2017年8月23日水曜日

たかが世界の終わり


☆☆☆     グザヴィエ・ドラン    2017年

ひさびさに名画座。
目黒シネマの『3月のライオン』前後篇とけっこう迷った
のだが、カナダの新鋭グザヴィエ・ドランの2本立てに落
ち着いた。しかしカンヌのグランプリということでちょっ
と身構える。

最初は主人公のいくぶん感傷的なモノローグで始まる。
12年ぶりに故郷に帰って、家族に「あること」を告げなく
てはならない、という内容で、どうやら死期が迫っている
ようだ。
家族は主人公を温かく迎えようと懸命になるが、劇作家と
してある程度の成功を収めているらしい主人公と、田舎暮
らしに満足しながらも忸怩たる思いも感じているらしい家
族との間でどうしても齟齬が生じていく…。

ほとんどワンシチュエーションで、たいへん予算のかから
ない映画だなというのが第一印象。誰も悪意を持っている
わけではないのに感情がもつれあい、悪化していくという
芝居はよく切り取られている。孤立する主人公ともっとも
通じ合っているのが兄の奥さん(マリオン・コティヤール)
という"他人"というのは象徴的である。どことなく『東京
物語』を想起させる。

                                                  8.19(土) キネカ大森


4 件のコメント:

  1. これ気になつてゐて、観ずじまひ。60点ならまあいいか。でも『東京物語』を想起させるとなると……

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  2. いやーけっこう好みの分かれさうな映画で、
    好きなひとは好きかもしれません。
    わたしはこの後に観た『トム・アット・ザ・ファーム』
    の方を推しますが。どちらも「厭な映画」です。

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  3. 先日、書いたコメントがどこかに消えてゐるのを今発見したので、改めて。
    『トム』は未見ですが、「厭だ厭だも好きのうち、な映画」なのかもしれませんが、当地のやうな田舎では鑑賞すら叶ひません。今見たいのは『パターソン』といふ映画ですが、それも名古屋に行かないと見られません。名古屋まで映画にといふのは、しんどいですね。
     ところで、「びりぎゃる」ドラマ、停滞しちゃつた感じですね。新聞を開きながら見るやうになつてしまひました。半年間緊張感のあるものを作るのは難しいのでせうね。今夏「吉宗」といふ大河ドラマを48回分一気に見ましたが、やはり最後は間延びした感じになつてゐました。ジェームス三木をしてあれですから、凡百の脚本家には相当な技量がないと務まらないといふことですね。

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  4. 『パターソン』ジム・ジャームッシュですか。
    永瀬正敏が出てゐた『ミステリー・トレイン』は
    わりとおもしろかった覚えがあります。

    私も釧路に住んでゐたときは、ミニシアター系の
    映画は札幌出張のときに観てゐましたから、お気持ち
    はわかるつもりです。そこまでして観た映画がつまら
    なかった時の怒りといったら(笑)。
    『ハラがコレなんで』の石井裕也に抱いた殺意を今でも
    ありありと思ひ出せます。

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