2017年6月23日金曜日

続・激突!/カージャック


☆☆☆★★    S. スピルバーグ    1974年

スピルバーグにだって新人時代があった。
この映画が彼の劇場デビュー作である。高名な『激突!』
はテレビ映画で、劇場公開作ではないらしい。へぇ。

原題は"The Sugarland Express"、この時代にはよくある
ことだが、『激突!』とはまったく関係ない独立した映画
である。Sugarlandはアメリカの地名。里親の元に引き取
られてしまったわが子を奪還すべく、まだ刑期の残ってい
る夫を脱獄させ、パトカーを奪って警官を人質にしながら
一路Sugarlandを目指した実在の(!)夫婦の話である。

内容に反してサスペンス色は薄く、警官の追跡もなんだか
本気じゃないというか、のんびりしているというか、牧歌
的である。しかし弛緩しそうになると突然凄まじい銃撃戦
やカーチェイスが始まったりして、このへんのバランスは
さすがにデビュー作から秀でているような気がするぞ、ス
ピルバーグ。栴檀は双葉より芳し。ちょっと違うか。

                                               6.15(木) BSプレミアム


2017年6月21日水曜日

赤線地帯


☆☆☆      溝口健二     1956年

劇中では、売春防止法が成立せずに2度流れ、みたび
国会で激論が交わされている様子がラジオから聞こえ
てくる。そんな時代の、いまは公認なのにもうすぐに
でも違法になるかもしれない赤線地帯で、絶望を抱え
ながらもたくましく生きる女たちの群像劇。

大阪から流れてきた京マチ子のはねっかえりぶりを仲
介業者が表現した「アプレのプレプレ」という言い回
しが素晴らしい。

画像はお店のナンバーワンですさまじい金の亡者を演
じた若尾文子。

                                           6.14(水) BSプレミアム


2017年6月18日日曜日

トゥルー・グリット


☆☆☆★★   ジョエル/イーサン・コーエン  2011年

コーエン兄弟による西部劇。"TRUE GRIT"は「真の勇者」
と訳されていた。『勇気ある追跡』(1969年)と同じ原
作に基づいているとのこと。要はリメイクだ。

14歳の少女の独白から始まる。その独白で早くも
「父親を殺して金を奪った犯人を追跡して復讐を遂げた」
ということが明かされる。結末が先に分かっても、俺た
ちの映画で退屈させることは無いぜ、というコーエン兄
弟からの挑戦状にしか聞こえない。

この少女がめちゃくちゃ変わっていておもしろい。復讐
を成し遂げるため、弁護士と訴訟をちらつかせて海千山
千の男たちを説得・脅迫していく姿はタフそのもので痛
快である。「ひよっこ」でいえば豊子。

犯人は先住民の居留地に逃げ込んだという。法の支配す
る街ではタフな豊子が、法律など通用しない、もっとヘ
ビー・デューティな世界に身を置いたときにどう困難を
乗り越えるかという物語になっている。

ラストのサーカス団とのやりとりだけが分からなかった。
なぜ彼女は団長を痛罵したのか?

                                             6.14(水) BSプレミアム


2017年6月17日土曜日

メッセージ


☆☆☆★     ドゥニ・ヴィルヌーヴ     2017年

宇宙から12体の巨大なばかうけが飛来する映画としてすっか
り有名な原題"ARRIVAL"を観て来た。
昨年のInterBEEでこの映画の音響デザインを担当した人物の
講演を聞いて興味を持っていたからである。その方、『ロー
ド・オブ・ザ・リング』シリーズや『ホビット』シリーズな
ど世界的な超ヒット作を手がけている音響デザイナーだった
のだが、あいにくファンタジー映画に興味がないため1本たり
とも観たことがなくて、自分の不勉強を恥じたものである。

『2001年』のモノリスとは違い、この「物体」には宇宙人が
乗っていることが序盤から分かっている。問題は、言葉の通
じない彼らが「何のために」地球に来たかを質問したいのだ
けど、相手の答えは分からないし向こうがこちらの質問を理
解したかどうかも分からんじゃないかということで、気鋭の
言語学者(エイミー・アダムス)と物理学者が呼び出されて
宇宙人との究極のコミュニケーションを図るというなかなか
おもしろい趣向である。物理学者がもうちょっと活躍してく
れるとよかったのだが。

                                             6.11(土) 渋谷HUMAXシネマズ


2017年6月14日水曜日

獄門島


☆☆☆       吉田照幸      2016年

長谷川博己を主演にリメイク。
昨年の放送時にはなぜか録画できておらず、一瞬意識
が遠くなった。ま、でもすぐ再放送あるだろと思って
いたら、なかなか無かったね。

長谷川博己の金田一はあえて石坂浩二ののんびりした
感じを排除して、機敏で理知的で時に狂気をたたえた
人物像として提示されている。それにしては連続殺人
を食い止めることができてないが…というのはあらゆ
る推理モノについて言えることだから言わないでおく。
大原麗子がやった役は仲里依紗が務めた。「この女、
可愛いけど絶対関わらない方がいい」感に関しては大
原麗子に遠く及ばないが、悪くはなかった。

