2016年4月29日金曜日

オデッセイ


☆☆☆★★    リドリー・スコット   2016年

遅ればせながら、観ました。

ハリウッドの脚本理論に則ったようなストーリー展開が若干
気に食わないけれど、長尺を長いと感じさせないのだから、
よくできているのだろう。
「限られたリソースを活用して苛酷な状況を生き延びる」とい
うテーマは普遍的で、普遍的であるがゆえにおもしろい。

劇中音楽の「選曲」が敢えてちょっとハズしていて、ギリギリ
「あざとい」までにはなっていないが、戦略を感じさせる。こ
れから火星を脱出できるかどうかという大事な場面でABBA
の"Waterloo"がかかるのだけど、これはつまり日本映画で
たとえるなら、イチかバチかの分かれ目の場面で森田童子
の「ぼくたちの失敗」がかかるようなものなんだろうか。つま
り一種のギャグと捉えていいのか?

                                                     4.12(火) 新宿ピカデリー


2016年4月27日水曜日

女と男のいる舗道


☆☆☆   ジャン=リュック・ゴダール   1962年

「アンナ・カリーナを主演に、娼婦の映画を撮る」ということ
で始まったものらしい。離婚して金もなくなり、いわゆるひと
つの"立ちんぼ"へと堕ちてゆく女を、全体を12の章立てに
して描く。

小さい声でいうけど、よさがわからん……。

                                                      4.9(土) 早稲田松竹


2016年4月26日火曜日

男性・女性


☆☆☆   ジャン=リュック・ゴダール  1966年

早稲田松竹で60年代ゴダール2本立て。

珍しくジャン=ピエール・レオーが出ている。
このひと好きなんですわ昔から。ほどよい軽薄さ、という
か、カッコいいのにちょっと抜けてそうな感じが好きなん
だと思う。

この頃のゴダールの映画には「青春」という言葉で表現
できそうな"若さ"がある。あるという感じがする。まあ全
体的にはよくわからないんだが…。字幕翻訳・山田宏一
の文字にハッとする。『トリュフォー 最後のインタビュー』
もいいかげん読まないとな。

シャンタル・ゴヤの演じるヒロインが歌手というのもあり、
全篇にわたって甘ったるいフレンチ・ポップスが流れて
いて、なんだかゴダールの映画じゃないみたい。

                                                 4.9(土) 早稲田松竹


2016年4月24日日曜日

ちはやふる -上の句-


☆☆☆★★    小泉徳宏    2016年

これから私が何を書くか、このブログを定期的に読
んでくださっている方には既にお分かりでしょうが、
この手の映画は広瀬すずが可愛く撮れてさえいれ
ば、半ば成功なのです! もう聞き飽きた? 何度で
も言いますよぉ。

広瀬すずはなぜか私の心をザワつかせる。
幼い顔に不釣り合いな色っぽい唇のせいだろうか。
下の句も観るよ。

                                              4.7(木) 新宿バルト9








<ツイート>

「おこだわり」がだんだん常軌を逸した狂気の連ドラ
の本性をあらわにしつつあり、毎回爆笑して必ず2回
づつ観ています。松江さん、最高です。ハロプロの曲
をまじめに歌う松岡茉優がめちゃ可愛い。


2016年4月23日土曜日

ローラーガールズ・ダイアリー


☆☆☆     ドリュー・バリモア    2010年

エレン・ペイジ主演。
母親に従順だった地味で冴えない女の子が、ローラー
ゲームという荒っぽいスポーツに運命的に出会い、次
第に自己変革を遂げていく。……という、100年前から
あったような話型だが、ローラーゲームという奇抜なス
ポーツを題材にすることで退屈せずに観られるように
はなっている。撮り方の難しいスポーツで、実際うまく
撮れているとは思えなかった。

あのミュージシャンに戻らなかったのは意外だったが、
まあそれもそうかと思い直す。

                                                4.6(水) BSプレミアム








<ツイート>
プリンスが死去……。
スガシカオがラジオでやたらとかけるので、いろいろと
借りて聴くようになった。一度は生で聴いてみたいもの
だと思っていたのだが。いちばん好きなのは…やはり
"1999"かな。


2016年4月21日木曜日

LOVE LETTER


☆☆☆☆    岩井俊二    1995年

通算では4度目になる。
完璧に近い映画だと思う。あまりの完成度の高さ
に落涙である。

なにしろ美しい映画である。優しい映画でもある。

最初は高校生のとき、たしか日本映画専門チャン
ネルで観た。次は大学院生のとき、早稲田松竹で
特集上映の中の1本として観た。そして釧路にいる
ときBSで観て、今回はまた早稲田松竹で。

