2023年6月6日火曜日

シン・仮面ライダー

 
☆☆☆★★   庵野秀明   2023年

さーて、『怪物』観たから感想でも書くかー、
とメモ帳のファイルを開いたら(この原稿は
メモ帳で書いている)、白紙のままのこの映
画のタイトルと日付が出てきたのである…。
あいたー、完全に忘れてた。
おもしろかったし、周りに観たひとも何人か
いたので、感想を喋ったりしたのもあり、も
うすっかりブログも書いた気でいたのであっ
た。

本作が『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラ
マン』と一線を画すのは、明らかに身体性と
いうか、言ってみれば「暴力性」を正面から
描いている点であり、主演の池松壮亮にかか
る負担も大きかったであろう。NHKでドキュ
メンタリーも放送されたが、庵野はアクショ
ン映画としての新しさを希求するあまり、段
取りとしての「殺陣」を否定していく。それ
はアクションのプロを排除して、いわばアク
ションにおいては「素人」である一介の俳優
に多くを負わせることになり、用意してきた
段取りを一刀のもとに捨てられる現場スタッ
フは疲弊していく。それでも段取りと練習を
積み重ねることからは得られない「生」の瞬
間をなんとかフィルムに焼きつけようと、庵
野は苦闘しているようだった。

そして本作がこれまでの「シン」シリーズと
一線を画すのはもうひとつ、魅力的なヒロイ
ンがいるということである。浜辺美波。あん
なとんでもない撮影現場でよくこれだけの芝
居をしたものだと感心してしまう。

                     3.28(火) TOHOシネマズ池袋




2023年5月13日土曜日

読書④

 
実は二冊とも年明けぐらいに読み終わってい
たのだが、記事を書くのを後回しにしていた
のであった…。もう5月だ。後回しにし過ぎ。


蝶々と戦車 何を見ても何かを思いだす
 ヘミングウェイ全短編3
ヘミングウェイ 著  高見浩 訳  新潮文庫

全短編のシリーズもこれで完結。
ヘミングウェイの作家人生をおおざっぱに
「パリ時代」「キー・ウェスト時代」「キュ
ーバ時代」とくくった時の、「キューバ時
代」に書かれた短編と、書かれた時期は不
明の生前未発表のものを網羅する。
はじめの方は、スペイン内戦を取材したこ
とをもとにした短編が多く収録されており、
スペイン内戦に無知な私にはいまいち事情
が分からない。もちろん会話や文章の端々
にひりひりした空気は伝わってくるが。
その他のものはあいかわらず切れ味するど
い短篇が並んでいる。「ある渡航」や「ポ
ーター」という作品などは、その瑞々しさ
に驚かされる。「アフリカ物語」もいいで
すねー。

『街とその不確かな壁』を読んでいたら、
「ヘミングウェイの短篇の出だしみたいだ」
というセリフがあり、偶然にも去年からこ
のシリーズを読んでいた私は思わずニヤリ
としたことですよ。

















『古くて素敵なクラシック・レコードたち』
村上春樹 著  文藝春秋

いちおう発売してすぐ買ったんですけどね…。
この本で村上春樹が嬉々として自前のアナロ
グ盤のジャケットとともに紹介しているクラ
シックが、全然知らない曲ばかりなので、
YouTubeなどで探して聴きながらちびちびと
少しづつ読んでいるうちに、2年ほど経って
しまった。しかも読み終わらないうちに続編
まで出てしまった。
しかしこれを読みながら「ふむふむ、あの曲
ね」と頷きながら楽しめるひとは、相当な知
識を有するひとだけだろう。私は正直、どう
読んでいいものか、困惑する本だった。ルー
ビンシュタインの弾くシューベルトのピアノ
ソナタ21番にはとても興味をそそられたので、
買おうと思ってタワーレコードに行ったのだ
が、どうやらCDでは出ていないらしい。実用
的な本、というわけでもないのである。



2023年4月29日土曜日

読書③

 
『街とその不確かな壁』
村上春樹 著   新潮社

新作は中篇らしいという話もあったのでそんな
に長くはないのかと思っていたら、意外なほど
厚い本が店頭に積み上げられていた。

影をもたないひとびとの暮らす高い壁に囲まれ
た街、金色の毛をもつ単角獣、図書館で「古い
夢」を読む「夢読み」などなど、懐かしいモチ
ーフが登場して、「いま」の村上春樹の文章で
書き直されていく。比喩は前作より多めで、お
もしろいものが多数あった印象。打率が高いと
いうか。

ものすごく珍しい「あとがき」によると、その
昔「文學界」に発表した「街と、その不確かな
壁」は『世界の終りとハードボイルド・ワンダ
ーランド』に生まれ変わることで完全に昇華さ
れたのだとわれわれ読者は思っていたが、春樹
のなかではまだ終わっていなかったということ
らしい。「夢」はいつも村上春樹の小説の中で
重要な意味を持つが、「高い壁に囲まれた街」
がそれほど決定的に重要なモチーフだったとは。
しかし40年越しの執念をもって書き直さねばな
らないほどの小説だったのかというと、読み終
えたばかりのいまは、もうひとつ腑に落ちない
ところはある。また2年ほど置いて読み直せば
感想も違ってくるとは思うのだが。




