2015年10月31日土曜日

アクトレス~女たちの舞台~


☆☆☆★       オリヴィエ・アサイヤス      2015年

「キネマ旬報」の女優特集でジュリエット・ビノシュの記事を読んでい
たのだが、新作はなかなかおもしろそうだし、51歳になられたジュリ
エット様を観よう、とふと思い立ち、チケットを買って40分後にはもう
劇場に居たというわけである。釧路ではよくこういうことをしていたが、
東京の映画館は混んでるから、地味な映画でないとなかなか難しい。

彼女が当ブログの公式ミューズであることはいまさら繰り返すまでも
ないことだろうが、あいかわらずの美しさ。特に第1章の映画祭パート
でのうるわしさに心を奪われる。内容も第1章のほうが断然よくて、後
半は明らかに「マローヤのヘビ」の再演がどうなるのかで長いこと引っ
張り過ぎである。ジュリエット様を脅かす若き才能としてクロエ・グレー
ス・モレッツが出て来るのだが、ようやく火花を散らし始めるのは映画
の最終盤。「なかなか始まらないなー」から、終盤に至り若干の「もう
どうでもいいや感」が漂いはじめてしまった。
物語のカギを握るマネージャー役のクリステン・スチュワートという女
優、ずいぶん巧いなぁ、けど知らないなぁと思っていたら、「トワイライ
ト」シリーズでティーンの間では既に絶大な人気らしい。ティーンじゃ
ないから知らないね。

原題はこんなヘンな題名ではなく「シルス・マリア」。第2章の舞台と
なるスイスの田舎の地名である。まあ、私も含めて日本の観客には
「シルス・マリア」と言われてもピンと来ないひとが多いだろうから、
何か付けるのは良いと思うが、なんだかねー。

しかし洋画を劇場で観るのはだいぶ久しぶりだ。最近、観たい洋画
がほとんどない。

                                                              10.25(日) シネマカリテ


2015年10月24日土曜日

秋の読書


『海の向こうで戦争が始まる』
村上龍 著     講談社文庫

シェムリアップのホテルで読み始め、そこで読み終えた。
なかなか快適なリゾートホテルだったもので、読書だって
進みますわ。

「限りなく透明に近いブルー」に続く、2作目の小説である。
研ぎ澄まされた文章感覚による流麗で、きらびやかで、と
きにグロテスクな描写がこれでもかと展開される。ひとつ
の文学的な境地だとは思うけど、「若書き感」に胸焼けが
しないでもない…。
文章は「読ませる」が、まともなストーリーは無きに等しい。
ここから『コインロッカー・ベイビーズ』まではだいぶ大きな
飛躍があるように思うが、次の小説がそれなのである。
おもしろいですなぁ。









『正しい保健体育』
みうらじゅん 著     理論社

まあなんというか、みうらじゅんに興味のないひとには、
なんの意味もない本ではある。みうらじゅんが、高校生
むけに性教育を語っている体で、ふざけまくっている本
である。教科書だと思って買わないようにしてください。

2015年10月21日水曜日

バクマン。


☆☆☆★★         大根仁         2015年

「ジャンプ」でアンケート1位を獲る!(そして小松菜奈と結婚
する!)を目標に、高校生マンガ家として全身全霊でマンガ
に取り組むふたりの主人公 (神木隆之介、佐藤健)。
とても「頑張れば報われる」世界ではないわけだが、そこは
「ジャンプ」のモットー「友情・努力・勝利」を物語の展開にも
援用することで、爽やかで正統的な青春映画になっていた。
ベタな展開を微妙にズラしてくるうまさや、「ペン先」に異様な
ほど執着した描写や音響も、面白かった。つい最近「浦沢直
樹の漫勉」(Eテレ)を観ていなければ、この辺の描写はもっ
と新鮮だったと思うが、それは大根仁のせいではない。
主人公を美少女キャラにすげ替えて人気が上昇する、という
のはちょっと安易な気がしたが。

佐藤健が憧れるヒロインは小松菜奈。『渇き。』では、おクスリ
はやるは援交はやるは同級生は死に追い込むわで、悪魔み
たいな女の子だったものだが、一転して声優を目指し頑張る
透明感のある美少女。陰のある笑顔が印象に残る。

エンドロールが凝ってておもしろかったので★半分増量かな。

                                                   10.19(月) TOHOシネマズ渋谷


2015年10月19日月曜日

岸辺の旅


☆☆☆★★★         黒沢清       2015年

かなり良かった。
冒頭の、たどたどしくピアノを弾く少女には、「なんか『トウキョウソ
ナタ』みたい…」と思ったが、無事、まったく違う作品になりました。
黒沢清の良いところが、映画のおもしろさとうまく結びついていた
と思う。だいたい「死者と旅するロードムービー」という素材からし
てもうピッタリなのは明白である。

