2013年10月30日水曜日

秋の読書①


『恋しくて』
村上春樹 編・訳   中央公論新社

当然、春樹の新作短篇「恋するザムザ」目当てで買い、
真っ先に読んで「ヘンな話」と思ったわけだが、それ以外
の春樹セレクトの短篇もなかなかおもしろい話が多かった。

「ジャック・ランダ・ホテル」なんていう短篇は特に変わって
て、おもしろい。
…と思ってたら、著者のアリス・マンローってこんどのノー
ベル文学賞のひとだね。なるほど。興味が湧いた。
短編集は何冊か出ていて、高松在住の主婦がこれまでの
作品をこつこつ訳してきているらしい。こういうの、良いよね。

他にも良作多数。個人的には『バースデイ・ストーリーズ』
よりも好きです。










『ぼくの歌、みんなの歌』
森達也 著     講談社文庫

毎回ある1曲(もしくはあるミュージシャン)をとりあげて、
森さん自身の状況と当時の時代背景を重ねながらつづる、
割合パーソナルなエッセイである。自伝的、といったら
おおげさか。しかし「歌」への個人的な思い入れを語るに
はどうしても自分史的な言及をせざるを得ないよね。
こういう本は選曲が自分と合わないと読む気がしないが、
森さんとは趣味が合うらしい。私も好きな曲ばかりだった。





2013年10月27日日曜日

【LIVE!】いきものがかり


 1   1.2.3 ~恋が始まる~
 2   気まぐれロマンティック
 3   マイサンシャインストーリー

 4   風が吹いている
 5   あしたのそら
 6   なんで
 7   恋愛小説

(センターステージ)
 8   月とあたしと冷蔵庫
 9   東京

10   MONSTER
11   ぱぱぱーや
12   うるわしきひと
13   キミがいる
14   笑ってたいんだ
15   笑顔

(アンコール)
 1   じょいふる
 2   ありがとう
 3   ぬくもり

                           10.12(土) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ

良い曲を作り、それを巧いひとが歌う。

当たり前のようでつまらなく聞こえるけれど、
「それができれば苦労しないよ」というのがおお
かたの凡百な歌手の思うところだろう。
いまのいきものがかりは明らかにマジカルなもの
を帯びていて、いちファンとしては、いつまでも
それが消えないよう願うばかりだ。

ベストアクトは「東京」にしよう。
良い曲だ。
もちろん、水野くんの作る曲も素晴らしいけどね。


2013年10月25日金曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


01. 異国の空
02. 神の悪戯
03. ブラックホールバースデイ
04. ハッピーエンドに憧れて
05. カラビンカ
06. 生命線
07. ガーデン
08. 未来
09. クリオネ
10. 雨に打たれて風に吹かれて
11. 真夜中のライオン
12. 戦う君よ
13. コバルトブルー
14. バトルイマ

<Encore>
01. 舞い上がれ
02. サニー
03. 涙がこぼれたら

                              10.11(金) ペニーレーン24

ファンは満足したんじゃなかろうか。
少なくともわたしは満足しました。
「未来」だって良い曲に聞こえました。

「理想のセトリ」を語り出したらキリがないが、このB面と
シングルの混ぜ方にはセンスを感じる。自分たちのこと、
そしてファンが求めるもの、その両方がよく分かっていな
いとこういう選曲にはならないだろう、ってバックホーンを
知らないひとには何を言ってるのかわからないだろうけ
れど。
まあ「クリオネ」は無くてもよかったかな。代わりに「夜空」
でもやっていただけたら幸いでした。

ベストアクトはひさびさに登場した「ブラックホールバースデイ」
か「ハッピーエンドに憧れて」かで迷って、

「ブラックホールバースデイ」

に決定。よかった。










2013年10月24日木曜日

地獄でなぜ悪い


☆☆☆★★★       園子温       2013年

★の1つは勢いであげちゃおう。や、オマケし過ぎかなー。
迷いどころだが、とまれ、園映画の新たな「女神」(と表記して
"ミューズ"とルビを振りたい)の誕生を寿ぐ意味でも、二階堂
ふみに捧げよう。乾杯。慈愛と酷薄と凶暴の女神。『ヒミズ』を
懐かしく思い出すほどの彼女の「脱皮ぶり」を抜きにしてこの
映画を語ることはできない。

詩的な要素は排除し、徹底的にばかばかしい方に振り切れた
本作、テンションは『愛のむきだし』に近い。

♪ 全力歯ぎしりLet's Go

という歌を、映画館を出たひとがみな口ずさまずにはいられな
い程のばかばかしさなのである。

しかし、観たひとは分かるだろうがあの「お別れのキス」、たぶん
相当難しいよね。相手の口が血まみれなら、こちらもかなり出血
している気が。星野源が「まだ口の中しみる?」とか訊いてたが、
そんな程度で済むのだろうか。まあいいか。

