2023年12月31日日曜日

PERFECT DAYS

 
☆☆☆★★★  ヴィム・ヴェンダース  2023年

淡々としたトイレ清掃員・平山(役所広司)
の日常が描かれる。無口ながらも、その仕
事ぶりから平山の人柄が伝わってくる。こ
ういうのが芝居だし、こういうのを演出と
いうんですよね。
もちろん日常だけでは映画は終わらず、い
ろいろと平山の平穏な日々をかき乱す要素
が現れてきて、そのたびに小さく波紋がゆ
れ、やがてまた静かな水面に戻る。そのへ
んのすべてに感心したわけでもないが、全
体として充実感のある作品になっていた。
平山がカーステレオでかけるカセットと寝
る前にしょぼいスタンドで読む小説のセレ
クトがなかなか興味深かった。
一年の最後にこの映画を観られて満足であっ
た。

最近『野生の棕櫚』が文庫になったのはこ
の映画のおかげなのか? 『11の物語』は
知らなかったのですぐに買うと思います。

                   12.28(木) TOHOシネマズ渋谷




2023年12月30日土曜日

 
☆☆☆★    北野武    2023年

誰もが知る戦国時代の織田信長、豊臣秀吉、
明智光秀らの相克を「首」を主眼に描く。
なるほど、歴史の授業では「首をとる」こ
とが勲功の証と教わったが、とった首を故
郷まで持って帰るのも、多くの首の中から
大将の首を探すのも、実際にやると一苦労
だったろう。戦国武将どうしの男色を露骨
に描くやり方は『御法度』への目配せか。

加瀬亮が元気そうでよかった。久しぶりに
姿を観たが、名古屋弁の信長を『アウトレ
イジ ビヨンド』のように演じていて楽しそ
うだった。
しかしたけしが喋るたびに「こんどのセリ
フは聞き取れるだろうか」と不安になるの
が、物語への没入を妨げる。

                12.15(金) TOHOシネマズ渋谷




2023年12月27日水曜日

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

 
☆☆☆★  マーティン・スコセッシ  2023年

いったいどれだけの時間をこれまでスコセッシ
に捧げてきたのだろうか…。この映画も3時間
26分ある。長い映画に惹かれてしまうので、
つい毎回観ているが、ものすごく良いかとい
うと、そうでもないことが大半…。

ディカプリオとデ・ニーロの共演である。
デ・ニーロは一癖も二癖もある地元の有力者を
演じて楽しそう。まあ極悪人なんだけど。ディ
カプリオの妻となる先住民のモリーははじめは
聡明な感じで、ミステリアスな雰囲気と相俟っ
て魅力的に描かれていたのだが、終盤はだまさ
れっぱなしで、なんかキャラが替わった感じ。
『ガス燈』のイングリッド・バーグマンですよ
ね完全に。

               11.18(日) TOHOシネマズ日比谷


 

2023年12月22日金曜日

愛にイナズマ

 
☆☆☆★   石井裕也   2023年

石井裕也は続けて2作公開するやり方を常套
手段にしているが、わざとそうしているのだ
としたら、これはなかなかおもしろい試みで
ある。普通の監督が1本作る間に2本、しか
もまったく方向性の違う作品を撮るのだから、
量産型の職人監督でないとできないことであ
る。そして現にこうしてまんまと2本とも観
に行かされているわけで…。

『月』とはまったく違う、だいぶ力の抜けた、
自主映画を軸とした家族の物語である。疎遠
な家族が自主映画の撮影のために強制的に一
緒にすごすうちに過去の記憶が違う意味を持
ち始めて…と書くとなんだかどっかで観たよ
うな話ではあるが、家族それぞれのキャラク
ターと役者(佐藤浩市、池松壮亮など)が強
烈なので、なかなか変わった味わいの映画に
なっている。「家族」という題材を執拗に追
求し続けてきた石井裕也ならではともいえる。

松岡茉優は「2時間観ていられる女優」で、
そこがまさに彼女のすごいところだと確信し
た。飽きることがない。

      11.16(金) ヒューマントラストシネマ渋谷




2023年12月17日日曜日

 
☆☆☆★   石井裕也   2023年

役者は、リスクのある役をよく引き受けたと
思う。そこはすばらしいとしか言いようがな
い。磯村くんを筆頭に、いろんな映画賞をも
らうのは当然だ。なんせ「がんばります!」
と言いながら障碍者を殺戮していく役なのだ。

ただ作品としては、先に原作小説を読み、
「これは映画化不可能だな」と思い、実際に
映画を観て、「やっぱり映画化は不可能だっ
たな…」というのが最初の感想である。

脚本・監督の石井裕也の真摯さは伝わってく
るし、脚本にするにあたって、相当悩んだの
だろう跡もなんとなく見える。二階堂ふみの
役がちょっと言動が不自然だし、宮沢りえと
オダギリジョーの夫婦が抱える事情も、映画
のために「捻り出された設定」という感じが
否めない。ラストカットが昼間の月なのはい
いとして、その前のカットが回転ずしの物撮
りというのも、ぶっ飛んでいて私には意味が
分からなかった。

