2011年4月23日土曜日

二十四の瞳

デジタル・リマスター版

☆☆☆☆       木下恵介      1954年

観るのは三度目。
何度観ようとも、最後の大石先生の歓迎会の場面で目から
水分が出るのを抑えられない。
私の最も好きな女優・高峰秀子の出演作の中でも、代表作
と呼んでおそらく誰からも異論の出ない、傑作中の傑作であ
る。「完璧な映画」というイメージからは程遠いかもしれないが、
圧倒的な力技で「もっていかれる」感が非常に強い。こんなの、
そりゃあ泣くだろ、というやつである。

高峰さんは去年、亡くなってしまった。子役時代から、時には
年に8本というすさまじいペースで映画に出演し続け、1979年
にすっぱりと潔く女優業をやめてからも、今度はその文才を
活かして数多くの潔いエッセイを書いた。カラッとした性格が
そのまま反映されたおもしろい文章を書くひとで、『わたしの
渡世日記』などは私はかなり愛読したクチである。文春文庫
に入っている。

                                                4.5(火)  BSプレミアム


2011年4月17日日曜日

東京物語

デジタル・リマスター版

☆☆☆☆         小津安二郎         1953年

観るのは二度目。
一度目は、映画を熱心に観るようになって間もない頃、早稲田
松竹(たしか初めて行った)で、「麥秋」と本作の二本立てだった。
当時は大学二年生だったわけだが、ご多分に漏れず、あまり
面白いとは思わなかった。「ふーん。で、どうしたの」という感じ
だった。
いま「東京物語」を観て、こんなにも胸が騒ぐのは、一体どういう
わけなのだろう。そのざわつきは、原節子の「私、ズルいんです」
という有名な場面で頂点に達するわけだが、観終わっても、そし
て数日が経過しても、理由はわからずじまいである。
大学のときから何百本か映画を観て、私自身が「映画に求めるも
の」が相当変遷してきたというのは、ひとつの事実ではあるだろう。
では私は映画に何を求めるのか。わからないねー、さっぱり。

                                                   4.4(月)  BSプレミアム


2011年4月16日土曜日

JUNO

☆☆☆★★       J・ライトマン      2008年

16歳で妊娠してしまった高校生JUNOちゃんの10ヶ月間を追った
ストーリー。何年か前に「14才の母」というドラマがあったが、あち
らの志田未来の役どころとはだいぶ違って、JUNOちゃんはパン
クロックとギターをこよなく愛し、大人と会話するときは常に「余計
なジョーク」を言わずにおれない、なかなか愉快な子なのである。

映画として観たとき、JUNOの周囲の大人が寛容すぎる・理解が
ありすぎて不自然だとか、「十代の親をもつ家庭は得てして不幸」
と言った検査技師を論破したことになってるがあれじゃ全然論破
できてねーとか、いろいろ批判はあり得るだろう。しかし映画が進
むうちに、だんだんとJUNOちゃんのクールを装った健気さが愛お
しくなってきたのは確かであって、映画の好き嫌いって結局そうい
うところで決まってしまうので、私はこの映画は好きだ。

「仁義なき戦い 代理戦争」以来、5本連続で非常に好ましい映画
が続いた。どれも自信を持って「面白いですよ」とオススメできるも
のばかりである。まあおれが作ったわけじゃないけど。
そして来週からはついに、山田洋次監督が選ぶ「家族」の映画50
本がBSプレミアムで始まる。さっき数えたら、50本中16本は観てい
たが、非常に楽しみであることに変わりはない。

                                                               3.31(木)  BS-2


2011年4月13日水曜日

潜水服は蝶の夢を見る

☆☆☆★★      J・シュナーベル     2008年

大胆でありながら繊細な、というか、静謐でありながらダイナ
ミックな、「個」の映画でありながらどこまでも「家族」の映画
であるような、いずれにせよかなりしたたかな作りになって
いることは間違いない。
さすがフランス映画だけあって都会的で、感動の押し付けを
極度に嫌う。主人公の性格には好感がもてるし、モノローグ
もウィットに富む。

あらすじを説明することはできるが、してもあまり意味がない
と思うので、やめておく。「描き方」に最大限の意味を込めて
いる映画だと感じたので。秀作。

                                                3.23(水)  BS JAPAN


それでも恋するバルセロナ

☆☆☆★★       ウディ・アレン      2009年

ペネロペ・クルスとスカーレット・ヨハンソンが、ハビエル・バルデムを
取り合う話であると小耳にはさんだので、果たしてそんな荒唐無稽が
成立可能なのかといぶかっていた。だってそうでしょう?
しかし。ウディ先生にかかると、それもたちまち楽しき映画に早変わり、
ナレーションがちょっとうるさい感じはするが、けっこう"快作"じゃない
かと思う。ウディ先生も自作の中でけっこう気に入っているらしい。
「BRUTUS」の映画特集で言っていた。

                                                        3.23(水)  BS JAPAN


2011年4月12日火曜日

初恋のきた道

☆☆☆★     チャン・イーモウ    1999年

チャン・ツィーの主演。
最初、お婆さんが登場して、長年連れ添った夫の葬式のことで、
息子ともめている。画面はモノクロである。すると、お婆さんが
若かりし頃、村に唯一の学校の先生として赴任してきたのちの
夫との馴れ初めを回想するシーンになり、画面は一気に華やか
なカラーになる。お婆さんの少女時代をチャン・ツィーが初々しく
演じる。この「チャン・ツィーの初々しさ」が本映画のすべてである
といってまず差し支えなかろう。
『ダンス・ダンス・ダンス』の登場人物であるユキの可憐な美しさ
を描写した文章に、記憶で書くので正確でないかもしれないけど、
人の心の複雑な回路の奥にある池に、確実に小石を投げ込んで、
そこに波紋を立てることができるような美しさ、というようなのが
あったが、19歳のチャン・ツィーの健気ないじらしさにその表現を
思い出したといったらいささか褒め過ぎだろうか。チャン・ツィーの
可愛らしさと、その初恋の相手の学校の先生のキモい笑顔がとて
も印象的。先生は「声が良い」という設定なのです…。

                                                         3.20(日)  BS日テレ


2011年4月10日日曜日

仁義なき戦い 代理戦争

☆☆☆★★★      深作欣二      1973年

これが、これこそが「映画」だろうが、文句あるんかいワレ、という
確信を深めるに至ったシリーズ3作目。この映画の何もかもが好き
だ。とりわけ、役者の顔と声が好きだ。

要約してしまえば、広島におけるヤクザの抗争で、たくさんの人が
死にました、という話にまとまる。何が「代理戦争」かというと、大阪
では巨大な二つの組が覇権を争っているのだが、それが大阪では
直接的な殺し合いとして表出せず、大阪の後ろ盾を得た広島の組
どうしが広島で、血で血を洗う凄惨な抗争をするに至っているという
話なのである。ちょうど朝鮮戦争が、ソ連とアメリカの代理戦争で
あったように。
組どうしの関係は1作目よりもさらに複雑になり、親切なナレーション
が無いととてもついていけないほどだが、呉の小さな所帯である広能
(菅原文太)の組が、代理戦争の荒波をなんとか泳ぎきろうと足掻く
わけである。変な話、鶏口となるも牛後となるなかれ、という言葉を思
い出しもするのだが、組織を守るために苦悩するトップの話でもある
わけだ。菅原文太が死ぬほどかっこいい。

                                                  3.18(金)  DVD