2015年6月30日火曜日

海街diary


☆☆☆★★★         是枝裕和         2015年

傑作認定します。
いまだにただキレイどころを集めたぬるい映画だと思っているひと
がもしいたら、すぐ認識をあらためて観に行ってください。

四姉妹の朝ごはんの風景を描かせたりしたら、是枝さんはやはり
天才的にうまい。というか四姉妹が出ているシーンにはシビれっぱ
なしだった。ずっと観ていたい。
しかしものすごいキャスティングだよ。あとキャスティングでいえば、
頼りなくて身勝手な母親役に大竹しのぶ。ハマりすぎててつい笑っ
てしまった。

是枝さんは連ドラ「ゴーイング・マイ・ホーム」のときに、シナリオに
おける指示語(「これ」とか「そっち」とか)の重要性について語って
いたが、今作で多用される「あれ」という指示語に、まずそのことを
思い出した。

原作にはもう1本映画が作れるぐらいのエピソードはじゅうぶんある
が……。ただ残ってるのは、どうしてもすずのサッカー絡みの話に
なる。シャチ姉のエピソードはほとんど出たと思う。どうなるんでしょ
う。この贅沢な四姉妹をもっと観たい気はする。でもやるなら、広瀬
すずが成長してしまう前にやらないとな。

画像は池ちゃんと夏帆。
ヘラブナ釣りが趣味なのは実際は池ちゃんの方。なのでたぶんあ
れは脚本ではなく現場で是枝さんに採用されたセリフだろう。

                                                           6.17(水) 新宿バルト9


2015年6月29日月曜日

ブロンコ・ビリー


☆☆☆      クリント・イーストウッド     1980年

正統的な西部劇を期待していたらかなり面喰らうと思う。
説明するのも面倒なのでしないが、かなりヘンな映画である。

臆面もなく愛人(ソンドラ・ロック)を映画のヒロインにして秀作
だか凡作だかよくわからんヘンテコ映画を撮ってしまうイース
トウッドがすごい。

                                                       6.13(土) BSプレミアム


2015年6月28日日曜日

新宿スワン


☆☆☆★★        園子温       2015年

終映の10分前までは今より★1コ少ない採点だったのだが、
ラストシーンがカッコよかったのと潔かったので★追加。

園監督のいつものしつこさ・過剰さは抑制されていて、比較
的スッキリと観やすい映画になっていた。暴力描写も、それ
ほどではない。あるいは脚本が監督自身ではないからかも
しれない。けっしてデキの良い脚本とは思わないが。

まあ「勢いで展開してなんぼ」みたいな映画だから、あまり
細部に拘泥していてもしょうがないが、いちばん疑問なのは、
ボーリング場でのリンチのシーン。口封じのためだったら、関
を殺さないと意味ないような気がする。

                                            6.9(火) TOHOシネマズ新宿


2015年6月27日土曜日

悲しみよこんにちは


☆☆☆       オットー・プレミンジャー     1957年

『永遠の僕たち』のヒロインも金髪ショートのミア・ワシコウスカ
だったので、図らずも"新旧ショートカット美少女対決"の様相
を呈しているが、もちろん意図したわけではありません。

こちらのショート美人はジーン・セバーグ。
ミア・ワシコウスカが半分冥界に行っちゃってる実在感の薄い
感じだったのに対して、こちらはリヴィエラでバカンスとアバン
チュールを奔放に満喫する健康的な美少女である。

てっきりフランス映画だと思っていたらハリウッドなのね。
さーて、今日はフランス語を浴びようかなと思って観始めたら、
セリフが英語だったからビックリしてしまった。

                                                         6.8(月) BSプレミアム


2015年6月26日金曜日

永遠の僕たち


☆☆☆★★       ガス・ヴァン・サント     2011年

主人公は、見ず知らずの人の葬式に出るのが趣味という少年。
ある葬式で、参列していたショートカットの美少女(ミア・ワシコ
ウスカ)と出会い、言葉を交わす。後日、悪戯が過ぎてピンチに
陥った主人公をとっさの機転で救ったことで、二人は親しくなり、
やがては心を通わすようになるのだが、実は少女は重い病気
で余命いくばくもない……。

難病ものが好きではないのはどうも可哀相になってしまうから
で、この映画は年端もいかない、しかもこの世で最も死んでは
いけない美少女が病気になるという(※意見には個人差があ
ります)、いちばん可哀相なパターンなのに、なぜかとても爽や
かなのである。それは登場人物みながなんとなく「実在感」が
薄いからかもしれない。
幽霊役で加瀬亮も出演。

ショートカットが似合うコはやっぱ可愛い。

                                                       6.8(月) BSプレミアム


2015年6月23日火曜日

マディソン郡の橋


☆☆☆★★★     クリント・イーストウッド     1995年

ははあ。こういう話だったのか。
子どもの頃、原作小説とこの映画版がずいぶん評判だった
のはなんとなく覚えがある。どうも「不倫」の話らしいというの
も、小学生ながらいちおう聞きかじってはいた。