                        11.1(水) ユーロスペース




2023年12月2日土曜日

読書⑦

 
『遠い声、遠い部屋』
トルーマン・カポーティ 著 村上春樹 訳 新潮社

昔観た映画を再び観ると、記憶があまりに
残ってないことに愕然とするのはいつもこの
ブログで嘆いていておなじみだが、とは言っ
てもうっすらとした記憶はあり、まったく何
ひとつ覚えていないということはない。
それに引き換え、本書は大学時代に旧訳でた
しかに一度読んでいるはずなのだが、最初か
ら最後までこの新訳を読み通しても、何一つ
として記憶に思い当たる登場人物も文章も無
いのはどうしたことか。衝撃的である。大学
時代の自分は半分寝ながらページだけめくっ
ていたとしか思えない。

すでに幾つかの優れた短篇で文壇に華麗に登
場していたカポーティによる、初の長篇小説
である。「村上春樹の翻訳書あるある」なの
だが、「訳者あとがき」で春樹が思い入れも
たっぷりに的確な批評を展開しているので、
いざ何か感想を書こうとしても、もうこのあ
とがきで充分じゃないかと思えてしまう。
本書に関しても、
「カポーティ固有のイメージの、華麗なショ
ーケース」
「不思議な情景、不思議な人物たちが次々に
登場し、その像が大写しになり、色合いを変
えて微妙に歪み、そして霞んで消えていく」

その通りであるし、これ以上の評言があると
も思えない。努力を放棄した格好ではあるが…。













『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』
ブレイディみかこ 著   新潮社

1作目を文庫で楽しく読んだのですぐに2作目
もソフトカバーで買ったものの、例によって
寝かせすぎてとっくに文庫になってから読む
という無駄…。

主人公の男の子は同年齢の日本の子どもに比
べるとはるかに大人っぽく、その言動はたし
かにおもしろい。学校や地域でのいろいろな
出来事を、根本から丁寧に考え、素直に受け
止めていく姿はなかなか気持ちがいい。

学校の演奏会で、クリスマスの定番曲として
ザ・ポーグス&カースティ・マッコールの
"Fairytale Of New York" という曲を演奏す
るにあたってのひと悶着を書いた一篇があり、
知らない曲だったのでどれどれと聞いてみた
ら良い曲だった。歌詞に出て来る罵倒語が同
性愛者に対する差別用語を使っているのが、
子どもが歌う曲としていかがなものかという
ことらしい。

…なんて書いたのが一昨日だが、その直後に
この曲の男性ボーカルであるシェイン・マガ
ウアンの訃報が伝えられた。なかなか波乱に
満ちた生涯だったようで、『シェイン 世界
が愛する厄介者のうた』という映画もあるら
しい。













<ツイート>
私が生まれて初めて聴いたライブがミッシェル・
ガン・エレファントだった。とにかく衝撃的に
音がデカかった。あれでロックンロールに頭を
ぶん殴られて、人生だいぶ変わったかもしれな
い。もちろん良い方向に、だと思うが。

2023年11月16日木曜日

キリエのうた

 
☆☆☆    岩井俊二   2023年

新作を最も楽しみにしている映画監督を挙
げろと言われたら、タランティーノ、西川
美和、岩井俊二と答えるぐらいには私は岩
井俊二が好きだし高く評価している。その
魅力は、どこかしら特別なマジックのよう
なものを感じる映像と、どこに連れていか
れるのか分からないヘンテコな物語の展開
にあると思っている。

前作は「手紙」にまつわる物語を、日本、
韓国、中国でそれぞれ撮り分けた岩井らし
い、いくぶん甘ったるい佳作だったが、今
回は「うまく発語できない路上ミュージシ
ャン」という、若干マンガっぽい設定。ア
イナ・ジ・エンドの声にほれ込んでアテ書
きされた役とのことで、さすがに役者では
ないので演技は少ないのかと思いきや、め
ちゃくちゃいっぱいあった。路上で歌って
いる曲もアイナが自作しており、やたら負
担が大きい!

古墳の公園に住む少女、言葉をほとんど口
にしない路上ミュージシャン、働いてる様
子もないのにセレブ生活を送っている美女
(広瀬すず)など、興味をそそる要素がち
りばめられているはいるのだが…。今回は
残念ながら、それらにマジックがかかって
いなかった印象。3時間の上映時間がけっ
こう退屈だった。

本作の撮影に密着したETV特集は未見だが、
震災を正面から扱った作品であり、2分以
上あったと思われる「地震」の場面からも、
その覚悟のほどは伝わってきた。もちろん
良い場面もたくさんあったし、これから観
るひとに「おすすめしない」という意味で
はないことを付記しておく。

                10.20(金) TOHOシネマズ渋谷




2023年11月4日土曜日

【LIVE!】 小沢健二

 
 東大900番講堂講義・追講義 + Rock Band Set

 1. 高い塔
 2. 運命、というかUFOに
 3. ローラースケート・パーク
 4. 強い気持ち・強い愛
 5. フクロウの声が聞こえる
 6. 薫る(学業と労働)
 7. 彗星
 8. ノイズ

