2012年1月30日月曜日
兄とその妹
☆☆☆★★ 島津保次郎 1939年
1939年に公開された映画をいま観られるってのはすごいこと
ですね。
しかもそれが現在の映画のおおかたよりもよっぽどおもしろい
んだから、どぉなっちゃってんだよ(by 岡村靖幸)ってなもんで
すよ。
1939年といえば昭和14年、まだ対米戦争すら始まらない頃。
上原謙が、主人公の妹にアプローチをかける外国帰りのキザ
な「若者」として登場するが、このひと加山雄三の「お父さん」
ですからね。めまいがするわ!
しかし映画はワイルダー的というか、実に洒脱で、テンポの良
い兄妹の会話はいつまでも聞いていたいと思わせる。素晴ら
しい。
1.19(水) BSプレミアム
2012年1月22日日曜日
キッズ・リターン
☆☆☆★★★ 北野武 1996年
5年ぶりぐらいに観たのだが、こんなにも「やるせない」話の集合
だったかと驚く。ヤクザがみずからの暴力によって破滅していくの
ならともかく、青春映画である本作で身を持ち崩していくのは、高
校を出たばかりのいわば少年たち。省略の多い描写で、あまりべ
たべたと悲劇性を出さないようにしてはいるが、それがまたかえっ
てやるせない。特にあの喫茶店のウェイトレスに恋する真面目そう
な男の子が切ない。努力が実ってどうやら結婚までこぎつけたこと
が会話の断片からわかるのだが、同時に判明するのは、彼が同僚
に誘われるままに一度就職した会社を辞め、それがもとで離婚に
至ったらしいということだ。そして数分後のカット、夜明けどき、事故っ
たタクシーのまわりに集まるパトカーと、彼が大切にしていた人形が
ぶらさがったタクシーの車内が映される。説明はそれだけ。でも久石
譲の音楽と相俟ってとにかくやるせない。不思議な魅力を湛えた傑
作だと思う。
写真は映画史に残る名場面。
―― 俺たち、もう終わっちゃったのかなぁ。
―― バカヤロウ、まだ始まっちゃいねぇよ。
1.15(日) HBC
2012年1月18日水曜日
エンディングノート
☆☆☆★★ 砂田麻美 2011年
この映画、昨年けっこう話題になっていましたね。遠く北の
大地にも評判は届いておりましたが、観ること叶わず…と、
思っていたら、新年早々ここ釧路のワーナーマイカルでや
るっつーもんですから、同僚と喜び勇んで初日に鑑賞して
来ました。さすが話題作、客はわれわれを入れて7人ほど。
末期ガンの父親を被写体として、娘がホームビデオ的に
ただカメラをまわしている。そこに父親のセリフとして、娘が
ナレーションを入れる。明るく、冗談が好きなお父さんが、
いかにも言いそうな感じで。
監督は、商業映画にするつもりはなく、ほんとにホームビデ
オとして(健康だったころから)父親を撮っていた。そしたら
癌を告知され、しかもステージは一番あとのほうで手のつけ
ようがなく、闘病むなしく一年も経たずに亡くなってしまった。
その間に撮った映像をもとに、ご丁寧にナレーションまで入
れて、それでもまだ映画にするつもりはなく、師匠の是枝さん
に「これって、どうなんすかね」と見せにいったという。ほんと
かね。
なんというか、ほんとにただのホームビデオにちょっとおどけ
たナレーションが付いてるだけなんだけど、これが映画として
成り立つのは、ひとえに被写体のお父さんが良いキャラクター
だからだろうと思う。朝、トーストにバターを塗りながら、「(私
のような)こういうおじさんが、これまで日本を支えてきたんだ
から」とカメラに(というよりカメラを向けている娘に)いうシーン
が印象的である。
1.7(土) ワーナーマイカルシネマズ釧路
2012年1月11日水曜日
ワンダフルライフ
☆☆☆ 是枝和裕 1999年
なんとなく再生ボタンを押してしまったため、今年の
「映画はじめ」は、なし崩し的に本作に。
死後のひとびとがまずいったん集まる建物があり、
そこで生前もっとも印象的だった出来事をひとつ選
