2022年1月30日日曜日

フラワーズ・オブ・シャンハイ

 
☆☆★★    候孝賢    1998年

実は目黒シネマと同じ日。朝の2本立てを観
たので、映画館を出てもまだ14時である。
候孝賢の未見の2本立てをやっているのは知っ
ていたので、余勢を駆ってそのまま早稲田松
竹へ。2本立てをハシゴするのは初めてのこ
とである。

中国文学の古典『海上花』が原作の映画は、
清朝の遊郭が舞台。全篇にわたって室内シー
ンしかなく、ワンシーン・ワンカットが貫か
れている。しかしいかんせん話の内容がさっ
ぱりおもしろくない。みんなアヘンをぷかぷ
か吸いながら頽廃的な宴会に明け暮れ、惚れ
たの腫れたのくっつくの別れるのと、どうで
もいいことこの上ない。
家具調度には相当のこだわりがあったことは
見て取れたものの、美しいけれど単調な画面
にうんざりした。

なぜか羽田美智子さんが出演していて、しか
もトニー・レオンの嫉妬に狂う妻という重要
な役柄。しかしセリフはすべて中国語でハメ
かえられており、あれではあまり羽田さんが
出た意味がないのでは…。

                               1.16(日) 早稲田松竹




2022年1月26日水曜日

たそがれ清兵衛

 
☆☆☆★★    山田洋次   2002年

妻と死別した子煩悩で穏やかな性格の役人を
演じる真田広之。娘二人の世話に加えて畑仕
事も内職もしなければ生活が立ち行かず、夕
方の退庁時間になるとそそくさと家に帰るの
で、皆から「たそがれ清兵衛」とあだ名され
ている。それがいろいろあって宮沢りえと良
い感じになり、剣術に覚えがあるばっかりに、
田中泯への刺客に任命されてしまい、命を賭
して討伐しに行かねばならなくなる。
共演に丹波哲郎、吹越満、大杉漣、小林稔侍。
山田洋次の演出はいつもながら、わざとらし
くなるギリギリのところでスマートさを保っ
ているような感じで、観ていて「これこれ、
これなんだよ」と唸ってしまう。

田中泯は本作が映画初出演だそう。
薄暗い部屋で酒に酔いながら、亡き子の骨を
かじる。その凄みたるや、とても初出演とは
思えない。

                              1.16(日) 目黒シネマ




2022年1月22日土曜日

メゾン・ド・ヒミコ

 
☆☆☆★★  犬童一心  2005年

またしても目黒シネマ。
今度は田中泯の出演作の2本立てである。
ちょうど2本とも前から観たいと思い続けて
いたので、フィルム上映で観られる機会も滅
多にないだろうし、休日にしては早起きをし
ていそいそ出かける。

犬童一心×渡辺あやのコンビは『ジョゼと虎
と魚たち』がすでにあり、こちらは一時期、
日本映画でいちばん好きなんじゃないかとい
うくらい好きだった。今はそこまでではない。

ゲイのための老人ホームを舞台に、父と娘の
確執と和解が描かれる。老人ホームを建てた、
自身もゲイで銀座で長くゲイバーをやってい
た父親役が田中泯。病で臥せっていて、登場
シーンは多くはないが、画面に登場するとそ
の存在感に目をみはることになる。娘が柴咲
コウ、父親の現在の恋人にオダギリジョー。

独特のオフビート感は本作において増してい
て、時に映画の流れが阻害されてるんじゃな
いかと思うくらい無駄(失礼)なカットが散
りばめられている。俳優たちもどういうテン
ションで演じればいいか難しかったのではな
いかと想像するが、ルビィ以外のひとは抑制
的な芝居に徹したことが良い方に作用してい
ると思う。そして細野さんの音楽がすばらし
い。

                                1.16(日) 目黒シネマ




2022年1月19日水曜日

ハウス・オブ・グッチ

 
☆☆☆★★   リドリー・スコット 2022年

レディー・ガガ、アダム・ドライバー主演。
グッチ一族の骨肉の争い、もしくはグッチ
帝国の崩壊とでもいうべきものを159分で
描く。私も人並みの俗物根性を持つ者とし
て、楽しく観させてもらった。レディー・
ガガの強烈なイタリア訛りの英語、グッチ
家のおぼっちゃんを演じたアダム・ドライ
バーの優雅な着こなし、『ダラス・バイヤ
ーズクラブ』と同じ人間とは思えないほど
豹変したジャレッド・レトーの奇妙な演技
を堪能した。

そして選曲が「ちょうどいい」感じ。スコ
セッシやイーストウッドのように「古き良
き」というほど古くなく、かといって新し
すぎず、70年代~90年代のアメリカン・
ポップスの良い所をうまく配置している。
結婚式のシーンでのジョージ・マイケル
"Faith"のイントロには歓喜してしまった。

