2011年9月18日日曜日

ゴーストライター


☆☆☆★★      ロマン・ポランスキー    2011年

しっかりと作りこんであるサスペンス。批評をみると「チャイナタウン」
が引き合いに出されていることが多いので、ああいう感じかと思った
ら全然違った。展開はフツーに速いし、カットもバンバン切り替わるし
で、衒わず王道をずんずん行っている感じ。
これは誰が見てもそれなりに楽しめると思う。集中して観ないとだめ
ですよ、もちろん。

                          9.10(土)  ヒューマントラストシネマ渋谷


2011年9月16日金曜日

花と爆弾 [人生は五十一から⑥]


小林信彦 著    文春文庫

最初に週刊文春を読みだしたのは、高島俊男さんの「お言葉
ですが…」が読みたいからだった。まさに珠玉のコラムだった
と、今でも何の躊躇もなく言える。しかし連載は終わってしまい、
次に颯爽と現れたのは大宮エリーの「生きるコント」だった。
高島さんのコラムとは毛色が全然違うが、けっこうおもしろくて
二年(だっけ)にわたった連載はリアルタイムで読んだ。しかし
高島さんの連載が終わってしまった喪失感は大きく、文春は
「原色美女図鑑」で買うかどうかを判断するような申し訳ない
感じになった。お天道様に顔向けできない。
そして「生きるコント」も終わってしまい、いよいよ文春を買う理
由がなくなったかといえば、実はいまは毎週のように買ってい
るのである。
それは、小林信彦の「本音を申せば」がおもしろくなってきたせ
いで、この連載を読むのが毎週の楽しみになっている。もう二
十年近くやっている連載なので、昨日今日おもしろくなったわけ
ではない、もちろん。私が小林さんの文章のリズムの精妙さに
徐々に気付き始めたからだと思う。噛み締めながら読んでます、
毎週。


2011年9月15日木曜日

八つ墓村

☆☆☆     市川崑    1996年

まあ、普通かな。
個人的には、トヨエツ金田一は愛嬌があってよかったと思うけど。
「LOFT」を観たときから、トヨエツの奥にある「おかしさ」には好感
を持っているので。

                                9.4(日)    BSフジ


「おじさん」的思考


内田樹 著    角川文庫

2冊目の著書、とたしか書いてあったので、いまでは「無数」
にある彼の著作のなかでは最初期ということになる。最近
文庫に入った、のかな。おおかたは名物ブログからのセレ
クションだが、最後にわりと長い「漱石論」みたいなものが
書き下ろしで収録されている。「大人になる」とはどういうこ
とか、「虞美人草」と「こころ」をもとに、明治期における「成
熟」をからめて考察するもので、けっこうおもしろかった。

一緒に『レヴィナスと愛の現象学』も買ってみたが、こっちは
えらいむずかしそうだな。


2011年9月6日火曜日

少年の日の思い出


ヘルマン・ヘッセ 著   岡田朝雄 訳    草思社

ヘッセ青春小説集、とサブタイトルにある通り、表題作のほかに

・ラテン語学校生
・大旋風
・美しきかな青春

を収める。この3篇も無性に良い。ヘッセの文章はなんでこんなに
心地良いのか。登場する人物に向けるヘッセのまなざしはどこま
でも優しい。

「少年の日の思い出」というと、おおかたの人は「教科書のやつ!」
という反応らしい。戦後すぐから現在まで、多くの国語教科書(中学
生用?)に採用され続けてきたらしく「あの、蝶をつぶしちゃうやつで
しょ?」という感じで、日本で最も有名なヘッセの作品のようだ。
だが私はどうも読んだ覚えが無い。
国語の教科書は、授業でやらないところも全部読んだはずなので、
覚えがないということは宮崎県で採用している教科書には載ってい
なかったということだと思う。私が覚えてないだけかもしれないが。

そういえば以前も、「赤い実はじけた」とかいう、教科書に載っていた
小説の話で場が盛り上がってた時に、全然そんなの読んだ覚えが
なくて、ひとりポカンとしていたことがあった。つまんなそうな題名だか
ら別にいいんだけど。
どうなんでしょう。宮崎以外の出身のひとは「え、『赤い実はじけた』知
らないの?」という感じなんでしょうか。


2011年9月5日月曜日

チャイナタウン


☆☆☆★★     ロマン・ポランスキー    1974年

この映画をつらぬいている独特の緊張感、この「隙のない」感じが
たぶんポランスキーという人なのだろうな、と思った。
主人公はロス在住の私立探偵(ジャック・ニコルソン)。彼がいつも
どおり依頼にもとづいて浮気調査をしていると、1件の殺人が起こり、
探偵はそこに否応なく巻き込まれ、やがてそれは大きな組織的陰謀
へとつながっていく、という言ってみれば「王道」のプロット。だが、サ
スペンスというにはテンポがゆっくり目に設定されており、展開はあ
くまで優雅。伏線はしっかり張るが、説明はほとんどしないので、集
中して観ていないと「おいしいところ」を見逃すことになるだろうし、お
そらく私も気付いていない伏線はいくつもあっただろうと思う。

しかしジャック・ニコルソンって良いね。
「カッコーの巣の上で」といい「シャイニング」といい、忘れられない演
技をしてくれる。

                                              9.3(土)  BSプレミアム


2011年9月4日日曜日

ドラゴン危機一発


☆☆☆        ロー・ウェイ       1971年

ともあれ1本ぐらい観とくか、と思って「ブルース・リーの主
演作」というものを初めて鑑賞。26になって初めて観るの
は遅かった感があきらかであったが、そこそこおもしろ
かったですよ。しかし母親との「不戦の誓い」のペンダン
トを見る度に、へんな効果音が鳴るのは恥ずかしかった。

                                           8.28(日)  BSプレミアム