                      10.2(月) LINE CUBE SHIBUYA

ライブの前にまずは講義。東大の900番講堂
での講義は3時間を超過してしまったので、
内容を端折って2時間に収めるという。教科
書まで自分で作ってくるという熱の入りよう
である。「情報イナフ」な世の中について、
スマホやPCのディスプレイの色域について、
世界に溢れるマーケティングについて、とに
かく話が止まらない。教科書のページを破る
という演出がおもしろかった。
講義の合間にも新曲「ノイズ」や「いちょう
並木のセレナーデ」「アルペジオ(きっと魔
法のトンネルの先)」などを歌唱。

喋りに喋りまくって2時間と少し、時間に追
いまくられながら講義を締めくくるとすぐに
バンドメンバーが入ってくる。セッティング
もそこそこに炎のような演奏を開始。友人が
本当の最前列を抽選で当ててくれたので、ド
ラムのすぐ前の席で音圧がものすごい。1曲
目の途中で強く叩かれたシンバルが落ちちゃ
うぐらいパワー系のドラマーだったこともあ
り、だんだんドラムだけを聴いているような
感覚に陥る。結局1曲目の「高い塔」がいち
ばんよかったかな。サウンドチェックも兼ね
ながらみたいなラフさがカッコよかった。新
曲の「ノイズ」も良い曲。

まあ…変わったひとですよね、オザケン。

2023年10月27日金曜日

【LIVE!】 銀杏BOYZ

 
 世界ツアー弾き語り23 - 24
 ボーイ・ミーツ・ガール Boi Meets Girrrl

まだまだ続く全国ツアーの初日なので、
セットリストは割愛。

                    9.19(火) 渋谷WWW X

アコギの弾き語りでワンマンは初めてと
いうから意外だった。ライジングサンで
は一人でアコギをかき鳴らして絶唱して
いたし、それが私が初めてみた峯田和伸
だったから。

47都道府県ツアーの発案は峯田からだっ
たとのことで、マネージャーからは驚か
れたらしい。

もうそろそろ終わりかなー、と思ったと
ころからまだまだ続いたのでなんだか得
したような気分。しかし良い曲が多い。
歌詞とメロディと声がしっかりと分かち
がたく結びついていて、うわっつらで締
め切りに間に合わせるために書かれた曲
じゃないな、というのがよく分かる。

ベストアクトは「少年少女」。


2023年10月21日土曜日

読書⑥


『ハンチバック』
市川沙央 著   文藝春秋九月号

重い障碍を持った語り手が、たとえ子を産
み育てることは無理でも、普通の女のよう
に妊娠して堕胎してみたいという欲望を語
るこの小説は、不用意な感想を思わず飲み
込んでしまうような力強さを持っている。
「もうこの際、言いたいことはこの小説に
託して全部言ってしまおう」というような、
著者の気負いと自信との綯い交ぜになった
ものを感じるのである。

選評ではラストのいわゆる「オチ」の付け
方に不評もあったようだが、私はひとつ層
を重ねることで作品がより深まったと思う。















『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面
森達也 著    講談社現代新書

『月』を読了した余勢をかって本書も。
植松聖の一審判決が出る直前まで、津久井
やまゆり園の事件にそれほど深い関心は抱
いていなかったと正直に書いてしまう森達
也。しかし植松に面会したことをきっかけ
に、近年の司法において「死刑判決が確実
と思われる裁判」ほど形骸化し、単なる
「死刑にするためのセレモニー」と化して
いる点が、オウムや宮崎勤のケースと酷似
していることに思考が及んでいく。
植松の言動が一言一句そのまま報道される
ことはほぼ無い。しかし彼の発言は、一文
だけ読んでもその異常さは分からず、前後
のつながりや論理性を欠いたその全体を読
むと、戦慄せざるをえないような奇妙さを
感じるのである。

2023年10月7日土曜日

福田村事件

 
☆☆☆★★     森達也     2023年

見ごたえのある秀作。
集団心理、差別意識、メディアの思考停止…
といったズシリと重い問いかけがあるのは、
まあ言ってみれば「監督・森達也」の時点で
予想できてしまうが、この映画は意外に軽や
かでもある。井浦新と田中麗奈の「外国かぶ
れ」夫婦の視点から事件を描いたというのが
大きいだろう。村の伝統も、在郷軍人会も、
進歩的な村長も、因習にとらわれない夫婦の
目からは相対化して見ることができる。多く
の村人が、自分の「役目」を果たそうとして
エスカレートしていき、遂に悲劇に至ってし
まう多層的な過程がより整理されて見えてく
る。荒井晴彦の仕事、という感じがする仕上
がりである。

役者は、左翼的と思われることを嫌っていろ
んなひとに断られてこのキャストになかば仕
方なく落ち着いたんじゃないか…と勝手な想
像をしていたのだが、予想に反して皆すばら
しかった。中でも出色は田中麗奈である。あ
の「なっちゃん」が荒井晴彦の世界の住人に
なる日が来るなんて。水道橋博士も一見、誰
か分からないぐらい生粋の軍国主義者に成り
きっている。東出くんも瑛太もよかった。

                       9.13(水) 池袋シネマ・ロサ




2023年9月30日土曜日

ジャッジ!

