2022年8月22日月曜日

馬上の二人


☆☆☆★  ジョン・フォード   1961年

ジェームズ・スチュワート、リチャード・ウィ
ドマークの共演。
数少ないフォードのカラー作品のひとつ。
話としては新味はなく、コマンチ族にさらわ
れた白人の子どもたちを奪回するため、軍に
一時的に雇われた保安官のジェームズ・スチュ
ワート。彼はかつてコマンチの酋長と取引を
した実績があるのである。意に沿わない任務
と安い報酬に思いっきり毒づく保安官と、そ
れを宥めながら命がけの道行き(コマンチは
白人を殺して頭の皮を剝ぐという設定)を共
にする紳士的な騎兵隊員リチャード・ウィド
マークとの対比がおもしろい。というか、そ
れがこの話のすべてである。途中の川べりで
の二人の長いワンカットには唸らされるが、
蓮實氏がしきりにフォードの晩年の作品を美
しいと形容する、その意味はいまだに図りか
ねている。

                             8.11(木) BSプレミアム




2022年8月15日月曜日

読書⑥


『ショットとは何か』
蓮實重彥 著   講談社

映画において題名のとおり「ショットとは何
か」ということを、新旧問わず、洋の東西問
わず、膨大な「映画の記憶」を参照しながら
考察していく。

『見るレッスン』と内容的にカブる部分もあ
るが、まあ出てくる知らない映画の多さよ。
そしてそもそもの始めから、蓮實氏の映画の
見方が普通じゃないことが垣間見えるエピソ
ードが印象的。
『リオ・グランデの砦』(1950)でジョン・
ウェインがマッチを擦ってランプを灯すと暗
闇にいたモーリン・オハラが現れる場面を目
にして、中学生の頃に観た『わが谷は緑なり
き』(1941)の類似したショットと「同じこ
とをやっている!」と思った、というのだか
ら、もう最初から映画を「ショットの連鎖」
に還元して見る習慣が自然とあったというこ
とである。ちなみに私は公開年が9年離れた
この2本のジョン・フォードの映画を、来た
る『ジョン・フォード論』の予習のために
半年ほどの間しか空けずに観たのであるが、
「言われれば、そんな場面があったかなー」
程度の記憶である。













『緑の歌』
高 妍 作    ビームコミックス

『猫を棄てる』の挿絵を描いた台湾の女の子
の作品。村上春樹と細野晴臣への愛があふれ
たマンガで、なんだか自分の学生時代を読ん
でいるようでこそばゆい感じもある。そして
「プラトニック」という辞書の項目に載せた
いほどの素朴な純愛ストーリーに、忘れかけ
ていた何かを図らずも思い出しそうになる。
友人と行った細野さんの50周年コンサート
(@国際フォーラム)初日がマンガに描かれ
ていて驚き。


2022年8月4日木曜日

【LIVE!】 小沢健二


So kakkoii 宇宙 Shows

01. 流動体について
02. 飛行する君と僕のために
03. 大人になれば
04. アルペジオ
05. いちょう並木のセレナーデ
06. 今夜はブギー・バック/あの大きな心
07. あらし
08. フクロウの声が聞こえる
09. 天使たちのシーン
10. ローラースケート・パーク
11. 東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー
12. 運命、というかUFOに(ドゥイ、ドゥイ)
13. 強い気持ち・強い愛
14. 天気読み
15. 高い塔
16. 泣いちゃう
17. ある光
18. 彗星

<Encore>
01. 失敗がいっぱい
02. ドアをノックするのは誰だ?(イントロのみ)
03. ぼくらが旅に出る理由
04. 薫る(労働と学業)
05. 彗星

                  6.25(土) 東京ガーデンシアター


もともとは2020年、ガーデンシアターのこけ
ら落としだったはずの公演が、1年延期され、
さらにまさかのもう1年延期されての、ようや
くの開催。このライブに込めるオザケンの気合
いはバンドメンバーの衣装を手がけることを始
めとして、凝りに凝りまくったメドレー中心の
新旧を自在に行き来するセットリスト、「離脱
!」の掛け声で演奏のテンポが半分になる謎の
ややこしいルール、そして物販にまで漲ってい
た。

何より驚いたのは、オケの指揮者(しかも服部
隆之)やハープ奏者までいる30人の大編成バン
ドなのに、ギターはオザケン本人だけ。サポー
トギターなし! リズム楽器でもあるギターの
テンポがほんのちょっとでも狂うと、とっても
カッコわるいことになるのに、それを歌いなが
ら1人で完璧にやる、しかも恐ろしく複雑なメ
ドレー構成と「離脱!ルール」まであって、す
べてをミスなくこなすのはまさに至難というか
ほとんどミッション・インポッシブルと言って
よいだろう。よほどの自信とみた。そして実際
オザケンは歌いまくりの弾きまくりでやっての
けたのである。細かい部分ではミスだらけと本
人は言っていたが、正直ぜんぜん分からなかっ
た。
ついでにいうとコーラス隊もおらず、3曲ぐら
いでバンドの誰かがコーラスを入れてた以外
は、歌声すべてがオザケンのみ。よっぽど自
信がある…のかは分からないが。
それにしても充実したライブで、もちろん2年
待った甲斐があったというか、天才が気合い
入れて準備するとここまでになるのか、とひ
とつの到達点を見せられた思い。

