2013年9月26日木曜日

許されざる者


☆☆☆★★      李相日       2013年

あまり期待していなかったが、良い映画だった。
イーストウッド版をほどよく忘れていたのがかえってプラス
に作用した模様。一緒に行った後輩は「あまりに忠実に
イーストウッド版を踏襲しているのが気になってなんだか
集中できなかった」と言っていた。

骨太な物語は雄大そのものの上川地方の風景とマッチし
ており、「正しい金の使い方」という感じがした。撮影は大変
だっただろうが、映画が良ければ報われるというものだ。

邦画の大作映画で「うん、おもしろい」と思ったのはいつ
以来だろう。ちょっと思い出せないぐらい前だと思う。

特筆すべきはキャスティングが絶妙で、ズバリ的中という感じ。
イーストウッドに渡辺謙は鉄板だろう。このひと以外に居ない。
モーガン・フリーマンに柄本明。もう見飽きた柄本明だが、今
回は良かった。あのアイヌ青年は誰だろうとずっと思っていた
が、なんと柳楽優弥! なんとも頼りになる役者になったものだ。
素晴らしかった。渡辺謙を雇う女郎に小池栄子。顔を切られる
のが忽那汐里。女優陣も好演。

客は全然入っていなかった。お時間ある方は観に行って下さい。
「あー映画観たわぁ」と思える久しぶりの邦画です。

                             9.22(日) イオンシネマ釧路(旧ワーナーマイカル)


2013年9月25日水曜日

夏に読んだ本②

『知に働けば蔵が建つ』
内田樹 著    文春文庫

もともと紙数制限のないブログの文章だからなのか、
ウチダ先生のこの手の本の文章には適度に「タルい」
ところがあって、それがかえって寝る前に読むのに適
しているのである。
寝る前に読むのはずっと小林信彦だったのだけど、
最近は週刊文春か内田樹です。








『羊をめぐる冒険』
村上春樹 著    講談社文庫

いやー急に読みたくなっちゃって、読んだらやっぱりおも
しろいんですわこれが。でもところどころ「若書き」っぽい
文章や比喩も見受けられ、春樹にも「あまちゃん」時代が
あったのだとひとり萌えながら読みました。
十二滝村開拓の歴史に登場するアイヌの青年のことは
すっかり忘れていた。単なる脇のエピソードにしておくのは
もったいないほど良くて感心する。いるかホテルのハゲが
来ている支配人をなぐさめるキキが可笑しい。あ、まだこ
の小説の時点では「キキ」という名前はありませんが。


2013年9月24日火曜日

二等兵物語 女と兵隊・蚤と兵隊


☆☆★★★       福田晴一        1955年

伴淳三郎と花菱アチャコの共演で当時かなり人口に膾炙した
という「二等兵シリーズ」の第1作。ふたりが軍服姿でスクリーン
に登場しただけで笑いが起こったというから、相当な人気だっ
たんですね。

しかし今観ても…残念ながらおもしろくはない。
『拝啓天皇陛下様』の渥美清のような破壊力は無いし、花菱
アチャコはピエール瀧にしか見えないし、人情ものの部分に
しても、泣かせるというよりは、なんだかさんざん観てきたよう
な話だし。
それは私がすれっからしになったということなんでしょうか。
伴淳三郎の最後の演説シーンに救われたが、それもまあこ
ういう展開しかないよな、という感じで。ああ、いかん。もっと
虚心坦懐に映画を観るよう心がけます。

                       9.21(土) BSプレミアム


2013年9月23日月曜日

BUNGO~ささやかな欲望~

<見つめられる淑女たち>

オムニバス映画      2012年

文豪たちの短篇を、それも若干エロス寄りな短篇を"気鋭の"
映像作家たちが映像化したもの。
まったく独立した短篇3つなので、以下別々に採点する。

「注文の多い料理店」 原作:宮沢賢治
☆☆★      冨永昌敬

主演は石原さとみ。
映画的には、いいところはまったくなし。
演出が悪いんじゃないの。


「乳房」 原作:三浦哲郎
☆☆☆      西海謙一郎

水崎綾女。
ぐっとレベルが上がって、「見せる」演出を堪能。
しかし空襲警報下の理髪店とは、エロいシチュエーションを
考えるものですな。三浦先生、さすがであります。


「人妻」 原作:永井荷風
☆☆☆★      熊切和嘉

谷村美月。
さらにレベルが上がり、息詰まるような、生唾飲み込むような
「妖しさ」に感嘆。当ブログは谷村美月を応援しています。
まだ観ていない方は早急に『カナリア』と『17歳、京都着。
~恋が色づくその前に~』を観てください。