 
☆☆★★★  永井聡  2014年

出張先のホテルがWOWOW見放題という
ことが分かり、何か観ようと番組表を見る
とちょうどいいのがこれだけだった。国道
沿いにぽつんとあるホテルでまわりに見事
に何もない場所だったので、時間つぶしに
と思い観たのだが、ほんとうに時間つぶし
にはふさわしい映画という感じ。

CM業界の内幕コメディを、CMディレクタ
ーが映画初監督で撮ったということらしい。
だったらもうちょっとリアルな制作会社の
やりとりやCM業界の生態があるかと思いき
や、まるっきりマンガである。テキトーで
調子のいい上司(トヨエツ)にムチャぶり
されて困るうだつの上がらないCMマンの
妻夫木くん、文句を言いながらも最後は妻
夫木くんを助ける優秀な同僚の北川景子、
昔はすごかったけど今は資料室にいるリリ
ー・フランキー、などなど。類型から一歩
も出ないまま都合よく展開して映画は終わ
る。よかったことがあるとすれば、鈴木京
香がコンペに出した車のCMはなかなかおも
しろかった。そりゃ本業だしね。でもエン
ドクレジットを見てると劇中のCMは別の人
間が作ってるみたいだったが…まさかね。

                 9.10(日) WOWOWプライム




2023年9月24日日曜日

アステロイド・シティ

 
☆☆☆★★★  
ウェス・アンダーソン   2023年

砂漠の真ん中にぽつんとある街アステロ
イド・シティに、若き発明家たちが授賞
式のため集まってくる。みなそれぞれ家
庭にいろんな事情を抱えた若者たちと、
その家族。省略の多いセリフから文脈を
読み取り、脱臼したようなユーモアを解
するだけで精一杯なのだが(つまりいつ
も通りのウェス・アンダーソン映画)、
実はそれらは劇中劇という構造になって
いて、ただでさえ情報量過多の映画をさ
らに極めて複雑にしている。

まあ半分も分かったとは言えない気がす
るが、横移動のカメラワークがしつこく
用いられており、印象的。もちろん移動
した先も、移動中も、構図は完璧である。
主役の戦場カメラマンは渋川清彦に似て
いる。子役の3姉妹の芝居がナチュラル
で良い。普通子役はテイクを重ねると、
どんどん芝居が悪くなっていくものなの
に、この完璧な構図とどうやって両立さ
せたのか不思議である。『ロスト・イン・
トランスレーション』から振り返れば、
スカーレット・ヨハンソンも大物になっ
たものだ。

                  9.7(水) ホワイトシネクイント




2023年9月18日月曜日

読書⑤

 
『月』
辺見庸 著     角川書店

私の好きな石井裕也が監督して映画化されるこ
とを知り、ずっと本棚に眠っていたこの本を急
に手にとって読みだした。なぜか「映画の前に
読んでおかなくては」という心理がはたらくの
である。

語り手は「きーちゃん」という、盲目で、言葉
を発することができず、自分で動くこともでき
ない重度障碍者。性別も不明のきーちゃんがそ
の聴覚や、自分の分身「あかぎあかえ」の視点
などをまじえつつ、介護者の「さとくん」を中
心に自分が身を置く「園」について描写を始め
る。
津久井やまゆり園の殺傷事件に想を得た小説で
ある。安易な感想を撥ねつける、厳しい小説。
読み進むにつれ、著者から言葉の石つぶてを投
げつけられているような気分になる。自分の思
い込みや、欺瞞や、詭弁や、言い逃れがことご
とく抉り出され、眼前にグロテスクに突き付け
られるようである。「人類はみな平等」「なく
なった方がいい命などない」、そういう紋切り
型のスローガンに逃げ込もうものなら、容赦な
く突き上げを食らうことになる。「なぜ?」
「本当に?」「お前は重度障碍者を抹殺する決
意をしたさとくんを翻意させられるのか?」
「なぜ翻意させなければならない?」

どうやって映画化するのか、楽しみである。















『世界で最後の花 絵のついた寓話
ジェームズ・サーバー 著 村上春樹 訳  ポプラ社

「ニューヨーカー」の編集者でもあった著者。
その落書きを同僚が評価して、同誌専属の漫画
家にもなったとのこと。ほぼ全盲だったという
からすごいが、その絵は「まあ味がある」とい
えるギリギリのライン、という気が私にはする。
いや、けなしてるわけじゃないけど…。

「なんのためだったか誰にも思い出せない戦争」
1939年の世界状況と、その年にこの寓話を発表
するということを想像してみる。勇気、知性、
ユーモア、そして哀しみ…。

