2017年10月21日土曜日

ナラタージュ


☆☆☆★★     行定勲    2017年

内容はもちろんしょーもない話なのだが、鑑賞の作法として
はもうホラー映画と同じでいいと思う。つまり技術や演出で
観客の心理をいかに動かすかという行定さんの方法論をカッ
トの積み重ねからいかに読み取るかに目を転じると、けっこ
うおもしろかった。

現在の架純ちゃんが前枠、後枠のような感じで始めと終わり
にあり、本編はすべて大学時代の回想。その回想の中に高校
時代の回想が入る。
シャワーのお湯をかけあうラブシーンには思わず笑いそうに
なる。マツジュン、架純ちゃんの服にお湯をかけるんだ! と
念じたけど、行定さんはもちろんそんな演出はしなかった。

それにしても、「許されぬ恋」と宣伝文句には踊るが、許さ
れないことをしてるのはマツジュンだけで、架純ちゃんは別
に悪くないような。教え子の高校卒業の日に教師であるマツ
ジュンがとった行動こそがすべての元凶のような気がしてな
らないのである。そして酔っ払って運転できないだかなんだ
か知らないがいちいち電話してくんじゃねーよ! 代行呼べ。

                                                10.8(日) 新宿ピカデリー


2017年10月20日金曜日

台北ストーリー


☆☆☆    エドワード・ヤン   1985年

こちらはホウ・シャオシェンの系譜を汲む
ような台湾映画の王道の感じだが、そのぶ
んちょっとのんびりしていて、少しウトウ
トてしまいました! まことにすまない。
しかし開き直るわけではないが、これまで
台湾映画を続けて2本観て、寝なかったこ
とは一度もない!

                                     10.7(土) 早稲田松竹


2017年10月18日水曜日

恐怖分子


☆☆☆★★    エドワード・ヤン    1986年

エドワード・ヤンの2本立てを早稲田松竹で。
まずは名作と名高い『恐怖分子』。橋本愛が思い入れのある
3本に挙げていた。ちなみにあと2本は『人が人を愛すること
のどうしようもなさ』と『ゴダールの映画史』。

「恐怖分子」は「テロリスト」のことと思っとけばいいらし
い。のんびりスローテンポな台湾映画とサスペンスがどう融
合するのか注目して観たが、余計な説明を排除してハードボ
イルドなタッチに徹すると思いきや、主役の男の子のおぼこ
い顔に和まされる。でも顔はおぼこいが金持ちの息子で、写
真道楽のために小遣いを持って家を出ているが、やってるこ
とは空き家を借りて暗室にしたり、警察の摘発から逃れる途
中の女の子を隠し撮りした写真を拡大印刷して壁に貼ってい
るというなかなかの変態ぶりである。いくつかのスジが電話
を介してつながってラストに向かうが、あまり説明が無いた
め何が起きているかを理解するのに必死である。
一風変わった台湾映画だった。

                                                      10.7(土) 早稲田松竹


2017年10月16日月曜日

パターソン


☆☆☆★    ジム・ジャームッシュ   2017年

バスの運転手をしながら詩をメモ帳に書き溜めている
パターソン生まれのパターソンさんが映画の主人公。
月曜日、彼が目覚める場面から始まって、その規則正
しい生活を淡々と描写していく。けっこう淡々として
いる。途中からブルドッグのマーヴィンだけが、私を
笑わせてくれる存在として待望されていた(私に)。

しかしマーヴィンの愛らしさもむなしく、アルコール
を摂取していたこともあって、けっこう大事な場面で
わたくし寝てしまいました。ほんとは評価する資格な
いです。猛省しております。

                                         10.6(金) 新宿武蔵野館


2017年10月15日日曜日

【LIVE!】 松元ヒロ


ひとり立ち

こういうの、"スタンダップコメディ"というので
合ってるかな? 最初から最後まで独りで喋る。
政治ネタ、アメリカ旅行(半分仕事だが)の話、
一人芝居、各種とりそろえられていて、飽きさせ
ない。2時間があっという間だった。
なによりヒロさんがバカにする対象を普段わたし
もバカにしてるので、そりゃ気分はいい。

                                      10.1(日) 紀伊國屋ホール


2017年10月14日土曜日

ダーティーハリー3


☆☆☆★★   ジェームズ・ファーゴ   1976年

シリーズ3作目。
今回は、殺人課に異動したての女刑事と無理やり組まされた
らハリーがどうなるかがテーマ。ガッツはあるのだが、いか
んせん現場経験ゼロなのに、いきなり解剖だぁカーチェイス
だぁ銃撃戦だぁ、というハリーのいつものメニューに衝撃を
受ける女刑事。しかし前の部署(記録係)の強みを活かして
役に立ち、その存在をハリーも次第に認めていくという展開
はたしかにお決まりだけども、だからどうしたっていうんだ。

