2015年11月30日月曜日

夜叉


☆☆☆★★★       降旗康男       1985年

前半90点、後半60点というところか。
最初の1時間はシビれまくった。田中裕子(当時30歳!)の色っ
ぽさが尋常じゃない。後半がちょっとダレたかなぁ。私の集中力
が落ちただけかもしれないが。

舞台は福井県、敦賀の港町。漁師町である。
それなりにうまくやっていた共同体に、異物としての"女(=田中
裕子)"が入り込んでくる。映画としてはよくあるパターンである。
田中裕子は大阪のミナミから流れてきて、この地で飲み屋を開
く。そのコケティッシュな魅力もあって店は繁盛するが、地域共
同体の関係には徐々にきしみが生じ始める。そこへ田中裕子の
ヒモで、立派なヤク中のビートたけしがやって来て、おクスリを
「栄養剤だ」と言って皆に売りさばくようになる。それに心を痛め
る健さん……。健さんも元ヤクザなのだが、背中の"夜叉"を隠し、
この地で漁師として堅実に生きているのである。

ギラギラしたビートたけしが最高。包丁を持って田中裕子を追い
かけまわすシーンがあるのだが、演技だと分かっていてもほん
とに刺しそうで怖い。

                                                        11.19(木) BSプレミアム



2015年11月28日土曜日

オープニング・ナイト


☆☆★★★      ジョン・カサヴェテス     1978年

これは、あまりにバカげてないか。
私はラストがまずいからといって文句をつけることは極力し
ないように心掛けているが、この何の決着にもなっていない
ラストには茫然というか、「やれやれ。」というか。それまで観
てきた144分はいったい何だったんだ、という若干の憤りを覚
えたことはここに記しておくべきだろう。

いくらなんでも劇中劇が長すぎる。これで尺が144分なんだ
から、私がプロデューサーだったなら、劇中劇のシーンを7割
削れと言いたいところである。私は1978年には生まれていな
かったのでいかんともしがたいが。

ヒロインを演じるのはジーナ・ローランズ。うまいね。

                                                       11.17(火) 早稲田松竹


2015年11月25日水曜日

チャイニーズ・ブッキーを殺した男


☆☆☆        ジョン・カサヴェテス      1976年

カサヴェテス。よく名前は聞いていたが、観るのははじめて。
特に黒沢清がこのひとの監督作が好きなイメージ。
前号のキネマ旬報は「カメラの後ろに回った俳優たち」の特
集だったが、カサヴェテスも俳優。俳優が撮った映画って、
シネフィルは好きだよね。なんとなくだけど。

私のあまり好きじゃない、手持ちカメラを多用した画づくりに、
開始早々から不安がよぎる。結果的には、気分が悪くなるほ
どは揺れなかったのでよかった。

ストリップ・ショーをやるクラブのオーナーが、ポーカーで大負
けしたぶんを払うために、どんどんと犯罪に巻き込まれていく
という展開。この主役のオーナーが普段は厚かましくて、偉そ
うで、女好きで、でも実は小心で、という、いい感じの「小物感」
が出ていた。下の画像で笑っているのがオーナーです。

虚無的・頽廃的な犯罪映画をフィルム・ノワールというが、今
作はおもに50年代のモノクロ映画でよく作られたフィルム・ノ
ワールを76年によみがえらせた、という評価らしい。犯罪映画
としては作りが雑なのが気にかかるが……。

                                                       11.17(火) 早稲田松竹




2015年11月22日日曜日

ハタリ!


☆☆☆★         ハワード・ホークス      1962年

タイトルの「ハタリ!」は「危ない!」という意味らしい。
「ジャンボ!」なんかと同じく、アフリカの言葉なのだろう。

アフリカ(のどこの国かはわからない)で、動物園やサーカスの
依頼を受けて野性動物の狩りをする男たちの話。冒頭、タイトル
が出るよりも前に(アバンタイトル、というやつですね)、獰猛で巨
大なサイを捕獲しようして失敗する場面から始まる。なかなか迫
力のあるシーンだが、普通に投げ縄で捕まえようとするのだけど、
麻酔銃とかまだ無いのかね。それとも、傷つけずに捕獲するには
あれが一番なのか…。