ベストアクトは、「フクロウの声が聞こえる」
の熱唱・熱演もかなり良かったのだが、前もそ
の曲にした気がするので、「泣いちゃう」~
「ある光」の流れに。

2022年7月23日土曜日

彼女が好きなものは

 
☆☆☆★   草野翔吾   2021年

2本目は、3年前のNHKドラマ「腐女子、うっ
かりゲイに告る」と同じライトノベルの映画
化。ドラマで藤野涼子と金子大地だった役を、
こちらでは山田杏奈と神尾楓珠が演じる。そ
う、実験都市UAの総理と総理補佐官はすでに
映画で共演済みだったのである。

ドラマ版と映画版であまり違いはない、とい
うかほとんど同じなのだが、ひとつ決定的な
のは映画ではこの話の重要なファクターであ
るQUEENの曲が1曲たりとも流れないという
ことである。権利の問題なのだろうか。ドラ
マでは自由に使えていたので、余計にその
「不在」が目立つことになる。ならいっその
ことQUEENを別のバンドに置き換えてもよ
かったのでは……と思ってしまう。

まあでも浴衣姿の山田杏奈がめちゃ可愛いの
でよしとしよう。

                             6.19(日) 目黒シネマ




2022年7月17日日曜日

ひらいて

 
☆☆☆★★  首藤凛   2021年

目黒シネマにて、山田杏奈の主演作2本立て
という秀逸な企画。
「17才の帝国」で"とちおとめ"こと総理補
佐官を演じた山田杏奈があまりに可愛いの
で、今までどんな作品に出ていたんだ…見
逃していた…と思っていた私のための企画
なのではないかと、呼ばれるような思いが
して、つい駆けつけてしまう。

綿矢りさ原作の学園ドラマ。山田杏奈は好
きな男子を手に入れるために、レズビアン
のフリをして男の彼女を篭絡するという、
なんだか遠回りなことをする"愛"という名
のヒロインを演じる。打算的な面と直情的
な面が共存していて、おおかた不機嫌な顔
をしていることが多いのだが、それもまた
良し。というか、学校が舞台で「嘘つきで
性格がわるいコ」が主役というのは意外と
珍しいのではないか。

カラオケであいみょんを歌うシーンがあっ
て、いまだに映画で女の子がカラオケで歌
う場面があると『谷村美月17歳、京都着。
~恋が色づくその前に~』を必ず思い出し
てしまう私はおかしいのでしょうか。心理
的なオブセッションかもしれない。

                              6.19(日) 目黒シネマ




2022年7月11日月曜日

オフィサー・アンド・スパイ

 
☆☆☆★  ロマン・ポランスキー  2022年

歴史的なスパイ冤罪事件“ドレフュス事件”の
映画化。
ユダヤ系の陸軍大尉ドレフュスにルイ・ガレ
ル。あらぬ罪を着せられたのは、ユダヤ人差
別が根柢にあるわけである。新たに情報局長
に任命され、冤罪を晴らす証拠を発見するピ
カール中佐にジャン・デュジャルダン。原題
でもある"J'accuse" 「私は告発する」と題し
た激烈な告発文を執筆してドレフュスとピカ
ールを擁護した文豪エミール・ゾラにアンド
レ・マルコン。
私は最近までドレフュス事件を知らなかった
が、『日本の黒い霧』の鹿地亘事件の項で、
松本清張が「みなさんご存じの」という感じ
で「ドレフュス事件」をしきりに引き合いに
出していた。当時は有名だったのだろう。こ
の映画を観たのはポランスキーの映画を久々
に観たかったからである。

開巻早々、「字幕監修:内田樹」の文字に驚
く。フランス映画なのに加えて、ユダヤ差別
が絡んでいるからの人選か。まあ、そうとう
な映画好きだから喜んでやってくれたのでは
ないかと想像する。

                     6.16(水) TOHOシネマズ新宿




2022年7月2日土曜日

長江哀歌

 
☆☆☆★   ジャ・ジャンクー  2007年

2009年の完成予定の、長江・三峡ダム建設
プロジェクト。一大国家事業により水没する
運命にある古都・奉節を舞台に、16年会っ
ていない妻を探す男と、半年に一度ほどしか
連絡をよこさない夫を探しにきた女の物語が、
ゆったりと紡がれていく。悠々と流れる長江
には当然、ゆったりとしたカメラワークが似
つかわしい。

ジャ・ジャンクーの代表作とはいえ、地味な
映画である。まず画が地味である。登場人物
の9割が「半裸のおじさん」か「タンクトッ
プのおにいさん」であり、あまり見目麗しい
とは言い難い。主役の男からして、村上春樹
をむさくるしくしたような、冴えないおじさ
んである。とても主役とは思えない。彼がう
ろうろと妻を探すさまを追ううちに、ダムの
底に沈んだ町、これから水没することが運命
づけられている町、そこに生きる人々の姿が
映し出される。

淡々と進む物語の途中で、CGを使ったカット
が2カットあり、意外とおちゃめな監督なんだ
な…と思う。

                              6.15(火) BSプレミアム