2022年7月23日土曜日

彼女が好きなものは

 
☆☆☆★   草野翔吾   2021年

2本目は、3年前のNHKドラマ「腐女子、うっ
かりゲイに告る」と同じライトノベルの映画
化。ドラマで藤野涼子と金子大地だった役を、
こちらでは山田杏奈と神尾楓珠が演じる。そ
う、実験都市UAの総理と総理補佐官はすでに
映画で共演済みだったのである。

ドラマ版と映画版であまり違いはない、とい
うかほとんど同じなのだが、ひとつ決定的な
のは映画ではこの話の重要なファクターであ
るQUEENの曲が1曲たりとも流れないという
ことである。権利の問題なのだろうか。ドラ
マでは自由に使えていたので、余計にその
「不在」が目立つことになる。ならいっその
ことQUEENを別のバンドに置き換えてもよ
かったのでは……と思ってしまう。

まあでも浴衣姿の山田杏奈がめちゃ可愛いの
でよしとしよう。

                             6.19(日) 目黒シネマ




2022年7月17日日曜日

ひらいて

 
☆☆☆★★  首藤凛   2021年

目黒シネマにて、山田杏奈の主演作2本立て
という秀逸な企画。
「17才の帝国」で"とちおとめ"こと総理補
佐官を演じた山田杏奈があまりに可愛いの
で、今までどんな作品に出ていたんだ…見
逃していた…と思っていた私のための企画
なのではないかと、呼ばれるような思いが
して、つい駆けつけてしまう。

綿矢りさ原作の学園ドラマ。山田杏奈は好
きな男子を手に入れるために、レズビアン
のフリをして男の彼女を篭絡するという、
なんだか遠回りなことをする"愛"という名
のヒロインを演じる。打算的な面と直情的
な面が共存していて、おおかた不機嫌な顔
をしていることが多いのだが、それもまた
良し。というか、学校が舞台で「嘘つきで
性格がわるいコ」が主役というのは意外と
珍しいのではないか。

カラオケであいみょんを歌うシーンがあっ
て、いまだに映画で女の子がカラオケで歌
う場面があると『谷村美月17歳、京都着。
~恋が色づくその前に~』を必ず思い出し
てしまう私はおかしいのでしょうか。心理
的なオブセッションかもしれない。

                              6.19(日) 目黒シネマ




2022年7月11日月曜日

オフィサー・アンド・スパイ

 
☆☆☆★  ロマン・ポランスキー  2022年

歴史的なスパイ冤罪事件“ドレフュス事件”の
映画化。
ユダヤ系の陸軍大尉ドレフュスにルイ・ガレ
ル。あらぬ罪を着せられたのは、ユダヤ人差
別が根柢にあるわけである。新たに情報局長
に任命され、冤罪を晴らす証拠を発見するピ
カール中佐にジャン・デュジャルダン。原題
でもある"J'accuse" 「私は告発する」と題し
た激烈な告発文を執筆してドレフュスとピカ
ールを擁護した文豪エミール・ゾラにアンド
レ・マルコン。
私は最近までドレフュス事件を知らなかった
が、『日本の黒い霧』の鹿地亘事件の項で、
松本清張が「みなさんご存じの」という感じ
で「ドレフュス事件」をしきりに引き合いに
出していた。当時は有名だったのだろう。こ
の映画を観たのはポランスキーの映画を久々
に観たかったからである。

開巻早々、「字幕監修:内田樹」の文字に驚
く。フランス映画なのに加えて、ユダヤ差別
が絡んでいるからの人選か。まあ、そうとう
な映画好きだから喜んでやってくれたのでは
ないかと想像する。

                     6.16(水) TOHOシネマズ新宿




2022年7月2日土曜日

長江哀歌

 
☆☆☆★   ジャ・ジャンクー  2007年

2009年の完成予定の、長江・三峡ダム建設
プロジェクト。一大国家事業により水没する
運命にある古都・奉節を舞台に、16年会っ
ていない妻を探す男と、半年に一度ほどしか
連絡をよこさない夫を探しにきた女の物語が、
ゆったりと紡がれていく。悠々と流れる長江
には当然、ゆったりとしたカメラワークが似
つかわしい。

ジャ・ジャンクーの代表作とはいえ、地味な
映画である。まず画が地味である。登場人物
の9割が「半裸のおじさん」か「タンクトッ
プのおにいさん」であり、あまり見目麗しい
とは言い難い。主役の男からして、村上春樹
をむさくるしくしたような、冴えないおじさ
んである。とても主役とは思えない。彼がう
ろうろと妻を探すさまを追ううちに、ダムの
底に沈んだ町、これから水没することが運命
づけられている町、そこに生きる人々の姿が
映し出される。