いつも「役者は誰でもいい」感じがする黒沢作品だが、今回は珍し
く(というか初めて?)ラブシーンまであり、さすがに演じる役者に
肉体性があまり感じられないのでは困るだろう。そういう意味でも、
今作の浅野忠信と深津絵里は実に素晴らしかった。私は、最初に
浅野忠信が「うん…」と言っただけで、「これは良い映画になるかも
しれない」という予感に胸が高鳴った。
そして蒼井優……。ほんとに小憎らしいぐらいに巧い。登場はごく
短いシーンのみだが、その印象は鮮烈である。
島影さんを演じた小松政夫もよかったよ。

どうしてか黒沢清の映画はいつも、スクリーンを見つめるというより
も、こちらがカメラを覗き込んで俳優の動きを観ているような気分に
なる。だからカメラが動くと不吉な予感にざわざわするし、ゆっくりと
パンした先で誰かが急に画面に飛び込んで来たりするとギクッとす
る。飛び降り自殺があると(今回はなかったが)、「やばいもんを見
てしまった…」という気になるのである。

次回作も、その次も決まっているらしい。やっぱり黒沢清からは目
が離せませんなー。ちなみに私は新宿に向かう小田急線で見かけ
たことがあります。ノートに何かメモってました。「じ、次回作の構想
か…」とドキドキしました。

                                                            10.10(土) テアトル新宿


2015年10月17日土曜日

勝手にしやがれ!!成金計画


☆☆☆★           黒沢清       1996年

「白い粉」をめぐる騒動を軽快に描く。「英雄計画」に比べると
だいぶバカバカしいが、力が抜けていてこちらの方が好き。
本来の味に近いのはこちらなんだろうという気がする。

                                                  9.30(水) シネマヴェーラ









<ツイート>
21日(水)からTBSで、石井裕也が脚本・演出のドラマが始まる
そうですな。「おかしの家」。観てやろうじゃないの。

2015年10月13日火曜日

勝手にしやがれ!! 英雄計画


☆☆☆★     黒沢清     1996年

「勝手にしやがれ」シリーズを観るのは初めて。
なのにシリーズ最終作から観ることになってしまった。
哀川翔と前田耕陽のコンビが繰り広げる活劇のシリーズである。
ときどき絡む洞口依子と大杉漣の斡旋屋が良い味出している。

低予算・短期間を逆手にとった黒沢清らしいひねりの利いた演出
が魅力のシリーズらしいが、今回は寺島進演じる狂信的な青年
に二人が振り回される話で、意外にダーク。痛快ではない。
女優ウォッチャーとしては、二十歳そこそこの黒谷友香が出てい
るのが見逃せない。

                                                       9.30(水) シネマヴェーラ








<ツイート>
Eテレで「ニッポン戦後サブカルチャー史Ⅱ」が始まった。
第1回のテーマはなんと「女子高生」。これがすこぶる面白かった。
かゆい所に手が届く構成で、それこそ痛快だった。

女子高生の制服というのはフシギだなーと前々から思っていたのだ。
話は戦後どころか明治にまでさかのぼる。洋装を取り入れた「女子
の制服」は、女学校の誕生とともに既にあったのである。ただしその
時点ではセーラー服ではない。セーラー服は、はじめ福岡県のある
学校が採用し、それが評判となって全国に普及し、「女子高生といえ
ばセーラー服」のイメージが定着するほどになっていったというのだ。

そして限りなく怪しい(?)フィールドワークを通して1985年に『東京
女子高制服図鑑』をものした森伸行が登場。都内の高校の女子の
制服を、路上や電車で観察してはスケッチしていたというからこの人
は凄い。何かと紙一重である。しかも発表した当時は、赤瀬川原平
に師事する現役大学生だったというから驚きである。つまりフィール
ドワークは高校生のときから…。かなり危ない…いや知的に早熟な
高校生である。

女子高生というものの特殊性・特権性に、鋭く切り込んでいく番組だっ
た。『桃尻娘』のあとに、ちゃんと太宰の「女生徒」を紹介したのもグッド。


しかしツイートの方が長いね。

2015年10月11日日曜日

ぼくらが旅に出る理由


♪ 遠くからとーどーく、宇宙のひかり~

ということで、カンボジアとベトナムに行って来ました。

【シェムリアップ】







【ハノイ】