2024年11月30日土曜日

チャレンジャーズ

 
☆☆☆   ルカ・グァダニーノ   2024年

プロテニスと恋の駆け引きを織り交ぜ、コメディ
タッチとまでは言えないが、まあ話半分で観るの
がちょうどいいような映画。ある「運命の一戦」
を主軸とし、時間軸を行ったり来たりしながら少
しづつ、もつれ合った人間関係が解きほぐされて
いく。

ゼンデイアを2人の男が取り合うのだが、テニス・
プレイヤー姿も、パーティーでのドレス姿も美し
い。スタープレイヤーだったが、ケガで選手を引
退し、夫に選んだジョシュ・オコナーのコーチを
して四大大会の優勝にまで導いた。ただ最近は不
調なので、小さな大会に勝って勢いをつけようと
したところ、その大会に元カレが出場しており…
というようなストーリー。テニス選手が試合前日
の深夜まで惚れた腫れたの恋の駆け引きに忙しす
ぎて、これじゃあ寝不足でコンディションが…な
どと余計な心配をしてしまう。

トレント・レズナー&アッティカス・ロスの音楽
がワイルドに映画を彩るが、いかんせん内容がく
だらないか…。

                                9.16(火) 早稲田松竹




2024年11月20日水曜日

プリシラ

 
☆☆★★★   ソフィア・コッポラ   2024年

エルヴィス・プレスリーの元妻プリシラ・
プレスリーが1985年に出版した回想録
『私のエルヴィス(Elvis and Me)』を基
にした作品とのこと。

プリシラをケイリー・スピーニー、エル
ヴィスをジェイコブ・エロルディが演じ
る。

日本でこの映画がウケなかったのも頷け
るというか、エルヴィスの奥さんなんて
別に知らないし、いったい何を見せられ
てるのか感が最後まであった。

エルヴィスとの離婚を決断して、前を向
いて歩きだすプリシラの姿に「ボディガ
ード」のあの曲がかかって終わるのだが、
それが解決になると全然思えないまま終
わってしまった。

                        9.16(火) 早稲田松竹




2024年11月6日水曜日

ぼくのお日さま

 
☆☆☆★★    奥山大史  2024年

ハンバート ハンバートの楽曲「ぼくのお日
さま」をモチーフにして、『僕はイエス様
が嫌い』に続く第2作を奥山大史が撮った。

フィギュアスケートに打ち込む少女に恋を
した男の子。その淡い恋心を、そっとすく
い上げてフィルムに焼きつけたような佳品
だった。短篇小説のような構成というか、
「とうとう彼女は来なかった」
の1行(これは私が勝手に考えた文章だが)
にすべてが集約されるような作りになって
いる。

ただ映画の終わらせ方には不満が残る。
2人がどういう会話をするのか、それこそ
を描いてほしかった。脚本には続きがあっ
たのだろうか。

  9.13(金) ヒューマントラストシネマ渋谷




2024年10月27日日曜日

関心領域

 
☆☆☆★★★ ジョナサン・グレイザー 2024年

傑作だと思う。
アウシュヴィッツ強制収容所の隣で「幸福
な家庭」を築き、「充実した仕事」をした
収容所所長の暮らしを定点カメラを擬した
手法で撮影している。所長もたいがいだが、
その妻の狂気がまたすさまじい。演じたザ
ンドラ・ヒュラーは『落下の解剖学』にも
主演している。

音響の映画とも言えるだろう。不穏な低音
がずっと鳴っており、時に銃声や叫び声が
壁の向こうから響く。子どもたちが遊びま
わっているシーンや家族が安眠をむさぼる
カットでも、音響だけでまったく違った意
味を持ったシーンになってくる。

