2012年6月24日日曜日

かたづいた本

『最後の息子』
吉田修一 著  文春文庫

今まで読み落としていた、吉田修一の最初期の短編集。
まだ芥川賞の候補になって落選していた頃の3篇を収録している。
結局受賞にいたった「パーク・ライフ」は老成しすぎていて新人らし
くなかったが、さすがにこの3篇には「習作」の感じが残っていて、
いまとなっては好ましい。偉そうなことをいえば、ここにはまだ添削
の余地があるという気がする。これ以降はもう安定感がハンパなく
て添削する箇所なんてなくなってくる。しかしもちろん、添削の余地
がないことと面白い小説であることはイコールではないのが小説の
難しいところである。
3篇のなかでは「破片」の荒っぽい弟と、「Water」主人公の心根の
真っ直ぐな少年が心に残る。








『長崎乱楽坂』
吉田修一 著  新潮文庫

長崎のディープな土地に生まれ育った兄弟を中心にして、そのまわ
りのディープな人間模様を、吉田修一の確かな筆致で描いた連作
短篇集。多用される長崎弁がリアルな感じでいい。連作短篇という
手法は、肝心な、いちばんドラマチックになってしまう場面を書かな
くて済むので、吉田修一には向いてるね。








『ドゥワッチャライク』
小沢健二 著

BOXセットについていた和装本。『OLIVE』の連載から小沢くんが
選んだ35篇を収録。
なんでも高いレベルで器用にこなすひとであるから、文章も当然の
ようにうまい。何度か声をあげて笑う。




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