ハワード・ホークス。よく名前を目にするひとだが、観るのは初め
てかも。おもに戦前に有名な作品が多くあり、今作などはキャリア
の後半に属する。まあそのうち、他の作品も観る機会があるだろ
う。


今年の100本目!
例年にもまして余裕綽々の達成には、よろこびよりもむしろ不安が
まさる。仕事は忙しくなっているはずだが、なぜこんなに早く……。
出張が減ったので、移動時間で本を読むことは減った。これは間
違いない。車でどこか出掛けるということもなくなった。そのぶんが
映画にまわったということなのだろうか。あとは…。
まあくよくよ考えても仕方がない。答えは、友よ、風に吹かれてい
る……ということで、さっさと今年のベストテンでも考えることにしよ
う。

                                                        11.14(土) BSプレミアム


2015年11月20日金曜日

【LIVE!】 チャットモンチー


チャットモンチーのすごい10周年 in 日本武道館!!!!

01. ハナノユメ
02. 8cmのピンヒール
03. シャングリラ

04. 親知らず
05. 湯気
06. 染まるよ
07. 東京ハチミツオーケストラ

08. 変身
09. きらきらひかれ
10. ウタタネ
11. ときめき
12. 毒の花
13. Last Love Letter
14. 真夜中遊園地
15. こころとあたま
16. 満月に吠えろ
17. 風吹けば恋
18. きみがその気なら

<Encore>
01. 新曲
02. ドライブ


                                                       11.11(水) 日本武道館

チャットモンチーもデビュー10周年。
この10年、チャットモンチーがガールズバンドの概念を常に拡張し
続けてきたのは間違いないことだと思う。

クミコンが抜けて二人になり、サポートを入れずに二人でライブを
やっていた時期、ライジングサンでチャットを観た。2012年だった。
本当に隙間だらけのスカスカの音で、メロディ楽器はエレキギター
しかないから、ギターの音量がハンパなくデカかった。
今でも鮮明に覚えているのは、終盤にやった「満月に吠えろ」で、
えっちゃんがかき鳴らすギターの、攻撃的に研ぎ澄まされた轟音
に、つい「音楽の悪魔に魂を売り渡した少女」というイメージが浮
かんだ。えっちゃんは魂を売るのと引き換えに、ソリッドなギター
ソロを弾けるようになったが、その代わり中学生で体の成長が止
まってしまったのだ。深夜1時の夏フェスでしか浮かばないバカげ
た発想だが、まあそのぐらいすごい演奏と、叫びのような歌だった。

今回久しぶりに見たえっちゃんは、結婚して子どもも生まれたはず
だが、全然変わっていなかった。やはり成長は止まったままである。
あれじゃあ息子が中1になっても、高2のお姉さんにしか見えまい。

ライブはデビュー曲「ハナノユメ」で始まり、3人の時期、2人の時期、
サポートが入った今、の各パートに分かれていた。
やはりというべきか、スリーピースでやった4曲が圧倒的に良かった。
親知らず~湯気、という流れには「知ってんなー俺の好きな曲!」と
思った客も多いはず。
ツインドラムはやっぱガチャガチャしてるし、チャットの曲には音圧
があり過ぎるように思った。どうしてもボーカルが負けてしまう。

ベストアクトは「東京ハチミツオーケストラ」。最高。

<追記>
あっこのことに一言もふれなかったけど、あっこもコーラスうまくなっ
たよ。最初の頃は悲惨だった。


2015年11月18日水曜日

犬神家の一族


☆☆☆☆         市川崑        1976年

観るのは二度目。至福の映画体験である。

冒頭の犬神佐兵衛翁の死去の場面から、ワクワクしっぱ
なし。推理ものとして完璧だとはまったく思わないが、映画
としては超一級品である。

大学の時、5月の連休の5日間で市川崑の金田一シリーズ
5本を毎日放送したときがあり、夢中で毎日観た。惨殺死体
を何十体も眺める大型連休も悪くなかった。

画像は「佐清、その頭巾をとっておやり!」 と言われた場面。

これで99本目!

