2014年10月30日木曜日

イングリッシュ・ペイシェント


☆☆☆★★       アンソニー・ミンゲラ      1997年

あまりにも続けてトリュフォーを観たので、ここらでひとつ、ビッグ・
バジェットの大作映画が観たくなった。折よくBSプレミアムでこの
映画が放送されたので、予備知識ゼロで鑑賞。

題名は「英国人の患者」の意だが、第二次大戦中の、資料によれ
ば「北アフリカ」が舞台、とのこと。そういえば場所の特定につなが
るシーンやセリフは無かったような。忘れただけか。
飛行機が撃墜されるシーンから始まる。パイロットの他に、機体の
前のスペ-ス(『紅の豚』のフィオのスペースといったら分かり易い
か)には意識を失った金髪の美女が乗っているように見える。銃撃
を喰らった機体が火を噴き、パイロットの顔面に爆風がもろに吹き
付ける。そして不時着…。顔が焼けただれ、どこの誰とも分からな
い「患者」というわけである。
雄大で苛烈な砂漠の美しさと、複数の時制を往復しながら徐々に
謎が明らかになっていく構成の妙を堪能した。たいへん満足。

ジュリエット・ビノシュが出ている(というか主演だ)ことすら知らずに
観たので、非常に得した気分である。ビノシュねえさん、相変わらず
お美しい。何が好きって、まあ顔が好きだね。キャリー・マリガンと
同系統の顔のように私には思える。つまり私には一貫性がある。

気分転換になったところで、さぁ、また有楽町に通うか。

                                                               10.24(金) BSプレミアム


2014年10月28日火曜日

柔らかい肌


☆☆☆★       フランソワ・トリュフォー      1964年

この辺までがトリュフォーの「初期」かな。モノクロである。
さまざまな形の「愛」を描く作家として名高いトリュフォー。若者同士
のさわやかな恋愛は「ドワネルもの」を始め既にやってるので、あと
はどうしても「不倫もの」が多くなるのは致し方ないか。

本作は、高名な文藝評論家とスチュワーデスとの不倫が題材。あ
まり実のある内容は無いが、美しきスッチー役にはフランソワーズ・
ドルレアック。キレイなひとだなぁ、としみじみ見とれていたら、なんと
カトリーヌ・ドヌーヴの姉で、25歳という若さで交通事故で亡くなった
とのこと。なんたる。

                                                          10.24(金) 角川シネマ有楽町


2014年10月26日日曜日

夜霧の恋人たち


☆☆☆★★      フランソワ・トリュフォー     1968年

やっとだよ、未見のジャン=ピエール・レオー主演作。
度重なる不服従で、軍から除隊されるシーンで始まる。ウキウキと
パリの街を走るジャン=ピエールを観てるとこっちも楽しくなる。
本作は万事この調子で、職を見付けては何かやらかしてクビになる
んだけど、本人はあっけらかんとしているし、全体にワクワクするよ
うな楽しい空気が漂う喜劇である。こういうのって、ゴダールには無
いですよね。
いやあ、面白かった。
パリの街に張り巡らされた気送速達便を捉えたシーンも面白い。
地下の圧縮空気管を使って手紙を送る方式である。いつ頃まであっ
たんだろう。

                                                              10.23(木) 角川シネマ有楽町


2014年10月25日土曜日

アントワーヌとコレット


☆☆☆★       フランソワ・トリュフォー     1962年

アントワーヌとは言うまでもなくアントワーヌ・ドワネルのこと。
『大人は判ってくれない』のジャン=ピエール・レオーの役名で
ある。あれから色々あって、アントワーヌはレコード会社で働い
ていて、コンサートで出会った美少女のコレットに恋をするわけ
である。窓から会話するシーンが有名だが、他にも瑞々しい描
写がいっぱいで、トリュフォーの本領発揮といった趣き。

本作はオムニバス映画『二十歳の恋』のフランス篇。
どうもこれ以外はパッとしないらしく(石原慎太郎の監督作も含
まれてるらしい)、いまでは単独の短篇映画として上映されるこ
とがほとんど。なので私は一毫の躊躇もなく、これを1本とカウン
トするのである。それも観るのは2回目であるにも関わらず。
そうまでして100本観たいのか…。

                                                    10.23(木) 角川シネマ有楽町


2014年10月23日木曜日

恋愛日記


☆☆☆★★       フランソワ・トリュフォー      1977年

女とみれば口説き出す、中年のプレイボーイの物語。女をとっかえ
ひっかえしているが、不思議と嫌われることなく、冒頭とラストの彼
の葬式には関係のあった女ばかりが参列してめいめいが棺に土を
かける。『ニシノユキヒコの恋と冒険』の、女だけの葬式のシーンは
どうやらここからのいただきみたいだ。

