2026年9月19日土曜日

ハッシュ!

 
☆☆☆★   橋口亮輔    2002年

ゲイカップルと一人の女性の物語。
高橋和也と田辺誠一、いろいろありがなが
らも平穏に付き合っていた二人だが、ある
日蕎麦屋で会った"変な女"こと片岡礼子か
ら突然、子どもを作って3人で育てて行か
ないかという突拍子もない提案をされる。
今でこそめちゃくちゃ奇異にも感じられな
いが、2002年当時は、かなり異色の映画で
あったろう。その先駆性もさることながら、
物語上ことさらにゲイカルチャーを強調す
るのではなく、あくまで「家族の形の可能
性」のひとつとして日常の中でこの3人を
描こうとしている点にも、橋口監督の冷静
な視線を感じられる。

田辺誠一をストーキングする同僚役のつぐ
みの怪演がなんともうれしい。『月光の囁
き』に出たばかりの頃らしい。
主題歌の"Hush little baby"も小気味いい。

                                    8.20(木) テアトル梅田




2026年9月16日水曜日

マイ・プライベート・アイダホ

 
☆☆☆  ガス・ヴァン・サント  1991年

デジタルリマスター版を鑑賞。
「ガス・バン・サント監督がキャリア初期に手
がけ、リバー・フェニックスとキアヌ・リーブ
スの共演が話題を呼んだ青春ロードムービー」
ということでほうほうと興味を惹かれて梅田ま
で出てきたわけだが、短くいうとなんとも消化
不良な映画であった。

ナルコレプシーを抱えた男娼役のリバー・フェ
ニックス。ホアキン・フェニックスのお兄さん
であり、23歳という若さで死去したそれはもう
伝説的な俳優である。非常にかっこいいのであ
るが、ナルコレプシーっていう設定…要る?
話を進めるうえでの制作側の都合のように思え
てしまったが。
ちなみに、シェイクスピアの戯曲『ヘンリー四
世』『ヘンリー五世』に着想を得ているとのこ
と。読んでないのでどのへんが、とかは分から
ないが…。

                                       8.20(木) テアトル梅田




2026年9月13日日曜日

ぐるりのこと。

 
☆☆☆★★★   橋口亮輔  2008年

4Kリマスター版で鑑賞。
木村多江とリリー・フランキーが夫婦役という
のは意外なようでありながら、ふたりの間に流
れている空気、過ごしてきた時間までもが垣間
見えるような演出のすばらしさで、すっかりほ
んとの夫婦のように見えてくる。

夫婦ははじめての子どもの死という出来事に深
い衝撃を受け、妻は鬱状態に陥っていく。深み
に沈み込んでいくような夫婦と、当時の社会的
事件(池田小、宮崎勤、オウムなど)の刑事裁
判とを往復しながら進んでいくにあたって、法
廷画家という主人公の職業が選ばれたのであろ
う。しかし取ってつけたよう感じはしない。
その前段やサブキャラクターをしっかりと描い
ているからで、これもまた監督の手腕というべ
きだろう。傑作である。

                                          8.9(日) テアトル梅田




2026年9月10日木曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN

 
 「KYO-MEIワンマンツアー」~爆音灼熱浄土~

 1. 野生の太陽
 2. 孤独を繋いで
 3. ビリーバーズ
 4. 幸福な亡骸
 5. ユートピア
 6. 閉ざされた世界
 7. 修羅場
 8. 戯言
 9. コワレモノ
10. いつものドアを
11. I believe
12. 輪郭
13. 夏の残像
14. 初めての呼吸で
15.  刹那と悪天
16. 魂のアリバイ
17. 蛍
18. コバルトブルー
19. 太陽の花

Encore
 1. 刃
 2. 導火線

                       8.1(土) 神戸ハーバースタジオ

住む場所が変わったので、これからは関西圏
のライブに足を運ぶことになる。
神戸のライブハウスはもちろん初めて。
バックホーンもここでやるのは初とのこと。

「爆音灼熱浄土」と銘打たれたツアーで、夏
の曲が多い選曲である。同じ試みは何年か前
のツアーでもやっていたが、聴くのはその時
以来という曲も多い。バンドも真夏のツアー
の熱気に手ごたえを感じたようである。