淡々と進む物語の途中で、CGを使ったカット
が2カットあり、意外とおちゃめな監督なんだ
な…と思う。

                              6.15(火) BSプレミアム




2022年6月21日火曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN

 
 KYO-MEIワンマンツアー ~アントロギア~

 1. ユートピア
 2. ヒガンバナ
 3. 声
 4. 戯言
 5. 深海魚
 6. 生命線
 7. 疾風怒濤
 8. 桜色の涙
 9. 美しい名前
10. 夢路
11. 空、星、海の夜
12. 瑠璃色のキャンバス
13. ウロボロス
14. コバルトブルー
15. 太陽の花
16. 希望を鳴らせ
17. JOY

<Encore>
 1. ネバーエンディングストーリー
 2. 光の結晶
 3. グローリア
 
         6.10(金) Zepp DiverCity


アルバム『アントロギア』を引っ提げてのツ
アー。Zeppなのに椅子が並べられ、声も禁止。
まったくねぇ、いつまでこんな状況が続くの
やら。

言うまでもなくレコ発ツアーとはその元とな
る新譜が大事で、それは曲数をいちばん多く
やるからというのもあるけれど、やはり昔の
人気曲をやるにしても、どことなく新譜に漂
う「今のバンドのムード」が投影されてしま
うものだからでもある。
そういう「バンドの今」と昔の曲とのミック
ス具合がいつも絶妙で唸らされるのがバック
ホーンというバンドで、私が愛してやまない
理由でもあるのだが、今回は新譜の『アント
ロギア』がライブの燃料としてはそもそも若
干のパワー不足のような気がする。
それでもM8「桜色の涙」までは良かったの
だが、「美しい名前」で明らかに失速した感
が否めず。私がこの曲をライブで聞き飽きた
というのを差し引いても…。以降はなんとな
く低調なまま本編は終了。

アンコールはカーペンターズを意識したとい
う、アルバムでも明らかに浮いていたので個
人的にはやらなくていいと思っていた曲から
スタートしたが、これが意外に良くて、染み
た。聴いてみないと分からないものだ。続い
ての「光の結晶」~「グローリア」の流れが
このライブの中ではいちばんグッときたので
あった。
ベストアクトは「グローリア」にしたいとこ
ろだが、アンコール曲なのでやめて、「疾風
怒濤」。




2022年6月17日金曜日

流浪の月

 
☆☆☆★★    李相日   2022年

昔から「重たい」映画を撮る李相日が、全力で
重たい映画を撮った感じ。好意的に"重厚"と置
き換えてもいいが、150分ギリギリと苛まれる
ように観客を追い込んでいく映画はやはり「重
たい」。

女児誘拐事件をモチーフにした話で、松坂桃李
が事件で逮捕された大学生、広瀬すずは当時10
歳だった被害者のその後を演じる。2人ともと
てもいい。すずちゃんもとうとう大人の女性を
演じて違和感のない年齢になりましたな…。
まあ幼い頃から性的虐待を受けて、婚約者から
も殴られ、別れようとしたら付きまとわれ、自
分をかつて誘拐した罪で逮捕された「おにいさ
ん」の隣の部屋に引っ越して住むという、だい
ぶ特殊な事情の大人の女性ではあるが。そして
横浜流星の「ヤバい奴」っぷりも素晴らしい。
目が恐いよね。

観客も追い込むし、役者も徹底的に追い込むこ
とで有名な李相日は今作でも飽くことなく、納
得のいくまでとことんリハーサルを繰り返した
らしい。「情熱大陸」でもその一端は垣間見ら
れたし、そういう妥協のない姿勢はおのずと画
面にも出るものだと思う。
軽々しく「おもしろかった」なんて言えない雰
囲気の映画ではあるが、1800円の価値はあると
は確信をもって言える。

                              5.21(日) 新宿バルト9




2022年6月4日土曜日

ユリイカ

 
☆☆☆★★★   青山真治  2001年

バスジャック事件に巻き込まれ、たまたま
乗り合わせただけの乗客が目の前で射殺さ
れるのを見てしまった兄妹。兄(宮崎将)
の心はそこで壊れてしまったのだろう。
一方でなんとか持ちこたえた妹(宮崎あお
い)は、同じ事件で死の恐怖を味わったバ
ス運転手(役所広司)との共同生活の中で、
少しづつ再生への道を歩み始める。

監督・青山真治の代表作といえば、やはり
本作を措いてないだろう。ショットに漲る
緊張感がハンパではない。邦画ではあまり
感じたことのない映画としての「柄の大き
さ」があるし、上映時間217分という長い
長い旅だが、始まってしまえばスクリーン
に釘付けで、まったく苦痛を感じなかった。

と、初めて観たように書いているが、大学
2年生のいろいろと映画を観始めた頃に、
VHSで観ている。実に17年ぶりですな…。
ほとんどすべてを忘れていて、こんなに何
もかも忘れて果たして(以下同)

今回は「デジタル・マスター完全版」なる
ものを鑑賞。すばらしい体験だった。また
機会があったら映画館で観たいぐらいであ
る。

                           5.17(火) テアトル新宿