☆☆☆★★ 大島渚 1960年
どことなく日活の石原慎太郎原作の映画を思
わせるような、無軌道で刹那的な若者たちを
描いた大島の長編第2作。ヒリヒリするよう
な若者の「生き急ぎ感」が全体を覆っていて、
画のインパクトも強い。興行としては大ヒッ
ト、のちにゴダールが『映画史』で採りあげ
たことも有名である。
桑野みゆきは男にホテルに連れ込まれそうに
なっている所を川津祐介に助けられるが、翌
日、誘われて付いて行った木場で遊んでいる
ときにレイプされる。
この時の、泳げない桑野みゆきを海に突き落
としておいて、同意するまで木材に摑まらせ
ないように執拗に蹴り続ける川津祐介が、石
原慎太郎の小説の人物のようだと思ったわけ
だが…。しかし結局ふたりは同棲することに
なる。このへんの60年代的な流れには付い
て行けません…。それにしてもロケーション
がどこも良い。
この種の映画ではあまり見ない久我美子も出
演。過去のあやまちを悔い続けている桑野の
姉を演じる。またこの映画の渡辺文雄は絶品
である。久我美子の元恋人の町医者。この人
物の存在が映画を引き締めていると思う。
4.18(日) シネマヴェーラ
☆☆☆★★ 大島渚 1999年
ビートたけし、浅野忠信、崔洋一ら、
貫禄十分な面々の中に松田龍平、当時
16歳。新選組の隊士たちが絶世の美少
年に惑わされて殺し合いを始めてしま
うこの映画は、おそらく松田抜きには
考えられなかった企画だろう。妖気が
溢れだしていて、この世のものとは思
えない存在感である。声変わりしたて
のような甲高い声がまた悩ましい。
13年あまりの闘病生活を経ての復帰作
だったが、惜しくもこれが大島渚の遺
作となった。しかし堂々たる異色作で
最後を飾ることができたのは、まだよ
かったのかもしれない。
4.18(日) シネマヴェーラ
☆☆☆★ 大島渚 1967年
これもシネマヴェーラで、…と言いたいとこ
ろだが、出掛ける直前になってどうも雨が降
りそうだったので外出するのが億劫になり、
Amazonプライムで400円も出して観てしまっ
た。ちゃんとシネマヴェーラに行けば800円
(会員料金)でフィルム上映が観られるとい
うのに…。地方在住のシネフィルに首を絞め
られても文句は言えないところである。
映画の冒頭で受験生たちが入っていくのは学
習院大学のピラミッド校舎らしいが、今もあ
るのだろうか。荒木一郎と小山明子が延々と
歩きながら喋るシーンでは、まだ完成してい
ない首都高の路肩を歩いている。らしい。ま
た、受験生たち(荒木一郎、串田和美、吉田
日出子、宮本信子)が山の上ホテルを下った
道で、黒い日の丸を掲げたデモと遭遇するが、
これは、本作が撮影された1967年から実施
された建国記念の日に反対するデモである。
以上は、すべてモルモット吉田さんのコラム
に依った。映画の感想を書こうとしたのだが、
この「ぴあ」のコラムに知りたいことがぜん
ぶ書いてあって、おまけにエヴァと本作、庵
野と大島との関係まで書いてあってたいへん
興味深く、もう書く事がなくなってしまった。
4.17(土) Amazonプライムビデオ
☆☆☆ 内田吐夢 1965年
水上勉の小説を映画化した、183分の巨編。
気合いを入れないと再生ボタンを押せない
長さのため、1年ほどHDDでしかるべき時
を待っていた。その間、小林信彦はじめ色
んなひとが傑作だ名作だと褒めるので、い
よいよかと意を決して観た、わけだが…。
うーん、そんなにおもしろいかねー?
