2021年8月15日日曜日

ハウルの動く城

 
☆☆☆★★   宮崎駿   2004年

観た回数が少ないからか、話がわりに複雑
だからか分からないが、ストーリーをまっ
たく覚えておらず、ほとんど新作を観るよ
うだった。ほんとこんなんで年間100本も
映画を観る意味あるのかね…。

なんとも捉えどころのない話のように今回
も思い、原因はなんだろうと考えると、私
の理解しようという気持ちが足りないだけ
かもしれないが、結局ハウルとカルシファ
ーっていったい何のために何をしてたの?
というのが、観終わっても分からないとい
うことだと思う。

まあそのぐらい大事なことがあやふやなま
までも、あとを付いてくる案山子とか、ル
ーレットみたいのを回すだけで城が違う場
所に移動してるとか、ソフィーとハウルが
空を飛ぶ時の描写とか、そういうのだけで
楽しく観れてしまうのが宮崎映画のすごい
ところでもある。ハウルの魔法の師匠サリ
マンを演じた加藤治子の声が圧倒的だった。
あの威厳…すばらしい。

                                   7.17(土) 日テレ





2021年8月13日金曜日

アジアの天使


☆☆☆    石井裕也   2021年

日韓合作で、かつオール韓国ロケ。
日本からは、泣く子も黙るオダギリジョー
と池松壮亮を出し、向こうからもそれなり
の俳優が出ている、というのに…。
私の好きなロードムービーということもあ
り、だいぶ期待してしまっていたが、この
映画に関しては石井裕也の悪い部分が出て
しまったように思う。感想としては『ハラ
がコレなんで』を観終わった後に近い。
「これ、スベってるんじゃね…」というか。

大切な家族を不意に喪った者どうしが、言
葉の通じない中で少しづつ心を通わせ合い、
認め合って、小さな"癒し"を得る。その過
程は丁寧に描かれているが、そこに「天使」
が絡んでくる必然性がいまいち分からない。
少しネタバレになるが、天使が最後に姿を
現す。その演出が疑問であった。

                           7.14(水) テアトル新宿




2021年8月10日火曜日

読書⑨

 
『往復書簡 限界から始まる』
上野千鶴子 鈴木涼美 著   幻冬舎

またまた「100分 de 名著」の話で恐縮だが
(この番組は私の読書生活に多大な影響を及
ぼしているといっていい)、こないだのボー
ヴォワール『老い』を上野千鶴子が解説した
月はまことにおもしろかった。長年、大学の
教官をしていただけあって喋り慣れているし、
伊集院光の、時に暴投ぎみの「たとえ話」も
きちんと受け止めて返答する。誰でも目を逸
らしたくなる「老い」という問題を、自らに
も引きつけた軽妙な語り口の中に、いろいろ
なもの(家父長制とか、家父長制「的なもの」
とか)と闘いながら道を切り拓いてきた「落
ち着き」と「知性」とがあって、すっかり惹
きこまれてしまった。

そんなわけで出版されたばかりの本書を読む
ことに。するとこれがまたおもしろい。察す
るに鈴木涼美さんのほうは「相手は上野千鶴
子だ。下手なことは書けない」と少々気負っ
ているようにも感じられた出だしだったが、
3往復ほどして、児童文学研究者だった鈴木
さんの母親(灰島かり)との葛藤に話が及ぶ
と明らかに空気が変わっていった。
上野も、39も年下の、まだ自分の負った(も
ちろん自らの責任において、ということだが)
「元AV女優」というスティグマを武器にして
歩き出したばかりの社会学者が相手というこ
ともあり、これまでの「女性学」「フェミニ
ズム」の闘いの歴史をところどころでひもと
くような箇所もあり、正直言ってフェミニズ
ムとかまったく関心の外だった私は、蒙を啓
かれる思いがした。