「きちがいじゃが、仕方がない」もちゃんと音声を消
されず放送されてひと安心。往年の佐分利信が演じた
役をできるのは、たしかに奥田瑛二だけかもしれない。

                                           5.30(火) BSプレミアム







<ツイート>
文春の小林信彦さんのコラムが掲載されなくなって
もうひと月になる。体調を崩しておられるのだろう
か。私が文春を毎週買うようになったのは高島俊男
の「お言葉ですが…」を読むためだったが、高島氏
のコラムが終わってからも小林さんのコラムを読む
ために買い続けて、今に至る。回復を祈ります。

2017年6月7日水曜日

夜空はいつでも最高密度の青色だ


☆☆☆     石井裕也    2017年

石井裕也の最新作は最果タヒの詩集が原作! 
危ないですよねー。それを耳にしてまず大丈夫か
いなという心配はしたけれども、彼はクレバーな
ひとなのでまあ目を覆うような悲惨な映画にはな
りますまい。

主演は向かう所敵なしの池松壮亮と、ほぼ新人の
石橋静河。石橋凌・原田美枝子夫妻の娘だって!
お母さんにはあんまり似てないかな。

都市に生きる若者の孤独、生きづらさ、閉塞感。
そんな言葉を付与できそうな内容だったが、いた
ずらに登場人物がポエムな台詞を口走ったりはせ
ず、ひと安心。渋谷、新宿、見慣れた風景である。
突然死する先輩の役で松田龍平も出演。

                                  5.27(土) ユーロスペース


2017年6月4日日曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN / ORANGE RANGE


対バン。昔は大嫌いだったオレンジレンジ。
ミクスチャーという音楽につきまとう「まがいもの感」
を悪びれることなく全身で体現しているように当時の
私には見えたのである。でも今かんがえると、そのこ
と自体はそんなに毛嫌いするようなことではないと思
える。「まがいもの感」をひた隠しにする方が悪質だ
と今なら思えるのだが。

当時はくだらない曲だと唾棄していた「イケナイ太陽」
がけっこう気持ちいい。2曲歌い終わり、
 どー考えても存在として正反対でしょ?笑
 バックホーンがなんかこう、海の深いところに棲む
 「深海魚」だとしたら、俺たちどー見ても「熱帯魚」
 だもんね。
という沖縄弁のMCに会場が湧く。

[ORANGE RANGE]
01. オポロナアゲハ
02. イケナイ太陽
03. お願い!セニョリータ
04. Special Summer Sale
05. SUSHI食べたい feat.ソイソース
06. リアル・バーチャル・混沌
07. GOD69
08. チェスト
09. キリキリマイ


対するバックホーン。
久しぶりの「ヘッドフォンチルドレン」が嬉しい。
新曲もいい感じだった。ただやはり「あなたが待っ
てる」と「With You」のピアノが違和感。それを
言っちゃおしめえよかもしれないけど…だって誰も
弾いてないじゃん!

[THE BACK HORN]
01. 魂のアリバイ
02. ビリーバーズ
03. 声
04. 始まりの歌
05. 罠
06. ジョーカー
07. ヘッドフォンチルドレン
08. あなたが待ってる
09. 覚醒
10. 上海狂騒曲
11. コバルトブルー
12. シンフォニア

Encore
01. With You
02. 孤独を繋いで(新曲)
03. 刃

                                   5.24(水) CLUB CITTA' 川崎

ベストアクトは「ヘッドフォンチルドレン」。

2017年6月1日木曜日

グラディエーター


☆☆☆    リドリー・スコット   2000年

アクション超大作にはさほど興味ないのだが、アカデ
ミー作品賞を得ているということで観てみることにし
た。世評もなかなか高い。

2時間35分の長尺を飽きずに観られたのだから及第と
すべきかもしれないけれど、「金のみっちりかかった
凡作」という印象を最後までぬぐえず。というか、最
初の合戦のシーンが最もよく、人間ドラマと復讐劇に
なってからだんだん落ちてきて、クライマックスの皇
帝との決闘が決定的にダメだった。あれで納得いく人
がいるのかね。

でもこういう映画は、大きい映画館のデカいスクリー
ンで満員の客と一緒にハラハラしながら観てこそだろ
う。うちの32型の貧弱なテレビなんかで観て申し訳な
かった。

                                       5.17(水) BSプレミアム