2022年4月18日月曜日

読書④

 
『われらの時代・男だけの世界』
ヘミングウェイ 著 高見浩 訳 新潮文庫

新潮文庫「ヘミングウェイ全短編」の第1巻。
1冊750円で、全3巻。これらを読めば、ヘミ
ングウェイの短篇がすべて読めるらしい。そ
う思えば安すぎるぐらいである。

本書には短篇集『われらの時代』と『男だけ
の世界』の作品を収める。
ヘミングウェイの最初の出版物である『われ
らの時代』だが、収められた短篇の質はすで
に高い。ここには若さとナイーブさとともに、
老成した死生観のようなものも漂っているよ
うに思う。「雨のなかの猫」と「季節はずれ」
という、苦い読後感の作品が特に印象的だっ
た。
最後に置かれた「二つの心臓の大きな川」。
フライ・フィッシングの細かな描写が続くが、
読んでいるうちに「肝心な何か」が敢えて語
られていないような、落ち着かない気持ちに
なる。大きな鱒のいる川の描写は美しく、自
然と対話する主人公の挙措は自信に満ちても
いるのだが、何かもっと大きなものが語りか
けて来るようにも感じるのである。

『男だけの世界』の原題は"MEN WITHOUT 
WOMEN"、つまり直訳すれば「女のいない男
たち」となる。
いちばん力が入っているのは冒頭に置かれた
老いた闘牛士の物語「敗れざる者たち」だろ
う。だが私にはほとんど会話だけで進む「白
い象のような山並み」と「殺し屋」が心に残
る。まさに短篇小説の一級品といえよう。

訳者の高見浩による巻末の解説も充実してい
る。このシリーズは「買い」です。












『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』
川上未映子 著  ちくま文庫

デビュー作の詩を含む、7編の短篇というか
詩というかを収める。最も尖ってた時期なの
で、溢れる言葉を叩きつけたようで推敲のあ
とも感じられる独特の文体である。
「告白室の保存」という女が男を電話ごしに
問い詰める短篇に、いちばん今の川上未映子
とつながるものを感じた。





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