しかし白眉というか、待ちに待った瞬間とい
うか、このツアーは個人的には"初めての呼吸
で"を17年ぐらいぶりにやったツアーとして記
憶されることになろう。この曲のイントロは
ベースソロから始まるのだが、聴いた瞬間は
大げさでなく胸が震えた。この一見素っ気な
いように見えて素晴らしい曲を、どうしてツ
アーでもマニアックヘブンでもやらないのか、
私は不思議でならないのである。
17年ぶりに聴いた"初めての呼吸で"は、やは
り素晴らしかった。もちろんベストアクトで
ある。

2026年9月8日火曜日

ヌーヴェルヴァーグ

 
☆☆☆★★  リチャード・リンクレイター 2026年

『勝手にしやがれ』の制作過程を描いた
痛快作(と呼びたい)。
撮影時、ゴダールがジーン・セバーグか
ら呆れられていたのはたぶん事実だろう。
撮影日程よりも「気分」を優先するゴダ
ールにプロデューサーが憤っていたとい
うのもいかにも有りそうなことだ。
しかし決して自分を曲げずに、シニシズ
ムとペダントリー、そして映画への純然
たる愛にひたすら耽るゴダールの姿に、
思わず喝采を送りたくなるのである。

                7.24(金) ヒューマントラストシネマ渋谷




2026年9月3日木曜日

トイ・ストーリー5

 
☆☆☆  アンドリュー・スタントン 2026年

1~4を横目で飛ばし飛ばししか観ていない
ので、シリーズの大きな流れの中で評価す
ることはできかねるが、近年のおもちゃ市
場の変化を受けてすかさずパッドのキャラ
クターを出してくるところが、さすがに秀
抜であるとは思う。
ストーリーとしては、まあ普通か。
とりたててよく出来てるとか、意表を突か
れたところはなかったような気がする。
バズの指ではリリーパッドが反応しないの
で、飼われてるトカゲの指を借りて操作し
ている場面はおもしろかった。

                              7.20(月)TOHOシネマズ池袋




2026年8月31日月曜日

黒牢城

 
☆☆☆★★    黒沢清    2026年

信長に謀反を起こした荒木村重。苦境の中、
どのように自分と家臣たちが生き延びられる
か、中間管理職のような戦国武将を演じるの
は本木雅弘である。織田軍に囲まれ、籠城し
ている城内ではさまざまな事件が起こるが、
使者として交渉しにきた黒田官兵衛(菅田将
暉)を地下牢に閉じ込めたことで、謎解きと
頭脳戦の幕が開く…。

時代劇のミステリというのが少し流行りつつ
あるのだろうか。『木挽町のあだ討ち』もなか
なか好評だったと聞く。
地下牢で鎖につながれた男が謎を解くという
ことで、もちろん『羊たちの沈黙』がベース
にあるのだろう。ほかにも『蛇の道』『スパ
イの妻』を思わせる描写があり、純粋なミス
テリ的謎解きを求めていたひとがどう思った
かは知らないが、わたしはウキウキと心弾ま
せながら鑑賞できた。意外にユーモアも多め
で、黒沢清の自在な演出を堪能。吉高由里子
は黒沢清の映画には初出演か。これも意外。

『永い言い訳』撮影時の西川美和によるエッ
セイに出てくる本木雅弘は、演技に対して熟
慮と迷いを重ねまくるタイプで、割り切りが
早く撮影もだいたいワンテイクで終えるとい
う黒沢清と相性が合ったのかどうかは気にか
かるところである。ずっと悩み続けている役
柄だったから、かえってよかったのかもしれ
ないが。

                         7.15(水)TOHOシネマズ池袋




2026年8月29日土曜日

Michael/マイケル

 
☆☆☆★  アントワン・フークア  2026年

小学生のときからのマイケルファンとしては、
映画の出来にたいして期待はできなくても、
観ないわけにはいかない。
予想通り内容はペラいというか、父親との確
執を軸にしたエピソードに新鮮味はなく、単
なるサクセスストーリーと言われればそれま
でである。例のスキャンダルはほとんど描か
れることはなかった。

それでも超人的な歌とダンスを再現したシー
ンはすばらしかったと思う。幼少期と青年期
のマイケルをそれぞれ演じたジュリアーノ・
バルディとジャファー・ジャクソンには惜し
みない拍手を送りたい。

