2020年4月15日水曜日
チャップリンの黄金狂時代
☆☆☆★★ チャールズ・チャップリン 1925年
ナレーションはあとから付け足したんですね。
いま観ると、わりと無理やり詰め込んでいる
ようなところもある。たしかにサイレントで
は分かりにくい部分もあり、ナレーションに
よる説明はあったほうがいいと思う。ちょっ
と多いかもしれないが。
傾いた小屋の中での攻防、パンとフォークに
よる洒脱なダンス、飢えのあまり靴を食べる
シーンなど、有名な場面がもりだくさん。実
にたのしい。
4.8(水) BSプレミアム
2020年4月13日月曜日
読書⑦
『本当の翻訳の話をしよう』
村上春樹 柴田元幸 共著 スイッチパブリッシング
「復刊してほしい翻訳小説」にはじまり、
「ジョン・チーヴァー」や「短篇小説の書
き方」についてなど、村上×柴田でおこなっ
た対談を多数収録。チャンドラーやカポー
ティの文章を村上訳と柴田訳を並べて比較
しているものがあり、興味深い。
春樹はいちど逐語的に訳したあと、いった
ん元の英文を忘れて、文章として自然にな
るよう直すらしい。結果、両者の訳を比べ
ると明らかに春樹の訳文は長い。少なくと
も今回の箇所についていうと、柴田訳の方
がスッキリしていて好みではある。
柴田さんによる、明治から翻訳史をたどっ
た入魂の、わりと長めの講演も収められて
いる。

『東京湾景』
吉田修一 著 新潮文庫
出先で時間ができたので、読み落としてい
た吉田修一の中では比較的有名な1冊を。
最近いわゆる「湾岸地区」でのまとまった
仕事があったので、何度も通ったこともあ
り、あのだだっ広い埋め立て地の雰囲気が
勝手に浮かんできた。――のはいいとして、
小説としては、私の「あまり興味ない方の
吉田修一」というか、まあ表紙の平凡な首
都高の写真からしてそんな感じはあったが、
どうも薄味で噛みごたえの無い話である。
物語を駆動する役目を果たす「青山ほたる」
という小説家と、物語の核となる亮介が昔
つきあった「高校の英語の先生」。どうも
この二人が血肉がともなっていないという
か、薄っぺらい感じがした。

2020年4月11日土曜日
デューン/砂の惑星
☆☆☆ デヴィッド・リンチ 1984年
カルト的な人気を誇るSF大作である。
未来の宇宙を舞台にしているが、国家間の権謀
術数だったり、神話的なモチーフだったり、親
子間の葛藤だったり、『スターウォーズ』を引
き合いに出すまでもなく、わりと既視感…。
ホドロフスキーも映像化を断念した原作を、ま
だ『イレイザーヘッド』と『エレファント・マ
ン』しか撮っていない駆け出しに任せたわけで
ある。しかし初めてのビッグ・バジェットとは
思えないリンチの落ち着きというか、堂々とし
た演出ぶりには感心する。いろいろ気持ち悪い
ひとやら生物やらが出て来て、楽しそうである。
のちにリンチ作品の常連となるカイル・マクラ
クレンの映画初出演作! スティングも肉体美
を披露している。
4.6(日) BSプレミアム
2020年4月8日水曜日
読書⑥
なぜとはいわないが、読書がすすむ。
『スタン・ゲッツ ―音楽を生きる― 』
ドナルド・L・マギン 著 村上春樹 訳 新潮社
「微に入り細を穿つ」とは本書のためにある
ような言葉だ。音楽の神に魅入られたとしか
思えない天才的なテナーサックス奏者の詳細
を極めた伝記を、ずっと昔から彼を最も敬愛
するジャズ・ミュージシャンと言っていた村
上春樹が訳した「大著」である。
どうやら人間的にはとても問題の多いひとで、
長いことアルコールとドラッグの中毒を克服
しようとして果たせず。しょっちゅう内なる
"怒り"が抑えきれなくなって、奥さん(2番目
の)を殴打したり、家の中をめちゃくちゃに
破壊したりしている。にもかかわらず、ひと
たびサックスを手にステージにあがれば「そ
の夜のゲッツの演奏はすばらしかった」とい
う伝記作家の記述がどこまでも繰り返される。
ジャズは即興の音楽であり、本書にあるとお
り、その営為はその場でメロディを作曲して
いるのと同じである。よくそんな心理状態で、
天上の音楽のような創造性を発揮できるもの
だ、という感想を誰もが禁じ得ないだろう。
読了後、毎日スタン・ゲッツの音楽を聴いて
いるのは言うまでもない…。
新潮社にしては珍しく誤植が何か所もあり、
ひさびさに趣味のメールを送ってしまった。

