2014年10月12日日曜日

読んだ本④


『みずから我が涙をぬぐいたまう日』
大江健三郎 著       講談社文芸文庫

表題作は「読みにくさの極地」といった趣きの、粘着質の、の
たうつような文体でもって、みずからを癌と信じて疑わない主
人公「かれ」の錯乱ぎみのモノローグと、その「遺言代執行人」、
「母親」の語りが入り乱れ、なんだかものすごいことになってい
る。三島の割腹自殺を受けて書かれた大江さんなりの「返答」
らしいのだが、どこが問題提起でどこがどう返答なのか、私の
読解力不足もあってもうよく分からない。ここでも、牛のテール
スープを大鍋で煮込む父親というモチーフが登場する。例の
蹶起のイメージも反復される。

このほか、中篇「月の男(ムーン・マン)」を収める。
こっちは比較的分かり易い。大江さんの小説には、昔は性関係
にあったけど、いまは友人、みたいな女性が度々出て来るけど、
……ま、まあいいや。








『夢十夜 他二篇
夏目漱石 著     岩波文庫

表題作のほか、「文鳥」「永日小品」を収める。

背負ってる子が重くなる話も良いが、「蛇になる。いまになる」と
歌いながら川にざぶざぶ入っていくおっさんの話が好きだ。

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