☆☆☆★★★ 北野武 1996年
5年ぶりぐらいに観たのだが、こんなにも「やるせない」話の集合
だったかと驚く。ヤクザがみずからの暴力によって破滅していくの
ならともかく、青春映画である本作で身を持ち崩していくのは、高
校を出たばかりのいわば少年たち。省略の多い描写で、あまりべ
たべたと悲劇性を出さないようにしてはいるが、それがまたかえっ
てやるせない。特にあの喫茶店のウェイトレスに恋する真面目そう
な男の子が切ない。努力が実ってどうやら結婚までこぎつけたこと
が会話の断片からわかるのだが、同時に判明するのは、彼が同僚
に誘われるままに一度就職した会社を辞め、それがもとで離婚に
至ったらしいということだ。そして数分後のカット、夜明けどき、事故っ
たタクシーのまわりに集まるパトカーと、彼が大切にしていた人形が
ぶらさがったタクシーの車内が映される。説明はそれだけ。でも久石
譲の音楽と相俟ってとにかくやるせない。不思議な魅力を湛えた傑
作だと思う。
写真は映画史に残る名場面。
―― 俺たち、もう終わっちゃったのかなぁ。
―― バカヤロウ、まだ始まっちゃいねぇよ。
1.15(日) HBC
0 件のコメント:
コメントを投稿