2026年8月12日水曜日

箱の中の羊

 
☆☆☆★   是枝裕和   2026年

「ちょっと先の未来」の設定で、不慮のできご
とにより亡くした息子のクローン的な"ヒュー
マノイド"を家族に迎えた夫婦を描く。
近年のAIの発達ぶりを思うと、2~3年後には
実用化されているかもしれないという予感に
背筋が寒くなるが、最初は気味が悪いと思っ
てもしだいに前のめりになっていく綾瀬はる
かと、後ろ向きで懐疑的な大悟という対比が
想像以上に効果をあげていて、話に引き込ま
れた。
展開はあいかわらず是枝さんお得意の、登場人
物はみんな悩みながらも精一杯にやれることを
やっているが、歯車がうまく嚙み合わないとい
う、やるせない感じ。夫婦間の深まった溝は、
溢れた感情を正直にぶつけ合うことで「違いを
認め合う」という最近よくある収まり方に落ち
着く…と思いきや、近所のヒューマノイド達が
野良猫会議のように空き家に集まって独立国を
作ろうとしているという、村上龍も真っ青の意
外にぶっ飛んだ展開が待っている。是枝さんな
りに小さくまとまらないように考えたのかな、
などと思ってしまった。

                                     6.8(月) TOHOシネマズ新宿




2026年8月9日日曜日

【LIVE!】 ハンバート ハンバート

 
 歌ったり喋ったり ークアトロ篇ー

 1. 一瞬の奇跡
 2. トンネル
 3. 虹
 4. ぶらんぶらん
 5. どこにいてもおなじさ
 6. 試作品第12号
 7. おべんとう
 8. 黄金のふたり
 9. がんばれ兄ちゃん
10. 夜明け
11. 大宴会
12. 教訓1
13. 同じ話
14. ふたつの星
15. ぼくのお日さま
16. バビロン
17. 虎
18. それでもともに歩いていく
19. 国語
20. メッセージ

(Encore)
 1. うちのお母さん
 2. 笑ったり転んだり

                              5.28(木) 渋谷クアトロ

2日連続でライブに足を運ぶのはとてもめずら
しい。いつ以来だろうか…。

ファンになった当初は朝ドラの主題歌をやるこ
とになるなんて想像もできなかったが、もうそ
の大役もしっかりと果たし終えたわけである。
とはいえ気負いのようなものはまったく感じら
れない2人であって、いつも通りすぎるぐらい
いつも通りのライブであった。
ベストアクトは「ぶらんぶらん」。

2026年7月26日日曜日

【LIVE!】 銀杏BOYZ

 
 銀杏BOYZ ツアー2026 『夢で逢えないから☆』

 1. アーメン・ザーメン・メリーチェイン
 2. 若者たち
 3. NoFutureNoCry
 4. エンジェルベイビー
 5. 佳代
 6. 漂流教室
 7. 夜王子と月の姫
 8. 骨
 9. ナイトライダー
10. 恋は永遠
11. パラダイスロスト(新曲)
12. (新訳)銀河鉄道の夜
13. 人間(アナーキー・イン・ザ・夕景)
14. GOD SAVE THE わーるど
15. 夢で逢えたら
16. BABY BABY 
17. ぽあだむ
18. ぼーいず・おん・ざ・らん

(Encore)
 1. 宣戦布告(カバー)
 2. 少年少女
 3. DO YOU LIKE ME

                       5.27(木) LIQUIDROOM恵比寿

1曲目から目がイッてた峯田はギターは投げるわ
SM58でおでこを殴るわ(それはいつものことか)、
挙句はマイクスタンドまで客席に投げて自分がダ
イブするという、荒っぽいライブに慣れていない
私には恐ろしい所業であった。5曲目ぐらいから
打って変わって普通の人格になったが…。
ベストアクトは「夜王子と月の姫」。とはいえこ
の日のハイライトは「夢で逢えないから逢いに来
ました」という言葉とともに歌われた「夢で逢え
たら」であった。まあベストアクトというよりは
みんなで大合唱しただけと言えなくもないし。

2026年7月16日木曜日

ルックバック

 
☆☆☆   押山清高   2024年

マンガに情熱を燃やす二人の少女の青春モノ
として始まった物語が、ある事件を境に不条
理の物語へ変容していく。
全然悪い出来ではないが、この世界を熱烈に
愛すかというとそうはなれない。なぜだろう
と考えてみるに、やはり京アニ事件をモチー
フとしていることに引っ掛かりがあるのだと
思う。作品の中でモチーフとするにはあまり
に悲惨でいまだに生々しい記憶としてある事
件という気がして、消化しきれないというか
消化していいものかどうかも分からない。
是枝さんはこの不条理をどう描くのか、さっ
そく気になってきた。

