☆☆☆★ 菊地健雄 2015年
続いて、去年テアトル新宿で予告篇を見て「お、これは
観たいかも」と思ったものの、ついつい見そびれていた
『ディアーディアー』。
こちらは映画評じたいあまり見かけなかった。褒めてい
たのは私が確認できた限りモルモット吉田さんのみだっ
たと思う。
「ROLLING」の舞台が水戸ならば、こちらの舞台は足
利。どちらも狭いコミュニティであることが、映画を成立
させる条件のひとつになっている。
予告篇だと兄妹が幼い頃の「幻のシカ発見事件」の占
める比重がかなり大きかったような気がしたが、本編を
観ると、もちろん事件が尾を引いて現実に様々な軋轢
を生んではいるのだが、むしろ重要なのはそれぞれが
いま、まさに直面している問題なのだ。またこの狭い地
域で、まるで「問題のデパート」のように皆が問題を抱え
て生きている。しかし随所にちりばめられたユーモアも
うまく機能しており、映画は息苦しいものにはなってい
ない。
終盤の葬式のシーンの長回しは秀抜だった。
ラスト近く、それぞれに問題の多き夜を過ごした各人が、
朝になってひとりづつ戻ってきて、気まずく朝食の卓を
囲む。あれ、なんだかこういうシーン、見たことあるよう
な…。『トウキョウソナタ』か?
4.1(金) 新文芸坐
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