☆☆☆★★ 塩田明彦 2019年
解散前のラストツアーに向かう車に〈ハルレオ〉
のハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)が不機嫌
そうに乗り込む場面から映画は始まる。マネー
ジャーの成田凌が運転する車で各地のライブハ
ウスを巡りながら、段々と「その時」が近づい
てくるが…。
成田凌はカッコいいなー。
「冬のなんかさ」以来、私は成田凌のカッコよ
さにシビれつづけているのである。
この世では数えきれないほどのバンドが結成さ
れ、そして解散しているのであって、なにも弾
き語りのデュオの解散なんて珍しくもない。映
画も二人が至った決断と終わりに向けた日々を
淡々と、ことさらドラマチックにすることなく
描き出す。解散の理由には、曲を書かない方の
モチベーションの問題と、3人の恋愛関係の問
題があって、これまたありふれていて、その辺
の監督だったらきっと箸にも棒にもかからない
愚作になっただろう。だからこの映画が「ずっ
と観ていられる」映画になっているのが、私に
は不思議である。どこがどうおもしろいのか説
明できないのだが、とにかく良い映画であるの
は間違いない。
8.30(日) U-NEXT
☆☆★★★ 石井裕也 2019年
「町田くん」は勉強もスポーツも苦手で、
走り方は変で、社交性もあまりなく見た目
も地味。普通は主人公になりそうもないが、
困っているひとを見るとすべてを忘れて助
けずにはいられない。気になっている女の
子が大事な話をしているときでも、つい助
けに行ってしまうのである。
主演には演技経験がほとんどない新人の細
田佳央太と関水渚が「抜擢」されたとのこ
と。細田佳央太はこの頃から良い芝居して
ます。
しかし映画は終盤にかけてまったくついて
いけないというか、いいからもう早く終わ
ってくれと思ってしまった。
主演にほぼ新人を使い、脇を常連のベテラ
ンで固める。主人公がやたらと走ったり叫
んだりする。ラストの方ハチャメチャな訳
の分からない展開になる。これってどこか
で……あ、園子温じゃん!
8.29(土) U-NEXT
☆☆☆★★ 吉田恵輔 2021年
伊東蒼が逃げながら道路に飛び出した瞬間に
大きなトラックに轢き殺される冒頭からして
あまりに衝撃的である。そこからはひたすら
古田新太に追いつめられ、謝ることしかでき
ない松坂桃李…。PCの小さい画面でむしろ
よかったかもしれない。大スクリーンで観た
らメンタルが保たないわ。
しかし終盤はやはり古田新太のギャップに泣
かされた。なぜだろう、まったく愉快な映画
ではないし、もっといえば好きなタイプの映
画ですらないが、不思議と「良い映画だった」
と思えてしまう。
8.29(土) U-NEXT
☆☆☆★ 山下敦弘 2023年
脚本は宮藤官九郎。意外にも初の組み合わせら
しい。何をするにもワンテンポ速い岡田将生と
ワンテンポ遅い清原伽耶、台湾映画『一秒先の
彼女』の男女を逆転させて京都を舞台にリメイ
クした。
郵便局員だが、スピード違反で捕まりすぎて窓
口業務をさせられている岡田将生。ある日路上
ミュージシャン(福室莉音)の歌声に恋をして、
花火大会デートの約束を取りつける。しかし目
覚めるとなぜか花火大会の翌日になっていた…。
しかも真っ黒に日焼けして、撮られた覚えのな
い写真にも写っている。
「消えた一日」をめぐる謎解きには当然ながら
清原伽耶が絡んでいるのだが、本格的に出てく
るまでが遅い気がした。映画じたいをもう少し
コンパクトにできたのではないか。もちろん前
段の「仕掛け」が無いとおもしろくない話では
あるのだが…。
話としてはごく他愛ないもので、この時期大量
に邦画を観たこともあって、印象は薄い。
8.29(土) U-NEXT
☆☆☆★★★ 塩田明彦 2023年
観る前から秀作の予感はしていたが、やはり
絶妙な語り口に感服。塩田明彦も、私の最も
敬愛する監督のひとりである。著書『映画術
その演出はなぜ心をつかむのか』も名著。
春画研究に没頭する変わり者の学者「春画先
生」(内野聖陽)と、彼に師事し春画にのめり
こんでいく弟子(北香那)、そして先生の書く
『春画大全』を待っている編集者(柄本佑)
という配置がまた巧妙である。
気軽に観られるコメディを装って、ラストは
なかなか壮絶な「究極の愛」のようなものま
で持って行かれる。安達祐実の熱演も光って
いる。
8.29(土) U-NEXT
☆☆☆ 石井裕也 2020年
昨今珍しくなってしまった「オリジナル脚本」
で、これだけのキャストを集めて情熱的な映
画として完成させたことをまずは多としたい。
決して悪い出来ではないのだが、主演の仲野
太賀、大島優子、若葉竜也はじめ誰も幸せそ
うなひとはおらず、観ていて苦しい映画では
ある。
8.28(金) U-NEXT
☆☆☆★★ 吉田恵輔 2018年
「コジれる人間関係」を描かせたら右に出る
者のいないと思ってゐる吉田恵輔。敬愛する
映画監督のひとりである。
見た目も性格も正反対の兄弟、演じるのは新
井浩文と窪田正孝。粗暴な兄の新井が出所し
てくるところから物語が動き出すのだが、そ
こにこれまた正反対の姉妹、ニッチェの江上
と筧美和子との恋愛関係が絡んできて、話が
ややこしくなり、嫉妬と軽蔑と憧れと憎悪が
入り混じったドラマが展開される。筧美和子
には画面が明るくなるような華がありますね。
要約してしまうとどうってことない話だが、
映画としては一級のおもしろさであった。
実は引っ越しによる空白期間で「Tシャツが
乾くまで」が2話分観られなかったので、や
むなくU-NEXTと契約した。ドラマはすぐに
観終えて当初の目的を果たしたが、31日間
無料だというので、これまで見逃してきた
映画たちを観ることにした。それで真っ先
に思い浮かんだのが山下敦弘と吉田恵輔と
いうわけである。
8.27(木) U-NEXT