2026年5月9日土曜日

Eno

 
☆☆☆  ゲイリー・ハストウィット   2025年

ブライアン・イーノへの関心を持ち続けて
いる者として、この映画は公開時から観た
いと思っていた。
まずどんな映画なのか想像もつかなかった。
なにせ「自動生成システム「Brain One」
を導入。イーノ本人への長時間にわたるイ
ンタビューや500時間を超える貴重なアー
カイブ映像を組み合わせ、鑑賞するたび
に構成や内容が変化する革新的な映画体
験を実現させた」という謳い文句からし
てすごい。鑑賞するたびに構成や内容が
変化する! 想像がつかない。

さて、期待は高まっていたが、ふたを開け
てみると、インタビューと過去映像が繰り
返されるだけ、かな…。この順番がきっと
再生されるたびに変わっているのだろう。
けど、変わったからといってどうってこと
ないような気がする…。

ただインタビュー内容はとても興味深い。
様々な顔を持つブライアン・イーノだが、
やはり数々の名盤にプロデューサーとし
て名を刻んできただけあって、独特のプ
ロデュース手法の話がおもしろかった。
イーノのプロデュースは別に楽器を弾く
わけでもなく、多額の予算を取ってきて
ミュージシャンに最高のスタジオを用意
するわけでもない。
ミュージシャンが生み出す楽曲について
徹底的に対話し、「あるべき方向性を示
す」というのがイーノのプロデュースな
のである。哲学者のようだ、と思ったの
は私だけではないはず。

                                        2.22(日) 新文芸坐




2026年5月3日日曜日

レンタル・ファミリー

 
☆☆☆     HIKARI     2026年

近所にこの映画のポスターが貼ってある店があ
り、どうやら近くでロケをしたらしい。しかも
撮影監督は「火星の女王」と同じ石坂拓郎氏。
興味を持っていたところ、ちょうどよく試写会
が当たったので、九段下まで出かけて行った。

日本でエキストラの仕事をしていたアメリカ人
俳優が、「レンタル家族」で営まれた葬儀に迷
い込んだことをきっかけとしてレンタル・ファ
ミリーのビジネスに関わるようになるという話。
どこか『リップヴァンウィンクルの花嫁』を思
わせるが、展開の巧みさはあちらに数段劣る、
と私は勝手に思った。

「偽の家族」を演じる仕事をしながら、当然
「家族って、なんだろう」という問いに映画は
なっていくわけだが、主演のブレンダン・フレ
イザーはなかなか良い味出してはいるものの、
やはり展開がどこか見え透いているというか
嘘くさいというか、とってつけたようなエピ
ソードの連続である。
まあタダで観れてよかった、ぐらいの感想。

                                             2.11(水) 一ツ橋ホール




2026年4月14日火曜日

リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界

 
☆☆★★   エレン・クラス   2025年

2本立ての2本目も硬派な作品。
第2次大戦中に報道写真家として活躍した実在
の女性をケイト・ウィンスレットが演じる。
だが、こちらはどうも美術が安っぽいというか、
戦場も妙に作り物めいていて緊迫感に欠ける。
引退したのちに若い記者が訪ねてきてしぶしぶ
語り始めるというのも、使い古されている手法
というか、はっきりいって嘘くさい。
物語に入り込めないまま終了。

                                                2.1(日) 早稲田松竹



2026年4月12日日曜日

アイム・スティル・ヒア

 
☆☆☆★★  ウォルター・サレス  2025年

こういう表現が適当かは分からないが、
骨格のどっしりした、良い映画だった。

軍事独裁政権下のブラジル。1971年の
リオデジャネイロが舞台、とのこと。
こんな時代に生まれなくてよかった…
と思うような時代ですね。
理不尽な当局による拘束、そして拷問
により夫を亡くした妻(フェルナンダ・
トーレス)と5人の子どもたちが、いか
にして生き抜いたか。その人生の重み
にふさわしい映画の描き方という感じ
があるので、良い映画だと思ったのか
もしれない。
ウォルター・サレスは『モーターサイ
クル・ダイアリーズ』も良かったです
ね。