                      1.14(金) 新宿ピカデリー




2022年1月16日日曜日

トレインスポッティング

 
☆☆☆★★  ダニー・ボイル  1996年

舞台はスコットランド。圧倒的な閉塞感のなか
でヘロイン中毒から抜け出せず、犯罪に手を染
めていく若者たちを、キレキレの映像表現で描
く。当時はかなり斬新だったであろう。観てい
ると、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっ
とブルー』の「底辺中学校」という言葉を思い
出す。

ユアン・マクレガーの坊主頭が非常にカッコい
い。似合うね。あの頭で、あの碧い瞳をギンギ
ンに血走らせて街なかを駆け抜けていると、ま
さに親不孝が服を着て走っている感じで、たい
へん映画的だった。

音楽もなかなか良いが、中でもルー・リードの
"Perfect Day"が印象的に使われている。ま、
もともとこの曲が好きだというのもあるが。

                                  1.9(日) 目黒シネマ




2022年1月13日木曜日

ユージュアル・サスペクツ

 
☆☆☆★ ブライアン・シンガー 1995年

今年の初名画座は目黒シネマ。
いまや巨匠となった二人の監督の「大出世
作」2本立てという趣向である。
といっても、私はブライアン・シンガーは
『ボヘミアン・ラプソディー』しか観てい
ないが。

同時期に武器強奪の容疑でしょっぴかれた
ならず者たち5人は、釈放後にチームを結成
して危ない仕事(ヤマ)を引き受け、金を
稼ぐことを目論む。経験豊富な5人は最初の
依頼を手際よく片付けたが、次第に歯車は
狂い始める…。

映画はすでに4人が任務に失敗して死亡し、
生き残った1人が警察署で尋問されていると
ころから始まる。尋問されている現在と過
去とを行ったり来たりしながら、次第に真
実が明らかになり、陰で糸を引いていた人
物も明らかになった…かと思いきや、最後
に意外な展開を見せる。でもこのラスト、
私には少し疑問だった。「Verbal」という
異名のわりに特性がいまいち発揮されてな
いなーと思ったら、そういうことか、とは
思ったが。

                               1.9(日) 目黒シネマ




2022年1月10日月曜日

きっと、うまくいく

 
☆☆☆★★ ラージクマール・ヒラニ  2013年

BSプレミアムの年明け1本目は、景気づけな
のかこのインド映画を放映していた。その意
を汲んで私もその録画を観ることで、映画始
めとすることにした。

工科大学で友達になった3人の男の物語。
原題は「3バカ」だが、1人は超成績優秀な反
逆者、残りの2人は気のいいバカである。
『ムトゥ 踊るマハラジャ』のハチャメチャ
と比べるとずいぶんスタイリッシュになった
というか、映像も演出もシャープだし、オー
バーな芝居も恥ずかしい効果音も少ない。そ
の分、あの祝祭的な過剰さは薄れたが、まあ
別にいつまでもアレが見たいわけでもないし、
いいのだが。

ま、細かいことは気にせずに170分楽しく過
ごせる映画である。

                              1.8(土) BSプレミアム




2022年1月7日金曜日

テレビドラマ 2021年


観たものを羅列……

<連続ドラマ>
ここは今から倫理です。
明治開化 新十郎探偵帖
俺の家の話
きれいのくに
大豆田とわ子と3人の元夫
コントが始まる
シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅳ
「怪人二十面相」「少年探偵団」「妖怪博士」
今ここにある危機とぼくの好感度について
半径5メートル
大富豪同心2
おかえりモネ
ひきこもり先生
全裸監督シーズン2
うきわ ―友達以上、不倫未満―
オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ
土方のスマホ
岸辺露伴は動かない
「富豪村」「くしゃがら」「D.N.A」
「ザ・ラン」「背中の正面」「六壁坂」

(再放送)
いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう
イグアナの娘

(途中離脱)
最愛


<単発ドラマ>
逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!
人生最高の贈り物
金色の海
京都人の密かな愉しみ Blue修業中 燃える秋
あなたのそばで明日が笑う
ペペロンチーノ
星とレモンの部屋
エアガール
星影のワルツ
いないかもしれない
流行感冒
しかたなかったと言うてはいかんのです
雨の日
リフォーマーズの杖
命のバトン ~赤ちゃん縁組がつなぐ絆~
風の向こうへ駆け抜けろ
声がききたい。
倫敦ノ山本五十六