それから時を経て、私はひょんなことから映画を観るのが好
きになり、イーストウッドの映画を15本ぐらい、不倫が題材の
映画ならたぶん100本以上は観ただろういま、この『マディソン
郡の橋』を、満を持して、独り部屋でじっくりと観たわけである。

不倫だけどピュアな感じがする、というのがこの作品の売りだ
と勝手に解釈すると、イーストウッドとメリル・ストリープの狂お
しい「心の震え」のようなものは、じゅうぶんに伝わってきた。
じっくりと丁寧な演出の賜物である。最後、どしゃ降りの中に
佇むイーストウッドには不覚にもグッときてしまった。

                                                                   6.1(月) BS朝日


2015年6月22日月曜日

駆込み女と駆出し男


☆☆☆★★         原田眞人       2015年

我らがにょういずみ・にょうさんの堂々たる主演作である。
口八丁の見習い医という、最高に持ち味を発揮できそう
な役をもらい、彼は見事に期待に応えていたと思う。
「口跡が良い」というのだろうか、流れるようなセリフまわ
しは、聞いていて小気味いいものである。原作は井上ひ
さし『東慶寺花だより』。この小説のことは知らなかった。

そして原田監督は良い仕事しますなー。演出と編集が実
に気持ちいい。よく分からないセリフもたくさんあったが、
「まあ大勢に影響ないんだろうな」と安心して原田監督に
おまかせしていられた。ひさびさに日本映画で、映画らし
い映画を観た気分。

                                                  5.30(土) 新宿ピカデリー


2015年6月20日土曜日

梅雨の読書


『火花』
又吉直樹 著      文藝春秋

やはり芥川賞候補になりましたね。
私は受賞しても驚かない。これより内容も文章もマズい歴代
受賞作はいくらもある。ただ芥川賞はそのとき一緒に候補に
なった作品のレベルによっておおいに左右されるので、取る
かどうかは何とも言えない。話題づくりとかそういったことは、
銓衡委員はあまり考えないと思う。そんな素直なひとたちじゃ
ない。










『すべての戦争は自衛意識から始まる』
―「自分の国は血を流してでも守れ」と叫ぶ人に訊きたい
森達也 著      ダイヤモンド社

言論弾圧の効果は、おもにテレビ方面でバッチリ表れてきて
いて、テレビを見ていてもなんだか正論をいうひとがめっきり
減ってしまった。「減ってしまった」というのはもちろん「テレビ
に出してもらえなくなった」ということだ。要するに、制作側の
過剰な忖度であり、自粛だ。批判されるのを極端に嫌う政治
家と、なぜかはさっぱり分からないが、それを半数以上の国
民が支持している現状。今の内閣になって、何かひとつでも
良いことがあったというなら教えて欲しいぐらいだ。

おっと、森さんの本について何も触れていない。
森さんは正論をいうひとである。正確にいえば「どう考えても
僕にはこれが正論としか思えない」ということをそのまま書い
てきたひとだ。ここ数年、明らかに「正論」と「現状」との乖離
が目に見えて大きくなってきていることに、森さんの苛立ちと
絶望が深まってきているのは、読んでいればわかる。
はっきり言って、森さんは同じことばかり書いている。「オウム
以降、日本では集団化の意識が高まった」「集団は異物を排
除し仮想敵を見付けようとする」「危機を煽る指導者が支持さ
れる」「自衛意識を刺激する言説が支持される」。ほとんどこ
ればっかりだ。それでも状況は、悪い方へ悪い方へ転がって
いく。だから森さんは「何度でもいうが」と前置きしながら、何
度も何度も同じことを書かなくてはならない。

森さんはいま佐村河内の映画を撮影中らしい。楽しみである。

2015年6月19日金曜日

【LIVE!】 Base Ball Bear


日比谷ノンフィクションⅣ

1.The Cut (with RHYMESTER)
2.CRAZY FOR YOUの季節
3.Transfer girl
4.yellow
5.そんなに好きじゃなかった
6.愛はおしゃれじゃない

7.スクランブル
8.ホワイトワイライト
9.ラブ&ポップ

10.Tabibito in the dark
11.十字架You&I
12.changes
13.ELECTRIC SUMMER
14.UNDER THE STAR LIGHT
15.魔王
16.PERFECT BLUE

アンコール
17.「それってfor誰?」part.1(新曲)
18.BREEEEZE GIRL

                                     6/13 日比谷野外音楽堂


久しぶりに日比谷野音でライブを観た。
気持ちのいい場所である。なんといっても公園の中にある
会場だし、エレキギターの轟音が日比谷のビル街に響いて
いくのも風情がある。

単独ライブを観るのは、帯広RESTで観たとき以来か。あの
時はPAが良くなかった覚えがある。関根ちゃん側で観た。
その後Rising Sunでのパフォーマンスが素晴らしくて、あら
ためて好きになった。意外と野外向きのバンドなのかもしれ
ない。

MCで関根ちゃんが結婚したと聞いたとき客席のテンション
が下がった気がしたけど気のせいか。私も知らなかったの
で、「え、そうなんだ…」と思って少しがっかりしたのは否め
ない。

ベストアクトは"十字架You&I"

2015年6月17日水曜日

ほえる犬は噛まない


☆☆☆★       ポン・ジュノ      2000年

ペ・ドゥナの出演作を観ていこうキャンペーンの第1弾。
今後継続されるかは不明。

映画デビューは『リング』韓国版の貞子役だったらしい
ので、「普通の人間」役としては(笑)、この作品が最初。
最初にして主演である。ポン・ジュノはこれが商業映画
デビューかな?

