2023年11月16日木曜日

キリエのうた

 
☆☆☆    岩井俊二   2023年

新作を最も楽しみにしている映画監督を挙
げろと言われたら、タランティーノ、西川
美和、岩井俊二と答えるぐらいには私は岩
井俊二が好きだし高く評価している。その
魅力は、どこかしら特別なマジックのよう
なものを感じる映像と、どこに連れていか
れるのか分からないヘンテコな物語の展開
にあると思っている。

前作は「手紙」にまつわる物語を、日本、
韓国、中国でそれぞれ撮り分けた岩井らし
い、いくぶん甘ったるい佳作だったが、今
回は「うまく発語できない路上ミュージシ
ャン」という、若干マンガっぽい設定。ア
イナ・ジ・エンドの声にほれ込んでアテ書
きされた役とのことで、さすがに役者では
ないので演技は少ないのかと思いきや、め
ちゃくちゃいっぱいあった。路上で歌って
いる曲もアイナが自作しており、やたら負
担が大きい!

古墳の公園に住む少女、言葉をほとんど口
にしない路上ミュージシャン、働いてる様
子もないのにセレブ生活を送っている美女
(広瀬すず)など、興味をそそる要素がち
りばめられているはいるのだが…。今回は
残念ながら、それらにマジックがかかって
いなかった印象。3時間の上映時間がけっ
こう退屈だった。

本作の撮影に密着したETV特集は未見だが、
震災を正面から扱った作品であり、2分以
上あったと思われる「地震」の場面からも、
その覚悟のほどは伝わってきた。もちろん
良い場面もたくさんあったし、これから観
るひとに「おすすめしない」という意味で
はないことを付記しておく。

                10.20(金) TOHOシネマズ渋谷




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