☆☆☆★★★   李相日   2025年
原作小説の長さからすれば映画が3時間になる
のは当然だろう。小説でも印象的だった開巻
のヤクザ一家の新年会の描写がすばらしく、
思わず見入ってしまう。
喜久雄の才能が見いだされる瞬間、生まれた
家、背負った業、父を目の前で惨殺されると
いうトラウマ…。多くのものをここで観客に
提示しなければならない。永瀬正敏は往年の
東映の任侠映画のような迫力があり、短い出
番ながらも鮮烈だった。
 3時間、だれることのない充実した内容で、
至福の「映画的時間」を過ごすことができた。
俳優部の努力はすさまじいものがあっただろ
う。月並みな表現だが吉沢亮と横浜流星はま
さに「役を生きて」いたように思う。
渡辺謙が自分の息子も喜久雄も分け隔てなく
呼ぶ「あんた」と、万菊さんがこちらを見ず
に発する「あなた!」の声色にシビれる。
映像と音声も一流の仕事だったが、ここぞと
いうときにクローズアップが多用されるのが
気になった。バリエーションが少ない。
小説としては悪人、怒り、国宝の順だと思っ
ているが、映画は逆に国宝、怒り、悪人の順
のようだ。
                                         6.29(日) 新宿バルト9

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