                                                11.09(月) BSプレミアム


2015年11月16日月曜日

白い肌の異常な夜


☆☆☆         ドン・シーゲル       1971年

一応スリラーなのか。まったく恐くないけど。
時は南北戦争中のアメリカ。負傷した軍人(イーストウッド)が、
女だらけの小さな女学校に運び込まれたまではよかったが、
なんせ野性的な男前だったため、欲求不満の女たちに続々と
誘惑されるという話。
これはイーストウッドがいかんでしょう。途中、一応ひとりに決
めたみたいなのだが、それからもふらふらと他の女の部屋に
行ってしまう。あんな、耳をすませば足音も笑い声も聞こえちゃ
う屋敷でラブ・アフェアなんて、どだい無理である。軍人ならも
うちょっと慎重さがあっていいのでは。

黒人奴隷と思しき女の子が住み込みで働いていて、南軍寄り
の女学校の中でひとり、複雑な思いを抱えながらも働いている。
このひとが、キャラも良いし役者も良い。くだらない騒動よりも、
この黒人娘の出番をもっと増やせばよかった。

                                                        11.8(日) BSプレミアム








<ツイート>
今週のBSプレミアムは市川崑特集か。
『おとうと』と『細雪』はもう一回観ておきたいところだが、そんな
余裕はないな。『映画女優』『野火』『鍵』は未見。録画だ。

そして再来週は菅原文太特集! 『ダイナマイトどんどん』がある。
月末には『桐島、部活やめるってよ』がついに放送される。
もう容量がヤバい。万年言ってるが、今度はほんとにヤバい。

2015年11月14日土曜日

秋の読書④


ちかごろ全然映画を観ていないのは、観たい新作があまり無い
のもありますが、いちばんの要因は97本まで観て、すっかり気
が緩んでいるからです。人間気が緩むとロクなことがありませ
ん。2週間に1度は映画館に行かないと禁断症状が出ると思っ
てたのも、100本観なきゃという強迫観念からくる思い込みだっ
たみたいです。

というわけで、『火花』を別にすると、今年いちばんの話題作と
言っていい長篇小説をじっくりと読みました。


『忘れられた巨人』
カズオ・イシグロ 著  土屋政雄 訳  早川書房

私はあまり前情報を入れるのが好きじゃないので、今作に関し
てはほとんど何も内容を知らずに読み始めた。そして、かなり
びっくりポンだった。「じぇ!」4つぐらい。
少なくとも『日の名残り』『わたしを離さないで』の記憶がある人
なら誰しもが思っただろうと推測するが、私も「な、なにコレ!」
と困惑を隠せなかったひとりである。なんせ……。

前情報が嫌いなひとはこの先は読まないほうがいい。



今回の主人公は老夫婦。それは別にいいのだが、物語はなん
とアーサー王の時代の騎士物語がベースになっており、RPG
よろしく竜だの鬼だの魔法だのが当たり前のように出て来るん
だから面食らう。
ただイシグロらしいのは、この世界は奇妙な霧に覆われており、
どうやらそのせいで人々の記憶がすこしずつ奪われているよう
なのだ。村に居づらくなった老夫婦は、息子に会いに旅に出る
ことを決意するのだが、息子がどこに住んでいるのか、そもそ
も息子は生きているのか、それすらも忘れかけてしまっている。

ここまで読めば、これまで一貫して「記憶」を重要な主題にして
きたカズオ・イシグロの姿勢は、今回もまったく変わっていない
ことが分かる。

訳文もとても読みやすい。"Buried"を敢えて「忘れられた」と訳
したのはさすがですな。「埋められた巨人」じゃイマイチ文学的
じゃない。
休日に腰を据えて読むにじゅうぶん値するんではないでしょう
か。


2015年11月9日月曜日

秋の読書③


『あこがれ』
川上未映子 著     新潮社

いつもは村上春樹以外の作家は文庫になるまで3年待つ
のだが、『きみは赤ちゃん』と『すべて真夜中の恋人たち』が
たいへんたいへん良かったので、特別扱いで単行本を購入。
しかもすぐに読む。なぜか昂まっている……未映子熱が…。

2章立ての長篇というか、2つの連作中篇といえばいいか。
主要な登場人物は、小学生の男の子・麦彦と、同級生の女
の子・ヘガティー。第1章「ミス・アイスサンドイッチ」は、小学
校4年の麦彦の視点で語られる。それに応じて文体も、あま
り詰め込みすぎないようになっており、わざと甘めにしてあ
る感じ。いつものキレがないというか、はじめはそれが気に
なってなかなか入り込めなかったのだが、読んでいくと慣れ
てきた。
たまたま今年観たマイケル・マンの『ヒート』が出て来るのが
うれしい。ヘガティーが愛好する映画なのだ。

