2019年4月27日土曜日

眺めのいい部屋


☆☆☆★★  ジェームズ・アイヴォリー  1987年

もうストーリーが完全に「いかにも」なイギリス
の文藝映画なんだけど、キライじゃない…。

最初はただ無礼で粗野な男だったが、まっすぐな
愛情にだんだんと惹かれていって、身分の違いを
乗り越えて結ばれる…。これってジェーン・オー
スティンの小説とまったくいっしょですね。そし
て私はジェーン・オースティンがたまらなく好き
です。

主役のヘレナ・ボナム・カーターが可愛い。いま
でいうとクロエ・グレース・モレッツに似てる気
がする。この後も文芸映画にいっぱい出て、その
他の出演作には『ファイト・クラブ』『レ・ミゼ
ラブル』など、観たことあるやつもある。そして
いまはティム・バートンのパートナーなんですな。
ティム・バートンって1本も観たことないけれど。

本作には若きダニエル・デイ=ルイスも出演。の
ちの怪優ぶりの片鱗をのぞかせている。

                                      4.13(土) BSプレミアム



2019年4月22日月曜日

愛しのアイリーン


☆☆☆★     吉田恵輔    2018年

去年3本観て、私が絶大な信頼を寄せるに至った
吉田恵輔の最新作。

ヤスケンが農村のパチンコ屋に勤めるあまり冴え
ない男で、主演である。手痛い失恋の末に、なか
ばヤケになってフィリピンのお見合いツアーに参
加し、父親の葬式の真っ最中にフィリピン妻を連
れて帰ったことで巻き起こる大騒動。
木野花が口うるさいがヤスケンを溺愛している母
親を好演、フィリピン人女優も多数出演。みんな
いい味出している。そして『3月のライオン』に
引き続き、伊勢谷くんが今度は人身売買のブロー
カー役で活き活きと出演。すっかり胡散くさい役
が多くなってるのね…。

放送禁止用語を連呼するのは最初はおもしろいが、
繰り返されるうちにだんだん露悪的なものが鼻に
つき始めるのもたしか。ヤスケンを2時間ずっと
観るのもツライといえばツライ。

                                        4.9(火) 早稲田松竹


2019年4月16日火曜日

生きてるだけで、愛。


☆☆☆     関根光才     2018年

早稲田松竹にて、2018年の見逃し邦画を2本。

趣里と菅田将暉が主演した本谷有希子原作の映画。
監督は長篇映画は初めてとのこと。
鬱で一日中寝ている女の子と、ゲスニックマガジ
ンで下衆な芸能ゴシップの量産に酷使されている
男との、いかにも"今"風な恋愛模様である。
本谷有希子だけあって、突拍子もないことを言っ
たりやったりするのだが(おもに趣里が)、どう
もセリフが浮いているというか、言わされてる感
がまだ若干残ってるというか、セリフが充分に身
体化されていないように感じてしまった。あと、
俺が菅田将暉だったら、面倒くさすぎてとっくに
別れてると思うわ…。

音声でいうと、整音が悪い。トーンもそろってな
いし、重要なセリフが聞き取りづらいことがあっ
た。

                                     4.9(火) 早稲田松竹


2019年4月13日土曜日

チア☆ダン

   ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~


☆☆☆      河合勇人     2017年

「なつぞら」も遂に始まったということで、深夜に
放送していたこの映画を録画して鑑賞。

ストーリーについて、特に言いたいことはない。
挫折を乗り越え、仲間とともに夢をつかみ取る青春
映画であって、それ以上のものではない。
規格外なのはやはり、主演の広瀬すずである。この
身体性、予想の遥か上を行くもので、正直驚いた。
いくら若いからって、いくら練習したからって、あ
そこまで踊れるものではなかろう。一見の価値はあ
る。おまけに可愛い。

                                                3.28(木) TBS


2019年4月7日日曜日

読書③


『いなごの日/クール・ミリオン ナサニエル・ウエスト傑作選
ナサニエル・ウエスト 著  柴田元幸 訳  新潮文庫

ウエストはアメリカの作家。かなり変わった人生を歩んで
4つほど主な作品を書き、37歳の若さで自動車事故で亡く
なったとのこと。
この本にはハリウッドを舞台とした「いなごの日」と、と
びきりぶっ飛んだアンチ・ビルドゥングスロマンともいう
べき「クール・ミリオン」、他に掌編2つを収める。
「いなごの日」は「クール・ミリオン」を読んだ今となっ
ては、だいぶまともな小説に思える。奇妙な三角関係が描
かれ、女優志望のフェイという女を中心とした群像劇のよ
うな感じもあり、読みやすいし、適度に奇妙である。
問題の「クール・ミリオン」は、サブタイトルに「レミュ
エル・ピトキンの解体」とあり、まあたしかにその通り。
純真で他人の狡猾さに気付かないレミュエル・ピトキンは、
困っているひとを助けようとしてはその都度、悪い奴に阻
まれて目的を達することはできず、かつそのたびに体の一
部を失っていく(解体されていく)のである。これは「た
とえ賢かったりハンサムだったりしなくても、真心を持っ
た者がいつか報われる」というような類型的な物語を徹底
的に裏返したもので、ピトキンが一生懸命に行動すればす
るほど状況は悪くなり、歯やら足やら目やらを失っていっ
て、最後はとうとう殺されてしまう。アメリカ版『お伽草
紙』と名付けたい。









『アムステルダム』
イアン・マキューアン 著  小山太一 訳  新潮文庫

ふと時間ができて、イギリスの小説を読みたいと思って
手にとった。私の好きな小説にはイギリスのものが多い。
マキューアンは1948年生まれというから、春樹とほぼ
同年代である。

モリーという知的で魅力的な女の葬儀から始まるこの物
語は、なんと毒気に満ちていることだろう。皮肉とかエ
スプリとかの生半可なものではなく、毒そのものである。
ただ、いかにも頭で考えた線の細い小説という感じもし
て、「小説家は体が資本」と言い続けている春樹とは対
照的にも思える。
しかしこの毒気には、またあてられてみたい。本棚には
『贖罪』も控えているので、また時間ができたら読むこ
とにする。