2017年10月14日土曜日

ダーティーハリー3


☆☆☆★★   ジェームズ・ファーゴ   1976年

シリーズ3作目。
今回は、殺人課に異動したての女刑事と無理やり組まされた
らハリーがどうなるかがテーマ。ガッツはあるのだが、いか
んせん現場経験ゼロなのに、いきなり解剖だぁカーチェイス
だぁ銃撃戦だぁ、というハリーのいつものメニューに衝撃を
受ける女刑事。しかし前の部署(記録係)の強みを活かして
役に立ち、その存在をハリーも次第に認めていくという展開
はたしかにお決まりだけども、だからどうしたっていうんだ。

小林信彦がダーティーハリーは1を除くと3がおもしろいと
言っていたと記憶しているが、なるほどたしかに。結末は悲
しいものだが、後味は不思議とわるくない。

                                                   10.4(水) BSプレミアム






<ツイート>
来週月曜からBSで市川崑の金田一を3本放送。
このブログを読んでくれているひとで『犬神家の一族』を
まだ観ていないひとはまさか居ないと思うが、もし観てい
ないならいいから観て下さい。

2017年10月12日木曜日

ロスト・イン・トランスレーション


☆☆☆★★    ソフィア・コッポラ   2004年

不思議に余韻の残る映画だ。
アメリカからCM撮影のために来日した俳優(ビル・マーレイ)
と、写真家の夫にくっついて来日し、毎日暇を持て余している
女の子(スカーレット・ヨハ ンソン)が、ふとしたことから
打ち解け、心を通わせるようになるが…。

新宿の高級ホテルで撮影されたという、外の雑踏とはまるで別
世界のような重厚な空間。それと歌舞伎町の猥雑な風景の対比
がとてもおもしろい、と外国人は思うんだろーけどよ、こちと
ら新宿の近所に住んでる俺には別にどうってことないね、と、
観ている間は思っていたのだが、何日か経つと不思議と映画の
中の風景が自分の中にしっかり根をおろして息づいているのが
分かる。ビル・マーレイの醒めた目で見渡した東京は寒色系の
トーンでまとめられてよそよそしいが、同時に奇異で滑稽で活
気がある。ラストの空撮が効果的である。

                                                    10.3(火) BSプレミアム


2017年10月10日火曜日

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール


☆☆☆★★     大根仁     2017年

前にタイトルに惹かれてマンガをザッと立ち読みした
ことがあり、その時わたしのようなアイディアの湧か
ない人間でも「映画になりそう」と思ったので、 映画
化は必然か。そしてこの底意地の悪い話を映画化する
にあたって、大根仁以上の適任はいるまい。

どんな役をやっても私の好感度を上げてくる妻夫木く
んは、今回の「奥田民生に憧れる青年」の役でも好演
していた。そしてこの映画は「狂わせガー ル」に狂わ
されるためにあるのだから、いちばんの肝となるのは
水原希子である。気まぐれと計算高さを使い分け、
「出会う男すべて」を振りまわして悪びれない、小悪
魔などという使い古された言葉では物足りないほどの
モンスターガールを楽しげに演じていた。
セックス描写はNGでもキスならいいんだろっ!?とい
うことで、水原希子にものすごい回数チューさせてい
たのはもちろん大根仁の職権濫用であろう。妻夫木く
んと、新井浩文と、果ては松尾スズキの耳を舐め回す
シーンまであって、監督の欲望が剝き出しなのも好感
がもてる。

そして…自分がいちばん分かってるだろうから言わな
いが、いやでもやっぱり言うが、「ハロー張りネズミ」
はなぜあんなにイマイチだったのか! やはり地上波
の制約ですか…。

                                        10.3(火) 新宿ピカデリー


2017年10月8日日曜日

草原の輝き


☆☆☆     エリア・カザン    1961年

ワーズワースの詩を引用することで、どことなく
文藝映画の趣きだが、内容はいえば高校生カップ
ルの破局と、それによって精神のバランスを崩し
てしまった女の子(ナタリー・ウッド)、その再
生の物語であって、格別おもしろいわけではない。
青春映画なのかもしれないが、私の好きなそれで
はない。