2023年9月4日月曜日

【Live!】 山下達郎

 
  PERFORMANCE 2023

 1. SPARKLE
 2. 雨の女王(RAIN QUEEN)
 3. ドーナツ・ソング
 4. 土曜日の恋人
 5. SOLID SLIDER
 6. FUTARI
 7. 潮騒
 8. Groovin'(The Young Rascals)
 9. Bella Notte
10. Have Yourself A Merry Little Christmas
11. クリスマス・イブ
12. 蒼氓
13. ずっと一緒さ
14. SILENT SCREAMER
15. BOMBER
16. LET'S DANCE BABY ~ メドレー
17. CIRCUS TOWN

ENCORE
 1. Sync Of Summer
 2. Ride On Time
 3. 恋のブギ・ウギ・トレイン
 4. YOUR EYES

                       7.28(金) NHKホール

取り壊される前にぜひとも中野サンプラザで
山下達郎を聴いてみたかったが、その願いは
とうとう叶わず。これからは東京公演はNHK
ホールのみでやっていくことになるようであ
る。

いつもの「SPARKLE」で始まったが、2曲目
から一転、いきなり珍しい曲。"IT'S A POPPIN'
TIME" 収録の「雨の女王」。もちろん初めて
聴く。アナログ盤とカセットテープ(!)に
よる再発が好評を呼んでいるので、今回は
RCA/AIRの時期の曲を多めにやるとのこと。
願ってもないことである。ライブに通い始め
て10年ほどになるが、「雨の女王」と「潮騒」
は初めて聴いた。
ギターは佐橋佳幸に代わり、鳥山雄司になっ
た。多忙なのか、音楽性なのかは分からない
が、まあ10年に一度ぐらいメンバーが替わっ
てもいいかもしれない。鳥山さんのギターソ
ロ、新鮮に聴くことができた。
ベストアクトは「土曜日の恋人」。

2023年8月18日金曜日

君たちはどう生きるか


☆☆☆★★     宮崎駿     2023年

凄絶な空襲の場面から始まる宮崎駿の新作
は、すぐに田舎の閑静な屋敷に舞台を移し、
敷地の隅にある奇妙な塔とアオサギによっ
て、物語は駆動されていく。
すでに観たひとたちからも聞かれるように、
私も宮崎駿の「集大成」という言葉を浮か
べた一人である。既視のイメージに彩られ
た本作を観ながら思い出すのは、ジブリや
ジブリ以前の過去作、具体的にはハウル、
千と千尋、ポニョ、猫の恩返し、未来少年
コナン、などなど。さらに『インセプショ
ン』やドラゴンクエストⅢなんかも思い浮
かべながら、老いたアニメ作家の(おそら
くは最後の)イメージの奔流を茫然と見つ
めていた。

初回の感想としては後半のファンタジーよ
りも、前半のちょっと浮遊したようなリア
リズムの描写の方が私の好みであった。ま
あでもこれから何度も見返すことになるだ
ろう。もう少し頭を整理してから、後半部
分をまた観たい気持ちはある。

                     7.25(火) TOHOシネマズ渋谷




2023年7月30日日曜日

怪物

 
☆☆☆★★     是枝裕和       2023年

そしてまた間が空いてしまった…。

『真実』をフランスで、『ベイビーブローカ
ー』を韓国で制作した是枝さんが、次は坂元
裕二と組む! 音楽は坂本龍一。そして「か
いぶつだーれだ」、という謎めいた予告編は、
ほとんど内容に触れていない所が私には好印
象。是枝さんは子どもを演出するのに長けて
いるのは確かであるし、カンヌに出品される
や脚本賞を獲ってしまうしで、まあつまり観
ない手はない。

脚本を他人に任せているので、いつもの説教
臭さもなく、サスペンス的な牽引力も十分。
不吉な結末を予感させる演出が続くので、と
りあえず明るい結末に安堵する。劇中、瑛太
が演じる先生の趣味が「誤植を見つけて出版
社に手紙を書くこと」と暴露されるシーンが
あって、私とまったく同じ趣味なのですごく
びっくりした。
ラストシーンがあまりに晴れていたので、こ
れはいったいいつの時間? 安藤サクラたち
が探しに来た時から何時間経ってる設定なの
だろう、とちょっと思ったけど、まあ絵とし
ては台風一過で晴れあがっていた方がいいに
決まっている。大事なラストシーンだし、不
問に付すことにした。

                         6.6(火) TOHOシネマズ日比谷




2023年6月6日火曜日

シン・仮面ライダー

 
☆☆☆★★   庵野秀明   2023年

さーて、『怪物』観たから感想でも書くかー、
とメモ帳のファイルを開いたら(この原稿は
メモ帳で書いている)、白紙のままのこの映
画のタイトルと日付が出てきたのである…。
あいたー、完全に忘れてた。
おもしろかったし、周りに観たひとも何人か
いたので、感想を喋ったりしたのもあり、も
うすっかりブログも書いた気でいたのであっ
た。

本作が『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラ
マン』と一線を画すのは、明らかに身体性と
いうか、言ってみれば「暴力性」を正面から
描いている点であり、主演の池松壮亮にかか
る負担も大きかったであろう。NHKでドキュ
メンタリーも放送されたが、庵野はアクショ
ン映画としての新しさを希求するあまり、段
取りとしての「殺陣」を否定していく。それ
はアクションのプロを排除して、いわばアク
ションにおいては「素人」である一介の俳優
に多くを負わせることになり、用意してきた
段取りを一刀のもとに捨てられる現場スタッ
フは疲弊していく。それでも段取りと練習を
積み重ねることからは得られない「生」の瞬
間をなんとかフィルムに焼きつけようと、庵
野は苦闘しているようだった。

