2013年11月17日日曜日

素直な悪女


☆☆☆★       ロジェ・ヴァディム      1956年

ブリジット・バルドー、いわゆるBBですね。

本来「悩ましい」というのはこの映画におけるBBのようなことを
いうのであって、未解決の問題が山積していてどっちに舵を
切ればいいのか「悩ましい」などと書くいまの使い方は誤用だ、
と嘆いていたのは小林信彦だったか。小林先生はBBではなく
「オレンジのビキニを着てプールからあがってくるハル・ベリー」
を例に挙げていたと記憶しているが。

弟の嫁さんがブリジット・バルドーで、さして広くも無い家でひと
つ屋根の下暮さなければならないとしたら、それはもうかえって
地獄だろうね。困ったものだ。

                                                                   11.5(火) BS 11


2013年11月14日木曜日

秋の読書④


『暴力団』
溝口敦 著      新潮新書

ヤクザ映画もマフィア映画も、犯罪映画全般が好きなので、
前から興味はあった。
暴力団員はふだんは何をしているのか、どうやって収入を
得ているのか、組に属するというのはどういうことなのか、
などなど、「知りたいこと」をとても平易な文章で解説してく
れている。過不足なく。

読んでると「仁義なき戦い」が観たくなってくるぜ。








「ドライブ・マイ・カー」
村上春樹 著      文藝春秋12月号

本屋での立ち読みで済ませてしまった。86枚だから読め
ちゃいました。文春さんすいません。最近380円の価値は
無い「週刊文春」を毎週ちゃんと買っているので許してくだ
さい。

なかなか「読ませる」短篇だった。
三人称でリアリズムという最近の傾向だが、これまでの
どの短篇にも似ていない、しかしそれでいて村上春樹で
しかあり得ない、良い感じだったと私は思います。
新境地、とまでは言わないが、春樹がまた新しい方向に
向かっていることが実感できるのはファンとしてはまこと
によろこばしい。



2013年11月12日火曜日

男はつらいよ フーテンの寅


☆☆☆          森崎東       1970年

『男はつらいよ』シリーズ3作目。
見慣れた「寅さん」に比べると、ドタバタが多く、ひとつひとつ
のカットが短い。演出と編集でここまで変わるのかと思うほど
だが、なるほど『喜劇 女は度胸』の騒々しさを思い出した。
まあ山田洋次の寅さんとは別物だと思えば特段、論難する
こともなかろう。元気のいい渥美清が見られる。

                                                       11.4(月) BS JAPAN


2013年11月6日水曜日

秋の読書③


『パン屋再襲撃
村上春樹 著    文春文庫

帯広からの帰りであった。
カバンの中に電車で読むものが何も無いことに気付いて
恐慌に襲われ、街の本屋でいろいろ迷った末に、なぜか
『パン屋再襲撃』に落ち着いた。「ファミリー・アフェア」が
大好きなのと、「象の消滅」をもっかい読みたかったから。

しかし「ファミリー・アフェア」はなんで読んでてこんなに楽し
いんだろう。春樹も楽しんで書いているのが伝わってくる
からか。










『きりぎりす』
太宰治 著    新潮文庫

読んでないやつならなんでもいいやと、適当に選んだわけだ
が、本作には太宰が得意とした「女性の告白体」の小説が
多く収められている。有名な「女生徒」は入っていないけれど。

いやぁ、堪能しました。お見事。どれもよかったなー。
特に選ぶなら「皮膚と心」「千代女」かな。「善蔵を思ふ」も、
最初と最後のバラのエピソードが印象に残る。「畜犬談」も
可笑しい。最後は、ぞっとするような「水仙」と「日の出前」で
締めくくられている。あんまりおもしろいもんだから、あっと
いう間に読み終わってしまった。

しかし、かなづかいが気になる。
全集以外で、正かなづかいで太宰が読める本は無いのかな。



2013年11月4日月曜日

居酒屋兆治


☆☆☆★        降旗康男       1983年

函館が舞台の映画って多いね。

高倉健と大原麗子の時代がかった純愛が本筋なのだろうが、
サイドストーリーというのか、本筋以外のところがいろいろと
とっ散らかって、なんだか散漫な印象。加藤登紀子って、普通
に出てたけど、そういうひとだったっけ。

健さんの店「兆治」は料理もうまそうで、ちょっと行ってみたい
と思った。伊丹十三が居るときは行きたくないが。

しかし大原麗子ほど「男を狂わす(もしくは男が勝手に狂う)女」
が似合う女優もいないという気がする。いったい、あの潤んだ目
は何だ。けしからん。

                                                 10.26(土)  BSプレミアム


2013年11月2日土曜日

秋の読書②


『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」
と叫ぶ人に訊きたい』
 正義という共同幻想がもたらす本当の危機

森達也 著    ダイヤモンド社

タイトルに引っかかった。
森さんが何を「訊きたい」のかが気になって買ったようなものだ。

森さんは繰り返し繰り返し、眼前の状況について、ちょっと立ち
止まって考えてみようよと呼びかける。想像してみよう、と。
「考えたんだけど、自分にはこれが正論にしか思えないのだ」
ということを何度も何度も書く。正直、まとめて読むと同じ話が
多いことが分かるのだが、そこは力業というか、最後にはきちん
と落とし前をつけてくるのである。











『世界クッキー
川上未映子 著    文春文庫

週刊新潮の「オモロマンティック・ボム!」は相変わらず毎週
楽しんで読んでいるが、あれとはけっこう文章が違う気がする。
敢えて書き分けているのだろうか。
川上さんの文章をまとめて読んでみると、意外なほどに太宰治
の影響がうかがえる。言葉のはしばしに。擬音の使い方に。
吹き出してしまうような箇所が特に太宰的であることに気付く。

そしていまわたしは太宰を読んでいるのだった。
相変わらずの影響されやすさ。

機関車先生


☆☆☆         廣木隆一       2004年

原作は伊集院静。
坂口憲二は瀬戸内の離島に赴任してきた男前の先生だが、
若いころ剣道の試合でのどを傷め、声を発することができない。
口を「きかん」先生だから、機関車先生、というわけである。

まあ終始「ありがち」な話が続き、のんびりゆったりでいくぶんは
退屈な映画である。でも子どもたちは良い味出してるし、廣木
監督の得意技である「じりじり移動ショット」も随所で光る。

                                                           10.24(木) BSプレミアム