                            9.17(火)  DVD


2013年9月19日木曜日

サブウェイ

 デジタル・レストア・バージョン

☆☆☆★      リュック・ベッソン      1986年

地下鉄というある意味で異空間を舞台にした、なんとも摑みどころの
無い話である。なんとなく「ハードボイルド・ワンダーランド」を思い出
す。こっちのが先だけど。

クリストフ・ランベール。
良い面構えの俳優だ。不敵で冷酷で、かと思えば繊細でフラジャイル
な表情もあって、見てて飽きない。金髪がよく似合ってる。

ジャン・レノはスティックでテーブルをかたかた叩く変人として登場。
たいして重要な役割を果たすわけではないが、かなりインパクトある。

                                                                 9.12(木) BSプレミアム


2013年9月16日月曜日

フラッシュバック・メモリーズ


☆☆☆★★             松江哲明           2013年

レンタルなので当然2Dでの鑑賞。

音楽映画ということで、隣人が居ないのを確認してから、壁が
ディジュリドゥの低周波でビリビリ鳴るぐらいの"気持ちいい音量"
を堪能。しかし不思議な楽器だ。演奏するのは難しいんだろうか。
どのへんにGOMAさんのクリエイティビティがあるのか最後まで
分からなかったが、プリミティブ極まる楽曲のポリリズムな感じは
心地よい。

                                                                9.9(月) DVD


2013年9月9日月曜日

テレビ漬けでした


ちかごろ更新できていないのは、テレビ漬けだったからです。
パッと思い浮かぶだけでも…

「零戦 ~搭乗員たちが見つめた太平洋戦争」「よその歌 わたし
の唄」(山田太一ドラマ)「LIFE! 人生に捧げるコント」「基町アパー
ト」「食わず嫌い 古田新太×有村架純」「達人達 半藤一利×
宮崎駿」「今夜も生でさだまさし 水戸」「プロフェッショナル サザ
ンオールスターズ」「プロフェッショナル 宮崎駿」「北川景子 地中
海」「坂本龍一 Playing the Orchestra」

ざっと勘定しただけでも、これだけ不定期の番組が入ってきて
ウチの可哀相なHDDレコーダーを圧迫し、早く観て消さなけれ
ば新たに番組が録れない状態であった。それに輪をかける形
で「あまちゃん」はたいてい2回観ている上に面白い回は消せな
いし、空耳アワードはあるし、ちょっとした試験は受けねばなら
んし。とりあえず映画も本もおあずけ、であった。つまり仕事が
忙しかったとかではないということですね。テレビ観るのが仕事
のうち、とはまだカッコよすぎて言えないので、単に好きだから
観ているだけですね。
しかし面白い番組も多くて、テレビはまだまだ面白い、と自信を
もって言える気がした夏でした。山田太一のドラマはつまんな
かったけど。

さて、猛チャージのおかげでだいぶ空きができたので、これから
は映画でっせ。レビューは期待せずにお待ちください。

2013年9月2日月曜日

夏に読んだ本①

『クヌルプ』
ヘルマン・ヘッセ著    高橋健二 訳    新潮文庫

クヌルプはとらえどころがない。
そして、ゴルトムントを知ってしまった後に読むと、幾分似たところの
あるその人物像はちょっと地味に思える。
しかしやっぱりヘッセのこういう小説、好きです。
ヘッセの小説の重要な要素のひとつが「放浪」であることは間違いな
いが、果たして「放浪する主人公たち」にヘッセは何を託したのか。
もうちょっとまとめてヘッセを読む時間が欲しいなー。こうも飛び飛び
だと、前に読んだやつを忘れてまう。










『世界のすべての七月』
ティム・オブライエン著   村上春樹 訳   文春文庫

春樹をしてその「下手っぴいさ」から目が離せないというティム・オブラ
イエン。本作は、卒業から31年目の大学同窓会に集まった、かつての
"Don't trust over 30"な学生たちが繰り広げる群像劇である。
もうお腹いっぱいになるほどのみじめさ、悔恨、みっともなさ、情けなさ
が連作短編の形で着々と積み重ねられ、とってもグロテスクなタペスト
リーが編み上げられる。読後感はあくまで胃もたれしそうなほどの「アメ
リカ的物語」であり、あまりオススメはしないが、あぁアメリカだなぁ、とい
う感じが満載の小説が読みたい時にはぜひ手に取っていただきたい。