昭和22年。青函連絡船の沈没事故と、北海
道岩内の火災が同日に起こる。岩内の火災
は強盗三人組が質屋を襲って火をつけたた
めだが、函館に逃げてきた強盗たちは、連
絡船事故の救助の港が大混乱しているのに
乗じて、本州に渡ることを企てる。その船
上で仲間2人を殺害し、金を独り占めした
三國連太郎は無事に逃げおおせ、手がかり
も少ないため、事件は半分迷宮入りとなる…。
三國をしつこく追う刑事を伴淳三郎が演じ、
これはたしかにとても良い。執念と悲哀が
顔から滲み出ている。左幸子が事件の鍵を
握ることになる娼婦を演じているのだが、
登場がいきなりエキセントリックでかなり
ヤバい女である。そして2番手扱いなのに
なかなか出て来ない高倉健。やっと登場し
ても、さほどめざましい活躍は無い。画像
は取調室の高倉、伴、藤田進、三國という
あまりに濃厚な画づら。
ラストもなんかなー。まあそうだよね、と
いう感じ。衝撃は薄い。
4.16(金) BSプレミアム
『神戸・続神戸』
西東三鬼 著 新潮文庫
「京大俳句事件」で検挙されたこともある
俳人の著者が、戦時下の神戸を舞台に書い
た十篇の短篇を集めた「神戸」と、五篇か
らなる「続神戸」を併せて収める。
世界各国から流れ着いた奇人たちと、たく
ましい商売女たちが住む奇妙なホテルが出
てきて、三鬼自身と思しき主人公もそこに
住んでいる。空襲も食糧難もあった神戸だ
が、活写される奇妙な人物たちの言動には
そこはかとない「おかしみ」が含まれてい
て、不思議な明るさがともなっている。
『スクリーンが待っている』
西川美和 著 小学館
『すばらしき世界』制作中の時期に小説誌
「STORY BOX」に連載していたエッセイ。
佐木隆三の『身分帳』を読んで映画化を決
意して間もない時期から始まっており、映
画公開直前の今年1月まで、足かけ3年にお
よぶ息の長い制作過程である。撮影時のエ
ピソードもカラフルでおもしろいが、映画
制作においてカメラをまわしての撮影期間
というのは全体のうちの僅かにすぎない。
脚本も書く西川さんの場合は特に、リサー
チと執筆があり、書きあがったらロケ場所
の選定やら俳優のキャスティング、オーディ
ションがあり、助監督が合流してのこまご
ました詰めの準備を経て、ようやくクラン
クインである。クランクアップするとこれ
また長期間のポストプロダクションがある。
人間の中の、できれば直視せずに済ませた
いような暗部をえぐる作品を作ってきた西
川さんの筆は、時に自分自身にも向けられ
る。若いプロデューサーの意向で、デビュ
ー作からの付き合いの制作部の長をクビに
しなければならなかった顛末など、別に書
かないで済ませることもできただろうが、
書いておきたかったのだろう。痛みを抱え
ながらの文章が心に残る。もちろんいつも
の辛口のユーモアも随所で炸裂していて、
思わず笑う。
☆☆☆★★ 吉田大八 2021年
やー、おもしろい映画だったなー、と思っ
て伸びをしながら劇場を出ると、もうあま
り映画の細部を思い出せない。そういう爽
快感(?)のある快作だった。
原作小説の時点でアテ書きしたという触れ
込みの大泉洋のキャラクターが注目されが
ちだが、私はやっぱり松岡茉優に笑ってし
まう。笑わせようとしていないかのような
芝居がうまいよね。
老舗の出版社を舞台にした権力闘争という
ものがメインになっているが、文藝誌が赤
字を出し続けても平気の平左の、旧態依然
とした権威主義の部署として描かれている
のがやるせない。まあ時代の趨勢といえば
それまでかもしれないが…。じゃあお前は
文藝誌を買って読んで支えているのかと言
われると、ほとんど読んではいない。村上
春樹という字が表紙にあると買っているぐ
らいだ。
しかし最近、國村隼が私の観るあらゆるド
ラマ、映画に出ているんだが、どうしたも
んか。
いちばんウケたのは松岡茉優が宮沢氷魚に
言った「じゃあお前だれだよ!」
4.14(水) 新宿ピカデリー
☆☆☆ 大島渚 1978年
妻(吉行和子)と間男(藤竜也)によって
殺害された人力車夫の夫(田村高廣)が、
亡霊となって家に現れ、真っ赤な眼をして
ずっとうつむいて座っている。妻がこわご
わ呼びかけてもあまり反応はしないが、た
まに発する言葉が妙に優しいのが逆に恐い。
吉行和子は42歳にして女の情念みなぎる難
役にチャレンジして評価も高かったらしい。
濡れ場もあるし、不義密通の罪で藤竜也と
もども、裸で木に吊るされて棒で殴られて
最後は処刑される役である。
わりとオーソドックスな作りの怪談という
趣きだが、やはり大島渚ひとりで脚本を書
いたからなのか、どうも脚本が弱いという
感じが否めず。『絞死刑』に続けて観てし
まったというのも一因かもしれない。
4.13(火) シネマヴェーラ