個人的にはharuka nakamuraの音楽を注意
して聴いていた。優しい音色が印象的な、
いい劇伴だった。

                                               5.20(火) Eテレ




2026年7月12日日曜日

【LIVE!】 小沢健二

 
 月と街のAidade

 1. いつか僕は
 2. ある光
 3. 愛し愛されて生きるのさ
 4. 僕らが旅に出る理由
 5. カローラⅡにのって
 6. ブルーの構図のブルース
 7. 指さえも
 8. 憂鬱
 9. 超能力と無限の藍色
10. 台所は毎日の巡礼
11. 悪女(cover)
12. 神秘的(non fingo)
13. 天使たちのシーン
14. 高い塔
15. 彗星
16. 流星ビバップ
17. アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)
18. 流動体について

(Encore)
 1. ぶぎ・ばく・べいびー
 2. ドアをノックするのは誰だ?
 3. 強い気持ち・強い愛
 4. 薫る(労働と学業)
 5. いつか僕は

                               5.14(木) SGCホール有明

すばらしいライブだったので書くべきことは
いっぱいある気がするが、あまり詳細に書き
留める暇も気力もなく…。
オザケンのライブは単なる「音楽を聴く場」
ではなくなっており、ホイッスルだの離脱!
だのと付帯するものが毎回あるのだが、近年
それがエスカレートの一途を辿っている。
今回も開演前に「Aの封筒を開けてこれを作
れ」だの「Bの封筒の中身を読んでこうして
おけ」だのと、こなしておかなくてはならな
い細かいタスクが多くて苦笑するばかりであ
る。とにかくオザケンの脳内には演出のアイ
ディアがとめどなく泉のように溢れてくるよ
うで、その表現欲求の尽きなさと実行力には
驚くばかり。
もちろん事前のタスクだけでなく、曲の前に
毎回リズムパターンを呈示して、その由来を
語るところから始めるのもおもしろかったし、
過去の自分の声と"共演"するというのも「あ
るようでなかった」演出で、ハッとさせられ
た。
ベストアクトは「指さえも」。初めてライブ
で聴いた。

2026年7月5日日曜日

街の上で


☆☆☆★★★   今泉力哉   2021年

公開5周年を記念して、リバイバル上映されて
いた。おそらく『冬のなんかさ、春のなんかね』
が地上波の普通の恋愛ドラマ(つまり「職業ド
ラマ」ではなく、ということ)としては異例な
ほど話題になったというのもあるだろう。
私はもちろんあのドラマを観てミッシェル・ガ
ン・エレファントを熱心に聴き直しているよう
な状態である。コインランドリーで杉咲花のイ
ヤホンからミッシェルの"blue nylon shirts"が
流れた時は、それこそ雷に打たれたような衝撃
が走った。

それはそれとして、『街の上で』という、あまり
ヒットさせようという気も無さそうなタイトル
のこの映画は、下北沢という街の「趣き」その
ものが主役のような映画である。演劇の街、古
着の街、(おもに貧乏な)若者の街、という5年
前のシモキタのイメージが画面に充溢している
し、登場人物たちからもそういう匂いがする。
こじらせ顔の若葉竜也という主役はいるものの、
その主役はいきなり女に振られ、古本屋の女に
は失言して怒らせ、映画を撮っている女にはぞ
んざいに扱われ、衣装部の女には振り回され…
と思いきやようやく気脈が通じたのか、友達に
なってくれと言われる。この衣装部役の中田青
渚がすばらしい存在感で、「いろいろあったけ
ど全部持って行った」感じになっている。

自分にこういう青春があったわけではないが、
なんだか他人事とも言い切れない、絶妙な懐
かしさと甘酸っぱさと苦さと…。きっと自分
の二十代を思い返すことになる映画である。

                                     4.28(火) テアトル新宿




2026年6月26日金曜日

国宝

 
☆☆☆★★   李相日   2025年

故あって2度目の鑑賞。
やはり冒頭の新年会のシーンが素晴らしく、
永瀬正敏の迫力も相まって一気に物語に引
き込まれる。
中盤以降は、1度目とあまり印象は変らず、
それでいて新鮮さはなくなって最初に受け
た感銘はよみがえらず。この「血か芸か」
という日本人が大好きっぽい究極のテーマ
とはいえ、3時間の大河ドラマを最後まで
見せきる映画的な腕力は確かなものである。
三浦貴大の役割が要所で大きすぎて少し不
自然に感じたが。
歌舞伎と劇伴音楽がミックスされていくと
ころのバランスなどは本当に見事。

                             4.21(火) 角川大映試写室