2019年9月30日月曜日

コミック雑誌なんかいらない!


☆☆☆★★     滝田洋二郎     1986年

内田裕也が扮するは芸能人のプライベートを
土足で踏み荒らし、三浦和義の店にアポ無し
突撃して本人に「ロス疑惑をどう思うか」と
訊き、お茶の間の欲望を満たすためには歌舞
伎町のホテルで殺害された少女の葬儀にだっ
て押しかけ、遺族にマイクを突きつける、い
わゆるワイドショーの"下衆の極み"レポータ
ーである。「恐縮です!」が口癖なので梨元
勝かと思いきや、梨元は本人として出演する
ので「キナメリ」という名のこの男は、架空
の芸能レポーターだと思っていいのだろう。

劇中には1985年当時の本当の芸能ニュースや
スキャンダルが織り込まれていて、今となっ
てはそちらも興味深い。途中、ネタ屋がキナ
メリに情報を売る場面で、「さんまの参宮橋
のマンションに研ナオコが越してきた」とい
う情報があったのがおもしろかった。
タモリ、赤塚不二夫、おニャン子クラブ、郷
ひろみ、ジュリーも出演。ビートたけしも最
後に狂気に満ち溢れた役で出てくる。私は豊
田商事の会長刺殺事件というのをまったく知
らなかったので、あとで調べてこういう事件
があったのかと驚いた。

                                   9.15(日) 新文芸坐


2019年9月25日水曜日

水のないプール


☆☆☆★★    若松孝二    1982年

池袋の文芸坐で、内田裕也主演作の2本立て。

地下鉄のモギリをやっている冴えない中年男
(内田裕也)が、息子の昆虫標本作りを見て
クロロホルムを使った家宅侵入および強姦を
思いつき、次々と実行していくというピンク
映画である。実際の事件を元にしているらし
い。
だんだん強姦だけでは飽き足らず、裸にして
ポラロイド写真を撮ることに熱中していくの
だが、それもエスカレートして現代アートみ
たいになっていくのがおもしろかった。若い
頃の内田裕也はすこし井浦新を思わせる精悍
な顔つきで、なかなかカッコいい。

                                    9.15(日) 新文芸坐


2019年9月21日土曜日

溺れるナイフ


☆☆☆★      山戸結希    2016年

菅田将暉と小松菜奈が主演。
いわゆる女子高生が観るような映画だが、山戸結希
が撮ることで、「ただの量産胸キュン映画のひとつ
には終わらせない」という並々ならぬ気概を感じる。

「セブンルール」においても、役者の髪の毛1本の
垂れ方にも修正を加えるこだわりぶりと、「よーい、
スタート」の声の並外れた小ささに圧倒されたが、
たしかに絵づくりのおもしろさは感じられた。移動
ショットなどもおもしろいし、効果的。ストーリー
は失笑するしかないご都合展開だが、まあそれはは
じめから期待していない。
ただ音響方面は残念としか言いようがない。まあ水
に入ったりバイクに乗ったり火を振り回したり、ア
フレコが多いのは仕方ないが、あまり馴染んでいな
い。音楽は、明らかに不必要な大森靖子のボーカル
入りの曲が芝居を邪魔しており、分かり易さにもつ
ながっていない。他にも曲想が合っておらず、In点
やOut点がイマイチな曲も多く、総じてMAはもっと
がんばれたと思う。

そんななか、ジャニーズの重岡大毅の演技に好感を
もった。「ごめんね青春!」にも出てたらしい。

                                         9.11(水) BSプレミアム



2019年9月18日水曜日

凪待ち


☆☆☆★      白石和彌    2019年

映画にテレビに、一時期の園子温のような量産
ぶりを誇る白石和彌。とてもじゃないけれど、
全部を観きれない。

香取慎吾がどうしようもないダメ男を演じた本
作は、震災後の石巻を舞台に、犯罪と暴力の饐
えた匂いが立ちこめる佳作である。
ギャンブル依存症にはなりたくないですな。何
度、再起を誓っても競輪に行ってしまうダメダ
メぶりがなかなかよかった。共演のおじいちゃ
ん、吉澤健の演技がすばらしい。リリーさんも
当然のように良い演技をしている。
何年か前は、香川照之の「出ていない」映画を
探すほうが困難な状況があったが、いまは本気
でリリー・フランキーの出ていない映画を探す
のが難しい。それぐらいの出演ぶり。あくまで
「私の好んで観るような映画」では、だが。