どうもトリュフォーはカラーになってからのほうが面白いような。
それにしても今回、トリュフォー映画の象徴だと思っていたジャン=
ピエール・レオー出演作にまだ一度も出会わない。意外と多くない
ということか。

                                                            10.18(土) 角川シネマ有楽町



2014年10月21日火曜日

アデルの恋の物語


☆☆☆★★         フランソワ・トリュフォー      1975年

か・な・りクレージーな女のひとの話で、今で言えばストーカーである。
けっこう面白かった。ピンソン中尉、まあイケメンではあるが、そこまで
するほどかねえ。『高慢と偏見』で軍人と駆け落ちする四女(だっけ)を
想起した。

郵便局で一度だけ出て来た子どもが、妙に心に残る。
やっぱトリュフォーの映画は子どもが出て来ないと。

                                                             10.17(金) 角川シネマ有楽町


2014年10月19日日曜日

突然炎のごとく


☆☆☆★★      フランソワ・トリュフォー      1961年

「ジュールとジム」ですよ、原題。味も素っ気もない。
そりゃあ「突然炎のごとく」のほうが断然カッコいいよ。

いろいろと有名な場面が目白押しの映画なのだが、ストーリー
的にはジャンヌ・モローの尋常じゃないわがままに振り回される
ジュールとジムの物語。端的に言って、ジャンヌ・モローの頭が
おかしいとしか思えない。


~関係ないけど~
今週と来週のNHK-FM「サウンドクリエーターズ・ファイル」の
DJはなんとU-zhaan !! 今までになくシブい。
90分基本独り語りでひと月(4回)の番組なので、「喋れるミュー
ジシャン」だとじっくり聴けるしおもしろい。反面、慣れてないひと
だと(というか喋り慣れてるミュージシャンなんて一握りだし、そ
れでいいとは思うが)聞いててツラいこともある。
真心ブラザーズとか、レキシとか、やくしまるえつこの時はすげえ
おもしろかった。真心は選曲もさすがのセレクトで、ローザ・ルク
センブルクはここで掛かって何なのコレと思って聞きだした。
U-zhaan、いちおう聞いてみるか。
(追記)
始まっちゃったので聞いている。
淡々としてるな。

                                                        10.13(月)  角川シネマ有楽町


2014年10月18日土曜日

ピアニストを撃て


☆☆☆       フランソワ・トリュフォー      1960年

冒頭、ピアノの弦部分のアップに「エヴァQ」を想起する。
わりと複雑な筋だったみたいで、なんとなくは分かったけど、なん
だかあまり付いて行けず。ピアニストの前の奥さんはなんで窓か
ら飛び降りたんだっけ…? レナは最後の銃撃戦のとき、なぜピ
アニストの方に行こうとしたんだっけ…?
ダメだ、もっかい観ないとな。

                                                       10.13(月) 角川シネマ有楽町



2014年10月16日木曜日

あこがれ


☆☆☆★★       フランソワ・トリュフォー      1957年


「あこがれ」といえば、ベルナデット・ラフォン、自転車、テニス。
体育教師の彼氏はまったく存在感が薄いが、ベルナデット・ラ
フォンの本当の夫なんだってね。うらやましいぜ。
トリュフォーはベルナデットに出てもらいたくて、仕方なく夫を
相手役にしたら、なんだかいろいろ注文つけられて頭に来る、
みたいなことを言っていたと『トリュフォーの手紙』(山田宏一)
にあった。
岩井俊二に通じるような、瑞々しい短篇映画である。

もうひとつ『トリュフォーの手紙』から引用。

 フランソワは死んだかもしれない。わたしは生きているかもしれない。
 だからといって何の違いがあるというのだろう。
 (ジャン=リュック・ゴダール)

なんだかわかんないけど、カッコいいから良いか。

                                                  10.13(月) 角川シネマ有楽町


2014年10月14日火曜日

野性の少年


☆☆☆     フランソワ・トリュフォー     1969年

トリュフォー映画祭が有楽町で始まったので、さっそくどんな
感じか偵察に行って来た。初日のジャン・ピエール・レオーの
舞台挨拶があった回は、はやばやと売り切れたらしいが(当た
り前か)、この日も席はなかなかの埋まりよう。

映画は、3歳で親に捨てられてから、森で育った半分獣のよう
な少年が保護されて、トリュフォー演じる学者(?)のもとで人間
社会に適応するよう矯正を試みるという内容。まあ普通だった。

キネマ旬報のトリュフォー特集号には橋本愛のインタビューが
載っていた。まだ『大人は判ってくれない』と『アメリカの夜』しか
観たことがないが、二つともとても好きだったので、どんどん観
ていきたいとのこと。泣けてくる。ユイちゃんはシネフィルだった
んだね。私が18のときにはまだゴダールもトリュフォーもロマン
ポルノも、何も観ていなかったよ。黒沢清や青山真治の映画で
橋本愛を観る日も近いという気がする。

