2016年2月29日月曜日

俳優 亀岡拓次


☆☆☆★          横浜聡子        2016年

ヤスケンの主演映画ですよ。
あのヤスケンが主演ねぇ…、って私は「水曜どうでしょう」
に出て来るヤスケンしか知らないが。

世評の高い横浜聡子だが、観るのは初めて。
この作品も、雑誌なんか見てると軒並み高評価である。

しかし私は最後までこの独特のゆるいテンポに波長が
合わないまま終わってしまった感があり。というか、申し
訳ないけど寝たよね。なんだろう、これがたまんねぇって
ひとも多いんですか。なんつーか、ただ単にダラダラし
てる、よね?

同じくテンポがゆるめで、女性監督で、批評家たちの覚え
もめでたいので、どうしても井口奈己と比較してしまうのだ
が、『ニシノユキヒコの恋と冒険』は2014年の2位にしたぐ
らいなので(ちなみに1位は『ジャージー・ボーイズ』)、私
は井口奈己のゆるさとワンカットの長さを大きな魅力だと
思っているのである。あちらの長回しには心意気を感じる。
今回はあまり感じなかった、というと印象批評に過ぎるか。

ただし、麻生久美子の色っぽさはいい。よく撮れていると
思う。それで★追加。

                                                 2.19(金) テアトル新宿


2016年2月27日土曜日

逆鱗


NODA・MAP 第20回公演

このブログをやり始めてから観劇に出掛けたこと、あったっけ?
ブログの前身、ただの映画ノートだった頃はまだ時々行っていた
ので、そこには「ザ・キャラクター」やら「太鼓たたいて笛ふいて」
なんかの感想が書いてあるはずだ。たぶん。

大学生のときは、井上ひさしのこまつ座を中心として、野田秀樹
や劇団四季の自由劇場のシェイクスピアなんかをしばしば観に
行った。PARCO劇場の三谷幸喜も観たかったが、チケットが取
れたためしがない。あと、清水邦夫もよく観に行っていたな。
実は私は清水邦夫のファンで、あのついつい口に出して読みた
くなるカッコいいタイトルたちは、リルケの影響が大きいなんてい
う話を聞くと、すぐリルケの詩集やら『マルテの手記』を買ったもの
である。中断して最後まで読めていないけど。

『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』
『ぼくらが非情の大河をくだる時』
『泣かないのか? 泣かないのか一九七三年のために?』

これ芝居のタイトルですからね。
かっこいいなぁ。やっぱり。

ということで、前置きが長い。要するに、ひさびさにも程があるが、
芝居を観ました。野田秀樹だし、松たか子と阿部サダヲ出てるし、
「花燃ゆ」ですっかり好きになった井上真央ちゃん出るし。瑛太は
まあ、どうでもいいけど。

芝居は良いですなー。言葉のシャワーを浴びる感じ。
多少聞き取れなくても気にならない。
今回は、野田秀樹お得意の言葉遊びから、意外な展開が用意さ
れていて、まったく退屈しなかった。
内容については、まだまだ大阪公演もあるようなので、書くことは
控えます。

                                                          2.16(火) 東京芸術劇場


2016年2月24日水曜日

黒い罠


☆☆☆★★       オーソン・ウェルズ    1958年

オープニングのカメラワークの見事さ!
いつ車が爆発するのか、主役と思しき二人が車に接近する度
に、爆発に巻き込まれるんじゃないかとハラハラさせられる。
ワンカットで観客を映画の世界に引きずり込む、まさに教科書
のようなオープニングである。

観終わっていろいろ調べてみると、なんか私が知らなかっただ
けで、カメラワークに凝りまくってる映画としてだいぶ有名なん
だってね。サスペンスとしてよりもむしろ、撮影技術の文脈で語
られていることが多いようだ。むべなるかな。

そして悪徳刑事を演じてるのがオーソン・ウェルズその人だと
知って、二度びっくりポン。

                                                         2.4(木) BSプレミアム


2016年2月20日土曜日

赤い河


☆☆☆★        ハワード・ホークス     1948年

BSでハワード・ホークスの映画がよく放送されているのは
知っていたが、西部劇が苦手なのでスルーしてきた。でも
千本ノックの身としては、好き嫌いをできる立場ではない。
苦手も克服していかねば、という思いで『ハタリ!』から始
めた、ハワード・ホークスを観ようキャンペーンの一環であ
る。

1万頭の牛を、遠く荒野を越えた街に売りに行くだけの話
なのだが、いま観てもかなり壮大な風景の中、ちゃんと壮
大な良い画が撮れており、レベルの高さが窺い知れる。
しかし話にひねりが利いてないと満足できないんだよな。

                                                  2.4(木) BSプレミアム








<ツイート>
岩井俊二のMOVIEラボは半分以上が1分スマホ映画の品
評会になっちゃってますね。私はどちらかというとそっちより
も岩井俊二やゲストの映画バナシを聞きたいのですが、ま
あいいか。しかし是枝さんはさすが方法論のひと、説明がい
ちいちカッコいいですな。
そして『四月物語』を猛烈に再見したくなる……。あの松たか
子なんなの、可愛すぎるだろ。