                                9.10(火) アップリンク渋谷


2019年9月16日月曜日

天空の城ラピュタ


☆☆☆★★★     宮崎駿     1986年

3年ぶりぐらいか。テレビ放送。
もういい加減、次に何が起こるか分かり切った上で
観ているわけだが、それでも飽きないなー。

今回はとりわけ、地下に安置されていたラピュタの
兵士が眠りから醒め、よろけたりしながらもシータ
を助けに行く場面にいたく心を打たれた。あとパズ
ーとシータは実はドーラ一味の船でごく短時間しか
働いていないのではないかというのが気にかかった。

                                                   9.5(木) 日テレ


2019年9月12日木曜日

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド


☆☆☆★★★  クエンティン・タランティーノ  2019年

快作である。いやー、おもしろかった。
上映時間は161分だが、体感時間は110分といっ
たところ。

近作の『ジャンゴ』と『ヘイトフル・エイト』
は「緊張と弛緩」に重点が置かれていて、そ
れはそれで見事なのだが、もうちょっと遊び
があってもいいのかな、という個人的な感想。
今回はいつもの「くだらなさ」が戻って来た
感じがある。

レオ様は翳りが見えて来た西部劇の俳優、ブ
ラピがそのスタントマン。これはブラピの方
がいわゆる「おいしい役」で、暇だからレオ
様の自宅のテレビアンテナを修理したりして
いるのは、正直かなりカッコいい。
1969年のハリウッドの人間模様を(かなり
忠実に)描きながら、その型にタランティー
ノらしい物語を注入している。
まあとにかく最高、必見である。

                               9.1(日) 新宿ピカデリー


2019年9月9日月曜日

テス


☆☆☆★   ロマン・ポランスキー   1980年

没落していく女の一代記と聞いていたので、
『バリー・リンドン』みたいな感じを想像し
ていたら、まあ当たらずとも遠からずか。
冒頭には「シャロンに捧ぐ」と。シャロン・
テート惨殺事件は1969年である。タランティ
ーノの新作にも、シャロン・テートが『テス』
の初版本をポランスキーへのプレゼントとし
て古本屋で買い求める場面があった。

テスを演じるのはナスターシャ・キンスキー。
それにしても男どもの行動が理解不能。テスの
罪の告白を聞いたモジャモジャが「君が別人の
ように見える」ってそりゃないぜ。ヒゲの伯爵
はなぜあんなにまでして拒絶しつづけるテスを
自分の妻にしたがるのか。いくら美人だからっ
て、面倒な家族も付いてくるし、産ませた子ど
もは死んだし、妻にまでする理由が見当たらな
い。
上映時間は170分を超える。体感時間は、まあ、
170分ぐらいかな。

                                8.31(土) BSプレミアム


2019年9月4日水曜日

マイマイ新子と千年の魔法


☆☆☆★     片渕須直    2009年

奇妙な題名だが、「マイマイ」とは頭の「つむじ」
のことで、前頭部に2つめのつむじがある新子は、
いつも前髪がそこだけピョンとはねている。お話
の上手いおじいちゃんからいつも、千年前ここは
都だったという話をわくわくしながら聞いて、空
想好きの少女となった「マイマイ新子」の現在と
千年前の都市の暮らしを交錯させながら、ひと夏
の成長が描かれる。イッキュウさんが言う「アニ
メーションにしかできない表現」というのはこう
いうことだろう。
登場する子どもたちの方言から、おそらく舞台は
広島か、山陽地方の田舎と思われる。

                                               8.25(日) 日テレ