2016年5月12日木曜日

蜜のあわれ


☆☆☆     石井岳龍    2016年

いまひとつ身が入らず。
どうしても鈴木清順の劣化バージョンに見えてしまう。
耽美的な世界というのは、映像化するのが難しいとは
思う。金魚が女の子になって老作家のもとに現れると
いう話なので、いたるところで水音の効果音(チャポン、
みたいな)が入れられている。ちょっとバカっぽくもある
のだが、悪くない試みだと思った。
本作をもし『私の男』の感じで熊切和嘉が撮ったらどう
なっただろうか。

二階堂プロは常に目を見開いて、奔放な金魚になりき
ろうとされていた。そして『この国の空』に続き、昭和初
期を意識したと思しきヘンな喋り方だった。しかしなが
ら二階堂プロ、肢体の美しさは当代一である。若さが
充溢して内側で暴れているようである。

                                               4.25(月) 新宿バルト9


2016年5月11日水曜日

日本侠客伝


☆☆☆★     マキノ雅弘    1964年

まいど同じ話なので、特に書くことはない。
ただ、中村錦之助が演じるあの客分の行動が疑問である。
客分ながら堪忍袋の緒が切れたということなのだろうが、あ
れではただ組に迷惑かけてるだけではないか。

「今日は"赤電車"まで飲むぞ」というセリフがある。桑田佳祐
にそっくりの長門裕之が、なじみのママに言うセリフである。
赤電車とは何か。文脈から、終電車か始発電車どちらかのこ
とだろうという察しはつくが、どっちか分からない。Google先生
に訊いてみると、はたして赤電車とは最終電車のことであった。
その昔、都市圏の路面電車は最終電車だけ赤い電球をつけ
て走ったところから来ているらしい。

                                                      4.24(日) BSプレミアム


2016年5月8日日曜日

春の読書②


『ゴダール原論 映画・世界・ソニマージュ
佐々木敦 著   新潮社

本書の大部分を占める論考
「ジャン=リュック・ゴダール、3、2、1、」
は、最新作の3D映画『さらば、愛の言葉よ』の詳細きわ
まる分析である。このフィルムのすべてのカットを仔細に
腑分けし、すべての視覚効果・音響効果を叙述しながら、
このフィルムがなぜ3Dで撮られたのか? ゴダールがこ
のフィルムで試行したこと(あるいは試行しなかったこと)
は何なのか? を考えて考え抜いている佐々木敦に、も
うついていけないこと必至である。
だっていくら解説されてもわけ分かんないんだもん。すい
ません。でも装丁はカッコいい。









『結婚式のメンバー』
カーソン・マッカラーズ 著  村上春樹 訳  新潮文庫

「MONKEY」の「復刊してほしい翻訳小説リスト」に、どれも
おもしろそうだけど、全部絶版ってことかよ! と文句を言っ
たが、村上春樹と柴田元幸はちゃんと次の手を考えていた
のだった。抜け目ない。源次郎タイプだな。

"村上柴田翻訳堂"の創刊! 今後順次、新訳と復刊でお
ふたりのお気に入りの海外小説を、文庫で(←ここが素晴
らしい)出していくようである。わーい。

ということで、まず春樹の思い入れもひとかたならぬもので
あるらしい本書。カーソン・マッカラーズなんてひと、春樹か
ら聞くまで知らなかった。文庫で手に入らない海外小説は
やはり触れる機会がないということだろう。

けっこう気合いを入れて読んだのだけど、うーん、あんまお
もしろくなかったなぁ。なぜだろう。

作者が多分に投影されていると思しき、思春期の一歩手前
の女の子・フランキーが主人公。そのアイデンティティがあ
やふやな感じ、自分と他者との境界が曖昧な感じ、強情な
ところ、まあ愛すべきキャラではあるのだが。そしてこういう
人物を主人公にするのってアメリカ文学に多い気がする。





2016年5月7日土曜日

スピード


☆☆☆★    ヤン・デ・ボン    1994年

公開時から『新幹線大爆破』のパクりだと騒がれたらし
いが、まあ本家のほうが100倍おもしろい。
時速50マイル以下になると発動する爆弾がバスに仕掛
けられ、犯人から金を要求する電話がかかってくるとい
う、一種のパニック映画である。発端はビルのエレベー
ター、メインは路線バス、最後は地下鉄と、これでもか
これでもかと襲いくるピンチ! こういっちゃなんだが、
本人たちが真剣なだけに、だんだん笑けてくる。

