2019年1月16日水曜日

ビリー・ザ・キッド/21才の生涯 特別版


☆☆☆★   サム・ペキンパー   1973年

ペキンパーは手放しで好きと言えるほどファンでも
ないのだが、この映画はたしか黒沢清がオールタイ
ムベスト10本に挙げていたと記憶している。

ビリーは無法者であり、腕のいいガンマンである。
一方でかつては同じ無法者だった盟友パット・ギャ
レットが保安官となり、ビリーを追跡し、追い詰め
ていくという話である。
ボブ・ディランが音楽を全面的に担当していて、し
ばしばディランの拗ねた男の子のような歌声が荒野
の映像にかぶさる。のみならず、ディランはわりと
重要な役で出演もしている。演技するボブ・ディラ
ンを他で見られるのだろうか。たぶん相当貴重だろ
う。
ペキンパーお得意の殺戮シーンもあるにはあるが、
どちらかといえば堅実なつくりに思えた。

                                      1.12(土) BSプレミアム


2019年1月14日月曜日

恐怖の報酬【オリジナル完全版】



☆☆☆★★★  ウィリアム・フリードキン  1977年

今年の映画始め。
パッとしない男たちが一攫千金を夢見て、振動を与え
ると即爆発するニトログリセリンをトラックで運ぶと
いう危険な仕事に挑む。無論、平地をのんびり運ぶわ
けではなく、崖っぷちやらジャングルやら、通るだけ
でメキメキいう木の橋やらを恐る恐る走らせる。その
緊張感たるやすさまじい。

1977年に公開された映画だが、30分以上短縮された
代物だったらしい。監督の念願であったオリジナル完
全版が、このたびようやく公開にこぎつけた由。

何が良いって、男たちが寡黙なのが良い。
黙々と、オンボロ車を走れるようにセットアップして
いくシーンが、この映画をよく表しているように思う。
ロイ・シャイダーが実に渋い。

フリードキンといえば私も大好きな『フレンチ・コネ
クション』。のみならずカルト映画『エクソシスト』
も撮った名監督である。しかし3本ともものすごい個
性をもった映画だ。魂の込め方が尋常でない。

                                           1.11(金) シネマート新宿


2019年1月4日金曜日

テレビドラマ 2018年


観たものを羅列……

(連続ドラマ)
anone
宮本から君へ
透明なゆりかご
半分、青い。
この世界の片隅に
このマンガがすごい!

(単発ドラマ)
農業女子 はらぺ娘(再放送)
未解決事件 file.06 赤報隊事件
あったまるユートピア
天才を育てた女房 ~世界が認めた数学者と妻の愛~
越谷サイコー
荒神
真夜中のスーパーカー
どこにもない国
You May Draem
R134/湘南の約束
夕凪の街 桜の国2018
学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで
崖っぷちの淵子!
未解決事件 File.07 警察庁長官狙撃事件
あにいもうと
フェイクニュース
いよっ!弁慶
炎上弁護人
乱反射
プラスティック・スマイル

(途中リタイヤ) 3話以上観たけどやめたもの
西郷どん


単発ドラマは3本を除いた残りのすべてが
NHKのドラマと。異常です。


グランプリ
「未解決事件 File.07 警察庁長官狙撃事件」

敢闘賞
「anone」「宮本から君へ」

技能賞
「透明なゆりかご」


今年、もっとも強烈に残っている芝居は、
「警察庁長官狙撃事件」のイッセー尾形が
犯行を供述する場面。それと、「anone」
で田中裕子、小林聡美という強敵たちとま
ともに芝居で張り合う広瀬すず。すず、負
けてなかったよ! そして、「宮本から君
へ」で池松壮亮がついに契約を獲れなかっ
た場面。この3つの場面を脳内で反芻する
だけで幸せな気分に浸ることができる。
「透明なゆりかご」の瀬戸康史と清原果耶
もとても良かった。ゲストで出て来た役者
もそれぞれに印象的である。

2019年は「いだてん」の年ですな。


2019年1月2日水曜日

ベスト5 <旧作>


続いて旧作。

1. インセプション          C. ノーラン  2010年

2. ポーラX                     L. カラックス  1999年

3. バリー・リンドン      S. キューブリック  1976年

4. さんかく                    吉田恵輔   2010年

5. ばしゃ馬さんとビッグマウス  吉田恵輔  2013年

次点. レオン                       L. ベッソン  1995年


<講評>
『インセプション』は5年に1本の大傑作映画だと
思う。C.ノーランは『ダークナイト』が無くても、
これ1本で映画史に残る。
『ポーラX』は観た者の心に引っ掻き傷を残さずに
おかない異形のフィルム。なんだか呪いのビデオ
みたいですが…。
キューブリックは『バリー・リンドン』でいった
い何を描きたかったのか。ただの口のうまいチン
ピラがのし上がり、没落していく様、というだけ
ではあの美術、音楽、カメラワークへの異常なま
での執着は説明できないように思う。
吉田恵輔の2本はキネカ大森で観て、このひとなら
この先どんな映画だって巧く撮れるだろうと思っ
た。素晴らしい監督。
『レオン』は、別にのめり込んだわけではないの
だけど、ジャン・レノの狂気から最後のスティン
グに至るまで、かなりキレイに「決まった…」と
いう気持ち良さがあった。