巨大な集合住宅で、犬の失踪事件が相次ぐ。本来ペット
は禁止だけど、こっそり飼っているのだ。その集合住宅
の管理事務所に勤めるペ・ドゥナは、単調な仕事に飽き
飽きしながらも、漫然と日々を送っている。そんな「平凡
な女の子」が巻き込まれる、犬にまつわる騒動をわりと
脱力系コメディタッチで描く、奇妙な味わいの映画である。

画像は、どことなく能年ちゃんを思わせる…?

                                                           5.29(金) DVD


2015年6月14日日曜日

さびしんぼう


☆☆☆★★       大林宣彦       1985年

「尾道三部作」の三作目である。
主演は富田靖子。主人公の尾美としのりは、しばしば「大林
の分身」となかば皮肉も込めて言われる。富田靖子は、主人
公の前に現れる「道化」と、主人公が憧れる可憐だが陰のあ
る他校の生徒の二役を演じる。
甘ったるいなーとは思うけれど、決して嫌いじゃない。臆面も
なくショパンの「別れの曲」を持って来る感じも、大林宣彦で
なければ許されないことなのだが、しょうがねぇなー、と思っ
てしまうのである。

                                                               5.26(火) DVD


2015年6月12日金曜日

はじまりのみち


☆☆☆★★     原恵一      2013年

観た直後のわたしはこの点数を付けたらしい。
というのも、この文章は観てからだいぶ日数が
経過してから書いているので、直後に思ったこ
とはだいぶ忘れてしまっているのである。

映画監督の木下惠介を加瀬亮が演じる。戦時
中、木下監督が実際に母親をリヤカーで疎開さ
せた話を映画化したらしい。

おそらく『百日紅』が公開中の原監督の予習がで
きるように、というプログラムなのだろう。最近BS
プレミアムの映画のチョイスが良くて、私のささや
かなHDDは悲鳴をあげている。4月から選者が
替わったのだろうか。もちろん、慶賀すべきことで
ある。観るのは大変だが。

                                         5.23(土) BSプレミアム


2015年6月9日火曜日

Seventh Code


☆☆☆★       黒沢清       2014年

最初はただのミュージック・ビデオの予定だったのが、
内容が膨らんで短篇映画になってしまったらしい。

その中身やいかに、と思っていたが、これがまぎれも
なく黒沢清の映画であった。動き出す青い車を撮るだ
けでそうなってしまうのは不思議である。
そしてそこに自然に存在している前田敦子。良い感じ
だ。

                                              5.22(金) 新文芸坐


2015年6月8日月曜日

不気味なものの肌に触れる


☆☆☆★        濱口竜介        2014年

2本目。
もうほぼ染谷くんの「存在感だけ」で短篇映画が1本作れて
しまうのである。良い俳優になったなー。

そして久しぶりの石田法嗣! 『カナリア』に出てた少年で
ある。

                                                      5.22(金) 新文芸坐


2015年6月6日土曜日

さまよう小指


☆☆★★★         竹葉リサ      2014年

この週の締めは池袋・新文芸坐で3本立て。

まずは1本目。
フラれた男の小指からクローン人間を作って付き合ったら…
という話。まあ良くも悪くもPFF的というか。
意外に残酷な暴力描写にはハッとするものの、やはり全般
的にぬるいかな…。

                                                      5.22(金) 新文芸坐


2015年6月2日火曜日

セッション


☆☆☆★      デイミアン・チャゼル     2015年

なるほど。

既にこの映画は菊地成孔と町山智浩の論争を抜きにしては
語れなくなっている観があるので、映画の当否はもうそちら
にお任せしよう。ただし映画を観る前に読むのはお薦めしま
せん。私は菊地成孔は嫌いで町山智浩は好きだけど、この
論争に限っては、菊地成孔の言っていることにも首肯できる
ところはある。文章が読みにくいのは相変わらず。

私はどうだったかというと、たしかにこれは音楽映画という
よりも「週刊少年ジャンプ」的なデキの悪いスポ根マンガだ、
という指摘には一定の賛意を表したいと思う。ラストには間
違いなく興奮があるが、終わってみれば「はて。これでいい
んだっけ」という思いがぬぐえない。
まあしかし監督が描きたかったのはああいう世界なのだろう。
鬼教官の映画史に、新たな1ページを加えたのは確かである。

「ジャズという音楽があるのではない。「ジャズなひと」がいる
だけなのだ」というヨルタモリに登場する岩手のジャズ喫茶の
マスター・吉原さんの言葉がある。この映画の主人公は果た
して「ジャズなひと」と言えるだろうかと考えてしまう。

原題の"Whiplash"はもちろん劇中で演奏される曲名である
と同時に、「鞭の先端のしなる部分」という意味だそう。

                                          5.21(木) TOHOシネマズ新宿