2026年10月9日金曜日

春画先生

 
☆☆☆★★★   塩田明彦  2023年

観る前から秀作の予感はしていたが、やはり
絶妙な語り口に感服。塩田明彦も、私の最も
敬愛する監督のひとりである。著書『映画術
その演出はなぜ心をつかむのか』も名著。

春画研究に没頭する変わり者の学者「春画先
生」(内野聖陽)と、彼に師事し春画にのめり
こんでいく弟子(北香那)、そして先生の書く
『春画大全』を待っている編集者(柄本佑)
という配置がまた巧妙である。

気軽に観られるコメディを装って、ラストは
なかなか壮絶な「究極の愛」のようなものま
で持って行かれる。安達祐実の熱演も光って
いる。

                                                8.29(土) U-NEXT




2026年10月3日土曜日

生きちゃった

 
☆☆☆    石井裕也   2020年

昨今珍しくなってしまった「オリジナル脚本」
で、これだけのキャストを集めて情熱的な映
画として完成させたことをまずは多としたい。

決して悪い出来ではないのだが、主演の仲野
太賀、大島優子、若葉竜也はじめ誰も幸せそ
うなひとはおらず、観ていて苦しい映画では
ある。

                                              8.28(金) U-NEXT




2026年9月30日水曜日

犬猿


☆☆☆★★   吉田恵輔   2018年

「コジれる人間関係」を描かせたら右に出る
者のいないと思ってゐる吉田恵輔。敬愛する
映画監督のひとりである。
見た目も性格も正反対の兄弟、演じるのは新
井浩文と窪田正孝。粗暴な兄の新井が出所し
てくるところから物語が動き出すのだが、そ
こにこれまた正反対の姉妹、ニッチェの江上
と筧美和子との恋愛関係が絡んできて、話が
ややこしくなり、嫉妬と軽蔑と憧れと憎悪が
入り混じったドラマが展開される。筧美和子
には画面が明るくなるような華がありますね。
要約してしまうとどうってことない話だが、
映画としては一級のおもしろさであった。

実は引っ越しによる空白期間で「Tシャツが
乾くまで」が2話分観られなかったので、や
むなくU-NEXTと契約した。ドラマはすぐに
観終えて当初の目的を果たしたが、31日間
無料だというので、これまで見逃してきた
映画たちを観ることにした。それで真っ先
に思い浮かんだのが山下敦弘と吉田恵輔と
いうわけである。

                                         8.27(木) U-NEXT




2026年9月26日土曜日

化け猫あんずちゃん

 
☆☆☆★  久野遥子 山下敦弘  2024年

お寺で拾われた子猫がなぜか20年以上生きて、
いまや化け猫として快活に生活している。マッ
サージのバイトをしていて、普通にスクーター
で出かけていく化け猫はなかなかおもしろい。
しかも性格はひねくれていて、育児放棄に近い
形で寺に預けられた和尚の孫娘に、意地悪もす
るし、余計なことも言う。趣味はパチンコ。

アニメ映画ではあるが、「本作では実写で撮影
した映像からトレースし、アニメーションにす
る『ロトスコープ』という手法を採用」とのこ
とで、山下監督で実写映画をまるまる1本撮影
し、セリフもちゃんと録り、そこで撮った映像
をトレースして絵を作ったらしい。単純に考え
て映画2本分の予算が必要だろう。意欲的な試
みではあると思う。ただその効果はいかほど、
と問われると、まあ言われないと気付かない
程度と言わざるを得ない。

                                                 8.27(木) U-NEXT




2026年9月23日水曜日

世界地図


☆☆☆    岩井俊二   2025年

「好奇心」をテーマにコクヨ公式チャンネル
で公開されている短篇映画。
中国の地方都市(?)を舞台に、小学生の男
の子と女の子の微かな心のふれあいのような
ものが写し取られている。女の子が家からい
なくなってしまうまでは、あんまり岩井俊二
らしさが感じられなかったが、それ以降は
「らしさ」が存分に発揮されていたように思
う。楽しめた。

                                     8.26(水) YouTube




2026年9月19日土曜日

ハッシュ!

 
☆☆☆★   橋口亮輔    2002年

ゲイカップルと一人の女性の物語。
高橋和也と田辺誠一、いろいろありがなが
らも平穏に付き合っていた二人だが、ある
日蕎麦屋で会った"変な女"こと片岡礼子か
ら突然、子どもを作って3人で育てて行か
ないかという突拍子もない提案をされる。
今でこそめちゃくちゃ奇異にも感じられな
いが、2002年当時は、かなり異色の映画で
あったろう。その先駆性もさることながら、
物語上ことさらにゲイカルチャーを強調す
るのではなく、あくまで「家族の形の可能
性」のひとつとして日常の中でこの3人を
描こうとしている点にも、橋口監督の冷静
な視線を感じられる。

田辺誠一をストーキングする同僚役のつぐ
みの怪演がなんともうれしい。『月光の囁
き』に出たばかりの頃らしい。
主題歌の"Hush little baby"も小気味いい。

                                    8.20(木) テアトル梅田




2026年9月16日水曜日

マイ・プライベート・アイダホ

 
☆☆☆  ガス・ヴァン・サント  1991年

デジタルリマスター版を鑑賞。
「ガス・バン・サント監督がキャリア初期に手
がけ、リバー・フェニックスとキアヌ・リーブ
スの共演が話題を呼んだ青春ロードムービー」
ということでほうほうと興味を惹かれて梅田ま
で出てきたわけだが、短くいうとなんとも消化
不良な映画であった。

ナルコレプシーを抱えた男娼役のリバー・フェ
ニックス。ホアキン・フェニックスのお兄さん
であり、23歳という若さで死去したそれはもう
伝説的な俳優である。非常にかっこいいのであ
るが、ナルコレプシーっていう設定…要る?
話を進めるうえでの制作側の都合のように思え
てしまったが。
ちなみに、シェイクスピアの戯曲『ヘンリー四
世』『ヘンリー五世』に着想を得ているとのこ
と。読んでないのでどのへんが、とかは分から
ないが…。

                                       8.20(木) テアトル梅田