ばされる。一週間かけて、それを選び、再現し(建物
の職員が)、カメラで撮り、それを試写室で見る。そ
して当の出来事の記憶が鮮明によみがえったところ
で、そのひとは「あちら」へ行く、というなんだかそうい
うシステムらしい。生前のことを、思い出しながらぽ
つりぽつりと語るひとは、俳優もまざってはいるがほ
とんどが素人と思われ、それぞれの話に深入りする
ことはないが、多様な思い出ばなしがそれなりに重
みをもって迫ってくる。でもその部分だけだね、おも
しろいのは。あとは別に…。あ、そういえば職員に
ひとり小生意気な女の子がいて、ちょっと可愛い。
1.6(金) BSプレミアム
2012年1月9日月曜日
最近かたづいた本⑥
『映画の構造分析』
内田樹 著 文春文庫
年末に帰省するとき持って行った。「大脱走」の分析も「エイ
リアン」の分析も、なんだかふざけてやってるみたいにも思え
たが、どうなんでしょう。「裏窓」に関する論考、「視線」という
ものに徹底して着目した解説がおもしろかった。
『昭和のまぼろし 本音を申せば②』
小林信彦 著 文春文庫
小林さんのコラムはもはや一服の清涼剤のようです。
週刊文春は小林さんのために買っているようなものです。
2012年1月7日土曜日
【LIVE!】Base Ball Bear @ 日本武道館
1. 夕方ジェネレーション
2. Stairway Generation
3. ELECTRIC SUMMER
4. yoakemae
5. Fragile Baby
6. short hair
7. GIRL FRIEND
8. BOYFRIEN℃
9. WINK SNIPER
10. 転校生
11. kimino-me (with サカナクション 山口一郎)
12. 十字架 You and I
13. スイミング・ガール~海になりたい~海になりたいpart. 2
14. 新呼吸
15. changes
16. LOVE MATHEMATICS
17. CRAZY FOR YOUの季節
<アンコール>
1. クチビル・ディテクティヴ (with チャットモンチー あっこ & 呂布)
2. Tabibito In The Dark
3. 祭りのあと
1/3 日本武道館
遂に念願の「WINK SNIPER」を聞けました。曲のブレイク
で関根嬢は「ぶどうかん、いっちゃえ~」と叫んでました。
惚れそうになりました。
しかし、ちょいで君は若いくせに喋りがうまいね。
ベストアクトは「WINK SNIPER」で!
2012年1月2日月曜日
ベストテン [旧作]
2011年に観た旧作映画は60本。名画座に行く機会が激減した
ため、ほとんどはBSで、ということになる。DVDを借りてきて観
たものもあるが、数は少ない。
「ラピュタ」とか「二十四の瞳」とか、何度も観ているものはラン
キングから除外しています。
1. 仁義なき戦い 代理戦争
深作欣二 1973年 ☆☆☆★★★
2. ゲーム
デヴィッド・フィンチャー 1997年 ☆☆☆★★★
3. シャイン・ア・ライト
マーティン・スコセッシ 2008年 ☆☆☆★★★
4. 市川崑物語
岩井俊二 2006年 ☆☆☆★★★
5. 無法松の一生
稲垣浩 1958年 ☆☆☆★★★
6. きみの友だち
廣木隆一 2008年 ☆☆☆★★
7. チャイナタウン
ロマン・ポランスキー 1974年 ☆☆☆★★
8. 潜水服は蝶の夢を見る
J・シュナーベル 2008年 ☆☆☆★★
9. 裏窓
アルフレッド・ヒッチコック 1954年 ☆☆☆★★
10. ふたり
大林宣彦 1991年 ☆☆☆★★
次点 ミリキタニの猫
リンダ・アッテンドーフ 2007年 ☆☆☆★★
2012年1月1日日曜日
ベストテン [2011年公開]
迎春。
今年もよろしくお願いします。
恒例のベストテンです。まずは新作映画。
1. ソーシャル・ネットワーク ☆☆☆★★★
今年観た新作映画27本のトップは、本作にしました。演出、
