2025年12月30日火曜日

星と月は天の穴

 
☆☆☆★★  荒井晴彦   2025年

今年の映画納め。
吉行淳之介の短篇を荒井晴彦が映画化して
いるが、よくあるパターンで主人公は吉行
を思わせる作家(綾野剛)、そしてのちに
「星と月は天の穴」と名付けられる小説を
執筆中である。そうしながらひっきりなし
に煙草を吸い、また小説を書いては窓の外
の公園のブランコを眺めている。

綾野剛の低いモノローグ。そしてユーモア。
脚本家の映画だなと思うのは、荒井晴彦の
映画はいつもテンポがいい。無駄を削ぎ落
しているからだろう。今回も「このカット
はちょっと長いな」と思うと、必ず理由が
あって納得させられる。

                           12.29(月) シネリーヴル池袋













みなさんよいお年を。

2025年12月29日月曜日

ワン・バトル・アフター・アナザー

 
☆☆☆★★★  ポール・トーマス・アンダーソン  2025年

いろいろと忙しさにかまけて前作『リコ
リス・ピザ』を見逃したままとなってい
るPTA。その前の『ファントム・スレッ
ド』がダニエル・デイ=ルイスの引退作
という気合は感じるものの、いまひとつ
だったこともあり、本作もひとまず放置
されていた。しかし、さきに観たひとの
「おもしろかった!」の熱量がみんな本
気だったため、ただならぬものを感じて
映画館へ。

そして、私も本気で言うのだが、めちゃ
くちゃおもしろいです。3時間ほどの上
映時間、ずっとおもしろい。
ディカプリオ、人柄がにじみ出る(いい
意味で)芝居をしますよね。ベニチオ・
デル・トロ、レジスタンスの指導者で、
空手教室の師範、シブいです。ショーン
・ペン、ド変態のレイシスト軍人をこん
なに活き活きと演じてくれるんですね…
すっかりファンになりました。愛すべき
映画がまたひとつ増えた。

                               11.27(木) キノシネマ新宿




2025年12月28日日曜日

旅と日々

 
☆☆☆★★★   三宅唱  2025年

昔読んだような気がするつげ義春の「海辺
の叙景」「ほんやら洞のべんさん」を原作
とした89分という短めの新作。しかし中身
が濃いというか、淡々とした展開の中にも
忘れがたいショットがいくつもある。
車の中で女が目を覚ますという冒頭のカッ
トから始まり、話しているうちに日が暮れ
てきて最後は暗くてほとんど見えない2S、
俳優が海に飲まれるのではないかと心配に
なる雨の海水浴(もちろん雨は降らせてい
るそうだ)、河合優実のまぶしい水着…。
場面は一転、シム・ウンギョンが雪国をさ
まよい、古民家の宿にたどり着く。「何も
することがない」という時間が、あれほど
見事に表現された例を私はあまり知らない。
そこから引き起こされる珍奇な事件。
前作『夜明けのすべて』に刮目させられた
が、本作もお見事であった。

     11.11(火) ヒューマントラストシネマ渋谷



2025年12月27日土曜日

【LIVE!】THE BACK HORN w/SHE'S


 「KYO-MEI対バンツアー」
  〜共鳴破天の夜〜 其の二

 1. 雷電
 2. ブラックホールバースデイ
 3. ひょうひょうと
 4. 透明人間
 5. 罠
 6. 泣いている人
 7. ヒガンバナ
 8. 運命複雑骨折
 9. コバルトブルー
10. 太陽の花

(Encore)
 1. 刃
 2. 無限の荒野

             11.3(月) 渋谷CLUB QUATTRO

だいぶ前だが、結局この公演がライブ納め
となった。なぜか去年は行かなかった全国
のQUATTROだけの対バンツアー。
渋谷は事務所の後輩バンドSHE'Sと。
「バックホーンがいるから今の事務所にした」
というぐらいで、意外にもけっこう慕われ
ているようだ。
当日何曲か予習していったが、特に印象に
残る曲はなし。もう全部忘れてしまった。

バックホーンは"雷電"での始まりから全身
が総毛だつような感じ。"泣いている人"を
除けば満足のセットリスト。
ベストアクトは"雷電"。

2025年12月17日水曜日

秒速5センチメートル

 
☆☆☆★★★    奥山由之   2025年

新海誠版は観ていないので、ただの新作映画
として観たわけだが、いったいぜんたい、ど
うしてこんな良い映画が写真家の奥山由之に
撮れてしまうのか、納得いかない思いで鑑賞。

少年時代のまっすぐな想いに胸を打たれ(白
山乃愛ちゃんが可愛い)、高校時代の森七菜
のいじらしさに身悶えし、約束の場所に高畑
充希が来るのか来ないのかちゃんとドキドキ
するという、実に正統的にこの映画を楽しん
でしまった…。そしてすぐにもう一度観たい
とか思ってしまった上に、バンプの「銀河鉄
道」を毎晩のように聴いてしまう。悔しいぜ。

                       10.15(水) TOHOシネマズ池袋




2025年12月14日日曜日

ザ・ザ・コルダのフェニキア計画

 
☆☆☆★  ウェス・アンダーソン 2025年

すごいよ、たしかにすごいんだが…。
相変わらずの情報の洪水と、こちらに必要な
知識が不足していることへの不甲斐なさが募
る100分。なので「なんだかよく分からない」
ので、感想を述べるのも難しい。

今回はベニチオ・デル・トロが、6度の暗殺
未遂を生き延びたヨーロッパの大富豪ザ・ザ・
コルダとして主演している。良い役者になり
ましたね…。
ザ・ザの旅に同行する家庭教師を演じたマイ
ケル・セラという役者が出色であった。

                       10.1(水) ホワイトシネクイント



2025年12月11日木曜日

遠い山なみの光

 
☆☆☆    石川慶   2025年

ちょっと地味ですかね。
演出にもどうもキレが感じられない。
原作はけっこうミステリ風だったと思うので
(そしてもっとずっと面白かった)、謎と違和
感が解消される瞬間を際立たせる努力をして
ほしかった。
そして最後に路面電車から目撃するのは吉田
羊じゃないだろ! ここは二階堂ふみじゃな
いのか、と思った。

                                    10.1(水) シネクイント




2025年12月6日土曜日

ハッピーアワー


☆☆☆☆   濱口竜介   2015年

ついに観た、5時間17分。
13時に映画館に入って、1本の映画を観て
外に出たのは19時半でした(途中休憩が
2回ある)。
そして観ていないひとには信じられない
ことだと思いますが、映画が終わった時
「え、もう終わり?」と思ったのは、こ
れ噓いつわりのないことでございます。
そういう不思議な映画でした。
退屈なんて思う暇はまったくない、いつ
までも観ていたいような感覚。
神戸を舞台にした、4人の女性の友情を
めぐる物語なのだが、これは『ドライ
ブ・マイ・カー』とも『悪は存在しない』
ともまったく異なる映画である。強いて
言えば『偶然と想像』が近しいものを感
じさせるかもしれない。

                                      9.15(日) 新文芸坐