2011年3月13日日曜日

オリジナル・ラヴの復刻と『マイ・バック・ページ』のこと

オリジナル・ラヴがまだRED CURTAINと名乗っていたころのインディーズ盤
がこのたび復刻されるというので、だいぶ楽しみにしていた。東京にいた頃
はオリジナル・ラヴのライブには必ず行っていたし、特に初期の音が好きだっ
た。田島貴男の、獲物に飛びかかる野獣のようなヴォーカルがたまらない。
その「初期の音」よりも、さらに前の時期の音源が聴けるというのだから、な
かなか貴重であるし、もしかしたらさらに素晴らしい音の世界が広がっている
かもしれないではないか!
などと、勇んで買ったRED CURTAINの「ORIGINAL LOVE」。なんか
ややこしいな。感想は…うーん、音がしょぼいなー。特にリズム隊。インディー
ズ盤だから致し方ないんだろうか。なんか、最新のリマスタリング技術だかな
んだかで、音圧をもっと、こう、ドカーンとできないものか。そして意外なことに、
田島のヴォーカルがおとなしい! なんだ、メジャーデビューアルバムのあの
粗暴で男臭いヴォーカルはどうしたんだ。
フリッパーズ・ギターは最初期のオリジナル・ラヴの多大な影響下にある、と
いう話を以前どこかで聞いたことがあって気になっていたのだが、このRED
CURTAINの音を聴くとなるほど、と思う部分も多い。ひねくれたコードで、ひね
くれたコード進行をしてるんだろう、たぶん。聞いても何のコードかわからない
からはっきりとは言えないけど。












関係ないように見えて、ほんとに全然関係ないのだけど、川本三郎の『マイ・
バック・ページ』を最近本屋で見かける。山下敦弘×松山ケンイチで映画化さ
れるというので「復刻」されたらしい。単純に「おもしろい」と言ってしまうには
あまりに川本さんのパーソナルな部分に関わる本ではあるが、現に出版さ
れて、広く読まれてもいるわけだから別にいいだろう。これは六十年代好き
にはたまらない本ですよ! あまり本を薦めることはしないけれど、けっこう
誰が読んでも面白いんではないかと思う。 
「川本三郎」という名前は、私が大学2年頃からなんとなく映画を観始めて、キ
ネマ旬報などを立ち読みするようになってから「映画評論家」として認識された。
なかなか良い文章書くな、と思って(えらそうに)、映画評が好きで信用していた。
次に、カポーティ『夜の樹』(新潮文庫)の翻訳者だったりしたので、普通に英文
学かなんかを専攻した文化人だと思っていた。
するとどうです。どこで知ったのかは忘れてしまったが、彼は朝日新聞に入社後、
「朝日ジャーナル」記者時代に、朝霞駐屯地の自衛隊員を刺殺した運動家を密
かに取材し、重要な証拠物を譲り受け、それを焼却したことで証拠湮滅の罪に
問われて逮捕され、朝日新聞を懲戒免職されたというではないか。え、これって
俺の知ってる川本三郎のことなの、同名の別人じゃなくて…。同時に、その辺の
詳しい顛末は『マイ・バック・ページ』(当時は絶版)という本に書いてあることも知
り、読みたくてたまらなくて古本屋で探したが見付からない。結局は早稲田大学
の中央図書館で河出文庫(だったかな)を借りて読んだ。
つまるところ、川本さんは殺人犯逮捕のため警察に協力する「市民の義務」と、
ジャーナリストの命そのものであるところの「取材源の秘匿」との間で引き裂かれ
ていたわけである。興味の湧いた方は復刻された『マイ・バック・ページ』をどうぞ。
おもしろいよ。

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