しかしナタリー・ウッドはのちに撮影中の事故で
死んでるのか…。なんともいえない。なむなむ。

                                      9.25(月) BSプレミアム


2017年10月4日水曜日

読書⑧


『ハワイイ紀行 【完全版】

池澤夏樹 著   新潮文庫

旅行のお供に持って行った。フライトは片道7時間強ある。
行き帰りで半分ちょっと読み、帰国してから残りを読んだ。
端的にいって素晴らしい本である。深くて、おもしろくて、
ためになる。

当方恥ずかしながらハワイイについては何も知らず、ビー
チとリゾートホテルと火山ぐらいしかイメージを持ち合わ
せていなかった。しかし、おもに帰りの飛行機でこの本が
どんどんおもしろくなっていって眠るどころではなくなり、
今はもう一度ハワイイに行きたい気持ちでいっぱいである。

フラ、レイ、音楽、植生、地形、ハワイイ語、神話、キャ
プテン・クック、歴史、サーフィン、……さまざまな観点
からハワイイを知るために格闘した池澤夏樹の3年間の記
録が結実したのがこの本ということだ。氏はこういう仕事
に向いているとみえて、とても有能である。



2017年9月30日土曜日

三度目の殺人


☆☆☆★★      是枝裕和    2017年

観終えて、複雑な気分である。
レベルは高い。吟味されたセリフ、ストーリーテリング、
キャラクターの造型はもちろん、見せる所・見せない所、
語る所・語らない所のバランスなど、ほんとうに見事。
でもこういう映画を「好きじゃない」と感じるひともい
るだろうなぁとも思う。『そして父になる』のとき私は
「意味のないカットがひとつも無いというのは、それは
それで観ていて疲れるものなのだ。」
と書いた。今回は同じ傾向がより悪くなって顕在化して
いるように思った。意味ありげな、思わせぶりなカット
が多くて、その裏に監督の「まあこのこと覚えといてく
ださいよ」とか「ほら、ここで伏線は回収したでしょ」
が見えてしまうのだ。ただとても微妙なラインで、ひと
によってはそれが映画的な快感にもなり得るのだが、な
まじ是枝さんがクレバーで理知的なひとである事を知っ
てしまっているがゆえに、それがうまく快感にならない
のである。ぜいたくな悩みかもしれないが…。

MVPは役所広司。『CURE』の萩原聖人を彷彿させる、
ガラス越しの接見だけで観るものに恐怖を与える不気味
きわまりない演技だった。そして制服をきちんと着た広
瀬すずの可愛さ…。

                                            9.24(日) 新宿ピカデリー


2017年9月28日木曜日

ダンケルク


☆☆☆★★   クリストファー・ノーラン   2017年

第二次大戦中、ナチス・ドイツ軍に包囲されたダンケルクの
街に孤立した連合国軍。歴史に残る撤退戦を"あの"クリスト
ファー・ノーランが描く。どんな映画になるか、わくわくし
ますね。つい初日に観に行ってしまいました。

ワンカットに注いだ情熱(と金銭)に圧倒される。これって、
沈没する船にGoPro何台か仕掛けて、使ってるのはこの2カッ
トだけか…みたいな。同時に、主役はこっちだと言わんばか
りの、すさまじい音量で襲い掛かる音響に度肝を抜かれる。
鑑賞にはストレスに耐える体力を要するので、これから観る
ひとはご用心。

演出にはいろいろと不満があるものの、ここにつらつらと書
き連ねるのは控えよう。美女どころか、ひとりの女のひとも
出て来ないが(いや1人だけおばちゃんが一瞬出て来た)、
それはまあここで言う不満ではない。なにはともあれ、劇場
は戦場と化す。映画館に赴いて轟音の銃弾を浴びるべし!

                                                9.9(土) TOHOシネマズ新宿