ただ最後、命からがら地下鉄から脱出したふたりが、ひ
とめもはばからずイチャイチャするというのはなかなか
おもしろいラストだった。

                                                  4.24(日) BSプレミアム


2016年5月4日水曜日

春の読書


今期の芥川賞受賞作を読みました。

「異類婚姻譚」
本谷有希子 著

御徒町凧の奥さんです…といっても夫のほうをご存じない
かもしれませんが。私がいちばんラジオを聴いていたころ、
森山直太朗の"OH! MY RADIO"によく出ていたかっくん…。
詩人です。最近あまり聞きませんが、ご活躍なのでしょうか。

まあそれは夫のことだから措くとして、本谷さんもついに芥
川賞。小説は初めて読んだのだけれど、読んでみるととて
もあっさりめで、ちょっと似てるかなと思い出したのは川上
弘美の受賞作「蛇を踏む」であった。

これがもし「芍薬」とかの凡庸なタイトルだったなら、はたし
て芥川賞を獲れたかどうか、別にケチをつけようってわけ
じゃないが「タイトル勝ち」な気がしないでもない。


「死んでいない者」
滝口悠生 著

一方、こちらはこってりめ。
通夜に集まったすごい人数の親族たちを、語り手を自在に
変えながら叙述していく変わった小説である。これがかなり
手練れで、新人ばなれしたうまさには舌を巻く。

選評でだれも触れていなかったが、これラテンアメリカ文学
(というかガルシア=マルケス)の影響ある、よね、きっと。

多くの親族たちの中で、印象に残るのは知花と美之の兄妹
である。最後、制服のまま知花が浅い川に横たわる、その
水の冷たさまでが感じられるようであった。

こっちの単独受賞でぜんぜんよかったんじゃないか。


2016年5月2日月曜日

ダーティーハリー2


☆☆☆★★    テッド・ポスト   1974年

うってかわってこちらはハードボイルドの化身である
ハリー・キャラハン刑事が、タフな身をこれでもかと
危険にさらしながら巨悪と闘うシリーズの2作目。
対峙するのは、警察内部で法の裁きを介さず悪を
粛清している「正義の集団」である。シリーズ2作目
にして敵ははやくも警察内部! 5作目まであるのに、
この先はどういう悪役が登場するのだろう。

ラロ・シフリンによる音楽がクールこの上ない。音楽
も非情である。カッコいいったらない。

                                            4.14(木) BSプレミアム







<ツイート>

プレミアムシネマのページを見ていて、アナウンサー
の坂本朋彦さんが2014年6月から担当ディレクターに
なったという記述に気付く。つまりBSで放送する映画
の選者だ。のみならず「坂本朋彦のシネフィル・コラム」
なる連載までしているではないか。"シネフィル"を自称
するのは(映画好きならわかると思うが)かなり勇気が
いる。どれどれと読んでみると、相当マニアックであり、
映画愛にあふれたコラムである。そういうことか。
ここ1年ぐらい、私のHDDが映画でいっぱいで、いつ
も追われるように観るはめになっているのはどうやら
坂本アナのチョイスのせいのようだ。恨んでいいのか
感謝すべきなのか……。いや、もちろん感謝である。
小林信彦も文春で、ここのところBSプレミアムの火曜
日がいいと褒めていたのは坂本アナは知っているだ
ろうか。

2016年5月1日日曜日

ピース オブ ケイク


☆☆☆★★    田口トモロヲ    2015年

アパートのお隣どうしでラブアフェアというのは誰しも憧れ
るシチュエーションではないかと愚考いたしますが、それも
多部ちゃんのようなおぼこい(方言?)娘ならなおさらです
なー。

バイト先の先輩で部屋が隣なのが綾野剛というベタな設定
がとても気恥ずかしいのだけど、リップヴァンウィンクルで
すっかり「嫌いじゃない」方に入った綾野剛がここでも良い。
そしてベタさに輪をかけて、見つめ合う瞬間に流れて来る
ギターの曲が恥ずかしさを倍加させる。本気なのかフザけ
てるのか判断に迷いながら観ていたが、音楽は大友良英
だった。えーと、ますますどっちなんだろう。
監督は田口トモロヲである。カメラの向こうで監督が照れて
いる姿まで目に浮かんでしまう。

でもおもしろかったよ。

                                                        4.13(水) Blu-ray Disc