『子どもは判ってくれない』
内田樹 著    文春文庫

いつもの「ブログ本」ながら、試しにかなり
前に出たものを読んでみた。本書は2003年に
単行本が出ている。2003年といえば9.11もま
だ記憶に新しく、時事的な話題といえばイラ
ク戦争、有事法制、ネオコンの台頭など。で
も収められている記事のほとんどは、村上龍
のエッセイの感想とか、教育の問題とか、読
書についてとか、時事とはあまり関わりのな
い話題である。
何か今の内田樹と変化があるかと思って敢え
て18年前の本を読んでみたが、うーん、あま
り変わってないですね。文体も「まったく変
わっていない」と言っていいだろう。
中に「セックスワーカー」についての長めの
文章があって、ちょうど宮台真司らとともに
上野千鶴子の名も出て来る。まあ、批判的な
文脈の中で、ということだが。
あとわたしたちが本を読むのではなく、「本
にえらばれて」、「本が私を読んでいる」と
感じることが時にある、というようなことを
書いていて、これはなかなかおもしろい文章
であった。


2021年8月8日日曜日

復讐 運命の訪問者

 
☆☆☆   黒沢清   1997年

観る順番が逆になったが、こちらの
方が発売は先。
六平直政が悪役で出てきて、これが
なかなか怖い。悪相で体がデカいう
えに、粗野な暴力の匂いを体中から
発散させている。

哀川翔と六平直政がいよいよ直接対
決、というシーンで、お互いの銃弾
が打っても打ってもどちらにも当た
らないという演出があるのだが、こ
れの意図が謎であった。

                      7.13(火) 新文芸坐




2021年8月6日金曜日

復讐 消えない傷痕

 
☆☆☆     黒沢清    1997年

哀川翔を主演に、予算圧縮のため2本同時
作製で撮られたVシネマ。半年前に公開
(Vシネマだから「発売」か?)された
『復讐 運命の訪問者』と似た設定、ロ
ケ地もなるべく同じ場所が使われている。
同様の成り立ちの『蛇の道』『蜘蛛の瞳』
はときどき名画座でやっているのを見かけ
るのだが、こちらはほとんど掛かることの
ない映画なので、やっと観ることができた
という感じ。

冒頭、東京湾にほど近い小屋での殺人をロ
ングショットの長回しで収めるあたりに
「らしさ」が感じられる。ハードボイルド
な復讐ものながら、随所に遊び心が見られ
る。でもまあ安っぽさは否めない。

                                 7.13(火) 新文芸坐




2021年8月4日水曜日

その男、凶暴につき

 
☆☆☆★★    北野武   1989年

深作欣二の代理で…などともうくどくど
説明を繰り返すことはしないが、映画監
督・北野武がここから始まったのは確か
なことである。
『ダーティ・ハリー』のイーストウッド
を思わせる暴力刑事が、警察内部にまで
巣食っている巨大な"悪"に立ち向かい、
そして散っていく。知的障害のある妹が
巻き込まれて麻薬漬けにされるというと
ころが、映画の後味を苦いものにしてい
る。

サティの"グノシエンヌ"を使った劇伴も
秀逸。

                                7.8(木) 新文芸坐




2021年8月2日月曜日

3-4x 10月

 
☆☆☆★★★   北野武     1990年

文芸坐にて、初期のたけしを2本。スク
リーンで観るのは初めてであり、滋養の
あるスープを味わうような感じで堪能し
た。まだ「キタノブルー」の時期ではな
いが、大胆な省略によって生まれる独特
のリズム、乾いた笑い、そして突発的な
暴力が持ち味。初期のたけしの映画は私
にいつも「映画の愉楽」という言葉を想
起させるのである。

20歳の石田ゆり子、がんばっている。
沖縄パートまでたけしは登場しないが、
日焼けした顔を黒光りさせながら出てき
てからの迫力がすごい。いつも苛立って
いて、すぐビール瓶でひとを殴ろうとす
る。たけしの側近を演じた渡嘉敷くんが
また最高の芝居をしている。たけしの代
わりに理不尽に指を詰めさせられるシー
ンの熱演なんてすばらしい。

                              7.8(木) 新文芸坐