小林信彦がダーティーハリーは1を除くと3がおもしろいと
言っていたと記憶しているが、なるほどたしかに。結末は悲
しいものだが、後味は不思議とわるくない。

                                                   10.4(水) BSプレミアム






<ツイート>
来週月曜からBSで市川崑の金田一を3本放送。
このブログを読んでくれているひとで『犬神家の一族』を
まだ観ていないひとはまさか居ないと思うが、もし観てい
ないならいいから観て下さい。

2017年10月12日木曜日

ロスト・イン・トランスレーション


☆☆☆★★    ソフィア・コッポラ   2004年

不思議に余韻の残る映画だ。
アメリカからCM撮影のために来日した俳優(ビル・マーレイ)
と、写真家の夫にくっついて来日し、毎日暇を持て余している
女の子(スカーレット・ヨハ ンソン)が、ふとしたことから
打ち解け、心を通わせるようになるが…。

新宿の高級ホテルで撮影されたという、外の雑踏とはまるで別
世界のような重厚な空間。それと歌舞伎町の猥雑な風景の対比
がとてもおもしろい、と外国人は思うんだろーけどよ、こちと
ら新宿の近所に住んでる俺には別にどうってことないね、と、
観ている間は思っていたのだが、何日か経つと不思議と映画の
中の風景が自分の中にしっかり根をおろして息づいているのが
分かる。ビル・マーレイの醒めた目で見渡した東京は寒色系の
トーンでまとめられてよそよそしいが、同時に奇異で滑稽で活
気がある。ラストの空撮が効果的である。

                                                    10.3(火) BSプレミアム


2017年10月10日火曜日

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール


☆☆☆★★     大根仁     2017年

前にタイトルに惹かれてマンガをザッと立ち読みした
ことがあり、その時わたしのようなアイディアの湧か
ない人間でも「映画になりそう」と思ったので、 映画
化は必然か。そしてこの底意地の悪い話を映画化する
にあたって、大根仁以上の適任はいるまい。

どんな役をやっても私の好感度を上げてくる妻夫木く
んは、今回の「奥田民生に憧れる青年」の役でも好演
していた。そしてこの映画は「狂わせガー ル」に狂わ
されるためにあるのだから、いちばんの肝となるのは
水原希子である。気まぐれと計算高さを使い分け、
「出会う男すべて」を振りまわして悪びれない、小悪
魔などという使い古された言葉では物足りないほどの
モンスターガールを楽しげに演じていた。
セックス描写はNGでもキスならいいんだろっ!?とい
うことで、水原希子にものすごい回数チューさせてい
たのはもちろん大根仁の職権濫用であろう。妻夫木く
んと、新井浩文と、果ては松尾スズキの耳を舐め回す
シーンまであって、監督の欲望が剝き出しなのも好感
がもてる。

そして…自分がいちばん分かってるだろうから言わな
いが、いやでもやっぱり言うが、「ハロー張りネズミ」
はなぜあんなにイマイチだったのか! やはり地上波
の制約ですか…。

                                        10.3(火) 新宿ピカデリー


2017年10月8日日曜日

草原の輝き


☆☆☆     エリア・カザン    1961年

ワーズワースの詩を引用することで、どことなく
文藝映画の趣きだが、内容はいえば高校生カップ
ルの破局と、それによって精神のバランスを崩し
てしまった女の子(ナタリー・ウッド)、その再
生の物語であって、格別おもしろいわけではない。
青春映画なのかもしれないが、私の好きなそれで
はない。

しかしナタリー・ウッドはのちに撮影中の事故で
死んでるのか…。なんともいえない。なむなむ。

                                      9.25(月) BSプレミアム


2017年10月4日水曜日

読書⑧


『ハワイイ紀行 【完全版】

池澤夏樹 著   新潮文庫

旅行のお供に持って行った。フライトは片道7時間強ある。
行き帰りで半分ちょっと読み、帰国してから残りを読んだ。
端的にいって素晴らしい本である。深くて、おもしろくて、
ためになる。

当方恥ずかしながらハワイイについては何も知らず、ビー
チとリゾートホテルと火山ぐらいしかイメージを持ち合わ
せていなかった。しかし、おもに帰りの飛行機でこの本が
どんどんおもしろくなっていって眠るどころではなくなり、
今はもう一度ハワイイに行きたい気持ちでいっぱいである。

フラ、レイ、音楽、植生、地形、ハワイイ語、神話、キャ
プテン・クック、歴史、サーフィン、……さまざまな観点
からハワイイを知るために格闘した池澤夏樹の3年間の記
録が結実したのがこの本ということだ。氏はこういう仕事
に向いているとみえて、とても有能である。