そして本作がこれまでの「シン」シリーズと
一線を画すのはもうひとつ、魅力的なヒロイ
ンがいるということである。浜辺美波。あん
なとんでもない撮影現場でよくこれだけの芝
居をしたものだと感心してしまう。

                     3.28(火) TOHOシネマズ池袋




2023年5月13日土曜日

読書④

 
実は二冊とも年明けぐらいに読み終わってい
たのだが、記事を書くのを後回しにしていた
のであった…。もう5月だ。後回しにし過ぎ。


蝶々と戦車 何を見ても何かを思いだす
 ヘミングウェイ全短編3
ヘミングウェイ 著  高見浩 訳  新潮文庫

全短編のシリーズもこれで完結。
ヘミングウェイの作家人生をおおざっぱに
「パリ時代」「キー・ウェスト時代」「キュ
ーバ時代」とくくった時の、「キューバ時
代」に書かれた短編と、書かれた時期は不
明の生前未発表のものを網羅する。
はじめの方は、スペイン内戦を取材したこ
とをもとにした短編が多く収録されており、
スペイン内戦に無知な私にはいまいち事情
が分からない。もちろん会話や文章の端々
にひりひりした空気は伝わってくるが。
その他のものはあいかわらず切れ味するど
い短篇が並んでいる。「ある渡航」や「ポ
ーター」という作品などは、その瑞々しさ
に驚かされる。「アフリカ物語」もいいで
すねー。

『街とその不確かな壁』を読んでいたら、
「ヘミングウェイの短篇の出だしみたいだ」
というセリフがあり、偶然にも去年からこ
のシリーズを読んでいた私は思わずニヤリ
としたことですよ。

















『古くて素敵なクラシック・レコードたち』
村上春樹 著  文藝春秋

いちおう発売してすぐ買ったんですけどね…。
この本で村上春樹が嬉々として自前のアナロ
グ盤のジャケットとともに紹介しているクラ
シックが、全然知らない曲ばかりなので、
YouTubeなどで探して聴きながらちびちびと
少しづつ読んでいるうちに、2年ほど経って
しまった。しかも読み終わらないうちに続編
まで出てしまった。
しかしこれを読みながら「ふむふむ、あの曲
ね」と頷きながら楽しめるひとは、相当な知
識を有するひとだけだろう。私は正直、どう
読んでいいものか、困惑する本だった。ルー
ビンシュタインの弾くシューベルトのピアノ
ソナタ21番にはとても興味をそそられたので、
買おうと思ってタワーレコードに行ったのだ
が、どうやらCDでは出ていないらしい。実用
的な本、というわけでもないのである。



2023年4月29日土曜日

読書③

 
『街とその不確かな壁』
村上春樹 著   新潮社

新作は中篇らしいという話もあったのでそんな
に長くはないのかと思っていたら、意外なほど
厚い本が店頭に積み上げられていた。

影をもたないひとびとの暮らす高い壁に囲まれ
た街、金色の毛をもつ単角獣、図書館で「古い
夢」を読む「夢読み」などなど、懐かしいモチ
ーフが登場して、「いま」の村上春樹の文章で
書き直されていく。比喩は前作より多めで、お
もしろいものが多数あった印象。打率が高いと
いうか。

ものすごく珍しい「あとがき」によると、その
昔「文學界」に発表した「街と、その不確かな
壁」は『世界の終りとハードボイルド・ワンダ
ーランド』に生まれ変わることで完全に昇華さ
れたのだとわれわれ読者は思っていたが、春樹
のなかではまだ終わっていなかったということ
らしい。「夢」はいつも村上春樹の小説の中で
重要な意味を持つが、「高い壁に囲まれた街」
がそれほど決定的に重要なモチーフだったとは。
しかし40年越しの執念をもって書き直さねばな
らないほどの小説だったのかというと、読み終
えたばかりのいまは、もうひとつ腑に落ちない
ところはある。また2年ほど置いて読み直せば
感想も違ってくるとは思うのだが。




2023年4月9日日曜日

フェイブルマンズ

 
☆☆☆★★★  スティーヴン・スピルバーグ 2023年

スピルバーグの自伝的な物語。
「FABLEMAN」というのはファミリーネーム
で、名乗るだけで英語圏のひとには一発でユ
ダヤ系であることが分かるらしい。もちろん
スピルバーグはユダヤ系である。
ひさびさの映画館に心が浮きたっていたのも
後押ししたのか、151分の長尺とはとても思
えない幸福な時間だった。体感は100分。

映画づくりに魅せられるとは、深い業を背負
うこと…。なるほど自分の好きに映画を撮っ
て評価されてきたと思われがちなスピルバー
グにも、葛藤や苦悩はあったということか。

