本年もよろしくお願いします。
ほそぼそと続けていきます。
<2025年>
鑑賞本数は24本。
うち2025年公開作17本、旧作はけっこう増え
て7本。旧作も含めて、ほぼすべてを映画館で
観た。この少ない本数でも☆☆☆★★★の高
評価をつけた映画が7本もあった。2024年公
開の『至福のレストラン 三ツ星 トロワグロ』
を含めると8本。打率のよさから言っても、
豊作の年だったと言えるだろう。
その7本には優劣を付ける手間をかけるより、
すべてを並列で扱って賞賛するほうが生産的
だろうと思い、7本ともベストということに
したい。
①『敵』(吉田大八)
筒井康隆の短篇が原作。未読。
長塚京三の「老醜」をも厭わない、それでい
て気品のある演技が出色である。
淡々とした日常を折り目正しく生きている…
と思わせて実は妄想が現実をひたひたと侵し
はじめ、瀧内公美と河合優実により掻き立て
られる老人の性欲…。この2人なら仕方ないか。
②『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(大九明子)
ジャルジャル福徳秀介の小説が原作。未読。
別にモテないわけでもないが交際には至らな
い大学生の生態の現代版という感じ。
ミューズとしての河合優実がすばらしいが、
伊東蒼の完璧な長台詞にも脱帽である。
映画的な「仕掛け」に満ちていて、観ていて
実に楽しかった。
③『国宝』(李相日)
吉田修一の長篇が原作。小説は既に楽しんだ。
「一緒に食事している時の『歌舞伎の映画を
撮ってみたいと思っている』という李の言葉
が吉田を触発して『国宝』が書かれた」とい
うのだから、吉田修一と李相日の関係という
のは通常の小説家と映画監督の関係とは異な
るようだ。ただこれまでの3作にわたる映画
化の中でも最良の結果が『国宝』で結実した
のは間違いないと思われる。この映画を観て
吉沢亮、横浜流星に敬意を抱かないひとは稀
であろう。そしてここでも瀧内公美が終盤の
おいしい役どころ。
④『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
(ジェームズ・マンゴールド)
イライジャ・ウォルド『Dylan Goes
Electric!』が原作。
よくあるミュージシャンの伝記映画と言えな
くもないが、ボブ・ディランといういつまで
も正体が謎のままの男の、ごく若い時だけに
焦点を絞ったのが奏功したか。
ティモシー・シャラメの「なりきり」も見事
だし、エドワード・ノートンの助演がまたす
ばらしい。
⑤『秒速5センチメートル』(奥山由之)
新海誠のアニメーションが原作。観ていない。
おそらく7本の中で映画好きからの評価は最
も低いだろうと思うが、私は心がざわざわす
るのを感じたというか、単純に良い映画だと
思った。音楽の使い方も見事である。
⑥『旅と日々』(三宅唱)
つげ義春の短篇2本が原作。たぶん読んだ。
河合優実を主役とした前半の夏パートと、
シム・ウンギョンを主役とした冬パート。
どちらも甲乙つけがたいすばらしさ。余白
の多いつげ義春のマンガと映画は相性がい
いような気がするが、かなり悩みながらの
制作だったらしい。
⑦『ワン・バトル・アフター・アナザー』
(ポール・トーマス・アンダーソン)
トマス・ピンチョン『ヴァインランド』に
"inspired"、とのこと。未読。
おもしろさの衝撃という点では本作がいち
ばんであった。革命を企む活動家たちと、
それを追いつめる軍人という使い古された
ような容れ物に、これほど刺激的で充実し
た内容を注入できるとは驚くほかない。
ディカプリオとショーン・ペン、そこにほ
ぼ新人に近いチェイス・インフィニティが
加わり、化学反応が起こっている。そして
毎度のことながらサントラが欲しくなるほ
ど音楽が魅力的。ポール・トーマス・アン
ダーソン万歳である。
今年も良い映画に出会えますように。