                                               10.11(金) シネマフロンティア札幌


2013年10月21日月曜日

プライドと偏見


☆☆☆★★       ジョー・ライト       2006年


原作通り、舞踏会と食事会と旅行しかしてないが、けっこうおも
しろかった。長い物語をうまくまとめて健闘している。
キーラ・ナイトレイ、良いですな。

しかしなぁ、ジェーンはもっと「誰が見ても美人」じゃないと。エリ
ザベスのほうが可愛かったらダメじゃん。

                                                           10.5(土) BSプレミアム


2013年10月17日木曜日

夜がまた来る


☆☆☆★        石井隆       1994年


ある文春の連載でこの映画が紹介されていたのを読み、
ほほう、若いころの夏川結衣には興味あるな、と思って
借りてきた。あのキツい感じのお顔が良いですな。

物語は、麻薬のルートを調べるためにヤクザに潜入捜査
していた夏川結衣の恋人が殺されるところから始まる。
夏川結衣も家に押しかけてきたヤクザに輪姦され、復讐
にと組長を待ち伏せて殺そうとするも失敗。絶望して何度
も自死を試みてはなぜか根津甚八に救われるが、いつし
か水商売に身をやつし、しっかりシャブ漬けになって人格
も崩壊していって…
という感じで、「おーい」と言いたくなるほど悲惨なストーリー
なのである。寺田農の悪役っぷりが良い。

私は石井隆にあまり思い入れは無いのだけど、5年前に
観ていたらあるいはけっこう夢中になったかもしれない。
こういうダークな暴力の世界を描いてチープにならないの
は簡単なことではないと思う。

                                                       10.3(木) DVD


2013年10月15日火曜日

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q


☆☆☆★★★        庵野秀明      2012年


劇場で観たときよりもずっと面白かった。
あの時はあまりに意味不明で、きっと多くのひともそうだったの
だろう、YouTubeに「Qをわかりやすく解説する」といった内容の
動画がアップされ、それを見てふむふむ、なるほど、そういう事
だったのか、と多少は作品世界に踏み込めた気がしたのだった。

まずあの14年後という設定よりも(あ、言っちゃった)、用語が
聞き取れない&分からないのがまず問題であり、

リリン、ヴンダー、DSSチョーカー、ガフの扉、アダムスの器、
Mark.6、L結界密度…。

まさにもう、「カヲルくんが何を言ってるのかわからないよ!」
と叫ぶシンジとまったく同じ気持ちなのである。

今回、それらの用語がよく分かったわけではないが、まあだい
たいこういうことだろ、と見当が付いてから観たこの「Q」、ずい
ぶん面白いんですわ。ほんとによく考えられてる。普通自分が
考えた自分にしか通じない用語を、説明も無くあんなたくさん
盛り込みむか? 受け入れてもらえる、という強い確信がなけ
ればできないことだと思う。

                                                       9.30(月) Blu-ray Disc


2013年10月5日土曜日

東京戦争戦後秘話


☆☆☆          大島渚         1970年

なかなか複雑なストーリーで、要約するのは面倒なのでしない。
「映画で遺書を残して死んだ男の物語」というサブタイトルが
中身をよく表しているような、いないような。
まあ1本のフィルムをめぐる奇妙な物語である。しかし事前に
よく考えておかないと、撮りながらわけが分からなくなりそうだ。

                                                                   9.30(月) DVD


2013年10月3日木曜日

さよなら渓谷


☆☆☆★      大森立嗣       2013年

ある業を背負った男女の物語で、まずそこに説得力が無いと
すべてが破綻してしまうという、なかなか映画の原作に選ぶに
はリスキーな作品だと思う。
質問に対して返答に詰まり沈黙する場面がとても多い映画だが、
間延びしていたという印象はあまり無い。まあそりゃ答えに詰ま
るよな、という問いかけばかりだし。

ラストは原作にない「ある問いかけ」だったが、はっきり言って
不要である。あんなこと別に知りたくないし、意味のある問いか
けとも思えない。製作側が「逃げた」という印象しか無いね。

全国公開からは4か月遅れの当地での公開となった。
客は私を入れて5人。まあそうなるよな。そもそもこういう映画が
あることが認知されているのだろうか。私が宣伝担当だったとし
ても、この映画をどう宣伝していいやら途方にくれると思う。結局
真木よう子のラブシーン(激しめ)があるよってことで推していく
しかないという結論に達すると思う。

しかし大西信満は上川隆也に見えて仕方ない。そして渓谷に
真木よう子がいるとどうしても『ゆれる』を想起してしまう。

                           9.29(日) イオンシネマ釧路(旧ワーナーマイカル)


2013年10月1日火曜日

そして父になる


☆☆☆★★        是枝裕和        2013年


まず前提として言っておくのは、映画としての質は高いということ。
素人がおいそれと「いやーここはおかしいでしょ」と突っ込める
ようなところはほとんど無い。そういうのは先回りして説明されて
いるか、あえて「説明しない」ことを暗示されている。

しかし観たあと、妙に肩が凝ったのは、この映画が基本的に「詰
め込みすぎ」だからではないのか。意味過剰。意味のないカット
がひとつも無いというのは、それはそれで観ていて疲れるものな
のだ。ということを初めて知った。

カンヌ効果か福山目当てか分からないが、40人ほど入っており、
当地にしては大入り。良いことだ。

役者も好演している。特に尾野真千子の"健気な妻"っぷりに、
完全にやられる。こういう役の方が合ってるよ絶対。
そしてリリー・フランキーはなぜあんなにいつも巧いのか。毎回
感心してしまう。

蛇足だが、「お受験」のオープニングに『レイクサイド マーダー
ケース』を思い出したのはきっと私だけではないだろう。

                                9.28(土) イオンシネマ釧路(旧ワーナーマイカル)