やはりこの世代の映画人にとって映画の神様
はジョン・フォードなのである。デヴィッド・
リンチが演じたフォードはインパクト大。そ
れに関連したラストカットが洒脱で微笑まし
い。

                        3.20(月) TOHOシネマズ池袋




2023年3月28日火曜日

【LIVE!】 スガシカオ

 
 26th Anniversary Live 『Hitori Sugar VS ファンクザウルス』

 『Hitori Sugar(弾き語り)』
 1. ヒットチャートをかけぬけろ
 2. 労働なんかしないで光合成だけで生きたい
 3. スターマイン
 4. 灯火
 5. そろそろいかなくちゃ
 6. Party People
 7. アストライド
 8. さよならサンセット
 9. 深夜、国道沿いにて
10. Progress
 
 『ファンクザウルス』
11. バカがFUNKでやってくる
12. ぼくはマザコン
13. したくてたまらない
14. GoGoメドレー
 叩けばホコリばっかし-short ver.-~たとえば朝のバス停~Fire~ハーレ
 ムノクターン~USO~メルカリFUNK-short ver.-
15. スガシカオで領収書ください
16. おれのせい
17. おれたちはこれでいいのか

                       2.26(日) 中野サンプラザ

ほぼ開店休業のこのブログであるが、いちおう
ライブにも行っている。まれに。

今回はスガシカオのいつものサンプラーなんか
を駆使した楽しい弾き語りが前半、後半は近年
シカオちゃんが半分お遊び半分本気でやってい
るファンクバンドの公演、という一応「対バン
形式」のライブ。どちらもスガシカオが中心な
ので対バンにはなっていないが。

Hitori Sugarはもう立派にお金をとれるパフォ
ーマンスに仕上がっていて、声もよく出ている
し、とても良い。ひさしぶりに聴いた「そろそ
ろいかなくちゃ」がワンフレーズ目からじわり
と染みた。
ファンクザウルスは、腕利きミュージシャンた
ちがみんなでバカバカしいファンクを炸裂させ
ている様はほほえましいが、いかんせん曲があ
んまりおもしろくない。今のところ。

ベストアクトは「そろそろいかなくちゃ」。




2023年3月4日土曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


マニアックヘブンVol.15

 1. カウントダウン
 2. 運命複雑骨折
 3. ペルソナ
 4. 白夜
 5. シェイク
 6. がんじがらめ
 7. 雨に打たれて風に吹かれて
 8. 神の悪戯
 9. コンクリートに咲いた花
10. クリオネ
11. ヘッドフォンチルドレン
12. フリージア
13. 泣いている人
14. 突風
15. 一つの光
16. 閃光
17. カナリア

(Encore)
 1. 天気予報
 2. 上海狂騒曲
 3. さらば、あの日

                   1.14(土) 中野サンプラザ

とっても今更ですが、年明けにあったライブ
です。えーと、もうだいぶ忘れかけているが、
よかったと思います。
スタジオコーストがなくなり、初めてサンプ
ラザでおこなわれたマニアックヘブンだった
が、まあいつも通り、かな。
いつも言ってる気がするけど、サンプラザの
音響はトゲがなくてまろやか、かつ豊かな感
じで、演奏がいつもよりうまく聞こえる。
選曲は、新しめの曲がすごく増えてきていて、
それらの曲はまあどうしても思い入れはさほ
ど無い。
「天気予報」で山田がドラムをやけくそのよ
うに強くたたいていた。
ベストアクトは「運命複雑骨折」。血湧き肉
躍る。




 

2023年2月11日土曜日

読書②

 
『騎士団長殺し』
「第一部 顕れるイデア編」
「第二部 遷ろうメタファー編」

2017年に出版されてすぐに読んで以来の再読。
もう6年にもなるか。もちろん、春の新作刊行
を知っていたわけでは「あらない」。読みなが
ら、そろそろ次の長篇を書いている頃かなー、
と思ってはいたが。

春樹なりの「ギャツビー」へのオマージュとい
う面の色濃いこの小説の肝はなんといっても、
ギャツビーである免色と、デイジーである秋川
まりえのキャラクター造形にあると思われる。
とりわけ免色と、彼が住む谷向かいの白い豪邸
とが、物語の基調をなす。主人公の「私」には
最後まで名前は与えられず、記述者としての役
割を担いながら、「ギャツビー」という容器に
満たされたまったく別個の物語を語り始める。

しかしそもそも「ギャツビー」の物語の骨格っ
て、そんなにおもしろいものなんだっけ? な
どと考えながら読んでいたが、春樹のその試み
は充分に成功しているとは言い難い、というの
が再読の印象。




2023年1月22日日曜日

ケイコ 目を澄ませて

 
☆☆☆★   三宅唱    2022年

昨年末の公開なので、分類としては今年の
映画とさせていただく。

両耳の聞こえないボクサーを岸井ゆきのが
演じる。セリフはたぶん一言「はい」とい
うのがあっただけで、あとはすべて表情と
肉体のみで芝居をすることが求められる
「難役」といって間違いはなかろう。題名
の通り、ケイコがときおり放つ鋭い眼光が
その魂を物語っているようで、心に残るも
のがあった。エリートというよりはかなり
下のランクを這い回っているボクサーが主
役ということで、爽快感みたいなものは無
い。