(ABU子どもドラマ)
あやとり
おかっぱ頭のトメさん
おじいちゃんの茶碗

(再放送)
となりのマサラ
その街のこども
LIVE! LOVE! SING!
それからの海


それでは授賞に移ります。

グランプリ
俺の家の話

敢闘賞
大豆田とわ子と3人の元夫
今ここにある危機とぼくの好感度について

技能賞
全裸監督シーズン2
流行感冒 


上位3作の脚本は、宮藤官九郎、坂元裕二、
渡辺あや。
ひょっとして…10年前からこの3人で変わっ
てないんじゃないの!? などと思ってしまう
が、私はこれまでも、そしてこれからもクド
カンの脚本がとことん好きである。スーパー
世阿弥マシン…、なんて発想だ。
大豆田とわ子は、松たか子の女社長ぶりと3
人の元夫と生意気な娘との関係だけでもじゅ
うぶんにおもしろかったが、そこにオダギリ
ジョーを投入してきてそれがまた見事にハマ
っていたのは驚きだった。
事前に期待せずに観た松坂桃李の「好感度~」
だが、やはりいろいろと巧い。中身の無いこ
とを語ることしかできない元アナウンサーと
いうのがまず面白かったですね。

2022年1月3日月曜日

ベストテン <旧作>

 
1. HOUSE       大林宣彦  1977年

2. 本気のしるし <劇場版> 深田晃司 2020年

3. 儀式         大島渚  1971年

4. 絞死刑        大島渚  1968年

5. 青春デンデケデケデケ 大林宣彦 1992年

6. 青春残酷物語     大島渚  1960年

7. ストーカー     A.タルコフスキー 1979年

8. 息の跡       小森はるか 2017年

9. 友だちのうちはどこ? A.キアロスタミ 1987年

10. 私たちのハァハァ  松居大悟  2015年


4月は、大島渚をひたすら観に行った記憶しか
ない。観れば観るほどに、次はどんな映画な
んだろうとどんどん観たくなってくる、そう
いう映画作家だと思う。

上記10本をメディア別にすると、
名画座(リバイバル上映含む)9本、テレビ地
上波1本。不思議なことにBSプレミアムが0本
という結果に。配信も0本。その名画座も実に
偏りなく、目黒シネマ、シネマヴェーラ、早
稲田松竹、ユーロスペース、新文芸坐。まさ
に足で稼いだベストテン(笑)。


2022年1月1日土曜日

ベストテン <新作>

 
賀正。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。
新作は27本鑑賞。微妙な数字ですが、ベス
ト5では寂しいということで勝手ながら10本
選ばせていただきました。


1. ドライブ・マイ・カー    濱口竜介

2. アメリカン・ユートピア スパイク・リー

3. すばらしき世界        西川美和

4. 偶然と想像         濱口竜介

5. 君は永遠にそいつらより若い 吉野竜平

6. 孤狼の血 LEVEL2      白石和彌

7. JUNK HEAD         堀貴秀

8. 騙し絵の牙         吉田大八

9. 子どもはわかってあげない  沖田修一

10. キネマの神様       山田洋次


<講評>
1位と4位を見ていただければ分かる上に、実
は4位と5位の間には順位上はひとつだが評価
上は深い隔たりがあるので、上位4本はどれが
1位でも別によいということを鑑みても、もう
昨年は濱口竜介に席捲された年だったと言っ
てよい。『ドライブ・マイ・カー』はこの10
年を代表する映画になると思うし、『パラサ
イト』が獲ったのだからこの作品も当然アカ
デミー作品賞に値すると思う。
『偶然と想像』はまた方法論も作風もがらり
と違う短篇集で、おそろしくレベルが高い3つ
の短篇から成る。濱口竜介が今後どのような
映画を撮っていくのか、追いかけていきたい。

洋画は『アメリカン・ユートピア』の1本のみ。
注目作の『ノマドランド』も『プロミシング・
ヤング・ウーマン』も『サマー・オブ・ソウル』
も、いまひとつだった。かといって邦画のレベ
ルが高かったわけでもない。今年も良い映画と
出会いたいものである。

(観た新作映画)
花束みたいな恋をした、アーヤと魔女、すばらしき世界、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||、14歳の栞、ノマドランド、騙し絵の牙、ヤクザと家族 The Family、茜色に焼かれる、アメリカン・ユートピア、JUNK HEAD、アジアの天使、竜とそばかすの姫、プロミシング・ヤング・ウーマン、キネマの神様、ドライブ・マイ・カー、子どもはわかってあげない、孤狼の血 LEVEL2、モロッコ、彼女たちの朝、サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)、スクールガールズ、君は永遠にそいつらより若い、浜の朝日の嘘つきどもと、サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜、GUNDA/グンダ、偶然と想像、エッシャー通りの赤いポスト(27本)