                                            4.3(日) 早稲田松竹


2016年4月19日火曜日

四月物語


☆☆☆★★★    岩井俊二    1998年

早稲田松竹で岩井俊二特集。

実に久しぶりに『四月物語』を観た。
いくらなんでも降らせすぎな桜にココロを撃ち抜かれる。
紅白のサブちゃんか。雨もすごい。セリフがかき消され
るほどの雨。

若さが充満して内側から溢れている松さんの可愛いさ
に落涙しそうになる。最近なんでもかんでも落涙してる
ので、気にしないでください。

最初に家族に見送られる駅が留辺蘂(るべしべ)である
ことに初めて気付く。マイナーな町を選んだものだ。私
は二度行った(通った?)ことがある。

                                                  4.3(日) 早稲田松竹


2016年4月17日日曜日

花様年華


アップする順番を間違えた。
文芸坐よりもこちらが先だった。


☆☆☆★★    ウォン・カーウァイ   2001年

初ウォン・カーウァイ。90年代ミニシアターブームの火付け
役、ということらしい。宮崎県にて、隔絶された学生生活を
送っていた私には縁遠い話である。そもそも当時は映画を
あまり観なかった。

トニー・レオンとマギー・チャン。
トニーには妻が、マギーには夫がいるのだが、その姿は画
面にはまったく出て来ない。主役のふたりによるなんとも思
わせぶりな、微妙な、交流というか何というかが、これまた
思わせぶりな音楽にのせて展開していく。官能的ですな。

最初にこの映画のある「仕掛け」に気付いてからはかなり
興奮したものの、それからが幾分タルいかな。もうちょっと
たたみかけて欲しいところ。

しかし「細長い空間」への異常なまでの執着である。
つい「こんな狭いとマイクが入れないよ、音録れないよ」と
思ってしまう。雑念である。

                                                   3.31(木) BSプレミアム


2016年4月13日水曜日

ディアーディアー


☆☆☆★     菊地健雄     2015年

続いて、去年テアトル新宿で予告篇を見て「お、これは
観たいかも」と思ったものの、ついつい見そびれていた
『ディアーディアー』。
こちらは映画評じたいあまり見かけなかった。褒めてい
たのは私が確認できた限りモルモット吉田さんのみだっ
たと思う。

「ROLLING」の舞台が水戸ならば、こちらの舞台は足
利。どちらも狭いコミュニティであることが、映画を成立
させる条件のひとつになっている。

予告篇だと兄妹が幼い頃の「幻のシカ発見事件」の占
める比重がかなり大きかったような気がしたが、本編を
観ると、もちろん事件が尾を引いて現実に様々な軋轢
を生んではいるのだが、むしろ重要なのはそれぞれが
いま、まさに直面している問題なのだ。またこの狭い地
域で、まるで「問題のデパート」のように皆が問題を抱え
て生きている。しかし随所にちりばめられたユーモアも
うまく機能しており、映画は息苦しいものにはなってい
ない。
終盤の葬式のシーンの長回しは秀抜だった。

ラスト近く、それぞれに問題の多き夜を過ごした各人が、
朝になってひとりづつ戻ってきて、気まずく朝食の卓を
囲む。あれ、なんだかこういうシーン、見たことあるよう
な…。『トウキョウソナタ』か?


                                                    4.1(金) 新文芸坐


2016年4月11日月曜日

ROLLING


☆☆☆★★     冨永昌敬    2015年

池袋の文芸坐で、去年の日本映画を2本。
まずは界隈でかなり高評価だった「ROLLING」。水戸
を舞台にしたダメ教師とその恋人と教え子の話。
冨永さんは一度もおもしろいと思ったことがないけど、
みんなが褒めるってことはきっとおもしろいんだろうな
と思ったら、やっぱりおもしろかった。

いまどきナレーションがある映画もめずらしいので、な
んだか新鮮である。しかも朝ドラみたいにいちばん前
に出てすべてに優先するナレーションではなく、時に
は音楽に埋もれるぐらい、所在ない感じの控えめなレ
ベルがまた良い。「ですます調」で、自分の至らなさや、
ままならない境遇を語るのも、文学的というか私小説
風である。

ネットのインタビューを読んでたら、日本映画における
ラブシーンって、とかく悲しみをまとったものが多いの
で、とにかく楽しいものにしようということで撮ったラブ
シーンだとあって、たしかに、しがらみとルサンチマン
に満ちたこの映画のなかで、三浦貴大と柳英里紗の
ラブラブぶりだけはとても楽しそうだったのが印象深い。

                                                 4.1(金) 新文芸坐









<ツイート>
「その『おこだわり』、私にもくれよ!!」みなさん、第一
回は観ましたか。おもしろかったですね。いやぁ腹抱え
て笑っちゃいましたよ。あの声がガラガラなコ、おもしろ
いね。

<ツイート2>
今週金曜夜に『パリ、テキサス』がBSプレミアムにて!
必見。


2016年4月10日日曜日

リップヴァンウィンクルの花嫁


☆☆☆★★★     岩井俊二    2016年

冒頭、郵便ポストの横で心もとなく周囲の雑踏を見回す
黒木華。LINEのやりとりのような画面がインサートされて、
男と待ち合わせをしていることがわかる。初めて会うふ
たりは、なかなかお互いを見付けられない。遠慮がちに
手を挙げて目印になるように頑張る華ちゃん。ピアノの
優しい旋律と雑踏のSEが溶け合う……。

もう冒頭からやられっぱなしですよ。
どこをどう切っても岩井俊二でしかない至福の3時間。
やりたい放題やってたなぁ、岩井俊二。
…と書いたあとに文春のコラムで松江さんが「至福の三
時間」と書いているのに気付く。パクってません!

