2014年7月31日木曜日

芥川賞、久しぶりに③


「道化師の蝶」
円城塔 著

これもなんだかなぁ。よくわからんわ。
ほんとに理系の人間が読んでおもしろいんだろうか。
私はいちおう理系のはしくれだが、感心しなかったな。


『夏の流れ』
丸山健二 著      講談社文芸文庫

いつか再読したいと思っていた。
森達也の死刑の本を読んだのもあるが、昔読んだこの小説
に描かれた、表面上は静かだが不吉さに満ちた夏の風景が
ずっと心に残っていたからである。
久しぶりに読み、二十代の丸山健二のまったく二十代らし
からぬ落ち着いた筆致に驚嘆する。綿矢りさに破られるま
では芥川賞の最年少受賞記録だったわけだが、「若書き」
など微塵も感じさせない。特に会話が良い。

表題作のほか、「その日は船で」以降3年ぐらいの間に発表
された短篇が発表順に収められている。おかしなもので、
段々つまらなくなっていくのはどうしてだろう。「その日は
船で」まではなんとか読めるものの、あれだけ会話が巧かっ
たのに、どんどん会話が削られていき、どんどん歪に、そし
ておもしろくなくなっていく。不思議だ。



2014年7月27日日曜日

思い出のマーニー


☆☆☆          米林昌宏         2014年


一見してまるでミステリのような難解さに驚く。
これは子どもに観て欲しいのだろうか。日常と非日常、過去と
現在だけでなく、日常に見える非日常や現在の形をとった過去
などをさかんに往復する構成は私には付いていくのがやっとと
いう感じで、気楽にジブリを観ようと思っていたアテは外れた。
子どもには難し過ぎてわけがわからないのではないかと思うが。

だから観るべきでないと言っているわけではなく、わけがわから
ないものも大いに観ればいいと思うが、どうせそこまで凝ったの
なら最後まで凝って欲しかった。複雑なストーリーの割には「種
明かし」のカタルシスも弱いし、結局マーニーの日記の「あの部
分」だけを破って絵の裏に隠したのは誰なのか、私には分から
なかった。

まあそれは物語の核心とはあまり関係がないが、もっと核心に
近いところでも「うーん」と頭をひねらざるを得ない部分があった。
懸命に辻褄を合わせようとしているんだけど、合わせ切れていな
い感じ。
宮崎駿というひとはとにかく「物語の泉」のようなひとで、たとえば
映画を観ていて途中で中断されても、あとは自分で勝手にストー
リーを作って楽しむから平気らしいと鈴木敏夫が言っていて、そ
んな人間がいるのかと驚いたが、やはりそのへんの「地肩」の差
がこういう所に出るのだろうか。白ヒゲおじさんの映画だってそう
とう難解だが、なぜかストレスは感じないのである。

                                                   7.19(土) イオンシネマ釧路


2014年7月11日金曜日

渇き。


☆☆☆         中島哲也         2014年


だから酔うんだよ! カメラ揺らしすぎだろ。
そして私はこういう細切れの、一度フードプロセッサーにかけ
たような映画を楽しいと思ったことはあまり無いことを思い出
した。『ナチュラル・ボーン・キラーズ』とかね。

普通の女子高生だと思っていた自分の娘が実は悪魔みたい
な女の子だったことが次第に分かってくるという話じたいは非
常に好みである。この題材を『告白』みたいな筆致で撮ったら
どうなっただろうかとつい夢想。

こういう映画が全国で公開されて、釧路みたいな土地でも観る
ことができる、しかも高校生は1000円で観られるキャンペーン
なんかもやっていて、田舎の純朴な高校生にもこの過剰な暴力
描写が一種のトラウマとして刻みつけれられるというのは悪い
ことではないと思うが。『僕等がいた』とかしか観たことない奴に
は衝撃だろう。高校生よ、途中で出てもいいから『渇き。』を観
に行くんだ。

                                                    7.6(日) イオンシネマ釧路


2014年7月10日木曜日

中間報告


さて。うかうかしている間に今年も半分が過ぎ。
中間報告いたします。

まずは本数ですが、7月1日時点で、62本!!

今年は出だしこそふるわなかったけれど、5月と6月で猛然と
追い上げました。そのふた月で30本観ました。次から次へと
観たくてたまらない時期でした。そのかわり全然本を読んで
いません。なかなか両立は難しい。

新作で良かったのは、まあなんといっても石井裕也『ぼくたち
の家族』が頭ひとつ抜けている。あとは、『ダラス・バイヤーズ
クラブ』『ブルージャスミン』『私の男』という感じか。

旧作は『ドッグヴィル』がダントツの衝撃度。続いて『新幹線大
爆破』『リアリズムの宿』が良かったっすわ。

ドラマは、日曜の昼に再放送している『夢千代日記』を観て、
『続・夢千代日記』も観ました。しみじみ素晴らしかったなぁ。

ということで、今年もあと半分、わたしも一生懸命観ますが、
みなさんも良き映画ライフを!


2014年7月8日火曜日

悪人


☆☆☆★★        李相日       2010年


ひさびさに、「骨太な」という形容の似合う柄の大きい映画を観
た気がする。原作小説も吉田修一としては出色の出来だった
が、映画も良い。
妻夫木くんと深津絵里が惹かれあうのも無理がなかったし、柄
本明のどうしようもない悲哀、樹木希林の怒り、そして満島ひか
りのウザさ、すべてが有機的に映画に貢献していたように思う。

妻夫木くんがヘルスに通いつめて、いつも同じヘルス嬢と狭い
部屋でお弁当を食べてたエピソードは無かったね。あの話、わ
りあい印象に残ってたんだけど。二畳のスペースでヘルス嬢に
お弁当食べさせるって、かなり妄執めいていて良い。ま、私が
監督でも真っ先にカットすると思うが。

                                                                6.22(日) BS TBS


2014年7月6日日曜日

ピアノ・レッスン


☆☆☆★      ジェーン・カンピオン      1994年


「おいおい」と突っ込みたくところもけっこうあるが、最後まで
緊張感は切れることなく持続した。青を基調とした独特の色
彩と風変わりな設定を維持して、ラストまで見せきった感じ。

でも、もし「これって何の映画なんですか?」と観てないひとに
訊かれたとしたら、何と言えばいいんだろう。ピアノ・レッスン
についての映画では当然無いわけで…。

それにしても、最後は絶対あのままピアノに引っ張られて死
ぬんだろうと思ったけどね。

                                                                  6.22(日) DVD


2014年7月5日土曜日

クイール


☆☆☆         崔洋一       2004年


何を隠そう、山田洋次セレクションのしかも「家族篇」の1本だ!
優に3年は我がHDDに保存されていたわけである。実はそんな
のがまだまだあるのだ!

動物を撮るのは難しいんだろうなー、この現場にはいたくないな、
とついつい「撮る側」から観てしまう。

                                                            6.21(土) BSプレミアム


2014年7月1日火曜日

ミスティック・リバー


☆☆☆★★     クリント・イーストウッド     2003年


いつもながら重厚なイーストウッドの映画である。
仲良し3人組だった子どもたちだが、ある事件をきっかけに
まったく異なった人生を歩み始める。
やがて中年になった3人だが、これまた「ある殺人事件」を
契機としてふたたびその人生が不吉な交叉を始める…。

名作になるお膳立ては整ったようなものだが、ちょっと焦ら
し過ぎの感じがしてしまい、ラストもちと消化不良か。
イーストウッドの映画だから、ついハードルも高くなる。

                                                          6.21(土) BSプレミアム