                                                      10.12(日) 角川シネマ有楽町


2014年10月12日日曜日

読んだ本④


『みずから我が涙をぬぐいたまう日』
大江健三郎 著       講談社文芸文庫

表題作は「読みにくさの極地」といった趣きの、粘着質の、の
たうつような文体でもって、みずからを癌と信じて疑わない主
人公「かれ」の錯乱ぎみのモノローグと、その「遺言代執行人」、
「母親」の語りが入り乱れ、なんだかものすごいことになってい
る。三島の割腹自殺を受けて書かれた大江さんなりの「返答」
らしいのだが、どこが問題提起でどこがどう返答なのか、私の
読解力不足もあってもうよく分からない。ここでも、牛のテール
スープを大鍋で煮込む父親というモチーフが登場する。例の
蹶起のイメージも反復される。

このほか、中篇「月の男(ムーン・マン)」を収める。
こっちは比較的分かり易い。大江さんの小説には、昔は性関係
にあったけど、いまは友人、みたいな女性が度々出て来るけど、
……ま、まあいいや。








『夢十夜 他二篇
夏目漱石 著     岩波文庫

表題作のほか、「文鳥」「永日小品」を収める。

背負ってる子が重くなる話も良いが、「蛇になる。いまになる」と
歌いながら川にざぶざぶ入っていくおっさんの話が好きだ。

2014年10月6日月曜日

ジャージー・ボーイズ


☆☆☆★★★       クリント・イーストウッド     2014年

フランキー・ヴァリがもともと在籍していたフォー・シーズンズの成功とお
決まりの挫折までを描いたミュージカルを原作としているらしい。そのミュ
ージカルはむろん観たことがないが、フランキー・ヴァリに関しては、最も
人口に膾炙した「あの曲」はもちろん、サンデー・ソングブックでかかった
"Native New Yoker"という曲がカッコよくて、何枚かCDを買ったぐらいの
知識しか無い。
でもとにかくそんなの関係ないから、観たほうがいい。
わたしはだいたい、こういう長年の確執が歳月の経過で融和されるという
話型に弱いのかもしれない。正直、感動しました。
イーストウッドって、なんでこんなに巧いんですか。
現時点で今年の洋画で1番ですな。

                                                    10.1(水) ヒューマントラストシネマ渋谷


2014年10月4日土曜日

フランシス・ハ


☆☆☆★       ノア・バームバック       2014年

ユーロスペース、いや久しぶりだなー、ひょっとして5年ぶりぐらい
か、なんて思ってたら、去年『ホーリー・モーターズ』を観てました。
ブログは時に残酷な真実を映し出す。うーむ、そういえば。

そして偶然にも、そんなユーロスペースで観た映画は、カラックス
への目配りがかなり分かり易い形である『フランシス・ハ』。けっこ
う不思議ちゃん系の、ダンサーを目指す女子が主人公の白黒映
画である。主役のコの、可愛いんだか可愛くないんだか分からな
い感じがとても良い。バカなのか能天気なのか実はしたたかなの
か、そのへんも見せ所としては難しい所だと思う。あんまりバカだ
と『ホットロード』になっちゃうし。これ日本でリメイクするなら高畑
充希とかか、と今朝あさイチを観ながらふと思った。

画像はボウイの"Modern Love"に合わせて街を疾走するフランシ
ス。つまり『汚れた血』なのだが、『大人は判ってくれない』『軽蔑』
『私のように美しい娘』などの音楽も使われているとのこと。

                                                              9.30(火) ユーロスペース


2014年10月1日水曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


LIQUIDROOM 10th ANNIVERSARY
(eastern youthとの対バン)

01. 幻日
02. シリウス
03. 声

04. コワレモノ
05. 何もない世界
06. 泣いている人

07. シンメトリー
08. ブラックホール・バースデイ
09. コバルトブルー
10. シンフォニア

(アンコール)
01. 刃

                                               9.25(木) LIQUIDROOM恵比寿

注目の1曲目。
「暁のファンファーレ」のツアーは既に終わったわけで、たぶん
みんな、「月光」はもういいかな、と思っていたと推測するんで
すよ。まあそれでも「月光」だろうなと。そういうバンドですから。
しかし今回バンドはそれを読み取ったうえで、しかし昔の曲を
持って来るのではなく、「幻日」から入った。
100点です。この心意気に私はこのバンドに対して何度目かの
感動を覚えました。
「コワレモノ」~「何もない世界」の流れも良かったなー。

ベストアクトは、ほんとは「ブラックホール・バースデイ」だけど、
たぶん何度も受賞してるんで、ここは「コワレモノ」にしよう。


~関係ないけど~

10/5(日) 15:30  BSプレミアム

「世紀の伊達男 加藤和彦」

が再放送! 加藤和彦をよく知らないひとにも、いや、知らない
ひとにこそ、必見のドキュメンタリー。