「あこがれ」というタイトルは、読み終わって内容を振り返っ
てもなかなか、「はは~ん、だからね」という理由が思い当
たらず、ちょっと考えてしまう。誰かが書いていたが、ひらが
なで「あこがれ」といえばトリュフォー。ちょっとは意識してる
のだろうか。











「MONKEY  vol.7」
スイッチ・パブリッシング

特集が「古典復活」で、村上春樹と柴田元幸がさんざっぱら、
こちとらほとんど聞いたこともない作家の話をしたあとのペー
ジには、「復刊してほしい翻訳小説50」である。それって全部
絶版ってことじゃん! 俺たちどうすりゃいいんだよ! と誰も
がツッコまずにいられない。村上春樹のネームバリューがあ
れば、こんなむちゃくちゃな企画だって実現してしまうのであ
る。うー、1ヶ月ぐらい八ヶ岳のふもとの別荘で翻訳小説を読
みまくりたいぜ。

そして未映子さんが聞き手となった村上春樹へのインタビュー
も載っている。『職業としての小説家』を踏まえたうえで、未映
子さんが訊きたいことをさらに訊く、という形。
意外に、といったら失礼かもしれないが、インタビュアーとして
の未映子さんが非常にすぐれていて、キャリアは全然違うが、
同じ実作者としての経験や陥りやすい陥穽もからめた未映子
さんの質問に、村上春樹も楽しみながら答えているのがあり
ありと伝わってくる。とても気持ちのいいインタビューになって
いる。

短篇を翻訳したのもいくつか載っている。カーソン・マッカラー
ズのやつがおもしろかった。







2015年11月7日土曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN / ストレイテナー


KYO-MEI 対バンツアー  ~命を叫ぶ夜~

【ストレイテナー】

何の予習もしなかったので、曲は全然わからん。
以前、ライジングサンでちらっと聴いたときは、あまり色の
ない無機質な感じのロックという印象だったが、今回ちゃん
と聴いてみると意外にメロディアス。バラードも歌っていた。
なんだかスキマスイッチみたいな曲だったが。


【THE BACK HORN】

1. その先へ
2. ブラックホールバースデイ
3. 戦う君よ

4. 幻日
5. ファイティングマンブルース
6. 悪人
7. キズナソング

8. 真夜中のライオン
9. コバルトブルー
10 .シンフォニア

Encore
1. 路地裏のメビウスリング
2. 刃

                                               10.30(金) ZEPP TOKYO


対バンだから(ストレイテナー「だけ」のファンもいるので)、
ある程度はシングル曲でまとめてくる……かと思いきや、
そうでもない。最初の3曲は、セットリストに入ること自体は
意外ではないが、ここでこの3曲をたたみかけるのは今ま
でにないパターン。一気にものすごい熱気に包まれる。
マツが軽く喋ったあと、「幻日」からの「ファイティングマン
ブルース」(!)、そして「真夜中のライオン」には驚いた。
振り返ってみても、実に見事な流れですなー。

「キズナソング」の代わりに「初めての呼吸で」をやった
会場もあったとか。そ、そっちがよかったなぁ。なんて。

2015年11月5日木曜日

秋の読書②


『あしながおじさん』
J.ウェブスター 著  土屋京子 訳  光文社古典新訳文庫

帯の「おじさまは、ハゲですか?」という一行だけの引用に
ヤラれ、思わず購入。カンボジアに行く飛行機で半分読ん
だところで、見事に機内に忘れて来たので、帰国後にもう
1冊おかわり。無事、読了できた。

もとは婦人雑誌に連載された(いまの日本でいうところの
『ミセス』とかだろうか?)ということからも分かるように、
想定されている読者は中流階級以上の女性であり、別に
子どもむけの児童書ではない。かくいう私もなんとなく、そ
ういうイメージだった。