『コンビニ人間』
村田沙耶香 著 文藝春秋
これも語り手が相当にゆがんでいるのが、な
んとなく、受賞の順番はこちらが早いが『む
らさきのスカートの女』に似た空気を感じさ
せる。こちらの主人公はコンビニの仕事をお
ろそかにするどころか「愛しすぎている」の
は異なるが。
妹に「まともな会話の仕方」を教えてもらっ
ているという設定がおもしろいが、まあそれ
でもこんなひといたら、たぶん同級生の女子
会には混ぜてもらえないか、一度で放逐され
るだろう。

2020年4月6日月曜日
ギターを持った渡り鳥
☆☆★★★ 齋藤武市 1959年
渡り鳥シリーズの第1作。ずいぶんヒットし
たらしい。全部で8作の「渡り鳥」が撮られ
ることになる。今回は宍戸錠の追悼で放送さ
れた。
馬車の干し草の上にギターと一緒に寝転んだ
小林旭が函館に着くという、けっこう気恥ず
かしい西部劇風の場面から始まる。
そこから始まるストーリーは東映の健さんの
映画などを見慣れている目にはどうも内容が
スカスカでマイトガイ・小林旭のキャラクタ
ーもはっきりせず、中途半端に映った。おも
しろくない…。
浅丘ルリ子は最初わからなかった。
宍戸錠はフラリとやってくる売人であり殺し
屋でもある男で、存在感が不気味である。
4.5(土) BSプレミアム
2020年4月4日土曜日
読書⑤
『人間』
又吉直樹 著 毎日新聞出版
初の新聞連載とのことで、新聞連載って新聞
とってないからリアルタイムで読むことない
けど、漱石みたいでいいよね。それとやはり
定期的にやって来る区切りがだんだん癖にな
るというか、独特のリズムが生まれると思う。
島田雅彦の『忘れられた帝国』とか、吉田修
一の『悪人』とかも新聞連載だったですね。
本人を思わせる主人公に、実在の人物を思わ
せる登場人物や、実在と思われるバーとかも
出て来て、けっこう際どいところを行ってる
ような気もしたけど、やはり人物の造型がお
もしろくて、一気に読まされた。
長篇が書けたらもう何も怖くないだろう。ど
んどん書いていってほしい。

『むらさきのスカートの女』
今村夏子 著 朝日新聞出版
芥川賞受賞作。
「こちらあみ子」から既にある程度の知名度が
あったこともあり、近年ではわりと受賞が話題
になったほうではないか。
語り手の職場にやって来た「むらさきのスカー
トの女」。初めはさも変人のように描写されて
いるが、読み進めるとだんだん雲行きが怪しい
というか、描写自体を疑いだすというか、語り
手の方に違和感を覚えることが多くなり、やが
て…。
途中まではわりと牽引力があるというか、読ま
せるな、と思いながら読んでいたが、その後の
展開にはさほど感心せず。
2020年4月1日水曜日
さらば、わが愛/覇王別姫
☆☆☆★★ 陳凱歌(チェン・カイコー) 1993年
京劇の役者として、激動の中国の歴史に翻弄
されながらも芝居に生涯をささげたふたりの
男を、絢爛豪華な映像と冴えわたる演出で描
き切った172分の大河ドラマ。
主演はレスリー・チャンとチャン・フォンイ
ー。幼少期、超絶スパルタの京劇の養成所か
ら始まるのだが、これが完全に虐待である。
やがて役者として頭角を現すふたりは、京劇
の演目『覇王別姫』で共演を繰り返し、人気
を博す。中国映画だからといって何でも「大
陸的」で済ますのもどうかと思うけれど、や
はりこの時間軸の壮大さと大地の雄大さをお
もうと、そう呼びたくなってしまう。
それにしても街の飾りや遊郭の構造など、去
年末の『ストレンジャー 〜上海の芥川龍之介
〜』に似ているカットが多かったように思う。
3.18(水) BSプレミアム
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