16mmフィルムで撮影されたとのことで、
たしかにデジタルの鮮明な画に慣れてしまっ
た私には、だいぶもったりとした画に見え
た。




2023年1月18日水曜日

読書①

 
『セロニアス・モンクのいた風景』
村上春樹 編・訳  新潮社

うちにも2枚セロニアス・モンクのCDがあり、
それはもちろん『ポートレイト・イン・ジャ
ズ』の影響で買ったものだ。買ったはいいが、
リズムはへんてこだし和音も濁っていて気持
ちよくないということで、あまり聴いてこな
かった。
しかしモンクというひとはずいぶん興味深い
人物だったんですね。独自の音の世界を確固
として自分の中に持っていて、誰に何と言わ
れようと、それを曲げることがない。世代と
してはチャーリー・パーカーなんかと同じで、
マイルズ・デイビスよりも上なのである。
さっそく2枚のCDを何回も聞き直し、奇妙だ
がおもしろい音楽であると思い直したので、
またTSUTAYAでいくつもCDを借りてきて聴
いている。我ながら、相変わらず影響を受け
やすい。













『青の時代』
安西水丸 作   クレヴィス

作者が幼少期に過ごした千葉の千倉。
なんだか寂しい絵が多いようだが、そう
いう印象だったのだろう。
主人公の少年はじっと無表情な目で、ま
わりのおとなたちを観察している。

2023年1月9日月曜日

テレビドラマ 2022年


いちおう10月のクールも連ドラを2本と
大河も観ていたので、我ながらちゃんと
観たほうだと思う。

<連続ドラマ>
カムカムエブリバディ
恋せぬふたり
鎌倉殿の13人
オンエアできない!
卒業タイムリミット
正直不動産
17才の帝国
星新一の不思議な不思議な短編ドラマ
初恋の悪魔
タローマン 岡本太郎式特撮活劇
エルピス ―希望、あるいは災い―
拾われた男

(DVDレンタル)
拝啓、父上様

(途中離脱)
ちむどんどん
空白を満たしなさい

<単発ドラマ>
土方のスマホ 正月の陣
この花咲くや
エンディング・カット
旅屋おかえり
(秋田編、愛媛・高知編)
家出娘
君の足音に恋をした
ある子ども
津田梅子 ~お札になった留学生~
京都人の密かな愉しみ Blue 修業中 門出の桜
雪国
未解決事件 File.09 松本清張と帝銀事件

(再放送)
京都人の密かな愉しみ Blue 修業中 祝う春


授賞は以下のドラマに。


グランプリ
鎌倉殿の13人

敢闘賞
初恋の悪魔エルピス ―希望、あるいは災い―

技能賞
星新一の不思議な不思議な短編ドラマ


<講評>
まあぶっちぎりで2022年は「鎌倉殿」だろ
う。インカメラVFXだとか単焦点レンズだけ
を使ったとかいろいろ技術的にもあったのだ
ろうが、なにせ三谷幸喜の作劇に痺れる大河
ドラマだった。鎌倉時代という資料も乏しい
時代を選んだこと、まともに作るとただの血
みどろの権力闘争でしかないこと、北条義時
という地味な人物を主役に据えたこと、すべ
てを味方につけて見事な絵巻を作り上げた。
ほかのドラマにも触れたいが気力があまりな
い。でも1年とおして、おもしろいドラマが
多かったように思う。「京都人の密かな愉し
み Blue 修業中」のシリーズはいつもさわや
かな秀作に仕上がっていたので、終わってし
まうのが残念である。

2023年1月3日火曜日

ベスト5 <新作>


賀正。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年の鑑賞本数は52本。
うち新作は20本。ベスト5でも多いかな、
というぐらいの本数しか観てませんが…。


1. フレンチ・ディスパッチ

2. パリ13区

3. セイント・フランシス

4. ちょっと思い出しただけ

5. 麻希のいる世界


7月以降、ほとんど新作映画にふれられて
いないので、まあ上半期のみの、かなり
いい加減なものです。
上位3本の洋画が特によかった。レア・セ
ドゥ、ルーシー・チャン、ケリー・オサリ
ヴァン。なんだかそれぞれにまったく違う
キャラクターの女性3人だが、とても印象
に残っている。
「もう1本選べ」と言われたら、「アネッ
ト」と「流浪の月」で迷って、「流浪の月」
かなー。


<観た新作映画>
ハウス・オブ・グッチ、クライ・マッチョ、フレンチ・ディスパッチ、麻希のいる世界、テレビで会えない芸人、ウエスト・サイド・ストーリー、THE BATMAN ―ザ・バットマン―、Actually…(MV)、やがて海へと届く、アネット、パリ13区、ちょっと思い出しただけ、コーダ あいのうた、マイスモールランド、シン・ウルトラマン、流浪の月、オフィサー・アンド・スパイ、マイ・ブロークン・マリコ、ベイビー・ブローカー、セイント・フランシス(20本)