2016年2月17日水曜日

炎上


☆☆☆★★        市川崑      1958年

つづけてもう1本。

これはおもしろかった。
原作はごぞんじ三島由紀夫『金閣寺』。
恥ずかしながら三島は一冊も読んだことがないのだが、
どういうわけか話の内容は知っている。

近年、うら若き女子たちの間でも人気が再燃していると
聞こえる市川雷蔵が、初の現代劇に挑んだ映画である。
共演はまたも中村鴈治郎。

どうにも気が弱く、吃音という悩みを抱える青年僧を演
じるのが雷蔵。どもりの青年というと『ノルウェイの森』の
突撃隊を思い出す。金閣寺は劇中では驟閣寺と名前を
変えられている。原作があるのに、何に対する配慮なの
だろう。

私にはコンプレックスの塊のような「どもり」のこの男が、
安倍晋三に重なって見えて仕方なかった。ごぞんじの
通りこの青年僧は、驟閣寺の美しさを永遠のものにす
るため、火を放って焼いてしまうわけだが……。

                                               2.3(水) 角川シネマ新宿


2016年2月15日月曜日

雪之丞変化


☆☆☆          市川崑        1963年

ふたたび市川崑映画祭。

特集上映では、だいたい予告篇が毎回同じものなので、
一度観ればじゅうぶんだ。なので始まるまでipodを聴い
ていることが多い。この時は直前までNegiccoを聴いて
いて、本編が始まった途端、あまりの世界の違いに頭が
混乱してしまった。いや、全部私が悪いんですけどね。

たぶんわざとなのだが、かなり古めかしい「仇討ち」物語。

長谷川一夫演じる女形が、復讐を果たすために相手に近
づく。復讐相手の娘は将軍の妾だったりするのだが、サクっ
と一瞬で惚れられてしまう。な、なんて都合のいい…。もち
ろん復讐に利用するのだが、うーむ。いかんせん、長谷川
一夫が普通に化粧してるおっさんにしか見えないのが難点
である。私の眼が曇っているのか。あるいはデジタルリマス
ターの弊害か。

美しい若尾文子は一見の価値あり。

                                             2.3(水) 角川シネマ新宿


2016年2月13日土曜日

ヒッチコック


☆☆☆★           サーシャ・ガヴァシ        2013年

こうなったらヤケで、帰宅後ダメ押しの4本目。

『サイコ』製作時のヒッチコック夫妻の話。
ヒッチコック役はアンソニー・ホプキンスで、『Ray』ぐらいから盛ん
になった「目指せそっくりさん」な演技。でもけっこう似ている。妻
は、『クイーン』でエリザベス女王を演じたヘレン・ミレン。エリザベ
ス女王とレクター博士の夫婦というのが笑える。

原作が悪趣味だからとパラマウントが出資しなかったとか、最初
の試写はデキが悪くて再編集したとか、なかなか興味深い。興味
深いのだが、『サイコ』を観る際にぜひ知っておくべきかというと、
別にそうでもない。

スカーレット・ヨハンソンを久しぶりに見た。ジャネット・リーの役。
実在の女優を演じるというのは、やりにくいだろうな。

                                                           2.2(火) BSプレミアム


2016年2月12日金曜日

ジプシーのとき


☆☆☆★★      エミール・クストリッツァ     1989年

早稲田で2本立てを観たものの、気力・体力ともにまだ充実していた
ので、恵比寿に移動してクストリッツァ特集上映に参戦。
『アンダーグラウンド』よりも前の作品だが、すでに完全にクストリッ
ツァ印の映画だった。もうこのひとは『マラドーナ』とか撮ってないで、
永遠にこういうブンチャカブンチャカ騒がしい映画を撮り続けてほし
いものだ。

主人公がニノに似ている。笑った顔とか。







どうすか。怒られますかね。

劇中、少なくとも3つの結婚式が出て来る。このひとはほんとに騒が
しい宴会を撮るのが好きだよね。『ライフ・イズ・ミラクル』の壮行会
を思い出す。

                                                 2.2(火) 恵比寿ガーデンシネマ



2016年2月9日火曜日

ビッグ・シティ


☆☆☆★        サタジット・レイ      1963年

今作も、舞台はカルカッタ。
のみならずこちらでも、さっきチャルラータを演じてた女優が
主演を張っている。きっと中期サタジット・レイのミューズだっ
たのだろう。

今度はチャルラータは(チャルラータではないが)中産階級の
奥さんである。夫は銀行員なのだが、子どももおり、夫の両親
とも同居しているので、生活はラクとはいえない。