                                         2.1(日) 早稲田松竹



2026年3月17日火曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN

 
 マニアックヘブン Vol.17

 1. 世界を撃て
 2. 鎖
 3. サーカス
 4. 天国への翼
 5. ハッピーエンドに憧れて
 6. ディナー
 7. 再生
 8. フラッシュバック
 9. 星降る夜のビート
10. 白い日記帳
11. ソーダ水の泡沫
12. 世界の果てで
13. 砂の旅人
14. フロイデ
15. 警鐘
16. 儚き獣たち
17. イカロスの空

(Encore)
 1. 天気予報
 2. 旅人
 3. さらば、あの日

                    1.25(日) 川崎CLUB CITTA'

最近年始が多くなってきたマニアックヘブン。
2年連続の川崎ということで、遠いので若干
行きたくないが、まあしょうがない。

サーカス~天国への翼~ハッピーエンドに憧
れて~ディナー
という並びはファンにはまさに垂涎なのだが、
知らないひとにはなんのこっちゃだろう。毎
年同じようなことを書いている。

この「天国への翼」をもって、1曲残らずす
べての曲を演奏したことになるらしい。私は
すべての曲を聴いたのだろうか…? 北海道
に居た間はマニアックヘブンに行けていない
ので、分からない。

今回はツアーの初日ということで、練習不足
が目立った。なのに難しいはずの「星降る夜
のビート」は完璧だったので集中的に練習し
たのだろうか。

ベストアクトは「サーカス」。

2026年3月8日日曜日

侍タイムスリッパー

 
☆☆☆★  2024年
監督・脚本・撮影・照明・編集  安田淳一

命がけの死闘をしていた会津藩士が雷に打た
れて現代の京都の撮影所にタイムスリップし、
やがて時代劇の切られ役になるという話だが、
たしかにロングヒットしているだけあって小
気味いいリズムとユーモアを湛えた佳作であ
る。
主役の山口馬木也がすばらしい。方言指導も
いなかったと聞くが、自己流の会津弁が効い
ていて、朴訥とした人柄が笑いを誘う。
文字通りの「真剣勝負」の場面は、それまで
の低予算感が嘘のように本格的な撮影と芝居
で緊張感を演出していて、ここぞという所に
予算をかけることは大事だな、と改めて感じ
る。

                                                     1.20(火) 日テレ



2026年2月11日水曜日

宝島


☆☆☆    大友啓史   2025年

今年の映画初めは昨年の見逃し映画。

沖縄の戦後史を「壮大なスケールで」しかも
「3時間の長尺で」描くということ自体に興
味があった。しかも宝探しでもするかのよう
な題名で、いったいどんな映画なんだろうか。

映画は米軍基地に忍び込んで食料品や燃料を
盗み、市井の貧しい人々に分け与える若者た
ち「戦果アギヤー」の場面から始まる。その
中心人物であったオン(永山瑛太)が作戦失
敗と同時に失踪したことで、妻夫木聡たち友
人や恋人だった広瀬すずがオンを探し続ける
ことが映画の縦軸となっている。
1946年から始まり、1972年の沖縄返還に向け
てどんどん年月が経っていくのだが、沖縄と
アメリカ、そして内地との複雑な力学から発
生する悲惨な事件が横軸となって主人公たち
の人生をつらぬく。
「コザ暴動」が映像化されたのは初めて見た。
かなりの人数のエキストラを動員してこの場
面を撮ったという点で、この映画は歴史的価
値があるかもしれない。

しかしながら話が分かりにくいことこの上な
い。若者たちが似ていて、誰が誰だか分から
なくなるのも一因。そして沖縄ことばをしっ
かりと取り入れているのは好感をもつが、感
情の入った要所の芝居ほど聞き取れない…。
頼みの広瀬すずも、なんだかあまり必然性を
感じない役柄であった。

                                             1.12(月) 早稲田松竹