前号の「キネマ旬報」が特集していて、黒木華のインタ
ビューや岩井俊二と中森明夫の対談もなかなかおもし
ろいのだが、Coccoのインタビューがいちばん興味深い。
真白と七海がベッドで話すシーンがワンカメのテスト本
番で撮られたというから驚きである。

綾野剛は誰にどのタイミングでどういう依頼を受けたの
か、最後まで観てもそこらへんについて、充分な説明が
あったとは思えないが、まあいいとしよう。いつもなら、
そういう細部が曖昧で詰めが甘い映画は醒める、と言
いそうな所だが、今回はいいです。気にならない。

                                            3.28(月) ユーロスペース


2016年4月9日土曜日

BULLET BALLET バレット・バレエ


☆☆★★     塚本晋也    1998年

なんだかよく分からなかった。
単純に映像と音響を浴びればいいのだろうか。
手持ちカメラをぶん回されると酔うんですわ。
気分が悪くなった。

                                     3.27(日) 早稲田松竹


2016年4月7日木曜日

野火


☆☆☆★★    塚本晋也    2015年

早稲田松竹にて、塚本晋也作品の二本立て。昨年
みんなが褒めちぎっていた『野火』を見逃したまま
だったので、ちょうどよかった。

うーむ、とにかく何もかもが汚い! 極限のなかの
極限状態である。間違いなくトラウマ映画になると
思うので、中学生・高校生にもぜひ観てもらいたい。
防衛大を志望する若者が激減するかもしれないが。

リリー・フランキーはここでもやっぱり巧かった。ほん
とに感心する。

                                             3.27(日) 早稲田松竹


2016年4月5日火曜日

friends after 3.11


☆☆☆★      岩井俊二      2012年

基本的には、震災後に岩井俊二が交友をもったいろいろな
分野のひとへのインタビューで構成されている。聞き手であ
る岩井俊二も画面に写る。なので、画としてはツーショットか
それぞれのワンショットの3種類しかないのだが、観ていると
なんだか紛れもなく"岩井俊二の画"という気がしてくるのが
すごいというか、不思議である。
インタビューの連続のなかに唐突に紛れ込んでくるFLYING
DUTCHMAN、センター街でのライブの模様がめちゃカッコ
いい。

岩井主義者としては、本作を見逃していたのはずっと気に
かかっていたので、ちょうどよかった。BSフジに感謝せねば。
これで後顧の憂いなく『リップヴァンウィンクルの花嫁』に臨
むことができる。
いざ……!

                                                           3.26(土) BSフジ


2016年4月3日日曜日

狼の挽歌


☆☆☆★★    セルジオ・ソリーマ   1970年

チャールズ・ブロンソンの代表作だというので、怖いもの
見たさで観てみた。もちろん、みうらじゅんの敬愛する役
者だからである。敬愛するひとの敬愛するひとは、やは
り敬愛しなくてはならない。

ただの大量生産されたアクション映画かと思っていたら、
思いのほかしっかり作られたハードボイルドなクライム・
アクション。ブロンソンは無駄口をたたかず、クールに任
務を遂行し、クールに女を抱く。
ただ、イタリア語の吹き替えなのだろうか? リップが全
然合ってないのが気になった。

ラストの銃撃シーンには度肝を抜かれる。これはよく考
えた。画期的。シビれました。★ひとつ増量。

                                                  3.23(水) BSプレミアム


2016年4月1日金曜日

大鹿村騒動記


☆☆☆★★     阪本順治     2011年

三百年の歴史をもつ「大鹿歌舞伎」を誇りとして、今日
も稽古に勤しむ大鹿村の住人たち。原田芳雄は、その
素人役者たちのなかの花形役者である。そこへ、10年
前駆け落ちしたきりになっていた原田の妻(大楠道代)
と駆け落ちの相手(岸部一徳)が突然帰って来たことか
ら巻き起こる騒動が描かれる。

脚本はわれらが荒井晴彦。荒井さんは外さないね。
湿っぽい人情喜劇ではなく、ドライな笑いの充満する、
独特のコメディにしてみせた。
個人的には松たか子の場面で爆笑。松さんの生真面
目さを逆手にとった笑いで、うまい。

原田芳雄の遺作である。芳雄ちゃんが生きていたら、
開通した北海道新幹線に真っ先に乗りに行ったんだ
ろうか。惜しい役者である。

                                                3.21(月) BSプレミアム