                               7.9(木) TOHOシネマズ渋谷




2026年8月19日水曜日

急に具合が悪くなる

 
☆☆☆★★   濱口竜介   2026年

傑作を連打している濱口竜介。
プレッシャーは当然感じているのだろうが、
本作でも大胆に観客の想像を超えてくる。
3時間16分の長さにはいまさら驚かないも
のの、まずはパリが舞台のまったくのフラ
ンス映画であることに驚かされる。セリフ
はフランス語と日本語が8:2ぐらいで飛び交
い、混じりあい、溶け合っていくようでも
ある。資本主義に関する長々とした議論が
延々と(フランス人らしく!)続いたかと
思えば、劇中劇の独り芝居がおごそかに始
まったりもする。
ヴィルジニー・エフィラと岡本多緒、役名
"マリ"のふたりが主演。独り芝居を演じる
長塚京三と自閉症の青年を演じた黒崎煌代、
物語の要ともなる厳格な看護師ソフィがす
ばらしかった。
介護施設の施設長を務めるヴィルジニーが
職場に取り入れようとしている"ユマニチュ
ード"。私は初めて知ったが、人間の尊厳を
守りながら介護をしようという概念だとい
う。もともとは往復書簡という形式の原作
を映画にするにあたって、このユマニチュ
ードが重要なファクターとなって映画が動
き出したという。

演出によって役者同士の間に独自のマジッ
クを生む手法は『ドライブ・マイ・カー』
のなかの『ワーニャ伯父さん』の稽古の場
面でも垣間見られたが、本作でも幾度かマ
ジックは生まれていたように思う。少なく
ともソフィをヴィルジニーがインタビュー
する場面にはそれを感じた。

                      7.2(木) Bunkamuraル・シネマ




2026年8月15日土曜日

ナイトフラワー

 
☆☆☆★★    内田英治   2025年

故あって2度目の鑑賞。
やはり突拍子もない話のようで細部は
よく出来ており、2度目もじゅうぶん楽
しめた。

                                              6.12(金) Blu-ray Disc




2026年8月12日水曜日

箱の中の羊

 
☆☆☆★   是枝裕和   2026年

「ちょっと先の未来」の設定で、不慮のできご
とにより亡くした息子のクローン的な"ヒュー
マノイド"を家族に迎えた夫婦を描く。
近年のAIの発達ぶりを思うと、2~3年後には
実用化されているかもしれないという予感に
背筋が寒くなるが、最初は気味が悪いと思っ
てもしだいに前のめりになっていく綾瀬はる
かと、後ろ向きで懐疑的な大悟という対比が
想像以上に効果をあげていて、話に引き込ま
れた。
展開はあいかわらず是枝さんお得意の、登場人
物はみんな悩みながらも精一杯にやれることを
やっているが、歯車がうまく嚙み合わないとい
う、やるせない感じ。夫婦間の深まった溝は、
溢れた感情を正直にぶつけ合うことで「違いを
認め合う」という最近よくある収まり方に落ち
着く…と思いきや、近所のヒューマノイド達が
野良猫会議のように空き家に集まって独立国を
作ろうとしているという、村上龍も真っ青の意
外にぶっ飛んだ展開が待っている。是枝さんな
りに小さくまとまらないように考えたのかな、
などと思ってしまった。

                                     6.8(月) TOHOシネマズ新宿




2026年8月9日日曜日

【LIVE!】 ハンバート ハンバート

 
 歌ったり喋ったり ークアトロ篇ー

 1. 一瞬の奇跡
 2. トンネル
 3. 虹
 4. ぶらんぶらん
 5. どこにいてもおなじさ
 6. 試作品第12号
 7. おべんとう
 8. 黄金のふたり
 9. がんばれ兄ちゃん
10. 夜明け
11. 大宴会
12. 教訓1
13. 同じ話
14. ふたつの星
15. ぼくのお日さま
16. バビロン
17. 虎
18. それでもともに歩いていく
19. 国語
20. メッセージ

(Encore)
 1. うちのお母さん
 2. 笑ったり転んだり

                              5.28(木) 渋谷クアトロ

2日連続でライブに足を運ぶのはとてもめずら
しい。いつ以来だろうか…。

ファンになった当初は朝ドラの主題歌をやるこ
とになるなんて想像もできなかったが、もうそ
の大役もしっかりと果たし終えたわけである。
とはいえ気負いのようなものはまったく感じら
れない2人であって、いつも通りすぎるぐらい
いつも通りのライブであった。
ベストアクトは「ぶらんぶらん」。

2026年7月26日日曜日

【LIVE!】 銀杏BOYZ

 
 銀杏BOYZ ツアー2026 『夢で逢えないから☆』

 1. アーメン・ザーメン・メリーチェイン
 2. 若者たち
 3. NoFutureNoCry
 4. エンジェルベイビー
 5. 佳代
 6. 漂流教室
 7. 夜王子と月の姫
 8. 骨
 9. ナイトライダー
10. 恋は永遠
11. パラダイスロスト(新曲)
12. (新訳)銀河鉄道の夜
13. 人間(アナーキー・イン・ザ・夕景)
14. GOD SAVE THE わーるど
15. 夢で逢えたら
16. BABY BABY 
17. ぽあだむ
18. ぼーいず・おん・ざ・らん