そこで家計の足しにするため、アルバイトを始める。
ところがこの元チャルラータがミシンのセールスに思わぬ才能
を発揮し、グループリーダーに抜擢されるほどになる。労働に
喜びを見出しはじめた妻に、複雑な感情を抱く夫。もともと短期
の約束だったとかいって妻の仕事を辞めさせようとするのだが…。

都市で生活すること。それ自体が主題となっているわけである。
つまり、なんとなく村上春樹的。

                                                            2.2(火) 早稲田松竹


2016年2月7日日曜日

チャルラータ


☆☆☆★            サタジット・レイ        1964年

インド映画の巨匠、サタジット・レイの特集。
といっても私にはまったく未知の監督。
インド映画といえば、歌や踊りで騒々しいイメージだが、この
映画はまったくそんなことはなく、丁寧に人の心の機微を描い
た静謐な映画である。こんなインド映画が60年代からあるん
だね…。こういう特集を組むのが早稲田松竹。啓蒙的なので
ある。

舞台は1880年、カルカッタ。チャルラータは上流階級に属す
る夫人である。マドビ・ムカージーという女優らしいが、ちょっ
と久我美子に似ている。
裕福なので、家も広く、メイドとかもいて、基本的にヒマである。
有閑マダム。刺繍をしたり(下画像)、小説を読んだりする。
夫は政府に批判的な新聞社の社長をしており、忙しい。そし
てチャルラータが読むような小説はバカにしている。
そこに夫の従弟で、これまたヒマをもてあましている大学生の
アマルが、夏休みの間、逗留することになる。文学や音楽に
素養のあるアマルはチャルラータと話が合い、チャルラータは
次第に、あくまで自然に、アマルに親愛の情を抱くようになるよ
うなのだが……。

なんか漱石みたいな話だな、という第一印象。
このアマルの方を主人公にすれば、『行人』に似ていなくもない
ような。いずれにせよ、こんな地味なインド映画もあるのである。

                                                          2.2(火) 早稲田松竹


2016年2月6日土曜日

悪魔の手鞠唄


☆☆☆★★          市川崑           1977年

ようやく、市川崑映画祭に参戦。
とりあえず昔、金田一を5本連続で観て、いちばん人間
関係が複雑で分からなかった本作を再見。

舞台は例によってとある寂しい村。
その名も鬼首(おにこべ)村。
例によって対立する二つの家。由良家と仁礼家。
そして手鞠唄になぞらえて、娘たちが次々に殺される。
死んでいるはずの老婆。掘っ立て小屋に住むあやしい老人。
お膳立ては完璧!

手鞠唄をちょっとずつしか思い出さないおばあちゃんがおも
しろい(下画像)。死体の見せ方にこそ美学があることをこの
映画から学んだのであった。
今回は犯人が分かっているので、人間関係もよく分かったよ。
しかし「犬神家」ほどの感動はなく。

                                                   1.30(土) 角川シネマ新宿


2016年2月4日木曜日

クヒオ大佐


☆☆☆★★★       吉田大八      2009年

おもろいやんけー! 吉田大八。
期待してなかったので得した気分。

結婚詐欺師が巧みに女を騙していくだけかと思っていたので、
クヒオ大佐が意外にドジで笑える。銀座のNo.1ママには逆に
貢がされそうになるし、新井浩文には脅されて金を取られる。

弁当屋を切り盛りする松雪泰子とのやりとりがメインではある
のだが、ここでも満島ひかりが良い。
最近では「江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎」での
満島も最高だった。表情も絶妙で、男装も似合う。何より、あ
の身のこなしが良い。「屋根裏の散歩者」の謎解きで、柔道
の篠原に寄り掛かったり足を絡めたりする動作に魅せられる。
サッカー解説じゃないが、「フィジカルが良い」んだな、きっと。

                                                       1.31(日) BSプレミアム








<ツイート>
岩井俊二のMOVIEラボ Season2が始まるよー。
観ないっていう選択肢は存在しないよ。


2016年2月1日月曜日

彼岸花


☆☆☆★★        小津安二郎      1958年

デジタルリマスター版というのを鑑賞。

小津の初カラー作品で、監督みずからカラーフィルムを
選定したとのこと。"赤いやかん"はその成果ってことか…。
それにしても異様だった。

初めて観たはずなのだが、たびたび既視感に襲われる。
『秋日和』は観た、『彼岸花』はまだ、と思ってたけど、もし
かして逆だったか……いやそんなはずは……と、何度も
疑心暗鬼になるほど。小料理屋で佐分利信、北竜二、
中村伸郎が女将をからかうシーンなんてものすごく見覚
えがあるのだが…。

しかし自己模倣を繰り返す小説家は二流扱いされるのに、
「毎回同じ話かよ!」とツッコまれるのを待っているとしか
思えない小津が超一流というのは、これいかに。
映画においては話が同じだろうと、そんなことは関係ない
ということになる。しかし『秋刀魚の味』とかおもしろいんだ
よなぁ。

                                               1.20(水) BSプレミアム