2019年1月1日火曜日

ベスト5 <新作>


賀正。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今回も10本選ぶほど観ていないので、ベスト5です。


1.  犬ヶ島         W. アンダーソン

2.  勝手にふるえてろ    大九明子

3.  ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書  S. スピルバーグ

4.  カメラを止めるな!    上田慎一郎

5.  リバーズ・エッジ     行定勲

次点.  スリー・ビルボード   M. マクドナー


<講評>
2018年は66本でした。
年明けすぐに『勝手にふるえてろ』に出会い、
松岡茉優の演技を堪能できたことがずっと良
い意味で尾を引いていた。貴重な才能である。
マジメな顔で「え…?」と言うだけでなんと
なく可笑しいというのは、あまり居ない女優
だと思う。
「重厚」部門を担ってくれたのは『ペンタゴ
ン・ペーパーズ』と『スリー・ビルボード』。
後者はちょっと惜しい部分があるなーと思っ
て次点になったが、いくら言葉を費やしても
いいぐらい秀逸な映画である。
『犬ヶ島』は観るほうにも気力を要求するす
さまじい情報量の映画である。カット割、セ
リフ、アクション、美術。すべてを整理し、
まとめあげるW.アンダーソンの"統合力"には
感服するほかない。


<観た新作映画>
勝手にふるえてろ、デトロイト、リバーズ・エッジ、羊の木、スリー・ビルボード、ファントム・スレッド、万引き家族、焼肉ドラゴン、悪魔が来りて笛を吹く、カメラを止めるな!、15時17分、パリ行き、ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書、未来のミライ、菊とギロチン、MEG ザ・モンスター、犬ヶ島、娼年、孤狼の血、ここは退屈迎えに来て、ハナレイ・ベイ、ボヘミアン・ラプソディ、souvenir the movie ~Mariya Takeuchi Theater Live~(22本)

2018年12月30日日曜日

【LIVE!】 サニーデイ・サービス


 サニーデイ・サービスの世界 追加公演 "1994"


今年の5月に亡くなってしまったドラムの丸山
さんを追悼する側面の濃いライブであった。

まったく飾り気のないステージに、曽我部恵一
(Vo/Gt)と田中貴(Ba)のふたりだけ。ほん
とに最初から最後までふたりだけで、ほとんど
MCもなく3時間、推定35曲(!!)を丁寧に、慈
しみながら演奏してみせた。ギターとベースだ
けでリズムを合わせるのは難しいと思うが、ふ
たりとも常に頭の中で鳴っている丸山さんのド
ラムに合わせているようで、しかもかなり精度
の高い演奏だったのにはしみじみと感動してし
まった。

ベストアクトは「ふたつのハート」。この曲好
きなんで、やってくれて嬉しかった。

                     12.28(金) 渋谷CLUB QUATTRO


2018年12月29日土曜日

読書⑧


『ソラリス』
スタニスワフ・レム 著 沼野充義 訳 ハヤカワ文庫

モロッコまでの長いフライトで何を読もうかとウキ
ウキ考えて、『ソラリス』を選んだ。余談だが往路
は偏西風の向かい風だったせいなのか、トランジッ
トのアブダビまでが12時間、アブダビからは11時間
かかって、ようやくカサブランカに到着。わたしは
機内で映画を観ないので、その時点で『ソラリス』
は読み終わっていた。

巨大な"海"に覆われた惑星ソラリスのステーション
に主人公がたどり着く。が、ステーションは静まり
かえっており、誰が迎えに出て来るでもない。
あとあと分かってくるのは、みなソラリスの"海"が
現出させる幻に精神を蝕まれ、ある者は自室に引き
こもり、ある者は精神に変調をきたしているのだ。
いったいソラリスの"海"とはどの様な存在なのか…。

奇妙なラブロマンスでもあるこのSF小説は、たしか
に間に長々と続くソラリスに関する学術的な論争の
歴史など、退屈と言われても仕方ない部分を含みな
がらも、そりゃあ人を惹きつけてやまないだろうな
という魅力にも満ちている。言ってしまえば「ハリ
ー」の造型が成功しているのがこの小説の勝因であ
る。









『小津ごのみ』
中野翠 著  ちくま文庫

小津映画に出て来る障子紙、襖やカーテンの柄、湯
呑みや花瓶などの小物から小津の"このみ"を読み取
り、小津安二郎ほど画面を自分好みの物で埋め尽く
した映画作家もいないということを証明している。

最近小津映画を何本か続けて観たので記憶も新しく、
これまであまり注目されてこなかったであろう観点
からの小津映画論としておもしろく読んだ。