『騎士団長殺し』
「第一部 顕れるイデア編」
「第二部 遷ろうメタファー編」
2017年に出版されてすぐに読んで以来の再読。
もう6年にもなるか。もちろん、春の新作刊行
を知っていたわけでは「あらない」。読みなが
ら、そろそろ次の長篇を書いている頃かなー、
と思ってはいたが。
春樹なりの「ギャツビー」へのオマージュとい
う面の色濃いこの小説の肝はなんといっても、
ギャツビーである免色と、デイジーである秋川
まりえのキャラクター造形にあると思われる。
とりわけ免色と、彼が住む谷向かいの白い豪邸
とが、物語の基調をなす。主人公の「私」には
最後まで名前は与えられず、記述者としての役
割を担いながら、「ギャツビー」という容器に
満たされたまったく別個の物語を語り始める。
しかしそもそも「ギャツビー」の物語の骨格っ
て、そんなにおもしろいものなんだっけ? な
どと考えながら読んでいたが、春樹のその試み
は充分に成功しているとは言い難い、というの
が再読の印象。
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