(Encore)
 1. 宣戦布告(カバー)
 2. 少年少女
 3. DO YOU LIKE ME

                       5.27(木) LIQUIDROOM恵比寿

1曲目から目がイッてた峯田はギターは投げるわ
SM58でおでこを殴るわ(それはいつものことか)、
挙句はマイクスタンドまで客席に投げて自分がダ
イブするという、荒っぽいライブに慣れていない
私には恐ろしい所業であった。5曲目ぐらいから
打って変わって普通の人格になったが…。
ベストアクトは「夜王子と月の姫」。とはいえこ
の日のハイライトは「夢で逢えないから逢いに来
ました」という言葉とともに歌われた「夢で逢え
たら」であった。まあベストアクトというよりは
みんなで大合唱しただけと言えなくもないし。

2026年7月16日木曜日

ルックバック

 
☆☆☆   押山清高   2024年

マンガに情熱を燃やす二人の少女の青春モノ
として始まった物語が、ある事件を境に不条
理の物語へ変容していく。
全然悪い出来ではないが、この世界を熱烈に
愛すかというとそうはなれない。なぜだろう
と考えてみるに、やはり京アニ事件をモチー
フとしていることに引っ掛かりがあるのだと
思う。作品の中でモチーフとするにはあまり
に悲惨でいまだに生々しい記憶としてある事
件という気がして、消化しきれないというか
消化していいものかどうかも分からない。
是枝さんはこの不条理をどう描くのか、さっ
そく気になってきた。

個人的にはharuka nakamuraの音楽を注意
して聴いていた。優しい音色が印象的な、
いい劇伴だった。

                                               5.20(火) Eテレ




2026年7月12日日曜日

【LIVE!】 小沢健二

 
 月と街のAidade

 1. いつか僕は
 2. ある光
 3. 愛し愛されて生きるのさ
 4. 僕らが旅に出る理由
 5. カローラⅡにのって
 6. ブルーの構図のブルース
 7. 指さえも
 8. 憂鬱
 9. 超能力と無限の藍色
10. 台所は毎日の巡礼
11. 悪女(cover)
12. 神秘的(non fingo)
13. 天使たちのシーン
14. 高い塔
15. 彗星
16. 流星ビバップ
17. アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)
18. 流動体について

(Encore)
 1. ぶぎ・ばく・べいびー
 2. ドアをノックするのは誰だ?
 3. 強い気持ち・強い愛
 4. 薫る(労働と学業)
 5. いつか僕は

                               5.14(木) SGCホール有明

すばらしいライブだったので書くべきことは
いっぱいある気がするが、あまり詳細に書き
留める暇も気力もなく…。
オザケンのライブは単なる「音楽を聴く場」
ではなくなっており、ホイッスルだの離脱!
だのと付帯するものが毎回あるのだが、近年
それがエスカレートの一途を辿っている。
今回も開演前に「Aの封筒を開けてこれを作
れ」だの「Bの封筒の中身を読んでこうして
おけ」だのと、こなしておかなくてはならな
い細かいタスクが多くて苦笑するばかりであ
る。とにかくオザケンの脳内には演出のアイ
ディアがとめどなく泉のように溢れてくるよ
うで、その表現欲求の尽きなさと実行力には
驚くばかり。
もちろん事前のタスクだけでなく、曲の前に
毎回リズムパターンを呈示して、その由来を
語るところから始めるのもおもしろかったし、
過去の自分の声と"共演"するというのも「あ
るようでなかった」演出で、ハッとさせられ
た。
ベストアクトは「指さえも」。初めてライブ
で聴いた。

2026年7月5日日曜日

街の上で


☆☆☆★★★   今泉力哉   2021年

公開5周年を記念して、リバイバル上映されて
いた。おそらく『冬のなんかさ、春のなんかね』
が地上波の普通の恋愛ドラマ(つまり「職業ド
ラマ」ではなく、ということ)としては異例な
ほど話題になったというのもあるだろう。
私はもちろんあのドラマを観てミッシェル・ガ
ン・エレファントを熱心に聴き直しているよう
な状態である。コインランドリーで杉咲花のイ
ヤホンからミッシェルの"blue nylon shirts"が
流れた時は、それこそ雷に打たれたような衝撃
が走った。