2023年4月9日日曜日

フェイブルマンズ

 
☆☆☆★★★  スティーヴン・スピルバーグ 2023年

スピルバーグの自伝的な物語。
「FABLEMAN」というのはファミリーネーム
で、名乗るだけで英語圏のひとには一発でユ
ダヤ系であることが分かるらしい。もちろん
スピルバーグはユダヤ系である。
ひさびさの映画館に心が浮きたっていたのも
後押ししたのか、151分の長尺とはとても思
えない幸福な時間だった。体感は100分。

映画づくりに魅せられるとは、深い業を背負
うこと…。なるほど自分の好きに映画を撮っ
て評価されてきたと思われがちなスピルバー
グにも、葛藤や苦悩はあったということか。

やはりこの世代の映画人にとって映画の神様
はジョン・フォードなのである。デヴィッド・
リンチが演じたフォードはインパクト大。そ
れに関連したラストカットが洒脱で微笑まし
い。

                        3.20(月) TOHOシネマズ池袋




2023年3月28日火曜日

【LIVE!】 スガシカオ

 
 26th Anniversary Live 『Hitori Sugar VS ファンクザウルス』

 『Hitori Sugar(弾き語り)』
 1. ヒットチャートをかけぬけろ
 2. 労働なんかしないで光合成だけで生きたい
 3. スターマイン
 4. 灯火
 5. そろそろいかなくちゃ
 6. Party People
 7. アストライド
 8. さよならサンセット
 9. 深夜、国道沿いにて
10. Progress
 
 『ファンクザウルス』
11. バカがFUNKでやってくる
12. ぼくはマザコン
13. したくてたまらない
14. GoGoメドレー
 叩けばホコリばっかし-short ver.-~たとえば朝のバス停~Fire~ハーレ
 ムノクターン~USO~メルカリFUNK-short ver.-
15. スガシカオで領収書ください
16. おれのせい
17. おれたちはこれでいいのか

                       2.26(日) 中野サンプラザ

ほぼ開店休業のこのブログであるが、いちおう
ライブにも行っている。まれに。

今回はスガシカオのいつものサンプラーなんか
を駆使した楽しい弾き語りが前半、後半は近年
シカオちゃんが半分お遊び半分本気でやってい
るファンクバンドの公演、という一応「対バン
形式」のライブ。どちらもスガシカオが中心な
ので対バンにはなっていないが。

Hitori Sugarはもう立派にお金をとれるパフォ
ーマンスに仕上がっていて、声もよく出ている
し、とても良い。ひさしぶりに聴いた「そろそ
ろいかなくちゃ」がワンフレーズ目からじわり
と染みた。
ファンクザウルスは、腕利きミュージシャンた
ちがみんなでバカバカしいファンクを炸裂させ
ている様はほほえましいが、いかんせん曲があ
んまりおもしろくない。今のところ。

ベストアクトは「そろそろいかなくちゃ」。




2023年3月4日土曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


マニアックヘブンVol.15

 1. カウントダウン
 2. 運命複雑骨折
 3. ペルソナ
 4. 白夜
 5. シェイク
 6. がんじがらめ
 7. 雨に打たれて風に吹かれて
 8. 神の悪戯
 9. コンクリートに咲いた花
10. クリオネ
11. ヘッドフォンチルドレン
12. フリージア
13. 泣いている人
14. 突風
15. 一つの光
16. 閃光
17. カナリア

(Encore)
 1. 天気予報
 2. 上海狂騒曲
 3. さらば、あの日

                   1.14(土) 中野サンプラザ

とっても今更ですが、年明けにあったライブ
です。えーと、もうだいぶ忘れかけているが、
よかったと思います。
スタジオコーストがなくなり、初めてサンプ
ラザでおこなわれたマニアックヘブンだった
が、まあいつも通り、かな。
いつも言ってる気がするけど、サンプラザの
音響はトゲがなくてまろやか、かつ豊かな感
じで、演奏がいつもよりうまく聞こえる。
選曲は、新しめの曲がすごく増えてきていて、
それらの曲はまあどうしても思い入れはさほ
ど無い。
「天気予報」で山田がドラムをやけくそのよ
うに強くたたいていた。
ベストアクトは「運命複雑骨折」。血湧き肉
躍る。




 

2023年2月11日土曜日

読書②

 
『騎士団長殺し』
「第一部 顕れるイデア編」
「第二部 遷ろうメタファー編」

2017年に出版されてすぐに読んで以来の再読。
もう6年にもなるか。もちろん、春の新作刊行
を知っていたわけでは「あらない」。読みなが
ら、そろそろ次の長篇を書いている頃かなー、
と思ってはいたが。

春樹なりの「ギャツビー」へのオマージュとい
う面の色濃いこの小説の肝はなんといっても、
ギャツビーである免色と、デイジーである秋川
まりえのキャラクター造形にあると思われる。
とりわけ免色と、彼が住む谷向かいの白い豪邸
とが、物語の基調をなす。主人公の「私」には
最後まで名前は与えられず、記述者としての役
割を担いながら、「ギャツビー」という容器に
満たされたまったく別個の物語を語り始める。

しかしそもそも「ギャツビー」の物語の骨格っ
て、そんなにおもしろいものなんだっけ? な
どと考えながら読んでいたが、春樹のその試み
は充分に成功しているとは言い難い、というの
が再読の印象。