2024年9月24日火曜日

ファースト・カウ

 
☆☆☆   ケリー・ライカールト   2024年

なるほどこういう映画だって、西部開拓時代
を舞台にしているのだから「西部劇」と呼ん
だっておかしくはないわけだ。
「料理当番」として仲間内で蔑まれていた
クッキーと中国移民のキング・ルーが、当地
にただ一頭、ある富豪に飼われていた雌牛か
らミルクを盗み、ドーナツを作ってひと儲け
する…という変わった話で、フォードやホー
クスの西部劇とはまったく違っている。こち
らはケンタッキーの荒野ではなくオレゴン州
の密林の画が多く、馬にも乗らず、アパッチ
族の襲撃もない。ただ酒場のシーンはあり、
男たちの友情があり、そして秘密のレシピが
ある。

なかなかおもしろいとは思ったのだが、夜の
暗がりのシーンが非常に多く、セリフも少な
いのでついウトウトしてしまい、肝心のドー
ナツを思いつくシーンを見逃した…。なので
採点も不完全であることをお断りしておきま
す。

                              8.15(木) 早稲田松竹



2024年9月16日月曜日

1999年の夏休み


☆☆☆★★   金子修介   1988年

会社の先輩が最も好きな映画と言っていた
ので、名画座でかかるのを待っていた。

萩尾望都『トーマの心臓』を翻案したという
不思議な味わいのダーク・ファンタジーとで
もいうのか。出演は水原里絵(深津絵里)、
中野みゆき、大寶智子、宮島依里の4人のみ。
夏休み、寄宿舎に残された子どもだけの世界。
良くいえば瑞々しい、悪くいえば素人同然の
芝居、そしてほとんどのセリフがアフレコで
吹き替えられているという点からも、私はな
んとなく大林の『HOUSE』を思い出した。
若さゆえの屈折、純粋さ、そして残酷さ…。
少年がそのままやるとシラけてしまいそうな
青い物語を、少女たちに置き換えたことで、
新鮮さが今になっても感じられる。

照明・撮影も見事で、燭台を持って歩く廊下、
暗い森など印象的に撮られている。舞台の洋
館は大倉山にあるというから驚く。森や湖と
違和感なくつながっていたので、私はてっき
り森の中に佇んでいるのだと思った。

                                8.8(木) 早稲田松竹



2024年9月1日日曜日

【LIVE!】 THE BACK HORN


 第五回夕焼け目撃者

 01. 甦る陽
 02. 光の結晶
 03. 希望を鳴らせ
 04. 8月の秘密
 05. 深海魚
 06. 生命線
 07. コワレモノ
 08. ジャンクワーカー
 09. がんじがらめ
 10. 修羅場
 11. 墓石フィーバー
 12. 夢の花
 13. 夢路
 14. 夏草の揺れる丘
 15. ブラックホールバースデイ
 16. 真夜中のライオン
 17. シンフォニア
 18. 太陽の花
 19. JOY
 
 <Encore>
 01. ヘッドフォンチルドレン
 02. コバルトブルー
 03. 刃

         7.28(日) 日比谷野外音楽堂

一昨年の同名ライブは台風が来ている最中で、
雨具を持って行かなかったために、1時間以上
にわたってひたすら豪雨に打たれ続けるとい
う稀有な経験をした。今年はポンチョと大き
なビニール袋(リュックやスマホを放り込む)
を持って準備万端いつでもゲリラ豪雨かかっ
て来いや、と鼻息荒くしていたら、まったく
降らなかった。まあそういうものである。
第五回にしてはじめて、うっすらと夕焼けま
で見られ、めでたくみんな「夕焼け目撃者」
となったわけである。

野音という会場には独特な空気があり、野外
というのはもちろん大きな要素だが、石のベ
ンチの反射もあるのだろうか、いつもと違う
音がする。ライブは素晴らしかった。山田将
司の喉はもうほとんど心配ないほどまで回復
していて、いつ声が出なくなるかとハラハラ
しながらライブを見なくてもいい幸福を噛み
締めた。
新曲もなかなかよかった。「ジャンクワーカ
ー」のサビが「うるせー!」という叫びから
始まるところに、ライブにおける再生音源は
初期に比べてずいぶん多くなったりしたけれ
ども、このバンドの「変えないもの」を感じ
てすこし感動した。まだまだ若い。

ベストアクトは「生命線」。「甦る陽」もよ
かったなー。