2013年8月16日金曜日
平成狸合戦ぽんぽこ
☆☆☆ 高畑勲 1994年
たぬきはお人好しという設定がおもしろい。争い事を
好まず、寄合をしてもほとんど危機感の無い彼らは
なかなか愛すべき存在である。
お話じたいはつまらないわけではないのだが、なんだか
「クドい」感じがしてしまうのはなぜなんだろう。カットが
おもしろしろくないのでずいぶん損をしている気がする。
白いひげのおじさんはそこが巧いわけで。
8.10(土) STV
2013年8月15日木曜日
汚れた血
☆☆☆★★ レオス・カラックス 1988年
近未来SF的な世界と、ドニ・ラヴァンの身体性に負うところが大きい
クライム・アクションの要素を融合させ、さらにメロドラマをぶち込んで、
スカイダイビングやらデヴィット・ボウイやらで彩ったら、…普通むちゃ
くちゃな駄作にしかならないだろうが、カラックスが撮ればしっかりおも
しろいというわけである。たしかに一種のカルト・ムービーという感じが
しなくもない。
それにしても、構成もヘンじゃないか。ドニ・ラヴァンとジュリエット・ビ
ノシュが夜語り合うシーンが、なんであんなに長いの。
8.3(土) DVD
2013年8月10日土曜日
2001年宇宙の旅
☆☆☆★★ スタンリー・キューブリック 1968年
いわずと知れた有名映画だが、初見。
「いやー、寝たわ」みたいなことを言うひとが多かったので心配した
のだけど、けっこう面白かった。いろんなことが意味不明ではあるが、
意味が明解で退屈な映画よりも、意味不明でワクワクする映画の
ほうがいいに決まっている。
でもまあ、一度観れば充分って感じ?
7.31(火) BSプレミアム
2013年8月7日水曜日
風立ちぬ
☆☆☆★★★ 宮崎駿 2013年
はやる気持ちを抑えきれず、初日に鑑賞。
素晴らしい作品だったし、まさに庵野秀明も言っていたように72歳
でこんな作品を作れるというのは「驚異」という言葉でも生ぬるい。
突風に飛ばされる帽子、紙飛行機、パラソルなど、とにかく"風"を
これでもかというぐらい自在に操る宮崎駿の徹底ぶりにはひれ伏
すしかない。もう誰も追いつけない領域にいっちゃってる感じ。
これを観るとやっぱり、飛ばされた帽子を返しに来てくれた可愛い
女の子が、突然ヴァレリーの詩をフランス語でささやいて来てもちゃ
んと続きを口ずさめるようにしとかなきゃ、と思いますもんね(思わ
ないか)。
ただ、手離しで「最高!」とは言い切れない部分もある。ドラマが中
盤あたりで停滞するように感じたのがまずひとつ。二郎がヨーロッパ
に視察に行ったあたり、正直いって退屈していた。
それともうひとつ、有権者の皆さまに訴えたいのは、4分間の特別予
告編で「おいしいシーン」を使い過ぎであるということ。私はけっこう
映画館に行くので、あの予告編を4回ほど観た。観て、そのたびに
あまりの素晴らしさに震えていた。「ひこうき雲」に乗せて本編のおい
しいとこどりをしまくったあの予告編がもし独立した作品であったなら、
評価は☆☆☆☆以上である。予告編から本編をあれこれ想像してい
るときの方が、本編を観ているときより幸せなのはちょっと問題だと
思うのですが、いかがでしょう。
とまあ、ケチはつけましたが、なんたって「宮崎駿の新作」ですから。
日本にこの天才がいることの幸福をかみしめた一日でありました。
もう1回観に行こう。
7.20(土) イオンシネマ釧路(旧ワーナーマイカル)
2013年8月2日金曜日
わたしを離さないで
☆☆☆★ マーク・ロマネク 2011年
あんまり小説の記憶が鮮明なうちに映画版を観るのはやはり
考えものだな。小説のどこが語られていなくて、それでも物語
として成立させるためにどういう映像を説明として付加している
か、そのことばかりが気になってしまった。
ルースが"使命"を終えた手術室から、体を切り開かれたルース
を残したまま足早に医師たちが立ち去るカット。映画ならではの
ショックがある、効果的な「一撃」だったと思う。効果がありすぎて
あまり気分のいいカットとは言えないが。
キャリー・マリガン。キャシーという役には、合う部分も合わない
部分も同じぐらいあったように思う。
7.17(水) スターチャンネル
2013年7月30日火曜日
ムーンライズ・キングダム
☆☆☆★★★ ウェス・アンダーソン 2013年
ふたたび猛暑の渋谷に出て、今度は本作を観るため、目黒に移動。
目黒シネマ、ひさしぶりだ。たぶん『東京公園』を観たとき以来だな。
今年2月の公開時には私に上京のチャンスがなく、見逃していた。
評判がいいのは知っていたが、観てみると期待以上のできにすっか
り満足。子ども映画の新たな傑作。でもやっぱ外人の子どもだから
生々しくないというか、戯画的になって安心して観ていられるし、おも
しろいんだろうね。日本人の子どもでリメイクされてもたいして観たく
ないもん。
7.7(日) 目黒シネマ
2013年7月22日月曜日
ちかごろの読了本③
『わたしを離さないで』
カズオ・イシグロ 著 土屋政雄 訳 ハヤカワepi文庫
ひさびさに小説らしい小説を読んだ気がする。
読み終わってもけっこう「後を引く」小説である。何も考えてない
ようなとき、ふと気が付くと、キャシーとトミーのことを考えていた
ことに気付く、そんな感じの。"精緻"という言葉がピッタリくる、
優れた小説だと思いながら読み進めた。精緻と書いたが、ヘー
ルシャムに関するいろいろな細かい規則とか校風とか、施設の
あれこれとか、ここまで造り込むともう偏執狂と変わりないよね。
静かな筆致だけに余計怖い。
もともとの文章も巧いんだろうが、翻訳も巧い! 土屋政雄の翻
訳で、『エデンの東』とかこれまでもいろいろ読んだけど、このひと
の文章はすごく好きだ。

『ブラス・クーバスの死後の回想』
マシャード・ジ・アシス 著 武田千香 訳 光文社古典新訳文庫
ブラジル文学界の巨人(らしい)、マシャード・ジ・アシス[1839-1908]さん
の代表作(らしい)。おおざっぱに言えば、ブラジルの漱石みたいなひと
なんだろう、きっと。
本作は、内容というよりも叙述形式が非常に変わっており、著者が死んだ
あとの著述という体をとっている。『トリストラム・シャンディ』にも影響を受け
(本の中でもそう言っている)、あちこちに話題が飛ぶ饒舌でとりとめのない
文章が特徴である。そこで、我が国の読者はちょっと『吾輩は猫である』を
想起したりするわけである。
なるほど、ナラティブで勝負するラテン・アメリカ文学の源流がこのへんに
あるわけか。
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