主人公は孤児院で育ち、親の顔も名前も知らないが、いつ
も元気で作文が得意な女の子、ジュディ・アボット。
さる「評議員のおじさん」の厚意で大学に通えることになる
のだが、そこで出された条件が一つ。最低でも月に一度、
おじさん宛てにキャンパスライフのあれこれや、勉強してい
ることについて手紙を書くこと。ただし、おじさんからは一切、
返事は期待しないこと。以上。
作文の得意なジュディは、飾らない文章で楽しい手紙を月
に一度といわず、二通も三通も書く。おじさんの返信はない
ので、小説はジュディの手紙でほぼすべてが構成されてい
る。そこにはルームメイトのこと、勉強のこと、大学の行事
のこと、そして密かな恋のことがつづられるのだが…。

いやー、これ以上は言えないな。
ていうかみんな、こういう話だって知ってた? 私は知りま
せんでした。










『ニューヨークより不思議』
四方田犬彦 著    河出文庫

ジム・ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を
もじって、「Stranger than New York」というわけである。

四方田氏がコロンビア大学の研究員としてニューヨークに1年
間滞在したのは1987年。その時の見聞のあれこれを、おもに
アジア系のアーティストたちとの交流に特化してエッセイに著し
たのが本書の前半部分。ほんとにこんなに色々なひとたちと
仲良くなれるのか、というほど多くの人名が親しげに出て来る。
四方田氏のことだから、まあ……。話半分で聞いたほうがいい、
というと怒られそうだけど。
寡聞にして知ってる名前はほとんど出て来ない。ナムジュン・
パイクとチェン・カイコー、河原温、あとは『ラスト・エンペラー』で
溥儀を演じたジョン・ローンぐらいなものか。

後半は、それから28年後。2015年に四方田氏はふたたびコロ
ンビア大学の招きでニューヨークに滞在する。今度はキューバ
人アーティストとの交流に多くのページが割かれる。

こんなこというと怒られそうだが、たぶん本人に会ったら鼻持ち
ならない人物だと思うのだけれど、四方田氏の文章は心地よい。
とても好きな文章だ。

2015年11月2日月曜日

【LIVE!】 サカナクション


SAKANAQUARIUM 2015-2016 “NF Records launch tour”

01. ナイトフィッシングイズグッド (Iw_Remix)
02. アルクアラウンド
03. セントレイ
04. Klee
05. Aoi
06. 蓮の花
07. 壁
08. years
09. ネプトゥーヌス
10. さよならはエモーション
11. ネイティブダンサー
12. ホーリーダンス
13. 夜の踊り子
14. SAKANATRIBE
15. アイデンティティ
16. ルーキー
17. 新宝島

Encore
01. グッドバイ (NEXT WORLD REMIX)
02. ミュージック
03. モノクロトウキョー
04. 白波トップウォーター

                                                        10.26(月) 日本武道館


なんでもかんでもコストパフォーマンスで考えるのはつまらない
傾向だとは思うけれど、これは「元のとれる」ライブというか、チ
ケット代を遥かに超えるパフォーマンスだったと思う。質が高い。

今回、個人的に確かめたかったことがあって、ほんとにあんな
キーの高い曲ばかりを歌って、山口一郎の喉は2時間もつのだ
ろうかと正直私は疑っていた。しかし彼は涼しい顔で、ほとんど
ピッチの狂いもなく歌い切ったのである。たいしたやつだ。

アンコールまでほぼMCなしで粛々と進行したので、てっきり喋る
のは好きじゃないんだと思っていたら、アンコールではよう喋る。
そして意外に硬軟おりまぜた慣れた話しぶりで、おもしろい。
うーむ。なかなかすごいやつだ。

かつて私はライジングサンでの圧倒的なパフォーマンスを見て、
このバンドはBUMP OF CHICKEN並の人気が出てもおかしく
ないと書いた。バンドはそこから明らかに、大衆向けというよりも
マニアックな方向に舵を切った(という言い方は正確ではないか
もしれない。それは誰かが舵を切るものではなく、最初から山口
一郎の中にあったものだと思うから)ため、そこまでのポピュラリ
ティを獲得するには至っていないが、確かに誰も先駆者のいな
い道をかき分けながら進んでいるように見える。こんなに追いか
けがいのあるバンドも久しぶりだ、とそんな事を考えた夜であった。

ベストアクトは、もともと好きな曲というのもあるが、「壁」に。