2015年11月9日月曜日

秋の読書③


『あこがれ』
川上未映子 著     新潮社

いつもは村上春樹以外の作家は文庫になるまで3年待つ
のだが、『きみは赤ちゃん』と『すべて真夜中の恋人たち』が
たいへんたいへん良かったので、特別扱いで単行本を購入。
しかもすぐに読む。なぜか昂まっている……未映子熱が…。

2章立ての長篇というか、2つの連作中篇といえばいいか。
主要な登場人物は、小学生の男の子・麦彦と、同級生の女
の子・ヘガティー。第1章「ミス・アイスサンドイッチ」は、小学
校4年の麦彦の視点で語られる。それに応じて文体も、あま
り詰め込みすぎないようになっており、わざと甘めにしてあ
る感じ。いつものキレがないというか、はじめはそれが気に
なってなかなか入り込めなかったのだが、読んでいくと慣れ
てきた。
たまたま今年観たマイケル・マンの『ヒート』が出て来るのが
うれしい。ヘガティーが愛好する映画なのだ。

「あこがれ」というタイトルは、読み終わって内容を振り返っ
てもなかなか、「はは~ん、だからね」という理由が思い当
たらず、ちょっと考えてしまう。誰かが書いていたが、ひらが
なで「あこがれ」といえばトリュフォー。ちょっとは意識してる
のだろうか。











「MONKEY  vol.7」
スイッチ・パブリッシング

特集が「古典復活」で、村上春樹と柴田元幸がさんざっぱら、
こちとらほとんど聞いたこともない作家の話をしたあとのペー
ジには、「復刊してほしい翻訳小説50」である。それって全部
絶版ってことじゃん! 俺たちどうすりゃいいんだよ! と誰も
がツッコまずにいられない。村上春樹のネームバリューがあ
れば、こんなむちゃくちゃな企画だって実現してしまうのであ
る。うー、1ヶ月ぐらい八ヶ岳のふもとの別荘で翻訳小説を読
みまくりたいぜ。

そして未映子さんが聞き手となった村上春樹へのインタビュー
も載っている。『職業としての小説家』を踏まえたうえで、未映
子さんが訊きたいことをさらに訊く、という形。
意外に、といったら失礼かもしれないが、インタビュアーとして
の未映子さんが非常にすぐれていて、キャリアは全然違うが、
同じ実作者としての経験や陥りやすい陥穽もからめた未映子
さんの質問に、村上春樹も楽しみながら答えているのがあり
ありと伝わってくる。とても気持ちのいいインタビューになって
いる。

短篇を翻訳したのもいくつか載っている。カーソン・マッカラー
ズのやつがおもしろかった。







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