脚本、音楽、どれも文句ないですよ。前評判どおりのおもし
ろさ。主演の彼も良い感じにイカれてた。
2. コクリコ坂から ☆☆☆★★★
こっちが1位でも別によかった。それぐらい傑作だと思う。
もし駿が作ったら、どうなっただろうとも思うけれど。
3. 東京公園 ☆☆☆★★
あまり話題にはならなかったけど、間違いなく秀作。おれって
どう見ても青山真治が好きってことになるんだろうね、はたか
ら見たら。
4. 奇跡 ☆☆☆★★
是枝監督の独特な感じのユーモアがやさしく炸裂しているとて
も変わった映画。
5. モテキ ☆☆☆★★
今年は長澤まさみが覇権を取り戻した年ですね。「コクリコ坂」
の海ちゃん、「奇跡」の図書室の先生、そして本作のヒロイン。
主演女優賞は彼女です。映画としてはそうたいしたデキでもな
いですが、一連の盛り上がり方も含めておもしろかったので。
6. マネーボール ☆☆☆★★
ブラピがシブく貫禄をみせつけた感のある作品。コンビを組んだ
ふとっちょの若者も印象的だった。
7. ゴーストライター ☆☆☆★★
丁寧につくられたサスペンスで、孤島、船、ナビ、携帯などの要素
を巧みに使っている。映画を観るよろこびを再確認できる作品。
8. 恋の罪 ☆☆☆★★
今年は園子温監督から2発の爆弾が投下されると聞いていたので、
非常に楽しみにしていた。本作と「冷たい熱帯魚」である。もっと伸
びるかなと思ってたんだけどなー。田村隆一の詩(「言葉なんか覚
えるんじゃなかった」)とか、良かったけど、演出に若干しつこさが目
立ってきた感がある。
9. 神様のカルテ ☆☆☆★★
予告篇を目にした段階ですでに「おもしろいかも」という希望は完全
に捨てていたが、かえってそれがよかったみたいである。櫻井くんと
加賀まり子と池脇千鶴が良かった。あおいさんは普通。
10. "DOCUMENTARY of AKB48 to be continued" ☆☆☆★★
それなりによく出来たドキュメンタリーだったと思う。岩井俊二は新作
を撮らないのか。待ってるのだが。
次点 冷たい熱帯魚 ☆☆☆★
いままでも暴力描写、残酷な描写は少なくはなかったが、本作で爆発
した(暴発した?)感じですな。普通の監督なら、風呂場で死体を解体
するシーンをあそこまでしつこくやらない。
<講評>
今年の新作映画は、残念ながら低調だったと言わざるを得ない。
「ソーシャル・ネットワーク」はすぐれた作品ではあったけども、率直に
言ってベストワンになるようなタマではないと思う。ベストテンを選ぶに
あたっても、いつもの年のように、これも入れたい、あれも入れたい、と
いう感じではなく、これ、うーん…10位かぁ? なんか無いのかよ他に
マシなやつ、とまあ、言ってみればちょっと無理して10位以内に入れな
ければならないような作品までもがベストテンに並んでしまったのはま
ことに遺憾である。
誰もおまえに頼んでないのに、勝手に新作映画に優劣をつけて、今年
は不作だった遺憾であるとかっておまえどんだけエラいんだよ、という
つっこみはどうかやめていただきたい。単なるいち映画ファンの、しかも
偏った嗜好を持つ映画ファンの、年に一度の楽しみである。以下に今年
観た新作映画を列挙する。
アンストッパブル、ソーシャル・ネットワーク、ザ・タウン、RED、ヒア アフター、DOCUMENTARY of AKB48 to be continued、冷たい熱帯魚、ブラック・スワン、プリンセス トヨトミ、SUPER 8、さや侍、コクリコ坂から、ゴーストライター、神様のカルテ、監督失格、東京公園、奇跡、モテキ、婚前特急、軽蔑、ステキな金縛り、ハラがコレなんで、マネーボール、ツレがうつになりまして、朱花の月、アントキノイノチ、恋の罪、聯合艦隊司令長官 山本五十六 (27本)
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