それはそれとして、『街の上で』という、あまり
ヒットさせようという気も無さそうなタイトル
のこの映画は、下北沢という街の「趣き」その
ものが主役のような映画である。演劇の街、古
着の街、(おもに貧乏な)若者の街、という5年
前のシモキタのイメージが画面に充溢している
し、登場人物たちからもそういう匂いがする。
こじらせ顔の若葉竜也という主役はいるものの、
その主役はいきなり女に振られ、古本屋の女に
は失言して怒らせ、映画を撮っている女にはぞ
んざいに扱われ、衣装部の女には振り回され…
と思いきやようやく気脈が通じたのか、友達に
なってくれと言われる。この衣装部役の中田青
渚がすばらしい存在感で、「いろいろあったけ
ど全部持って行った」感じになっている。

自分にこういう青春があったわけではないが、
なんだか他人事とも言い切れない、絶妙な懐
かしさと甘酸っぱさと苦さと…。きっと自分
の二十代を思い返すことになる映画である。

                                     4.28(火) テアトル新宿




2026年6月26日金曜日

国宝

 
☆☆☆★★   李相日   2025年

故あって2度目の鑑賞。
やはり冒頭の新年会のシーンが素晴らしく、
永瀬正敏の迫力も相まって一気に物語に引
き込まれる。
中盤以降は、1度目とあまり印象は変らず、
それでいて新鮮さはなくなって最初に受け
た感銘はよみがえらず。この「血か芸か」
という日本人が大好きっぽい究極のテーマ
とはいえ、3時間の大河ドラマを最後まで
見せきる映画的な腕力は確かなものである。
三浦貴大の役割が要所で大きすぎて少し不
自然に感じたが。
歌舞伎と劇伴音楽がミックスされていくと
ころのバランスなどは本当に見事。

                             4.21(火) 角川大映試写室




2026年6月20日土曜日

ナイトフラワー

 
☆☆☆★★    内田英治   2025年

「シングルマザーがクスリの売人になる」と
要約すると荒唐無稽なようだが、内田英治の
手にかかれば自然と引き込まれるリアリティ
を有する秀作となった。闇の世界に一般人が
足を踏み入れてしまうサスペンスであり、プ
ロボクサーとしてもがく日々を送る森田望智
との「バディもの」でもある。殴られた顔を
血だらけにして絶叫する森田望智はさすがの
女優魂。「全裸監督」のコンビ再び、である。

渋川清彦の芝居が最高。好きだわ、このひと。

                                  4.21(火) 角川大映試写室




2026年6月13日土曜日

宝島

 
☆☆☆★   大友啓史   2025年

故あって2度目の鑑賞。
今回は沖縄ことばの字幕は無いバージョン。
一度予習しているので、ことばが分からない
ストレスも誰が誰なのか分からないストレス
も無く、それもあって1度目よりじっくりと
この沖縄の若者たちの戦後史を味わうことが
できた。
ラストの米軍基地でのやりとりがハイライト
ということなのだろうが、二人の議論は平行
線である。米軍基地を出たあとも物語は進む
が、「命より大事なものはない」的なまとめ
方が、190分にも及ぶ壮大な映画に対してい
くぶん安易すぎるというか、手垢がつきすぎ
ているようにも思った。
やはり瀧内公美の演技が出色。

                                         4.21(火) 角川大映試写室




2026年6月7日日曜日

石炭の値打ち

 
☆☆☆★★  ケン・ローチ  1977年

ケン・ローチの60年近くにわたるキャリア
の初期作品のリバイバル上映。傑作である
という評判を聞きつけて駆け付ける。

イギリスの典型的な炭鉱を舞台にしながら、
ドキュメンタリーとフィクションの境を分
からなくした巧みな構成は、まだ若い監督
とは思えないさすがの手際。

第1部「炭鉱の人々(Meet the People)」
イギリス皇太子の視察訪問が決まり、その
準備に右往左往、些細なことにも一喜一憂
する炭鉱のお偉いさん。それに振り回され
る労働者と子どもたち。コメディである。

第2部「現実との直面(Back to Reality)」
一転して、炭鉱の危機管理と人権意識の薄
さを告発する落盤事故を描いた悲劇。細か
いカット割があることでフィクションであ
ることを意識させられるが、本物の炭鉱で
撮影された映像は息詰まる迫真のもの。

                                    4.5(日) 早稲田松竹