遊びに来た義母は黙っていなくなり、所長
も最後は嘔吐する。そりゃそうだよね、ま
ともな人間性が少しでも残っていれば…。

       8.25(日) TOHOシネマズ日比谷シャンテ




2024年10月16日水曜日

【LIVE!】 小沢健二

 
  LIFE再現ライブ

 1. 流星ビバップ
 2. フクロウの声が聞こえる
 3. 強い気持ち・強い愛~サマージャム'95
 4. 天使たちのシーン
 5. 旅人たち
 6. 大人になれば
 7. 台所は毎日の巡礼
 8. ぶぎ・ばく・べいびー
 9, 彗星
10. 流動体について

11. いちょう並木のセレナーデ(reprise)
12. おやすみなさい、仔猫ちゃん!
13. ぼくらが旅に出る理由
14. 今夜はブギー・バック(nice vocal)
15. ドアをノックするのは誰だ?
16. いちょう並木のセレナーデ
17. 東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディ・ブロー
18. ラブリー
19, 愛し愛されて生きるのさ
20. 愛し愛されて生きるのさ

                                 8.31(土) 日本武道館


『LIFE』発売からちょうど30年の日に、1日限
りのライブ。亡くなってしまったひと以外は当
時のミュージシャンを全員集め、「今だったら
こう弾く」という自由な演奏は"なし"にして、
アルバムの通りに弾く。

終演後、1曲目からしっかりと余韻を噛み締め
たいような、ほんとうに素晴らしいライブだっ
た。アルバムの曲順と逆とはいえ、次が何の曲
かは分かっており、アレンジも散々聴いてすべ
て知っている。なのにどうしてあんなにグッと
きてしまうのか。良い曲である、という以上の
「魔法」が顕現したような夜だった。

そして忘れてならないのは、渋谷毅さんと岩見
継吾さんを迎えて『球体の奏でる音楽』の曲が
演奏されたこと。もう一生聴くことは叶わない
と思っていたので、大きな驚きであった。
「大人になれば」の入り方(click! click! click!)
などはシビれたし、ベストアクトだとその時点
では思った。が、アルバムのアレンジの通りに
演奏された「ぼくらが旅に出る理由」があまり
にも良かったので、こちらをベストアクトとさ
せてもらう。

2024年10月6日日曜日

瞳をとじて

 
☆☆☆★★  ビクトル・エリセ  2024年

31年ぶりの長篇映画というから、いったい
どうした!? という感じだが、よくそんな
に長いブランクがあっても169分の大作を
無事に完成させたものだ。

映画監督としてのキャリアを早々に諦め作
家に転身した男を主人公とし、その数少な
い映画に主演した俳優の失踪事件をモチー
フとしたミステリー風味の映画。と同時に
人間の記憶をめぐる思索の旅でもあり、親
子とは何だろうかと考えさせられもするし、
フィルム賛歌でもある。長時間でも緊張と
緩和のバランスは絶妙で、飽きることなく
観られた。

『ミツバチのささやき』のアナ・トレント
も出演。『ミツバチ』が1973年、『エル・
スール』は1983年とのこと。

                               8.15(木) 早稲田松竹




2024年9月24日火曜日

ファースト・カウ

 
☆☆☆   ケリー・ライカールト   2024年

なるほどこういう映画だって、西部開拓時代
を舞台にしているのだから「西部劇」と呼ん
だっておかしくはないわけだ。
「料理当番」として仲間内で蔑まれていた
クッキーと中国移民のキング・ルーが、当地
にただ一頭、ある富豪に飼われていた雌牛か
らミルクを盗み、ドーナツを作ってひと儲け
する…という変わった話で、フォードやホー
クスの西部劇とはまったく違っている。こち
らはケンタッキーの荒野ではなくオレゴン州
の密林の画が多く、馬にも乗らず、アパッチ
族の襲撃もない。ただ酒場のシーンはあり、
男たちの友情があり、そして秘密のレシピが
ある。

なかなかおもしろいとは思ったのだが、夜の
暗がりのシーンが非常に多く、セリフも少な
いのでついウトウトしてしまい、肝心のドー
ナツを思いつくシーンを見逃した…。なので
採点も不完全であることをお断りしておきま
す。

                              8.15(木) 早稲田松竹