来ない。モロッコ人
にいたってはひとりたりとも出て来ないとは
四方田センセの指摘である。まあ結局これは
徹頭徹尾ハリウッド映画なのだ。

                             11.18(日) BSプレミアム


2018年12月11日火曜日

読書⑦


『女の一生』
モーパッサン 著  永田千奈 訳  光文社古典新訳文庫

ジャンヌが修道院(神学校?)を卒業して家に帰る場面
から始まる、ジャンヌの一代記である。

なかなか波乱に満ちた人生であり、かつまた非常に感情
の起伏の激しい女性である。ジャンヌの心情の変化が細
かく語られるのだが、どうも首を傾げざるを得ないよう
な描写もあり、ついて行きかねた部分も多かった。

若き日の大江健三郎がモーパッサンを熱心に読んでいた
という記述から、ふと本棚に眠っていた本書に手が伸び
たわけである…。










『モロッコの恐竜』
  ある青年海外協力隊員が夢を掘りあてるまで

石垣忍 著   築地書館

モロッコに行くにあたり、読んでみた。
80年代はじめに、青年海外協力隊としてモロッコに赴任し、
フィールドワークと博物館の展示づくりに奮闘した3年間の
記録である。ほんとうに「苦闘」の連続の中、にも関わらず
日々、なぜ自分はここに来たのが、ここで何ができるのか、
青年海外協力隊という仕組みが本当に途上国のためになるの
か、いつも思索を深めていて、しかも思索の跡がとても明晰
なのである。そしてなんだか楽しそうなのである。まあ人柄
なのだろう。文章もうまい。とてもおもしろかった。






2018年12月8日土曜日

2018年12月7日金曜日

Morocco ①


 モロッコに行って来ました。


      【Marrakech】







      【Tanger】










2018年12月6日木曜日

Ryuichi Sakamoto : CODA


☆☆☆  スティーヴン・ノムラ・シブル  2017年

病気を経て、『レヴェナント』『母と暮せば』の
劇伴をやり遂げ、『out of noise』以来8年ぶりの
アルバム『async』を完成させるまでの坂本龍一
のドキュメンタリー。

まあそれ以上でも以下でもないというか、いい音
を採取できた時の教授の、少年のような笑顔は印
象的だが、目新しいのはそれぐらいか。NHKのド
キュメンタリーで見たような場面ばかりだった。

                                              11.13(火) Eテレ


2018年12月2日日曜日

東京暮色


☆☆☆★    小津安二郎    1957年

デジタル修復版で鑑賞。
主演は笠智衆、原節子、有馬稲子。

話はとことん暗い。こんなに救いのない小津映画と
いうのは記憶に無いので、たぶんいちばん暗いのだ
ろう。山田五十鈴が雀荘のオーナーの奥さんで出て
来るのだが、こんな大物出て来てただの雀荘の奥さ
んなわけない、と思ってたら案の定、ものすごく重
要な役であった。

                                         11.5(月) BSプレミアム